Basic Informations:
- Subject ID:
- #99535
- Subject Name:
- インサイド・アウトサイド
- Registration Date:
- 2001-07-16
- Precaution Level:
- Level 3
Handling Instructions:
事案#99379にて回収されたオブジェクト#99535群については、イッシュ地方セッカシティ第四支局の中異常性物品保管庫へ移送の上、標準的な耐火金庫に収容する形で保管されています。金庫のセキュリティロックは案件担当者と副担当者が個別に設定し、開錠に際しては両者が同時にセキュリティコードを入力しなければなりません。明確な理由のないオブジェクト#99535の持ち出しは、当局の情報管理手続きに基づき禁止されています。
オブジェクト#99535に関連すると見られる参考人#99535の行方を追ってください。これまでに実在する人物と関連付けが行われた参考人#99535の一覧はリストL-99535-3を、関連付けが完了していない参考人#99535の一覧はリストL-99535-4を参照してください。参考人#99535の関連付けに成功した場合は、リストL-99535-3及び-4をそれぞれ更新してください。更新は案件担当者のコミットを以って完了となります。
回収済みのオブジェクト#99535に対するあらゆる試験は禁止されています。過去に発生した事例から、オブジェクト#99535は潜在的に当局に対して敵対的な姿勢を持っていると考えられています。オブジェクト#99535が所持者に与える認識異常/情報災害については未知の点が多く存在していますが、オブジェクト#99535への接触を避けることにより少なくともそれらのミームハザードに曝露する危険性は最小限に留めることが可能です。
Subject Details:
案件#99535は、外見上人間の子供と見られる生命体が格納された携帯捕獲装置――所謂「モンスターボール」(オブジェクト#99535)と、オブジェクト#99535内部に存在する人物と一致する一般市民(参考人#99535)、及びそれらに係る一連の案件です。
2001年6月末頃、イッシュ地方セッカシティ近隣を散策していたポケモントレーナーより「子供が閉じ込められたモンスターボールを見つけた」という通報が寄せられました。後にオブジェクト#99535に指定されるモンスターボールは合わせて21個発見され、そのすべてについておよそ八歳から十四歳頃と見られる子供が格納されていました。対応に当たった局員がすべてのオブジェクト#99535を回収し、格納された子供の救助を試みましたが、この時点での救助はすべて失敗に終わりました。異常事案発生の虞ありと見做され、局員の報告に基づき案件立ち上げが決定されました。この時点で、モンスターボールはオブジェクト#99535-1から-21に分類されました。
オブジェクト#99535は、外見上一般的な「モンスターボール」に見える球状の物体です。構造は非異常性のモンスターボールと変わりないように見えますが、上部から透けて見える内部には人間の子供に類似した未知の生命体が格納されています。子供は着衣のまま仰向けに寝転ぶ形で格納されており、いずれも目を閉じていて意識がないように見受けられます。ボールに存在する情報表示用のボタンを押下すると、格納されている子供に関する詳細な情報(本名/トレーナーID/住所/年齢/血液型等)を得ることができます。これらの情報はいずれも正確なものであると立証されています。
非異常性のモンスターボールは中央のボタンを押下することにより展開し内部に格納された携帯獣を解放することができますが、オブジェクト#99535はその機能が欠如または故障しているか、または初めから設計に組み込まれていません。これまで行われた457ケースの解放テストすべてについて、オブジェクト#99535はいずれも内部の子供を解放しませんでした。
本件については初動対応に当たった局員が引き継ぐ形で案件担当者に割り当てられ、当該局員もこれを了承しました。その後の調査により、オブジェクト#99535のうち-6/-9/-13/-18/-21について、内部に格納されている人物と一致する人物が割り出されました。当該人物はいずれもポケモントレーナーであり、その全員が失踪中であることが判明しています。オブジェクト#99535に格納された人物が失踪したポケモントレーナーであることが確定的となったため、オブジェクト#99535を破壊して内部の市民を救出する申請を裁定委員会に提出しています。
[2001-08-11 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-08-21 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-08-30 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-09-06 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-09-26 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-10-02 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-10-14 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-10-18 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-10-27 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-10-30 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-11-08 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-11-10 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-11-29 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-11-30 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-12-09 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。案件担当者はこの裁定を不服とし、倫理委員会に上申を行いました。
[2002-01-14 Update]
案件担当者による倫理委員会への上申は却下されました。案件担当者はこの裁定を不服とし、倫理委員会に即日再申請を行いました。
[2002-01-20 Update]
監査部門により、裁定委員会及び倫理委員会への上申が極端に多い案件として本案件がピックアップされ、案件担当者に対するヒアリングが実施されました。案件担当者は監査部門の担当者に非協力的な態度を取り、オブジェクト#99535は速やかに破壊されなければならないと繰り返しました。精神状態が職務遂行に著しい問題を来たすレベルで悪化しているとの見方が示され、案件担当者は当該案件から別案件へ転任させることが決定されました。案件担当者にはプロトコルUXに基づく記憶処理が施され、ホウエン地方トウカシティ第十五支局へ異動となりました。
[2002-02-06 Update]
前任担当者の離任に伴い、新しい案件担当者が割り当てられました。前任担当者はオブジェクト#99535がもたらすミームハザードに曝露した状態で報告書を作成した虞があり、新任担当者はオブジェクト#99535に接触した履歴のない局員が選ばれました。新任担当者は情報災害防止機構を搭載した端末を使用して前任担当者が作成したレポートを複写し、改めてその内容の検証を実施しました。
検証の結果、オブジェクト#99535-6/-9/-13/-18/-21に格納されているとされた参考人#99535はいずれも実在する人物ではありますが、失踪中との情報はなくいずれも容易にコンタクトを取ることに成功しました。それぞれの参考人#99535にヒアリングを実施し、オブジェクト#99535との関連性について調査が行われましたが、有意な情報を得ることはできませんでした。参考人#99535の全員について、オブジェクト#99535との関連性を明確に否定しています。
[2002-05-09 Update]
収容中のオブジェクトに対する定期検査により、オブジェクト#99535-14(およそ9歳頃に見える少女が格納されている)について、情報表示部全域に以下のテキストが繰り返し記述されているのが確認されました。
こ こ か ら だ し て
このテキストは以前の検査時点では表示されておらず、オブジェクト#99535-14に何らかの性質変化があったものと見られています。
[2002-06-11 Update]
収容中のオブジェクトに対する定期検査により、オブジェクト#99535-7(およそ12歳頃に見える少年が格納されている)について、情報表示部全域に以下のテキストが繰り返し記述されているのが確認されました。
ぼ く を そ と へ だ し て
オブジェクト#99535-14とほぼ同様の変化を見せたため、案件担当者の指示により定期検査を日次化することが決定されました。
[2002-06-17 Update]
オブジェクト#99535-7及び-14に対応する参考人#99535-7及び-14とコンタクトを試みましたが、案件担当者によるコンタクトは失敗に終わりました。案件担当者はオブジェクト#99535-7及び-14の即時無力化を裁定委員会に申請しました。
[2002-07-09 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535に対する無力化の申請は却下されました。
[2002-08-12 Update]
案件担当者はオブジェクト#99535を無断で持ち出し、小火器を用いて破壊することを試みました。セキュリティ担当者が錯乱状態の案件担当者を拘束し、すべてのセキュリティクリアランスが剥奪されました。オブジェクト#99535に破損の兆候は見られません。案件#99535には新たな担当者が割り当てられる予定です。
Supplementary Items:
以下は認識異常/情報災害部門に在籍するコウヅキ研究員が付記した、オブジェクト#99535の性質に関する提言です。
[コウヅキ研究員の提言]
オブジェクト#99535に関連して発生した2件の事案については、いずれも案件担当者がオブジェクト#99535を破壊しようとした点で一致を見ています。この結果から、オブジェクト#99535には接触した対象に自分自身を破壊させようとする認識異常または情報災害を齎すとの見方が可能です。初期の担当者は「内部の人間を救助するため」、後任の担当者は「オブジェクト#99535を無力化するため」と理由は異なっていますが、最終的に至った結論がオブジェクト#99535の破壊であることは特筆すべき事項と言えます。
現在の取扱手順はオブジェクト#99535の主体をモンスターボール型の機器にあると定義していますが、上述した性質を鑑み、オブジェクト#99535の実体は内部に格納された人型生命体である可能性を指摘します。モンスターボール型の機器はオブジェクト#99535の真の実体である人型生命体を収容するために使用されており、内部の人型生命体が収容を突破することを試みているのだとすれば、オブジェクト#99535が自分自身を外的要因によって破壊させる情報災害を引き起こすことにも説明が付きます。内部の人型生命体は非常に危険な性質を持っている可能性があり、モンスターボール型の機器はそれを封じ込めているという見方ができるということです。オブジェクト#99535に曝露した直後から、案件担当者が本来であればコンタクト可能な対応する参考人#99535を認識できなくなる事象が双方の事例に於いて発生している点も特筆すべきでしょう。
ただし、別の懸念点もあります。一部の参考人#99535から得られたヒアリングデータから、微弱ながらオブジェクト#99535に類似したミームハザード特性を持つデータパターンが検出されています。これは現段階に於いて参考人#99535を直ちに収容する根拠とはなりませんが、少なくともフィールドワーカーを配置して監視を継続する理由にはなり得ます。仮に参考人#99535が異常特性を持つ人型生命体の場合、一転して疑うべきは内部の人型生命体ではなくやはりモンスターボール型の機器という結論に至ります。この場合、参考人#99535についても追加調査が必要になると考えます。
いずれにせよ、オブジェクト#99535の「内」と「外」の関係性が確定するまでは、オブジェクト#99535を用いたあらゆる試験/実験は無期限に延期されるべきです。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。