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#96561 共用プリンター無断利用

Basic Informations:

Subject ID:
#96561
Subject Name:
共用プリンター無断利用
Registration Date:
2000-08-07
Precaution Level:
Level 2

Handling Instructions:

シンオウ地方ミオシティにあるポケモンセンターから、日次で不審な印刷物の出力がなかったかの報告が行われることになっています。担当者は報告内容を確認し、印刷物#96561に該当すると判断した場合は原本を送付するよう連絡してください。受領した印刷物#96561は管理局標準の手順でスキャンして電子化した上で、原本は拠点内の書庫4-Dにある青色のバインダーに綴じて保管してください。これまでのところ、印刷物#96561そのものに情報災害やその他の異常効果があった事例は確認されていません。

印刷物#96561の中には、全体で76ページと推定されるページ番号が付与されているものがあります(印刷物#96561-23)。印刷物#96561-23については他のものとは別の赤色のバインダーへ綴じ、ページ番号順にソートして保管してください。また、印刷物#96561-23が送付されてきた場合は、案件担当者は上長にその旨を報告してください。その際、発見された印刷物#96561-23のページ番号を併せて報告してください。

Subject Details:

案件#96561は、ポケモンセンターに設置された公衆端末に接続された共用プリンターから出力される不審な印刷物(印刷物#96561)と、それに掛かる一連の案件です。

2000年6月頃、シンオウ地方ミオシティにあるポケモンセンターに在籍する職員から「プリンターの利用履歴に無い奇妙な印刷物が残置されていた」という通報が寄せられました。局員が現場へ向かい確認したところ、後に印刷物#96561-1と指定される明らかに不審な印刷物がプリンターの排紙トレイに残されていました。センターの職員に了解を得た上でプリンターと印刷物を回収し、最寄りの拠点へ持ち込んで調査を行いました。

この段階において、当事案はプリンターに何らかの原因があると考えられていましたが(資料R-96561-initial参照)、局内で実施したテストでは異常な印刷物は出力されず、機器の調査を行っても特に不審な点は見受けられませんでした。初期調査が終了して一週間ほどが経過した後、先に通報があったシンオウ地方ミオシティのポケモンセンターより「別のプリンターからも異常な印刷物が出力された」との情報が寄せられました。この時点で担当者は本事案を案件化することを提案し、4日後に本部が案件立ち上げを承認しました。

現時点までに行われた調査で、シンオウ地方ミオシティに構築されたローカルエリアネットワークには何ら異常が無く、不審な印刷物が悪意あるソフトウェアによる異常な挙動ではないことが確かめられています。端末/プリンター/サーバ等のすべての機器が正常に稼働しているにもかかわらず、概ね2日から5日の間を空けて、サーバ上に履歴の無い不審な印刷物が出力され続けています。これらの印刷物は総称して印刷物#96561と指定され、それぞれナンバリングが行われています。

以下は、これまでに確認された印刷物#96561の一覧です:

印刷物#96561-1:
本件が初めて確認された際に残されていた印刷物。横向き。1ページ。シンオウ地方ミオシティの解像度の低い航空写真のように見えるが、中心に詳細不明の巨大な穴が形成されている。穴の周囲の建造物が薙ぎ倒されていることから、当局の見立てでは隕石の落下に伴う大規模災害が発生したものと考えられている。これまでのところ、シンオウ地方ミオシティに隕石が落下したという記録は存在しない。
印刷物#96561-2:
恐らくは女性のトレーナーによって「ニコラス」と名付けられたプラスルの生育日記の抜粋。縦向き。4ページ。一日に付き一行で書かれ、日付→改行→本文→改行→日付……のサイクルが繰り返されている。初期は特に問題が無いように見受けられるが、四週間を過ぎた辺りからニコラスの知性が急激に向上し、最終的にエスペラント語由来と思われる未知の言語を話すようになったことが端的に綴られている。最後の行はニコラスが脱走/失踪したことを示唆している。
印刷物#96561-3:
ほとんどが空白で、中心に10ポイント程度の小さな文字で「ソースはここにある」とだけ記載された文書。縦向き。1ページ。
印刷物#96561-4:
任天堂が1999年にリリースしたニンテンドー64専用ビデオゲームである「ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ」の攻略サイトと思しきウェブサイトの一部。縦向き。3ページ。本文は本作未登場のキャラクターである「カメック」(スーパーマリオシリーズに登場する敵キャラクター)についての詳細な攻略で占められ、貼り付けられた画像は少なくとも6体のキャラクターが同時に戦闘を繰り広げている。開発元はこのような仕様は一切無いと明言しており、徹底的な捜索においてもこの印刷物にあるような仕様を実現する海賊版の存在は確認されていない。
印刷物#96561-5:
すべて異なるフォントで「ピカチュウ」または「Pikachu」と327回綴られたドキュメント。縦向き。1ページ。いくつかについて、極端にマイナーなものか、または実在しないフォントが使用されている。
印刷物#96561-6:
Microsoft社のワードプロセッサソフトウェアである「Microsoft Word」で書かれたと思しき「電球依存症の治療に関する一考察」という文書のタイトルページ。横向き。1ページ。目次及び本文は印刷されず。少なくとも現時点において「電球依存症」なる依存症が正式に確認または報告された事例は存在しない。
印刷物#96561-7:
差出人が「戸塚 泰敏」、宛先が「Hiroki Matsumoto」と記載されたメール。縦向き。2ページ。本文は一般的なビジネスメールのように見えるが、「カモネギの販路拡大」「ガベージゼリー計画」など、アムリタ・ファウンデーションが関わっている疑いの濃い事案についての記載が随所に見られる。本文から「Hiroki Matsumoto」はアムリタ・ファウンデーションの関係者であり、「戸塚 泰敏」はアムリタ・ファウンデーションから依頼を受けて商品を拡散する役目を担っている下請け会社の職員と推測されている。
印刷物#96561-8:
解像度の低い写真。横向き。1ページ。写真は一般的な喫茶店の店内を撮影したスナップ写真のように見えるが、隅に置かれた時計は「1」から「12」ではなく「1」から「17」の時刻を指すようになっている。このため、写真が撮影された場所または世界においては、24時間制ではなく34時間制が用いられている可能性がある。そのような時刻の制度を採用している国や地域は存在しない。
印刷物#96561-9:
筒井康隆の短篇作品「農協月へ行く」の一部。縦向き。2ページ。本来強い訛りが見られる登場人物の台詞がすべて標準語に書き直され、本文は正仮名遣いにされている。2ページ目はページ全体の約半分に達したところで唐突に途切れている。
印刷物#96561-10:
装飾の無い短いメモ書きのテキストファイルがそのまま印刷されたもの。縦向き。1ページ。メモには「ポリゴン:30コ」「カイロス:25コ」「技マシン15:60コ」「冷んやりバッジ:12コ」と書かれている。内容からカントー地方タマムシシティに存在するゲームコーナーの景品交換所の商品入荷に関するメモと推測されるが、同所で「冷んやりバッジ」なる景品が交換対象になった記録は存在しない。
印刷物#96561-11:
カントー地方ヤマブキシティ発のリニアの7月20日分の乗車券をスキャンしたもの。縦向き。1ページ。出発はカントー地方ヤマブキシティ駅であり正常だが、行き先がホウエン地方ミナモシティと思われる場所(厳密には「ミ■モシテ■駅」と一部が黒塗りになっているため、ミナモシティではない可能性も残されている)になっている。ホウエン地方ミナモシティ駅行きのダイヤは実在せず、「ホウエン地方ミナモシティ駅」そのものが実在しない。
印刷物#96561-12:
何者かによる企業の内部告発のような文書。縦向き。2ページ。文書が途中から始まっており、固有名詞と思われる箇所はすべて黒塗りにされているため具体的な内容には不明瞭な点が多い。大筋としては、大衆薬として販売されている医薬品に重大な欠陥があり、重篤な携帯獣アレルギーを引き起こさせる可能性があるにも拘らず、警告を無視して販売を続けているという旨のもの。文面からは、どの医薬品企業に対する内部告発なのかを読み取ることはできず。
印刷物#96561-13:
子供の手形が5つ押されたものをスキャンしたもの。横向き。1ページ。スキャンはかなり高い解像度で行われており、手形を鮮明に読み取ることができる。手形はいずれも案件#48238(「カイナ北小学校の火災事件」)で検体#48238となった児童のものであることが判明。手形が取られたのは火災事件発生と同年と推定されているが、児童が手形を取るような出来事はこれまでに確認されていない。
印刷物#96561-14:
未知のスーパーマーケット「デイリーライフ」が頒布したと思われるチラシの縮小版。2ページ。横向き。1ページ目は日用品の広告であり目立った異常性は見られないものの、記載されている商品はいずれも実在しない(いずれも実在している商品とわずかに仕様が異なっている)。2ページ目は食料品の広告だが、本来国内法で販売が禁止されているオムナイトやイーブイといった希少な携帯獣の食肉を安価で販売するとの表記がある。
印刷物#96561-15:
ヒトカゲのお面を印刷したものだが、額に第三の瞳が追加されている。下部に付けられた説明には第三の瞳に関する言及は存在しない。縦向き。1ページ。
印刷物#96561-16:
クリフォード・ストール著「インターネットはからっぽの洞窟」の邦訳版と、エミリー・ブロンテ著「嵐が丘」の邦訳版(岩波書店刊行版)が、共に途中から一段落毎に交互に転記されている文書。3ページ。横向き/縦書き。双方の文書は原版から所々表記が変更されているが、大筋の内容に変化は見られない。両者は互いに一切干渉せず、あくまで交互に文章が転記されるに留まっている。
印刷物#96561-17:
ヘッダ情報によると、「登録地域:ホウエン地方キンセツシティ/トレーナーID:48964/登録名:タカハシ トモミ」なるポケモントレーナーのポケモンレポート。日付は1985年6月12日から6月14日にかけてのもの。3ページ。縦向き。地理的にはシンホウ地方ミオシテイ(原文ママ。正確には「シンオウ地方ミオシティ」と推測)近辺にいるはずだが、一週間に渡って一人の人間も目撃していない旨が乱雑な筆致で記載されている。レポートの最後には「誰か助けてください」と書かれている。該当するトレーナーは実在するが、現在はジョウト地方ヒワダタウンに在住。印刷物の内容についてヒアリングを実施したところ、「ちょうどその頃に、人が誰もいない街を彷徨う怖い夢を見た気がする」との回答が得られた。本人は至って健康で、特段の問題は見られず。
印刷物#96561-18:
印刷物#96561-17と同一の文面のレポートだが、執筆者の情報が「登録地域:ヒガシノ地方ムラサキシティ/トレーナーID:11111/登録名:アサクラ ナオコ」に変化している。地域やトレーナーはすべて実在しないことを確認済。
印刷物#96561-19:
表題に「サーバーをサーバと書くべき2,675の理由」と記載された文書。1ページ。縦向き。内容は「短音表記とすることで資源が節約できる」というものを言い回しや文体、例示を変えて説明を繰り返しているもの。これまでのところ、同名の文書が見つかったという報告は得られていない。
印刷物#96561-20:
何らかのソフトウェアをインストールした際に、インストーラが記録として出力したログと思われる英語が使用された文書。5ページ。横向き(一般的にこの種のドキュメントは縦向きで出力されるが、この印刷物は横向きにされていた)。内容から対象のソフトウェアはid Software社が発売した「Quake II」と推定されているが、本来の製品には含まれない多数のファイルがインストール対象として記録されている。また、インストール先として8345文字に渡る極めて長大なパスが指定されている。この長さのパスをサポートしているファイルシステムに対応するOS向けの「Quake II」は、現状では存在しない。
印刷物#96561-21:
ish形式によりテキストへエンコードされた未知のファイル。2ページ。縦向き。デコードすると、包丁で刺殺されたニドラン(♂)と思しき存在が横たわる極めて画質の悪いJPEGファイルが得られる。画像の解析から撮影場所はカントー地方セキエイ高原付近と思われるが、近隣でニドラン(♂)がこのような形で殺害された事件は確認されていない。
印刷物#96561-22:
電子掲示板の書き込みをテキストファイルへ保存したもの。7ページ。縦向き。電子掲示板は、携帯獣と未成年の少年少女による性行為を収めた違法なポルノビデオに関する情報交換の場所として使用されていたと考えられる。該当する掲示板は発見できなかったが、書き込みにあったビデオについてはすべて実在することが判明。撮影・販売していた業者に本件について尋問を行った後、警察機関へ引き渡し済み。近く起訴される予定。
印刷物#96561-23:
当局の書式に完全に準拠した、未知の案件である案件#161088(「はめつのねがい」と名付けられている)に関する詳細な報告書。全76ページ。縦向き。これまでに21回に渡って個別に印刷され、毎回1ページから2ページが得られている。現在の総取得ページ数は37ページ。基礎情報によると、登録日時は2020-09-27、警戒レベルは「7」とされている。この警戒レベルは現時点では完全に存在しないものである。概要は欠落部分があるため厳密には定かではないが、未知の理由により携帯獣の「ジラーチ」が地球に攻撃を仕掛け、既に全人類の9割が死滅したことが記載されている。取扱い方法には当局を存続させ事態を収拾させるための手続きが記載されていると思われるが、これまでのところ取扱い方法部分は一度も印刷されたことが無い。
印刷物#96561-24:
アニメ「ポケットモンスター」の第1シーズン第31話「ディグダがいっぱい!」の台本の一部を英訳し、カプコン社が1999年5月にリリースした対戦格闘型アクションゲーム「ストリートファイターIII 3rd STRIKE -Fight for the Future-」に登場するキャラクターの一人である「トゥエルヴ」が作中で使用する架空言語(アルファベット及び「!」「?」に相当する文字を独自のルールで2進数の数値に置換したもの)で記述したもの。3ページ。横向き。英語圏で放送されたものとは内容が異なっており、原本に忠実な訳になっている。

Supplementary Items:

本案件に付帯するアイテムはありません。

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。