Basic Informations:
- Subject ID:
- #90734
- Subject Name:
- ピッピちゃんのティータイム
- Registration Date:
- 1998-10-03
- Precaution Level:
- Level 1
Handling Instructions:
利用者の多い主要なオークションサイトを、本案件専用のクローラーを使用して常に巡回しています。本案件と推定される書籍の出品が確認できた場合、局員はオークションサイトの管理者に連絡し、出品物を接収してください。接収に際して、出品者がどのような経路で対象書籍を入手したかのヒアリングも併せて行ってください。
書籍に付いての基礎情報は既に広範に知れ渡っているものと推測され、情報封鎖は困難な状況です。書籍そのものには異常性が見られないことから、現状では情報の出現を監視するに留まっています。新たに書籍に対する言及が見られた場合、局員は書籍の情報がいかなる文脈で登場しているかについて詳細な分析を行ってください。
入手した書籍は、管理局の特殊書籍を収容する書架で集中管理されます。研究の為に書籍を持ち出す場合、様式F-90734に従い特例申請を実施してください。書籍は必要に応じて複写・電子化が認められていますが、一般的な機密情報拡散防止の観点から、不必要な複写・電子化は避けてください。
本案件では「ピッピちゃんのティータイム」のみを対象とします。類似する異常な書籍を発見・確保した場合は、別案件として管理してください。
Subject Details:
案件#90734は、「ピッピちゃんのティータイム」という出自不明の書籍に関する一連の案件です。主体となる書籍の正確な出現時期は明らかになっていませんが、少なくとも90年代後半から存在が確認されています。管理局の推定では1997年後半の出現が最有力としていますが、いくつかの物証はより以前からの書籍の存在を示唆しています。
当書籍の特徴的な点として、現時点ではインターネットのオークションサイトでのみ入手が確認されていることが挙げられます。通常の書店、特に古書を扱う書店において、「ピッピちゃんのティータイム」なる書籍が確認された事例はこれまで一件もありません。オークション出品者へのヒアリングでは、例外なく「蔵書を整理していたら買った覚えのない漫画が出てきた」もしくは「別のオークションサイト経由で購入した」との回答が寄せられ、オークションを除く正規の流通経路で入手したという証言は得られていません。多くの書籍は出版年から見て矛盾が無い程度に品質が劣化(日焼け・風化等)しており、出版年に付いてはある程度の信憑性があるとの見方が大勢を占めています。
この「ピッピちゃんのティータイム」は2015/3時点で第57巻までの発行が確認され、その内容は概ね70年代後半から80年代前半にかけての少女漫画の一般的な作風を踏襲しています。著者は「たかはしさゆり」、出版社は「芽吹書房」、元々の掲載誌は「別冊ショコラ」と記載されています。作家としての「たかはしさゆり」、出版社としての「芽吹書房」、及び漫画雑誌としての「別冊ショコラ」がそれぞれ実在した記録はありません。加えて、「別冊ショコラ」が「芽吹書房」から出版されていたという確証もありません。書籍に記載された情報はこのシリーズが1972年頃から連載・刊行され始めたことを示していますが、当時の記録からは「ピッピちゃんのティータイム」なるシリーズが存在した形跡は見つかっていません。
主人公は携帯獣の「ピッピ」で、風貌は一般的な携帯獣のものですが、少女漫画の作風に沿った擬人的なキャラクター付けが施されています。基本的に一話単位で完結するショートエピソードによって構成されていますが、時折複数話にまたがるロングエピソードも見られます。エピソードの粗筋は総じて平凡です。主人公であるピッピちゃんがレギュラーキャラクターである「ピカチュウくん」との恋愛を成就させるべく様々な努力をするという筋書きが大半を占め、時折「ライバル」が登場して他愛のない痴話げんかが繰り広げられるといった、何ら特筆すべき事項のないストーリーが展開されます。登場人物はほぼすべて携帯獣によって構成されていますが、まれに人間と思しき人物が登場するエピソードも存在します。
ただし、一部のエピソードについては一般的なエピソードと比べて明らかに作風が異なり、また総じて注目すべき内容が描かれていることに注意しなければなりません。
以下はこれまでの調査で発見された「特異な」エピソードの一部です:
- 第40話「ピッピちゃんと殺人事件」(第7巻収録)
- このエピソードでは、ピッピちゃんの隣人である「ラッキーさん」が何者かによって暴行の末に殺害され、またラッキーさんの娘である「ピンプクちゃん」が行方不明になったという事件がシリアスなタッチで描かれています。第7巻が刊行されたのは巻末の記載によると1973年2月ですが、当時種族としてのピンプクは知られていなかったことに注目すべきです。次の第41話は前々話である第39話の直近の続編となっており、この第40話での出来事は無かったものとして扱われています。
- 第83話「ピッピちゃんとW.D.ビル」(第15巻収録)
- それまでのエピソードではさして特徴の無い田舎町が舞台となっていましたが、このエピソードのみ唐突に都会が舞台になっています。ピッピちゃんが高層ビルにある職場で働く父親の「ピクシーおとうさん」の元を訪れるという筋書きですが、ストーリーの半ばで突如として携帯獣の「ホウオウ」及び「ルギア」がビル近くに登場して激しい戦いを始め、以後はピッピちゃんとピクシーおとうさんが命からがらその場を脱出するという緊迫したシーンが展開されます。このエピソードにおいては、レギュラーキャラクターを含む極めて多くの死者・負傷者が発生します。次の第84話は前々話である第82話の直近の続編となっており、この第83話での出来事は一切無かったものとして扱われています。第83話で死亡または負傷したキャラクターは、何事も無く以降のエピソードに登場しています。
- 第160話「ピッピちゃんの激怒行進」(第27巻収録)
- ピッピちゃんの友達である「ミズゴロウくん」が、恐らくは人間と思しきシルエットを持つ警察に追われ、結果として事故に巻き込まれて瀕死の重傷を負うところからストーリーが始まります。ピッピちゃん始め携帯獣の登場人物は警察の度の過ぎた追跡行為に憤慨し、以後エピソードの終了まで激しい抗議行動を繰り広げます。ページの終わりに至るまで、人間に対する苛烈な罵詈雑言が携帯獣の登場人物による台詞として延々と書き連ねられています。次の第161話は前々話である第159話の直近の続編となっており、この第160話での出来事は無かったものとして扱われています。ただしこのストーリー以降、ミズゴロウくんが再登場するエピソードは確認されていません。
2014年には、新たに第55巻・第56巻・第57巻の存在が確認されました。いずれも出版年は1982年となっており、接収された書籍はいずれも年月から見て矛盾が無い程度に劣化しています。シリーズの連載が未だ続いているのか、それとも何らかの理由で時間経過と共に新たな巻が「発見」されるようになるのかは、局員の間でも意見が分かれています。
書籍の巻末には「別冊ショコラ」に掲載・連載されていたと思しき他作品の単行本が多数紹介されており、そのすべてがこれまでの記録に存在しない漫画作品です。著者の中には実在する漫画作家の名前もごく一部発見されましたが、いずれも書籍の発行時期には漫画家として活動していないか、あるいは出生していません。また、紹介されている作品は例外なく当該作者の既知の作品リストに存在しません。
以下はこれまでに確認された他作品の一部抜粋です:
- ときめきドキドキ電子レンジ(著者:小石川れい/第9巻までの刊行を確認)
- 思い出のプチキャプテン(著者:かたぎり翼/第17巻までの刊行を確認)
- ライムグリーン・カンバス(著者:かたぎり翼/読み切り)
- 天翔ける赤いツバサ(著者:さいとうともみ/第8巻までの刊行を確認)
- Gene Girls(著者:荒川瞳/短編集)
- 手のひらの上のアルカトラズ(著者:新庄まなみ/第11巻までの刊行を確認)
- ハート★スワップ!(著者:月梨野ゆみ/短編集)
- オクタン同盟(著者:松井かおる/第32巻までの刊行を確認)
- はるかぜエレジー(著者:牧下マユミ/第3巻までの刊行を確認)
- 太陽と月は石の夢を見る(著者:大林みか/第6巻までの刊行を確認)
当書籍がインターネットのオークションサイトでのみ発見される理由は判然としていません。また一部の出品者については、オークションサイト並びに案件管理局からのコンタクトが完全な失敗に終わるケースも見受けられます。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。