Basic Informations:
- Subject ID:
- #98516
- Subject Name:
- 姿無き携帯獣
- Registration Date:
- 2001-03-21
- Precaution Level:
- Level 2
Handling Instructions:
携帯獣#98516は特有のデータパターンを持つため、すべてのポケモンセンターに専用の通知用ソフトウェアをインストールすることで対応しています。ソフトウェアから携帯獣#98516発見の連絡を受けた、またはポケモンセンターで勤務するサービスエンジニアから携帯獣#98516に関わると思われる「原因不明のシステム障害」あるいは「起源不明のデータ」などの問い合わせがあった場合は、最寄りの拠点から局員を派遣してください。局員はサービスエンジニアに本案件の概要を説明し、携帯獣#98516を接収します。接収に当たっては、拠点ごとに一台ずつ配備している専用端末を使用してください。
接収した携帯獣#98516は案件別サーバに構築した仮想ボックスへ保管します。仮想ボックス内は携帯獣#98516が快適だと考える環境に調整されているため、基本的にはこれ以上の対応は必要ありません。仮想ボックス内で何らかの異常を検知した場合は、担当する局員全員に監視センターから通知のメールが届けられます。メールを受信した局員は端末からサーバへログインし、エラーログとインシデントログの確認、及び必要であればハードウェアの検査を行ってください。過去の収容において、携帯獣#98516が意図せずハードウェア障害を発生させた事例が確認されているためです。
Subject Details:
案件#98516は、特異な性質を持つ未知の種族の携帯獣(携帯獣#98516)と、それに掛かる一連の案件です。
携帯獣#98516が確認された最古の事例は、2000年9月中旬のことです。ジョウト地方タンバシティにあるポケモンセンターにおいて、利用者の一人が「預けた覚えの無い奇妙なポケモンがボックスにいる」と申し出てきました。状況を確認したセンターの職員とエンジニアは携帯獣に異常性があると判断、最寄りの支局であるタンバシティ第二支局へ緊急通報を行いました。この時職員は「システム障害」として全端末の利用を一時停止させ、管理センターへ連絡を入れてトレーナーのボックスが存在する仮想サーバをシステムから切り離させる措置を取りました。この事は携帯獣#98516の封じ込めに大きく貢献し、適切な初動対応として後に当局から表彰されました。
携帯獣#98516は、この事案で接収された携帯獣です。種族情報は破損しているか認識できないため、システム上読み取ることができません。携帯獣を管理するために開発されたソフトウェアを多数テストしましたが、それらは携帯獣#98516を認識しないか明らかに誤った携帯獣と認識し、多くの場合はハングアップします。例外的にポケモンセンターで使用されるリカバリーマシンは携帯獣#98516を処理することができ、「未知の携帯獣」向けのもっとも汎用的な回復処理を選択して実行します。この処理により、携帯獣#98516の回復は正常に完了しているように見受けられます。
その異常性に反し、一般的な携帯獣と生態に大きな違いは無いようです。携帯獣の身体能力を視覚化する処理は正常に実行でき、携帯獣#98516の能力はほぼ明らかになっています。初期の事案で接収された携帯獣#98516の総合レベルは「36」と判定され、俊敏性は劣りますが防御能力に秀でており、物理攻撃よりも特殊攻撃を得意とします。能力値のパターンは既知のどの総合レベル36の携帯獣の平均とも一致しません。性別はすべてのデバイスで一貫して「♀」と判定されます。このことから、携帯獣#98516は性別を持つ種族であると考えられています。
携帯獣#98516が持つ最大の特徴は、姿形に関する情報を一切持っていないことです。このため、一般的なビューアでは携帯獣#98516を参照できず、ハングアップするか破損したモデル(表示用情報でないデータを強制的に読み込んだことによるもので、携帯獣#98516の実際の容姿とは無関係)を表示させます。データ化した状態でのスキャンでは、携帯獣#98516が一般的な携帯獣に比べて60%近くサイズが小さいことが判明しました。またこの時の結果で、姿形に関する情報が欠落していることを除外すれば、携帯獣#98516は携帯獣としての要件を完全に満たしていることも分かりました。
姿形に関する情報を持たないためか、携帯獣#98516は実体化することができません。ボックスからモンスターボールへ移動することはできますが、モンスターボールの外へ出ることはできません。携帯獣を外へ開放するコマンドは常に失敗し、決して成功することはありません。自動記録されるエラーログを参照すると、下記のメッセージが確認できます:
致命的なエラー: 予期しないリソースの終端が検出されました 致命的なエラー: ライブラリはリソースをロードできませんでした 致命的なエラー: モデル構築処理を続行できません。プロセスを終了します
上記は通常テスト用のダミーデータか、または外的要因により破損した携帯獣のデータでのみ発生するエラーで、モンスターボールの基幹プロセスの一つが停止する非常に深刻なものです。
ジョウト地方タンバシティのポケモンセンターで携帯獣#98516が初めて確認されてから、これまでに同種と確定された未知の種族の携帯獣を7体収容しています。いずれも姿形を持たないことを除けば携帯獣としての要件を満たしており、完全スキャンで同一の種族であると認められています。携帯獣#98516の性質についてさらなる調査を行う計画は、現在裁定委員会による承認を待っている状態です。
[2001-08-30 Update]
局員が携帯獣#98516が収容されている仮想ボックスを確認したところ、前日と比較してボックス使用率がおよそ7%上昇していることに気付きました。障害連絡を行った上で調査を行い、本来23体が収容されているはずの仮想ボックスに、合計で25体の携帯獣が収容されていることが判明しました。増加した2体分のデータが隔離され、仮想ボックスへの完全なスキャンが行われました。スキャンの結果からは、特に異常な点は見受けられませんでした。
隔離された2体分のデータを精査したところ、携帯獣のタマゴとデータパターンがほぼ一致するという結果が得られました。携帯獣#98516がボックス内で繁殖活動を行った結果と考えられています。このタマゴについても姿形に関する情報が完全に欠落しており、携帯獣#98516と同一の異常特性があることが確認されました。携帯獣#98516と共に、何らかの変化を見せないかの監視が続けられています。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。