この案件資料は、管理局が定める機密情報を含んでいます。参照するためには、例外なく6名以上のレベル6セキュリティクリアランスを持つ局員から承認を得なければなりません。閲覧に際しては、GPS機能付きの情報漏洩防止デバイスを装備しなければなりません。参照が承認され閲覧がスケジュールされた時点で、局員は管理局が定める情報漏洩防止プロトコルに同意したものと見なされます。閲覧が完了するまで、局員は一切の外出が禁じられます。

本資料を閲覧した局員が、退職・降格・解雇等によりセキュリティクリアランスが剥奪されることが決定した場合は、プロトコルUXに基づくレベル6記憶処理を併せて受けることになります。プロトコルUXに対して何らかの身体的アレルギー反応があると認められた局員には、本資料を閲覧する権限は付与されません。

以下は資料の本文です:


Subject #103925

Basic Informations:

Subject ID:
#103925
Subject Name:
異常放送天体
Registration Date:
2002-12-07
Precaution Level:
Level 6

Handling Instructions:

これまでのところ、天体#103925を完全に収容または破壊するための方法は見つかっていません。現在の案件対応方針は、天体#103925の一般への暴露を避けることに焦点が置かれています。案件担当者は関連団体と連携し、天体#103925の完全な秘匿に努めてください。案件担当者には、必要な場合に当局が保有する機動部隊を自己の判断に基づいて出動させる権限が付与されます。

Subject Details:

案件#103925は、太陽と月の間に存在している未知の天体(天体#103925)と、それに掛かる一連の案件です。

対象は1999年末頃、異常な案件を調査している当局とは別の団体(以下団体A)からの情報提供と協力依頼により、その存在が明らかになりました。団体Aは当局で管理している一部の案件に関与している疑義が持たれていたため、当初提供された情報の信憑性が疑問視されていましたが、その後の当局独自の調査により、天体#103925が捏造や情報操作の類ではなく、かつ非常に特異な存在であることが明らかになりました。これにより、当局は天体#103925と関連する事象を案件として立ち上げ、団体Aと協同して対応することを決定しました。

天体#103925は月と太陽の間に存在していますが、通常の方法では視認することができません。団体Aが考案した方法(後に手順M-103925として整備)により、その存在を確認することができます。対象は月と同等かまたはそれより若干大きな天体と推測されていますが、具体的な規模に付いては現在も意見が分かれています。

この天体#103925は通常の天体ではなく、極めて高度な技術で人為的に建造された何らかの施設であると推測されています。これまで幾度と無く実施された大規模な調査においても、このような施設が建造されたことを示唆する証跡はまったく見つかっていません。現在、天体#103925は人間以外の知的生命体によって造られたものという仮説が最有力視されています。

本稿執筆時点までに4回、天体#103925から解読不能の電波が放送されていることが確認されています。この放送を妨害するための試みは、これまで使用したすべての電子機器が原因不明の故障・破損・ソフトウェアエラーの発生により本来の機能を発揮できず、完全に失敗しています。加えて当局と団体Aの共同調査により、放送とほぼ同時に何らかの世界的なイベントが発生していることが確認されました。

放送#103925-01
1999年11月に観測された放送です。放送から一週間以内に、野生のものを含むすべてのレアコイルの個体に変化が確認されました。レアコイルはそれまで物理攻撃に対して明確な耐性を持っていませんでしたが、放送後は多数の物理攻撃に対して極端な耐性を示すようになりました。同時に、それまで保持していた平均的な耐火性能が失われていることが判明しました。
放送#103925-02
2002年11月に観測された放送です。この放送の直後、それまで存在の痕跡すら見つかっていなかった「!」及び「?」のフォルムをしたアンノーンが各地域で大量に発見されました。いずれの個体も、フォルムを除いた従来の個体との差異は見つかっていません。当局の調査で、放送以前には存在していなかった「?」及び「!」のフォルムのアンノーンが古い資料に出現していることが確認されました。事前に取得された複製とは明らかな差異を示しています。
放送#103925-03
2008年9月に観測された放送です。放送の翌日、それまで電化製品を制御する程度の能力しか持たないと考えられていた携帯獣であるロトムに、制御可能な電化製品と未知の原理で融合し、自身の能力を書き換えるという行動パターンが新たに観測されました。放送#103925-03以前にはこのような行動は一切確認されておらず、また発現の兆候も観測されていませんでした。
放送#103925-04
2013年5月に観測された放送です。放送から3日後、イッシュ地方を中心に活動していた犯罪シンジケートにかつて在籍しており、身の危険を感じて当局への保護を求めてきた元構成員から、それまであらゆる手段を用いても復元・再生できなかった古生代の携帯獣「ゲノセクト」が前触れなしに再生したという情報が提供されました。当局は安全のため元構成員を別の地域へ移送するとともに、現在もヒアリングを重ねています。

いずれも放送とイベントにいかなる因果関係があるのかは不明ですが、すべてのイベントが放送から短期間の間に発生していること、そしてすべてのイベントが携帯獣に関するものであることに注意を払うべきです。このことから、天体#103925は未知の原理に基づく異常な放送により、地球に生息しているあらゆる携帯獣に何らかの重大な変化を及ぼす存在である可能性があります。加えて放送#103925-02の事象は、携帯獣に関連する資料にまで影響を与える可能性も示唆しています。

天体#103925の具体的な性質が掴めないこと、天体#103925からの放送が携帯獣にどのような影響を与えるかが未知数であること、そして放送を妨害する方法が確立されていないために、一般市民への情報の公開は予測不可能なレベルの混乱をもたらす虞があります。このことから当局では、レベル5以下の全局員に対し、天体#103925の存在を秘匿する方針を決定しました。

[2014-07-11 Update]

2014年初旬頃より、ルナトーン及びソルロックの変異体が発見されるという報告が相次ぎました。局員が捕獲した変異体のサンプルを確認したところ、すべての変異体が天体#103925をデフォルメしたフォルムになっていることが明らかになりました。直ちにすべてのレベル6局員が召集され、対応を協議しました。この協議の結果、案件#140775「ルナトーン/ソルロックの変異体」を起票することが提案・承認されました。これに基づきレベル5以下の全局員は、ルナトーン及びソルロックの変異体は単純にフォルムが異なる正常な携帯獣として取り扱うことになっています。

ルナトーン及びソルロックの一部個体が天体#103925の姿を模し始めた理由は明らかではありません。しかしながら興味深い学説として、ルナトーン及びソルロックが現在のフォルムに至るまでに、人類が天体――特に太陽と月をどのような形で認識していたかということを読み取り、その形状に自らを変異させたという説が提唱されています。この説はこれまでのところ明確な反証が無く、学会でも有力な仮説として扱われていることが分かっています。この仮説に基づくならば、本来秘匿されるべき天体#103925に関する情報が意図せぬ形で流出している可能性が生じます。

いかなる経緯で変異体#140775-01及び変異体#140775-02が出現したのかについて、現在も調査が進められています。

Supplementary Items:

本案件に付帯するアイテムはありません。