Basic Informations:
- Subject ID:
- #139468
- Subject Name:
- ピカピカネーム
- Registration Date:
- 2014-03-13
- Precaution Level:
- Level 0 または Level 5 [審議中]
Handling Instructions:
1993年以降に対象地域内で提出されたすべての出生届を確認し、条件を満たす名前を抽出してください。情報は個人情報に当たるため、データを保管するサーバはネットワークからオフラインの状態に保っておかなければなりません。本稿執筆時点において、データ検証作業は1995年8月時点提出分までが完了しています。得られた情報はデータマイニングチームに連携され、統計的に有意な結果が存在するかの確認が行われます。
本案件を案件として管理すべきかは意見が分かれています。局員は自身の思想信条に基づき自由に発言することが認められていますが、少なくとも現状において本案件は標準的なレベル5案件として取り扱わなければならず、無力化/無効化された案件ではありません。案件担当者はこのことを認識し、適切な姿勢で職務に当たることが求められます。ただし、本案件が実際には当局にて管理すべきものではないという十分な証跡が得られたと判断できた場合には、担当者の判断で案件の取り下げ及び無力化/無効化宣言を行うことができます。
Subject Details:
案件#139468は、推定では1993年頃を境に増加し始めたある特定の条件を満たす人物の名前と、それに掛かる一連の案件です。
この事象について案件化が提起されたのは、当局が設置している内部者向けの案件通報窓口を通してです。通報者は同僚との会話の中で「最近変わった名前の子供が増えた」という話題になり、個人的に興味を持って小規模な調査を実施したところ、事案として報告すべきという結論に至りました。結果を取りまとめた上で正式に文書化して報告し、最終的に案件として管理されることが決定しました。
本案件が管理対象とする人物名の条件は、「読み仮名として携帯獣の名称が振られている」というものです。市民の間では、こうした名前を「ピカピカネーム」と呼称する傾向にあります。局員による初期調査の結果は、少なくとも1996年頃から条件を満たす名前を付けられた市民が急激に増加していることを示しています。その後さらなる調査が行われ、先述した条件を満たす名前が増加し始めたと思われる出来事が1993年に発生しており、一部で話題となっていたことが明らかになりました。調査を行った局員と同僚数名は、この出来事が本案件の契機となった可能性を指摘しています。
以下は、調査の過程で抽出された条件を満たす名前について抜粋したものです:
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本来の由来に沿ったもの
- 綺麗華(きれいはな)
- 麒力(きりんりき)
- 小風来(こふうらい)
- 雪女子(ゆきめのこ)
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単純な当て字になっているもの
- 王部無(おうべむ)
- 安能雲(あんのうん)
- 服凛(ぷくりん)
- 真璃瑠(まりる)
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軽度の意訳や言い換えになっているもの
- 幸運(らっきー)
- 夜涙(だーくらい)
- 南瓜精(ぱんぷじん)
- 九尾(きゅうこん)
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明確に本来の読みからかけ離れたもの、重度の意訳になっているもの
- 海神(るぎあ)
- 次元(ぱるきあ)
- 電妖(ででんね)
- 波導(るかりお)
厳密な調査結果を待つ必要がありますが、局員を対象としたヒアリングでは年月が経過するにつれて1.の割合が減少し、残る2.から4.までのパターンが増加してる傾向にあるとの結果が得られています。しかしながら現状でも1.のパターンに当てはまる名前は少なくなく、またいずれにしても携帯獣の名称と一致する読み仮名が設定されているという点では共通しています。
この傾向がどのような意味を持っているのかについては、局員からいくつかの可能性が提起されています。中でももっとも有力な仮説と考えられているのが、何らかの個人/団体が特定の意図を持って人名の読みとして携帯獣の名前を用いることを広めているというものです。最終的な目的については定かではありませんが、局員の一部からは、人類と携帯獣の同一化を図っているのではないかという意見が出されています。
現状では、本案件に対して当局が起こすことのできるアクションは限られていると言わざるを得ません。いかなる理由で携帯獣の名前を読み仮名として定める事例が増加したのかが定かではなく、事象を止めるための方策が打ち出せないためです。局内でもいくつかの提案はされていますが、いずれも様々なコスト的問題により実現には至っていません。これにより現在の案件対応方針は、統計情報に基づいて新たな知見を得ることに焦点が当てられています。
本案件については、人物の名前を端緒とした人類の諸文化に対する携帯獣の侵襲が、考えられ得る最悪のシナリオとして想定されています。シナリオが現実のものとなった場合、最終的にはあらゆる文化の変質または喪失という結末に至ることとなります。シナリオの進行を阻止するための方策について、現在も検討が進められています。
[2014-08-07 Update]
一部の局員から、本案件に関して「単なる子供の名前に対する考え方や嗜好の変化であり、殊更に騒ぎ立てるのは市民の持つ自由を侵害することになりかねないのではないか」という意見が出されました。過去に見られなかった名前が出現することは当然のことであり、携帯獣の名前を読み仮名として割り当てることを取り立てて異常/奇異なものとして見るべきではないという趣旨の意見です。裁定委員会はこの意見を尊重し、調査活動を超える活動――具体的なものとしては、条件を満たす名前が付けられた新生児について、行政機関における出生届の不受理を促進するといった活動については、明確に禁止するという声明を発表しました。
[2015-03-27 Update]
当局の人事部門における採用担当者が、上席に対して「大賢樹(だいけんき)」という名前の男子大学生が、新卒採用のフォームを通して当局への採用希望を提出したことを報告しました。当該学生については通常のフローに沿って選考を実施する予定ですが、すべての局員は当該学生の採用/不採用に関わらず、本案件の取扱いについてより一層の慎重さが求められます。少なくとも「案件管理局が携帯獣のような名前を持つ人物を調べている」というような、誤解を招きかねない発言は慎むべきです。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。