Basic Informations:
- Subject ID:
- #141018
- Subject Name:
- ワタッコカメラ No.7
- Registration Date:
- 2014-08-28
- Precaution Level:
- Level 2
Handling Instructions:
日々送付されてくる写真にユニークなファイル名を付け、異常性を持つ画像ファイルを格納するための専用ファイルサーバに保管してください。写真の一般への公開は、既に「カメラが故障した」というカバーストーリーに基づいて停止されています。問い合わせがあった場合は、カバーストーリーに沿ってカメラが故障していると繰り返し伝えてください。異常性のある写真について言及することは許可されません。
写真は管理局のチームによって解析され、合成などの編集を経て作成されたものではないことを確認します。これまでのところ写真はすべて未加工であり、またカメラや衛星に画像の編集・処理機能は搭載されていない裏付けが取れています。写真について何らかの発見があった場合、様式F-141018に基づいて申し出てください。写真が未知の情報災害をもたらす恐れがあるため、閲覧には汎用的な情報災害防止機構を備えた専用のタブレット端末を使用することになっています。
本案件で扱う「カメラを装備したワタッコ」を発見した場合は、速やかに確保してください。単独での確保が難しい場合、直ちに管理局の保安チームへ応援を要請してください。
Subject Details:
案件#141018は、GPS機能付きカメラを搭載した一体のワタッコが日々送信してくる異常な写真とそれに付随する一連の案件です。異常な写真を送信してくるワタッコは1体のみで、それ以外のワタッコは何ら異常性の無い写真のみを撮影・送信し続けているため、本案件では取り扱いません。
この案件は、2014-06-10にジョウト地方コガネシティで行われた「ワタッコの世界一周カメラ」という企画に端を発します。同企画はGPS機能付きの小型カメラを計10体のワタッコに装備させ、そのワタッコが風に乗って世界を一周する様を毎日14:00に自動的に撮影・送信されてくる写真によって追跡しようという目的で計画されました。2014-06-10にワタッコが飛び立って以降、現在もすべてのワタッコが日々写真を送信し続けています。写真は企画事務局が問題ないかをチェックした上で、公式ウェブサイトに日々掲載されることになっています。
10体のワタッコのうち9体(カメラ番号1~6番及び8~10番)は、GPSの座標や写真の撮影時刻から勘案して一切の異常性と矛盾の無い正常な写真を送信していますが、残る1体(カメラ番号7番)はそれに当てはまりません。2014-08-23を境に正常な写真の送信が停止し、他の情報と矛盾する異常な写真を送信してくるようになりました。企画事務局は初期段階でカメラの故障を疑い、遠隔操作によるカメラの再起動を数度実施しましたが、異常な写真の送信が止まることはありませんでした。事態を重く見た事務局は内部で協議を行い、本案件を案件管理局へ持ち込むことを決定しました。
以下は、2014-08-23以降にカメラ番号7番のワタッコ送信された異常な写真の抜粋です:
- 2014-08-23 14:00:00に撮影された写真:
- ワタッコが送信してきた異常な写真の中でももっとも初期の写真になります。激しい爆撃を受けたように見受けられる、崩壊した都市が撮影された写真です。地理学的特徴からカントー地方タマムシシティの可能性が示唆されていますが、写真が撮影された際ワタッコはタマムシシティから少なくとも3,000km以上離れた地点を飛んでいたことが、GPS座標のログから明らかになっています。写真から確認できる限り、生きている人間はいないように思われます。暗雲の向こうに数体の影が確認されましたが、具体的な正体は不明です。搭載したカメラの故障が疑われ、企画局内部で公式サイトへの掲載の中止と速やかなカメラの再起動が決定されました。
- 2014-08-24 14:00:00に撮影された写真:
- 前日の夜間にカメラが再起動され、その後に撮影された写真です。三角形の窓が大量に取り付けられた六階建ての校舎がある恐らく小学校と推定される場所で、六本の腕を持つカイリキーと思われる存在と、五つの首を持つドードリオと思われる存在(うち一つには頭部が存在しません。一つには嘴が二つ存在します)が、目と鼻の無い数十名の子供(背丈はいずれも小学校低学年程度ですが、一名だけ3m近い身長を持つ個体が存在します)のような存在に取り囲まれています。カイリキーとドードリオは子供たちと親しげに遊んでいるように見えます。この時のワタッコのGPS座標は、カロス地方近辺の海上を指していました。写真はワタッコが通常空を飛ぶ高度からは考えられないほど近距離で撮影されています。事務局内部で案件管理局への持ち込みが提起されましたが、最終的にもう一度カメラの再起動が試みられることになりました。
- 2014-08-25 14:00:00に撮影された写真:
- 二度目の再起動後に撮影された写真です。確認できるだけで759体のモンジャラ(写真はそれ以上の数のモンジャラが存在していることを示唆しています)が、正確な場所は不明ですが都市に集結し、一つの建物に向かって押し寄せている様が撮影されています。都市や建物に荒廃した様子などは特に見られません。僅かに見える空は紅く染まっており、黒い太陽がくっきりと写真に写り込んでいます。太陽は通常の20倍程度大きく、また撮影時刻から見て著しく矛盾した位置に存在します。企画事務局にて、本件の案件管理局への持ち込みが全会一致で決定されました。
- 2014-08-27 14:00:00に撮影された写真:
- 案件管理局へこれまで撮影された写真と企画に関する資料一式が持ち込まれてから初めて撮影された写真です。視認できる限り終わりのない雪原に、十五体のナッシーが立っています。ナッシーは寒冷地帯では長く活動することのできない携帯獣として知られていますが、撮影された写真からはナッシーが衰弱している様子は見受けられません。これまでの写真と比較すれば異常性は低いものと考えられますが、ワタッコのGPS座標は雪原地帯とは明らかに異なる地域を指し示しており、矛盾した写真であることに変わりはありません。
- 2014-08-30 14:00:00に撮影された写真:
- 昼間に撮影されたにも関わらず、写真は非常に暗い闇の光景を映し出しています。一人の十代後半と思しき少女と、少女に付き従っているように見える四体の携帯獣の姿が見えます。携帯獣はタブンネ・コータス・エアームド・ラグラージと酷似したフォルムを持ちますが、いずれも確認されたことのない異常な体色です。タブンネは明るいエメラルドグリーン、コータスは暗い紫色、エアームドはファイアローに酷似した配色、ラグラージは本来の体色をグレースケールにしたものです。少女はこちらに対して背を向けており、具体的な特徴は不明です。
- 2014-09-04 14:00:00に撮影された写真:
- 写真は特段の異常性のないキキョウシティの風景を撮影しているように見えますが、マダツボミの塔が本来の高さの半分程度の高さしかありません。同日までにマダツボミの塔が改修されたという記録は存在しません。
- 2014-09-09 14:00:00に撮影された写真:
- カントー地方トキワシティ北部にある「トキワの森」と推定される風景を撮影した写真です。写真には数体のピカチュウと思しき存在が写し出されていますが、同時に撮影された木々と比較して約四倍の背丈を持っています(およそ60mほどと推定されます)。ピカチュウは未知の電子機器を頭部に装備し、スタンロッドのような武器を手にしています。周囲に人間やその他の携帯獣の存在は確認できません。
- 2014-09-11 14:00:00に撮影された写真:
- 写真の撮影された時刻は14:00にも関わらず、周囲は2014-08-30の写真のように夜の闇に包まれています。高層ビルの屋上にて「Help us」と書かれたダンボールを掲げた二人の成人男性と思しき存在が写し出されています。男性の周囲をベトベターもしくはベトベトンに酷似した多数の謎の存在が包囲しており、脱出可能な経路はありません。謎の存在は外見こそベトベターもしくはベトベトンのそれと類似していますが、それぞれのフォルムは以下に示す携帯獣のものに類似しています:モンメン・リザード・ムウマージ・アズマオウ・スバメ・エレザード・ピジョンまたはピジョット(判別困難)・識別不能(計12体)。
2014-10-10に、異常な写真を送信し続けていたワタッコが発見され、事務局員三名の手によって成功裡に保護されました。ワタッコは企画事務局によって精密検査を含む完全な検査を受けましたが、異常な点は何ら検知されませんでした。その後ワタッコは案件管理局へ引き渡され、異常性が無いかをあらゆる角度から検証されましたが、管理局でも異常性を見出すことはできないという結論に達しました。
その後新たな機材が与えられ、ワタッコは再度世界一周の旅に出ました。しかしながら、使用する機材を完全に入れ替えたにもかかわらず、異常な写真の送信は依然として続いています。また、2014-10-10以前に異常な写真を送信していた機材を使用して管理局の局員が写真の撮影を行う実験も行われましたが、これまでのところ異常な写真の撮影には成功していません。
ワタッコが撮影する写真にいかなる意味があるのか、加えて写真に登場する人物や携帯獣がいかなる存在なのかという点に付いての統一的な見解は未だ出されていません。ワタッコにも機材にも異常が無かったことが確認され、かつ機材が入れ替えられたにも関わらず、今なお異常な写真が撮影され続ける理由も不明です。その他のワタッコが送信する写真に一切の異常性が見られないことも、本案件について説明が付かない一因となっています。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。