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#95092 「みち」の駅

Basic Informations:

Subject ID:
#95092
Subject Name:
「みち」の駅
Registration Date:
2000-02-19
Precaution Level:
Level 1(2006-08-20以前)→Level 4(2006-08-21以降)

Handling Instructions:

ポケモンセンターや管理局の拠点に対して、ポケモントレーナーから「元居た場所と違う場所に居た」あるいは「異常な『道の駅』に入った」といった通報があった場合、トレーナーから事情をヒアリングして該当する「道の駅」が発生したポイントを特定すると共に、局員による物理的なアクセスを試みてください。通報があったトレーナー自身から申し出があった場合も、アクセスに際して同行させてはいけません。トレーナーには「あなたに対してのみ再度同じ事象が発生し、まったく別の場所へ移動してしまう可能性がある」と正確な情報を伝え、申し出を謝絶してください。

これまで集められた「道の駅」に関する情報は、本案件に携わらない局員も含めたすべての局員が参照・利用可能です。トレーナーが利用するソーシャルネットワークサービスや匿名掲示板からも情報が収集されています。「道の駅」に関する何らかの情報を持っている局員は、情報の既出・未出に関わらず、案件担当者への積極的な提供が奨励されています。当該ロケーションに関する情報は未だ大きく不足しているため、早急に実態の解明を進める必要があります。

Subject Details:

案件#95092は、単独または少数で活動中のポケモントレーナーのみが進入できると推定される未知の施設と、それに掛かる一連の案件です。

対象は、国土交通省が主体となって全国で展開されている道路施設「道の駅」に類似した、あるいはそれをイメージさせるような形態を伴い、未知の条件によって前触れ無く出現します。出現するポイントはランダムですが、拠点間の距離が10km以上あり、かつその間に自由に利用可能な休憩のための施設が存在しないことが条件と推定されています。出現するための具体的な方法については現状では不明です。

出現条件を満たした状態でトレーナーが中へ進入すると、特段異常の無い一般的な人間の職員と、同じく異常性の見受けられない携帯獣の職員が働いている光景を目にすることになります。トレーナーが入ってきたことを確認した職員は彼らを大いに歓迎し、自分たちが働く「道の駅」で休んでいくよう勧めます。この勧誘行為はやや積極的ではありますが異常な性質は持っておらず、この段階で自ら施設を退出することもできます。施設を利用しないと伝えた場合、職員たちは残念そうな様子を見せますが、またいつでも来訪して欲しいと口にし、トレーナーを丁重に送り出します。施設を利用することなくそのまま退出した場合、後述する転移現象は発生せず、トレーナーは元々いた場所へ通常どおり戻ることになります。

職員たちの勧誘を受けて施設を利用することを決めたトレーナーは、ほぼ全員が施設に高い満足度を示します。食事は安価で味がよく、休憩スペースはとても広く取られており、出現した地域に矛盾無く対応した土産物や特産品を、通常の店舗よりもはるかに安価で購入することができます。これまでのところ、ここで供される食事や販売されている品物については、異常性は無いと考えられています。ただし、これらをどのようにして入荷しているのかは不明です。

施設には全域に無線ネットワークが整備されており、無料で利用することができます。回線品質は高く良好な通信が行えますが、この時利用者が外部に対して発信したすべての情報は記録されません。利用者が能動的に行った掲示板やソーシャルネットワークへの投稿が実際には反映されないばかりか、サーバへのアクセス記録さえもまったく残りません。利用者のWebブラウザ等には閲覧履歴が残りますが、サーバが保管しているログとの照合結果は100%一致しません。

通常の「道の駅」とは異なり、この施設にはカプセルホテルのような小規模な宿泊施設も備えられています。トレーナーはこれも安価で利用することができ、また他のサービス同様高く評価します。宿泊すると翌日の朝食が無償で供され、さらに施設によっては出発前に昼食を用意して利用者に持参させるところも見受けられます。これらについても、一貫して異常性は見受けられません。

施設の利用が済んでトレーナーが退出するタイミングになると、施設の職員たちが数名見送りに訪れます。彼らはまた施設を利用してほしいこと、何か足りないことがあるなら次回までに改善しておくということ、そして、これは後述する転移現象と関連があると思われますが、トレーナーに対して「里帰り」をするよう積極的に促します。両親を含む家族に顔を見せた方がいいこと、旅の途中で不幸に見舞われたら家族が悲しむことなどを伝え、里帰りをするよう穏やかに、しかし繰り返し利用者に伝えます。

見送りを受けたトレーナーが施設から退出すると、自分が元々入ってきた道ではなく、まったく別の道に転移していることに気付きます。これまで確認されたすべてのケースで、トレーナーたちは彼ら自身が「故郷」だと考えている場所につながる道へ出現していました。多くの場合トレーナーはこの時施設で言われた「里帰り」という言葉を思い出して自宅へ帰りたいという考えを強くし、施設で購入した土産物を持ってそのまま帰宅します。トレーナーの帰郷をもって、一連の事象は終了するものと考えられています。

トレーナーへの聞き取り調査では、彼らについて明確な異常は見つかりませんでしたが、注目すべき事象が一件観測されています。相当数のトレーナーがそのまま旅行を中断して学業へ戻ったり、あるいは就職のための準備を始めたりするなどして、地元に生活基盤を築こうとします。その試みは例外なく成功し、以後彼らが再び旅行へ出ることはなくなります。また、彼らはその後極端に大きな成功を収めた例こそありませんが、地元で堅実な仕事に着き、安定した家庭を持つというライフスタイルを獲得することが知られています。

当局が実施したヒアリングでは、幾人かの元トレーナーから「『里帰り』と聞いて急に地元へ戻りたくなった、地元で暮らしたくなった」という回答が得られています。管理局の心理分析官によれば、これは施設とその職員が齎した直接的な情報災害ではなく、彼らが自らそう考えるに至った自然な心の動きであると分析されています。ただし、施設での出来事がそのためのトリガーになった可能性は高いとしています。

利用の有無に関わらず、一度施設から退出した場合、その時点では再度施設へ戻ることはできません。道を戻っても施設は完全に消失しており、痕跡すら残りません。ただしある程度の期間を置くと再出現し、前回と同様に進入することが可能になります。消滅と再出現に関する詳細な条件は明らかになっていません。

職員についての情報は不足しており調査が難航していますが、ヒアリングを繰り返す中で複数名のトレーナーから、1993年に死亡したある女性と判断できる情報が寄せられました。女性はかつて配偶者と子供がいましたが、いずれもポケモントレーナーとしての旅行中に事故で死亡しています。施設で確認された対象は調理師として勤務しており、気立てが優しくおおらかな性格をしていたとの証言を得ています。また、トレーナーの去り際に「里帰り」を勧める職員として比較的高い頻度で現れているようです。

上記以外にも、既に死亡が確認されている者や行方不明者として届け出られている者が数十名近く、この施設で働いているところを確認されています。対象は人間に止まらず、携帯獣にも及んでいます。得られた証跡がごく少数のため参考情報に止まりますが、対象の近親者が旅行中に亡くなっている、もしくは対象の近親者が地元以外の場所で死亡しているケースが多数見つかっています。対象が本人なのか、それとも本人を模した別の存在なのかは分かっていません。

[2006-08-21 Update]

2006年に入って、転移現象についての通報が昨年を上回るペースで寄せられています。局員の一人がこれまで集められた証言を元に未登録の「道の駅」の出現ポイントをプロットしたところ、2004年時点で作成された出現地点一覧よりも大きく出現ポイントの間隔が狭まっていることが分かりました。案件#95092で取り扱う施設は、これまで相応の異常性こそあれど危険性は低い案件だと考えられていましたが、ある局員はこの施設が齎す懸念について指摘しました。

局員による指摘の概要は「施設がより多く出現することで、トレーナーが旅行を中止して帰郷し、結果として旅行を完遂するトレーナーが減少するのではないか」というものです。統計情報を確認したところ、ここ数年でポケモントレーナーの母数自体は一貫して増加しているにもかかわらず、ポケモンリーグ認定ジムのバッジをすべて集めたトレーナーの数が統計的に不自然なレベルで減少していることが分かりました。案件#95092で扱う施設の出現がさらに増加すれば、この影響はより大きくなるものと推定されます。

案件#95092で扱う施設、及びそこに勤務する職員がいかなる意図を持った存在なのかについては、現在も判断が分かれています。しかしながら、現状を放置しつづけた場合、最終的にポケモントレーナーが他の地域へ移動する事自体が困難になると予測されています。それに付随する事象についても多数の意見がありますが、いずれも地域及び国家に対して深刻な影響を齎すものであることは一致しています。一例としては、地域の孤立・ポケモントレーナー志望者の減少・観光資源への依存度が高い地域の衰退・野生の携帯獣の過剰増加等です。

対処の困難さと社会全体に与える影響の大きさを鑑み、案件担当者は案件#95092のレベルを3段階引き上げ「4」とすることを提起し、裁定委員会もそれを承認しました。

Supplementary Items:

本案件に付帯するアイテムはありません。

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。