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#99711 I'm Feeling Lucky

Basic Informations:

Subject ID:
#99711
Subject Name:
I'm Feeling Lucky
Registration Date:
2001-08-07
Precaution Level:
Level 2

Handling Instructions:

該当するボタンが配置されているページを見つけたことをクローラーが連絡してきた場合、ページをサンプルとしてファイルに保存してから、サイトの管理者にページがウイルス感染している旨を伝えて削除を要請してください。三日以内に管理者が要請に従わない場合は、サーバの管理者へ同様の連絡を行いサイトを凍結させてください。いずれにせよ、ボタンが存在しているページへのアクセスを一刻も早く妨害する必要があります。

ボタンを押したいという衝動を訴える者が現れた場合、速やかにGoogleのトップページを案内してください。Google Inc.と管理局の担当者による監視がなされているため、本ページに設置されたボタンは安全であることが保証されています。また、このボタンの押下は衝動の沈静化に大きく寄与し、ほとんどの場合1回の、それ以外の場合でも3回以内の押下で衝動が完全に消失することが確認されています。ボタンについての知識が十分にあれば、ボタンを視認しても速やかにページから離脱するか、またはウィンドウを閉じることでそれ以上の進行を食い止めることができることが分かっています。

世界中のラッキーの生息数を観測する活動が行われています。ラッキーの増加そのものに対処する必要はありませんが、生息数は可能な限り正確に把握しておかなければなりません。ラッキーの生息数増加が通常と比べて異常なペースで確認された場合、クローラーに -detecthotspot オプションを付与して稼働させてください。このオプションはサーバ/クライアント共に非常に高い負荷が掛かるため、緊急を要する場合を除いては有効化しないでください。

局で把握しているすべてのラッキーのコロニーは定期的に観察され、局員によって写真に収められます。写真は専用のサーバに保管され、対応に当たる局員が写真に不審な点、特にラッキーとは思われない生物が写り込んでいないかを確認します。不審な生物が確認された場合は局員が対象のラッキーを捕獲し、手順M-99711-1による検査を行ってください。検査の結果異常が認められた場合、手順M-99711-2による「回復」の上、最寄りの医療機関へ移送してください。

Subject Details:

案件#99711は、インターネット上の不特定多数のサイトに現れる「I'm Feeling Lucky」ボタンとそのボタンを押下したくなるという認識異常、及びボタンを押下することにより発生する症状からなる案件です。

この事象はWebサイトに「I'm Feeling Lucky」とラベリングされたボタンが出現することにより開始されます。これまでのところ、ボタンが出現するサイトは何の法則にも則っていません。企業が開設したWebサイト、個人が開設したWebサイト、多数の人が利用する電子掲示板、SEO目的で作成された実態の無いスパムサイトなど、サイトの種類は問われません。出現方法もページに単純に埋め込まれるものから、投稿ボタンを装って配置されるものなどパターンは多彩です。多くの場合、元のWebページのレイアウトを極力破壊しない形で出現します。

出現する「I'm Feeling Lucky」ボタンはごく単純なHTMLによって作成され、アクションは何も関連付けられていません。管理局が同様のHTMLを記述してページを作成しても、ボタンは何ら異常な特性を示しません。異常なボタンを挿入している母体を突き止めるための試みは現在も続けられています。

本案件で扱う「I'm Feeling Lucky」ボタンについての知識が不足している場合、ボタンの存在を認識した者は「ボタンを押したい」という強い衝動に駆られます。対策の初期ではボタンを視認することがトリガになると考えられていましたが、視覚障害者がテキストブラウザを使用した際にも同様の認識がなされたため、視認するだけでなくボタンの存在を知ることが発動のための正確な条件であると考えられます。

ボタンを押下した場合、画面上は何の変化も起きませんが、押下した人間には自分自身を携帯獣の「ラッキー」であると認識するという症状が起こります。明らかな種族的特徴や容貌の矛盾が発生するにもかかわらず、罹患者はその矛盾に気付くことができません。多くの場合、周囲に(実際の携帯獣及び同じ症状を呈している人間の双方の意味での)ラッキーが居ないことに強い孤独感を覚え、ラッキーが集まる場所を目指して徘徊を始めます。原理は不明ですが、多くの罹患者は自然とラッキーの集まるコロニーへと辿り着き、以後回復するか死亡するまでラッキーとして生活し続けます。観察の結果、周囲の「本物の」ラッキーは罹患者を同族とみなしていることが分かっています。

過去の事例から、ラッキーとしての能力――身体能力や各種技能など――が覚醒したり、追加されたりするケースは一切見られません。自分自身をラッキーであると信じ込んでいることを除けば、罹患者は完全に正常な人間のままです。他者との会話も可能ですが、多くの場合共に認識異常を起こしているため、正常な会話は行えません。

携帯獣としてのラッキーを知っている人間や携帯獣が罹患者と接触した場合、罹患者のことを同じく「ラッキー」であると認識するようになります。会話が可能なことや容姿の決定的な相違など無数の矛盾点があるにも関わらず、対象は罹患者をラッキーであると認識し決して疑いません。これはあくまで罹患者に対してのみ発生する現象で、後述する方法で回復された罹患者については、正常な人間であると認識できます。対象は罹患者がラッキーであった時のことを記憶していますが、記憶の内容は罹患者が通常の人間であったかのように置き換えられています。

自分をラッキーであると認識している罹患者は、携帯獣としてのラッキーを知らない人間から「あなたは人間である」もしくは「あなたはラッキーではない」と口頭で指摘されることにより、瞬時に元の状態へ回復します。この時罹患者は一時的に混乱した様子を示し、しばし「自分はラッキーではない」と繰り返します。これは一時的なもので、長くとも2時間ほどで自然に治まります。以後は「I'm Feeling Lucky」ボタンを押下しない限り、症状は再発しません。

症状からの回復のためには、ラッキーについての知識が無い人員が必須です。昨今のポケモンセンターや介護施設におけるラッキーの雇用増加は、ラッキーがこれまでより多くの人に認知されやすい土壌を形成する大きな一因となっており、人員の確保が困難になりつつあります。案件管理局では、ラッキーが生息していない地域から本案件に対応するための人員を確保するルートを積極的に形成することを奨励しています。

Supplementary Items:

本案件に付帯するアイテムはありません。

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。