Basic Informations:
- Subject ID:
- #120602
- Subject Name:
- 拡張される地図と現実
- Registration Date:
- 2008-03-21
- Precaution Level:
- Level 5
Handling Instructions:
可能な限り繰り返し、クレッフィを電子機器に近付けてはならないというメッセージを広く拡散してください。当該Webサービスの利用を停止させるためのGoogle Inc.との協議が現在も続けられていますが、それとは別にこれ以上の被害が出るのを防ぐための活動も併せて行われなければなりません。局員が本案件に掛かる事項を記載しているサイトを発見した場合、直ちに当該サイトの管理者へ記事の削除を申し入れてください。記事の削除に際しては、クレッフィの身体に重大な悪影響をもたらすというカバーストーリーが使用できます。
実験、あるいは偶発的に本案件によって生成された写真を目撃した局員は、当該写真が指し示す地域に立ち入ることを制限されます。現時点で写真を視認する前の状態へロールバックするための方法は確立されていません。通常の道とそうでない道を判別することは極めて困難です。多くの「拡張」された道は周囲の風景に対して矛盾の無い形で出現し、視認しただけでは異常性を見いだすことができません。2005-02-07以前に作成された紙媒体の地図との比較は道が正常なものか異常なものかを判断するためのもっとも安全で確実な手法となります。これまでのところ、紙媒体の地図への「拡張」は確認されていません。
写真に曝露したことで「拡張」された道を認識可能になった局員のみで構成されたチームで、一般的な手順に基づいて進入路を封鎖してください。進入を試みた一般市民は警告の上速やかに退去させ、指示に従わない場合は非致死性の武器を用いて制圧・拘留することが認められています。現在確認済みの拡張された道はいずれも封鎖されていますが、定期的に封鎖が意図せず解除されていないかを確認しなければなりません。過去に延べ24回、理由が不明な封鎖の解除が確認されています。
Subject Details:
案件#120602は、ある特定の条件を満たした状態で、Google Inc.の提供するWebサービス「Google Maps(グーグル マップ)」を利用した際に発生する事象と、それに付随する一連の案件です。現在のところ、条件を満たさない状態での事象の発生は観測されていません。
条件は三つです。
- 近く(およそ3m以内)に携帯獣の「クレッフィ」がいる
- クレッフィがいる状態でGoogle Mapsが持つ機能の一つである「Google ストリートビュー」を利用する
- 特定の地域の写真を視認する。視認しない限り、条件は満たされない
以上の条件を満たすと、該当する地域に本来存在しないはずの未知の道路が出現していることが確認できます。2014-07-28時点で確認している限り318箇所で地図が「拡張」されていますが、Google Inc.が保有するデータ量の膨大さのため、実際にどれだけの箇所で地図が「拡張」されるのかは判明していません。
クレッフィを側に置いてGoogle ストリートビューを使用した際に「拡張」されて出現する特異な道は、Google ストリートビューの持つ機能によって通常通り経路を辿ることができます。拡張された道は入り口を除いて通常の領域とは交差せず、地理的に見て明らかに矛盾した結果を示します。通常の道を辿った場合行き止まりになると想定される箇所であっても、拡張された道はさらに先へ進むことが可能です。拡張された道を参照している間、クライアントとGoogleのサーバ間では通常想定される程度の非同期通信が行われていますが、その間Googleがクライアントに返しているパケットは、一貫して正常な道を撮影した写真のみです。
一度でも拡張された地図を視認した場合、その後にクレッフィを遠ざけたり、セッションを初めからやり直したりしても、一貫して拡張された地図が表示されます。この効果は現在のところ永続的です。さらに、拡張された地図に基づくGoogle ストリートビューの画像が表示された状態で別の人間や携帯獣がそれを視認した場合も、同様の効果を発揮します。
拡張された地図を認識した状態で、地図に現れた未知の道路が存在する地点を訪れると、「拡張された道」が実際にあることが分かります。拡張された道は通常の道と同様に進入でき、ある程度の距離(およそ200m以内)までであれば、正常な道へ帰還することもできます。拡張された道に進入しただけでは特段の身体的または精神的異常は発生しません。拡張された道を認識している(拡張された道を見ている・拡張された道へ進入している/進入しようとしている・拡張された道から戻ってきた)状態はその光景を目撃した他者の認識にも影響を及ぼし、以後目撃者も拡張された地図を認識した状態になります。上記の特徴と併せ、拡張された地図/拡張された道は自らの存在を非常に強い力で他者に伝播させる能力を持ちます。
Google ストリートビューを使用する限りにおいては、拡張された道を安全に探索することが可能です。探索の結果、数々の未知の施設や建物、あるいは異常性があると思われる種々のオブジェクトが発見されています。以下はその抜粋です。
- カントー地方ハナダシティ南西部・17番異常道路:
- 想定では雑木林が存在するはずの箇所が拡張され、舗装された道が存在しています。拡張された道を600mほど進むと、色あせた赤いホーロー看板が取り付けられた古い小屋を発見できます。劣化の度合いから見て、ホーロー看板は取り付けられて少なく見積もっても二十年以上が経過していると推定されますが、記載された電話番号は一般的な固定電話の番号ではなく、「050」から始まるIP電話用の番号になっています。このホーロー看板及び電話番号は、その異常性から別案件として扱われることが決定されました。
- カントー地方ニビシティ北西部・23番異常道路:
- 路地裏から拡張された道を500mほど進み、交差点を右に曲がってさらに400mほど進むと、「有限会社未来志向研究所」というプレートの付いた中規模の研究施設が見つかります。この間、Google ストリートビューの写真には通常想定される程度の一般的な乗用車が写り込んでいますが、その大部分が既知の車種と一致しません。「有限会社未来志向研究所」という名称の企業は、これまでのところ実在が確認できていません。
- カントー地方アーシア島アーシア村中央部・52番異常道路:
- 村の中央部に存在する食料品店の駐車場から、拡張された道が伸びています。Google ストリートビューによる探索では、進入からおよそ1,700mの地点で高層ビル群が立ち並ぶオフィス街へ到着します。オフィス街のビルにはいずれも明かりが灯っていますが、人影はまったく見当たりません。一部のビルは窓からオフィス内部の様子を観察できますが、確認されたすべてのオフィスで、個人用端末としてファミリーコンピュータ ディスクシステムを接続したCommodore 64が使用されていました。ハードウェアが実際に稼働しているビルもいくつか見受けられます。
- ホウエン地方トウカシティ北部・179番異常道路:
- 拡張された道を2,000mほど進むと、トウカシティに極めて類似した未知の都市に到着します。未知の都市の構造はトウカシティとほぼ同様で、トウカシティジムと同様のジムも確認できます。地名に該当する箇所にはすべてモザイク処理が施されており、具体的な地名は不明です。市内の中央に位置するコンビニエンスストアの前で、胸部を鋭利な刃物で刺されて死亡しているポケモントレーナーが発見されました。ポケモントレーナーの特徴から、死亡しているのは2007年6月にシンオウ地方で消息を絶ったトレーナー「オオシマ ヨウジ(トレーナーID:22397/登録:カロス地方ミアレシティ/登録年:2006年)」氏と断定されました。遺体は腐敗の兆候を見せておらず、写真はトレーナーの死亡直後に撮影されたように見えます。
この拡張された道を発見したのはオオシマ氏の母親に当たる人物で、Google Inc.に対して自身の子供が死亡している写真を掲載したと抗議の連絡が行われたことで、Google Inc.及び案件管理局が状況を知ることになったという経緯があります。Google Inc.の幹部と管理局局長がオオシマ氏の母親と接触し、例外的に本案件について当局が把握しているすべての情報を開示しました。その上で、拡張された道への進入を思いとどまるよう再三に渡り説得を試みましたが、最終的に母親は当局の申し出を拒絶しました。母親は数名の支援者とともに拡張された道へ進入し、オオシマ氏の遺体の回収に乗り出しました。その後、オオシマ氏の母親及び支援者の行方は分かっていません。写真はGoogle Inc.が管理するその他の異常性の無いGoogle ストリートビュー用写真とともに2014年に更新されましたが、遺体は依然として死亡直後の状態のまま何の変化も見せていません。オオシマ氏の母親や支援者の姿は見つかりませんでした。
Google ストリートビューを使用しない拡張された道の探索は非常に危険です。これまでにのべ6名の局員が実地調査を行いましたが、いずれも未帰還のまま数年が経過しています。Google ストリートビューによって観測された未知の施設やオブジェクトへの物理的なアクセスはすべて失敗に終わっています。加えて、これまで各地域で届出がなされた原因不明の失踪事件について、本案件によるものと推定されるものが最低でも249件あると考えられています。
本案件は伝播力が非常に強く、また完全な回復方法が確立されていないことから、警戒レベルは通常案件における最大の「5」が設定されました。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。