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#108529 ポケットモンスター ブラックバージョン

Basic Informations:

Subject ID:
#108529
Subject Name:
ポケットモンスター ブラックバージョン
Registration Date:
2004-05-23
Precaution Level:
Level 5

Handling Instructions:

ソフトウェア#108529が記録された媒体はいかなるものであっても押収し、当局の管理下へ置いてください。ソフトウェア#108529が記録された媒体はカントー地方ヤマブキシティ第九支局の低異常性オブジェクト収容倉庫へ移送の上、媒体に応じたプラスチックケースへ密封の上保管します。現在のところ、これ以上の保全措置は不要です。ソフトウェア#108529に顕著な異常特性は観測されていませんが、保安上の理由から実験目的での起動は禁止されています。

Subject Details:

案件#108529は、ゲームボーイ用ソフトウェア「ポケットモンスター レッドバージョン」を改変したと推定されるソフトウェア(ソフトウェア#108529)と、それに掛かる一連の案件です。

ソフトウェア#108529が回収されたのは、2004年3月下旬にイッシュ地方セッカシティにて開催されたフリーマーケットにおいてです。個人的にゲームボーイ用カートリッジをコレクションしていた局員の一人が、不用品処分の一環として売りに出されていたソフトウェア#108529を発見しました。不審に思った局員は証拠保全のためにソフトウェア#108529を購入し、簡易的な初期調査が行われました。初期調査の結果を鑑み局員は案件登録を申請、裁定委員会により受理されました。

ソフトウェア#108529は、黒く塗装され、暗い背景に「Pokemon」というタイトルロゴのみのシールが貼付された一般的なゲームボーイ用カートリッジです。ゲームボーイ用カートリッジに対応した機器であれば、純正品/社外品を問わず読み込むことが可能です。カートリッジの構造は一般的なものと同一であり、分解した上での検証結果は何ら異常性を示さないものとなりました。

対応機器に挿入されゲームが開始されると、タイトルスクリーンにて本来「Red Version」と表記されるべき箇所が「Black Version」に書き換えられていることが確認できます。また、本来ゲーム開始直後に入手可能なフシギダネ・ヒトカゲ・ゼニガメの三体に加え、ゲーム中に登場する敵キャラクターの一種である「ゆうれい」が新たに選択肢として加えられています。この「ゆうれい」は、改変されていないバージョンに於けるゲーム上の扱いはゲームに於ける携帯獣とほぼ同一ですが、外部機器を使用しない限り決して捕獲することができないフラグがセットされています。

この「ゆうれい」に始まり、ソフトウェア#108529はプレイヤーに恐怖を与えることを目的としたと推定される様々な改変が施されていますが、その改変のほとんどは粗雑であり、決して完全ではありません。改変が確認された箇所は下記の通りです。

[改変箇所-1]
「ゆうれい」は「のろい」という名称の技を行使できます。これは正常なバージョンには存在しないものです。技を使用すると画面が暗転し、敵携帯獣の鳴き声が通常より低速かつ遅いトーンで再生され、その後暗転から復帰すると敵携帯獣が消失しているという演出が挿入されます。
この技の実際の効果は、ゲーム中における「はかいこうせん」と同等であることが分かっています。「ゆうれい」の攻撃力パラメータを極端に向上させ、また必ず命中するとして設定することにより、ほとんどの敵を一撃で倒すことを可能にしています。しかしながら技の相性については改変が施されておらず、ゲーム中で「はかいこうせん」を無効化する敵には一切の効果を発揮しません。このため、相手が演出上消失したにも関わらず戦闘が続行されることがしばしば発生します。
[改変箇所-2]
「ゆうれい」の「のろい」を使用してジムリーダーの行使する携帯獣をすべて撃破すると、ジムリーダーが立っていた地点に墓標(通常のゲーム中で使用されているものと同一のもの)が立つという演出が追加されています。 しかしこの演出は一時的なものであり、一度画面切り替えが行われるとジムリーダーが元通りの位置に立っていることが確認できます。プレイヤーとの会話についても、改変が行われていないバージョンとなんら変わりありません。
[改変箇所-3]
ゲームをクリアすると、プレイヤーは墓石が大量に存在するマップへ飛ばされます。プレイヤーの姿は汎用的な老人キャラクターのものに変更され、歩行速度は通常の半分、つまり一マス移動するために通常の二倍長い時間十字キーを押していなければならないよう設定されます。墓石地帯を抜けた先には主人公の家があり、家に入ることで画面が暗転、「ゆうれい」との戦闘が開始されます。戦闘でプレイヤーが実行できるコマンドは「もがく」という本来存在しない技のみで、何ら効果を発揮しません。「ゆうれい」はプレイヤーの体力を減少させていき、体力が危険水域(警告音が鳴っている状態)に突入すると「のろい」を使用、画面が暗転して一切の操作を受け付けなくなります。 ゲームのスクリプトを解析した結果、この状態で使用できる「もがく」は、正常なバージョンにおける「はねる」と同等の命令がセットされた技となっていました。また、「ゆうれい」が使用してくる「のろい」は別の技として設定されており、画面を暗転させた後データを消去する命令が設定されていますが、命令のジャンプ先が誤っており、実際にはデータ消去は行われません。存在しない命令を実行しようとした結果、ゲームはハングアップします。

このようにゲームは恐怖演出を追加する目的で改変が行われていますが、そのいずれもが不完全なものに終わっています。

現在の所、これ以上の異常特性は確認されていません。

Supplementary Items:

[アクセス拒否]

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。