Basic Informations:
- Subject ID:
- #127168
- Subject Name:
- ニャオニクス・テスト
- Registration Date:
- 2010-04-20
- Precaution Level:
- Level 2 (2014-03-20以前)→Level 3 (2014-03-21以後)
Handling Instructions:
異常性を示す画像を認識する方法が既に確立されていますので、局員が直接画像を捜索する必要はありません。管理局が運用するクローラーによって自動的に画像が探し出され、発見し次第クローラーの管理者へ通知が成されるシステムを構築しています。通知を受け取った管理者は、様式F-127168-2に沿って申請書を作成し、画像を掲載しているサイトの管理者へ削除の要請を出してください。サイト管理者による画像の削除が規定した期間を経過しても行われない場合は、サイトがホスティングされているプロバイダへ管理局の名義でサイトの凍結または削除を指示してください。
これまでに回収されたファイルは、異常性を持つ画像ファイルを格納するための専用ファイルサーバに保管されます。実験目的で画像を閲覧したい場合、様式F-127168-1に必要事項を記入し、ワークフローを回付してください。画像の閲覧には機能を制限した専用のタブレット端末が貸し出されます。閲覧後、所定のレポートに結果を記入してください。ファイルに対して直接アクセスすることは許可されません。
Subject Details:
案件#127168は、携帯獣である♂の「ニャオニクス」を正面から撮影した1136x640の解像度を持つ標準的なJPEGファイルと、それに付随する一連の案件です。同種の画像をPNG形式に変換したものもインターネット上でわずかに配布されていますが、PNG形式のファイルは後述する異常な特性を示さないため、本案件では取扱いの対象としません。
2010年4月頃、ミニブログサービスの「Twitter」に投稿された以下のツイートに添付されたのが、当該画像が初出現したタイミングと推測されています(これ以上の拡散を防止するため、画像のURLを意図的に破壊しています)。
このニャオニクス、みんなはどっちの色に見えるかな??? 青と白→RT♪ 黄と白→ふぁぼ♪ pic.twitter.com/XXXXXXXXXX
このツイートは最後に確認された時点で4807回リツイートされ、7329人のユーザーがお気に入りに加えていました。投稿されてから一週間後に該当するツイートは削除されましたが、コピーされた画像が各種ボットによって大量に拡散されたため、これまでに一度でも画像を視認した正確な利用者の数は未だ分かっていません。オリジナルのツイートを投稿したユーザーのアカウントは削除とほぼ同時に凍結されています。アカウントの作成者を突き止めるための試みは現在も続けられていますが、有力な手がかりは掴めていません。
被験者の証言から、画像は健康な♂のニャオニクスを捉えたもので、画像そのものに不審な点は見られないとのことです。不快感や恐怖感といったネガティブな感情、逆に多幸感や解放感といったポジティブな感情のいずれも想起させず、画像が視認者に直接影響を及ぼすことは無いと考えられます。
当該画像の異常な特性は、画像をディスプレイを通して視認した際に発生します。およそ49%の被験者が、ニャオニクスは「紺色をベースにした色合いに一部白が混じった」姿をしている、すなわち♂の標準的なカラーリングであると報告します。続く48%の被験者は、ニャオニクスは「黄色をベースにした色合いに一部白が混じった」姿だと報告します。この特徴は♂のニャオニクスに稀に見られる特異個体、いわゆる「色違い」のものと一致します。
残る3%の被験者は、画像を見ても正確な答えを述べることができません。この時、一般的なニャオニクスの色に結びつくキーワード(「青系」・「紺色」・「寒色系」等)を与えると、即座に非特異個体のニャオニクスの姿が視認できるようになります。これは特異個体のニャオニクスのキーワード(「黄色」・「暖色系」・「輝いている」等)を与えた場合も同様であり、この場合は色違いのニャオニクスの姿が明瞭に見えるようになったと報告します。一度どちらかのニャオニクスの姿を視認できるようになった場合、もう一方のニャオニクスのキーワードを与えても、画像の認識に変化は見られません。
画像をプリンタを用いて紙媒体へ出力した場合、プリンタ及びアプリケーションの設定に拠らず、画像は常に256階調のグレースケールとして扱われます。そのため、出力結果は常に白黒です。画像処理を行うアプリケーションで画像の加工を試みた場合はあらゆる処理の実行時にアプリケーションが応答を停止し、結果として加工に失敗します。画像を表示させた状態でスクリーンキャプチャを作成し、別のファイルとして保存することは可能ですが、その場合の画像は被験者の視認結果に拠らず一般的なニャオニクスのカラーリングに固定されます。
画像を視認したことによる被験者への影響の可能性に付いては、付帯資料を参照してください。付帯資料に記載した仮説は現在も検証が続けられていますが、現時点で否定できるだけの根拠は見つかっていません。
Supplementary Items:
本案件には、1件の付帯資料があります。必要に応じて、すべての局員が付帯資料を参照できます。
案件#127168の画像を視認した被験者について、追跡調査が実施されました。
多くの被験者については特段の異常は見られませんでしたが、一部の被験者について特筆すべき結果が得られました。
- 通常のニャオニクスが視認できた場合
- 確認できたすべて視認者のうち、127名が何らかの疾病を発症して死亡、83名が事故で死亡、67名が自殺しています。疾病は例外なく個人の生活習慣に起因するもので、外的要因による死因は一件も見られませんでした。事故は例外なく自損事故で、視認者を除いた負傷者や死者は出ていません。
- 色違いのニャオニクスが視認できた場合
- 確認できたすべて視認者のうち、438名が災害に巻き込まれて死亡、546名が事故に巻き込まれて死亡、193名が感染症で死亡しています。事故はそのすべてが被害者に過失の無いもので、自損事故は一件も確認できていません。長期に渡る追跡調査でも、先述した事由以外の死亡例は確認できていません。
上記の結果から、通常のニャオニクスを視認できた者は自発的な理由で死亡し、色違いのニャオニクスを見た場合は偶発的な理由で死亡するという仮説が立てられました。
画像が視認者の死亡理由を予知する何らかの能力を持つのか、画像を視認したことで死因が決定されるのかについては未だ確定できていません。ただし、ニャオニクスの姿を視認できない被験者に対してキーワードを与えた際の結果から、画像の側が能動的に視認者の死因を決定している可能性があります。管理局はこの結果を鑑み、2014-03-21時点で警戒レベルを「3」に引き上げることを決定しました。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。