Basic Informations:
- Subject ID:
- #150365
- Subject Name:
- 『Violet Wailordは君に死を賜う』
- Registration Date:
- 2017-08-25
- Precaution Level:
- Level 5
Handling Instructions:
事象#150365の発生を確認した場合、事象#150365が選出したターゲットについて標準手続きによる情報収集を行い、対象#150365として指定してください。対象#150365はフィールドワーカーによって監視され、事象#150365の進行状況について記録されます。事象#150365において対象#150365が実行を試みるタスク#150365については、いかなる場合においても進行を即時停止させなければなりません。タスクの妨害に失敗したケースについては、事案報告書F-150365-1の様式に沿って報告する必要があります。個々のタスクについては、事象#150365に子番号/孫番号を付与して管理されます。事象#150365-9における13件目のタスクは、事象#150365-9-13として管理されます。
事象#150365の発生後にオブジェクト#150365から対象#150365に向けて送信された種々のデータ(テキスト/画像/映像)は情報#150365として管理してください。一件の事象#150365について複数の情報#150365が送信されることが通例となっているため、各々の情報#150365は子番号/孫番号を付与して管理します。事象#150365-11における4件目の情報#150365は、情報#150365-11-4として管理されます。情報#150365には強度の情報災害特性が含まれるために、これらの情報#150365の実例は、レベル5セキュリティクリアランスを保有する局員のみ閲覧することが許可されています。閲覧に当たっては、情報災害防止措置が施された専用端末を使用しなければなりません。
オブジェクト#150365の追跡は、レベル5セキュリティクリアランス保持者による専任のチームが担当します。チームにアサインされた局員はオブジェクト#150365の発信元を突き止める取り組みを継続してください。適切なセキュリティクリアランスを保持しない局員については、オブジェクト#150365に関するアクションは全面的に禁止されています。勤務時間外にオブジェクト#150365に接触した場合、速やかに案件担当者に報告してください。報告を受けた案件担当者は、局員からオブジェクト#150365に関する情報をヒアリングしてください。
対象#150365がオブジェクト#150365より受領した物品#150365については、これまでのところ顕著な特異性は認められていません。対象#150365との接触方法を鑑みて、物品#150365が回収されることはありません。物品#150365が何らかの特異性を示した、或いはその可能性を示唆した場合、プロトコル・ブロッサムに基づいて物品#150365は当局によって接収されることになっています。これまでのところ、プロトコル・ブロッサムが発令された記録は存在しません。
収集された対象#150365に関する情報には、レベル5セキュリティクリアランスを保有する局員のみがアクセスできます。当局とは直接関係のない個人を特定可能な情報が含まれるため、アクセスに当たっては当局の定める標準的な情報管理手続きに従う必要があります。
Subject Details:
案件#150365は、明確な選定理由が不明な市民(対象#150365)が認識する未知の存在(オブジェクト#150365)、オブジェクト#150365との接触から始まる連続した事象(事象#150365)、事象#150365においてオブジェクト#150365から伝送される種々のデータ(情報#150365)並びに種々の物品(物品#150365)、及びこれらに係る一連の案件です。
少なくとも2013年頃から、利用者数の多いソーシャル・ネットワーク・サービスにおいて、本案件に関する情報が確認されていました。情報は「『青のホエルオー』を見つけると危険なゲームに参加できる」というような形で流され、それに興味を抱いた利用者が「青のホエルオー」を捜索する、という流れで拡散された経緯があります。これに一致する、または類似した情報が確認されたSNSとしては、本稿執筆時点で「Twitter」「Facebook」「Instagram」「微博」などがあります。これらより利用者数の少ないSNSにおいても「青のホエルオー」に関する情報が展開された可能性があります。
オブジェクト#150365は、「紫のホエルオー」が撮影された出所不明の写真です。「青のホエルオー」ではありません。写真は一般的なJPEGフォーマットで作成され、多くの場合解像度は1024x768、Exifをはじめとするメタデータは記録されていません。元はより大きな解像度だったものが縮小された形跡が見られます。自発的な意思に基づいて「青のホエルオー」を探す過程でオブジェクト#150365を視認し、かつ未知の理由により対象として選ばれた人間は対象#150365となり、直後に事象#150365が開始されます。
事象#150365は、オブジェクト#150365から対象#150365に向けて実行するよう指示される「自殺ゲーム」であり、またオブジェクト#150365から伝達される「タスク」の総称です。タスクはテキスト/画像/映像のいずれかの形式で対象#150365へ送信され、オブジェクト#150365はタスクを実行するよう対象#150365に指示されます。ゲームはこのタスクをクリアすることで進行し、また新たなタスクが割り当てられるという形で継続されます。
事象#150365のゲームにおける具体的なタスクの抜粋は以下の通りです。
- [事象#150365-11-2]
-
- 形式
- 画像
- 内容
- 「午前4時10分に起きて無音のテレビを20分視聴しろ」
- [事象#150365-4-3]
-
- 形式
- メール
- 内容
- 「自分の腕に消えない傷痕を付けろ」
- [事象#150365-42-6]
-
- 形式
- 映像
- 内容
- 「家族を一人殴れ」
- [事象#150365-7-10]
-
- 形式
- インスタントメッセージ
- 内容
- 「ビルの屋上の縁を目を閉じて歩け」
- [事象#150365-15-12]
-
- 形式
- インスタントメッセージ
- 内容
- 「近くの食料品店でチョコレートを万引きしろ」
- [事象#150365-22-18]
-
- 形式
- 画像
- 内容
- 「学校の窓を四枚叩き割れ」
- [事象#150365-34-24]
-
- 形式
- 映像
- 内容
- 「かつて自分に苦痛を味わわせた人間に血液で書いた手紙を送れ」
- [事象#150365-1-30]
-
- 形式
- メール
- 内容
- 「学校の屋上から飛び降りて死ね」
事象#150365が進行するに連れてタスクの内容はより困難になり、反社会的かつ暴力的な性質を帯びていく傾向にあります。対象#150365はあらゆる手段を講じてタスクを実行しようとし、それに際して周囲と衝突や軋轢が発生します。タスクを29回達成すると、オブジェクト#150365は自殺することを最後の指示として与え、以後対象#150365とは接触を持たなくなります。この時点で事象#150365は終了するものとみなされています。
対象#150365がタスクを達成するたびに、オブジェクト#150365は「褒美」として物品#150365を対象#150365に与えます。過去に確認された物品#150365としては、食料品/玩具/筆記用具/現金/プリペイドカードなどがあります。これらはいずれも非異常性の物品であり、基本的に容易に入手が可能なものです。一部に非売品が含まれていたケースが存在しますが、それらは単に非売品という形で市場に流通しているに過ぎません。
オブジェクト#150365は自分の意思を持っているかのような振る舞いをすることが確認されています。対象#150365に対して「『青のホエルオー』は簡単に見つかるが、俺のような『紫のホエルオー』はそうそう見つからない。お前はよほど運が悪いらしい」とメッセージを送るほか、タスクの実行に失敗した対象#150365に対して「失敗したから終わりだと思うか? 成し遂げられるまで死のゲームは終わらない」と伝達し、同じタスクに再チャレンジすることを促します。結果として、事象#150365の完遂まで決してゲームは終わらず、対象#150365は例外なく自殺に至ります。
事象#150365に巻き込まれた対象#150365が例外なく自殺に至っていることから、本案件は最優先に収容を試みる必要がある案件として管理されています。本案件に関係する情報を得た局員は速やかに案件担当者へコンタクトを取り、情報提供を行ってください。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムが1件存在します。適切なセキュリティクリアランスを保有する局員に限り、付帯資料にアクセスすることができます。
Basic Informations:
- Subject ID:
- #150365
- Subject Name:
- 『Violet Wailordは君に死を賜う』
- Registration Date:
- 2017-08-25
- Precaution Level:
- Level 2
Handling Instructions:
事象#150365の発生を確認した場合、事象#150365が選出したターゲットについて標準手続きによる情報収集を行い、対象#150365として指定してください。対象#150365はフィールドワーカーによって監視され、事象#150365の進行状況について記録されます。事象#150365において対象#150365が実行を試みるタスク#150365については、いかなる場合においても進行を妨害してはなりません。タスクの実行に失敗したケースについては、事案報告書F-150365-1の様式に沿って報告する必要があります。個々のタスクについては、事象#150365に子番号/孫番号を付与して管理されます。事象#150365-9における13件目のタスクは、事象#150365-9-13として管理されます。
事象#150365の発生後にオブジェクト#150365から対象#150365に向けて送信された種々のデータ(テキスト/画像/映像)は情報#150365として管理してください。一件の事象#150365について複数の情報#150365が送信されることが通例となっているため、各々の情報#150365は子番号/孫番号を付与して管理します。事象#150365-11における4件目の情報#150365は、情報#150365-11-4として管理されます。局員が情報#150365にアクセスすることによる案件管理の阻害を防止するため、これらの情報#150365の実例は、レベル5セキュリティクリアランスを保有する局員のみ閲覧することが許可されています。閲覧に当たっては、当局の定める標準機能を備えた汎用シンクライアント端末を使用することができます。
オブジェクト#150365の追跡は、レベル5セキュリティクリアランス保持者による専任のチームが担当します。チームにアサインされた局員はオブジェクト#150365の活動を阻害しないよう注意を払ってください。適切なセキュリティクリアランスを保持しない局員については、オブジェクト#150365に関するアクションは全面的に禁止されています。勤務時間外にオブジェクト#150365に接触した場合、速やかに案件担当者に報告してください。報告を受けた案件担当者は、人事部門まで報告してください。専任のチームが局員にカウンセリングを実施します。
対象#150365がオブジェクト#150365より受領した物品#150365については、これまでのところ顕著な特異性は認められていません。対象#150365との接触方法を鑑みて、物品#150365が回収されることはありません。物品#150365が何らかの特異性を示した、或いはその可能性を示唆した場合、プロトコル・ブロッサムに基づいて物品#150365は当局によって接収されることになっています。これまでのところ、プロトコル・ブロッサムが発令された記録は存在しません。
収集された対象#150365に関する情報には、レベル5セキュリティクリアランスを保有する局員のみがアクセスできます。当局とは直接関係のない個人を特定可能な情報が含まれるため、アクセスに当たっては当局の定める標準的な情報管理手続きに従う必要があります。
Subject Details:
案件#150365は、一定の条件を満たしている市民(対象#150365)が認識する未知の存在(オブジェクト#150365)、オブジェクト#150365との接触から始まる連続した事象(事象#150365)、事象#150365においてオブジェクト#150365から伝送される種々のデータ(情報#150365)並びに種々の物品(物品#150365)、及びこれらに係る一連の案件です。
少なくとも2013年頃から、利用者数の多いソーシャル・ネットワーク・サービスにおいて、本案件に関する情報が確認されていました。情報は「『青のホエルオー』を見つけると危険なゲームに参加できる」というような形で流され、それに興味を抱いた利用者が「青のホエルオー」を捜索する、という流れで拡散された経緯があります。これに一致する、または類似した情報が確認されたSNSとしては、本稿執筆時点で「Twitter」「Facebook」「Instagram」「微博」などがあります。これらより利用者数の少ないSNSにおいても「青のホエルオー」に関する情報が展開された可能性があります。
オブジェクト#150365は、「紫のホエルオー」が撮影された出所不明の写真です。「青のホエルオー」ではありません。写真は一般的なJPEGフォーマットで作成され、多くの場合解像度は1024x768、Exifをはじめとするメタデータは記録されていません。元はより大きな解像度だったものが縮小された形跡が見られます。自発的な意思に基づいて「青のホエルオー」を探す過程でオブジェクト#150365を視認し、かつ一定以上の希死念慮を抱いていると認められる人間は対象#150365となり、直後に事象#150365が開始されます。
事象#150365は、オブジェクト#150365から対象#150365に向けて実行するよう指示される「社会復帰プログラム」であり、またオブジェクト#150365から伝達される「タスク」の総称です。タスクはテキスト/画像/映像のいずれかの形式で対象#150365へ送信され、オブジェクト#150365はタスクを実行するよう対象#150365に指示されます。プログラムはこのタスクをクリアすることで進行し、また新たなタスクが割り当てられるという形で継続されます。
事象#150365のプログラムにおける具体的なタスクの抜粋は以下の通りです。
- [事象#150365-11-2]
-
- 形式
- 画像
- 内容
- 「午前6時に起きて部屋の窓を開けろ」
- [事象#150365-4-3]
-
- 形式
- メール
- 内容
- 「見えるところに「自分のしたいこと」を書いた紙を張り付けろ」
- [事象#150365-42-6]
-
- 形式
- 映像
- 内容
- 「家族と顔を合わせて話をしろ」
- [事象#150365-7-10]
-
- 形式
- インスタントメッセージ
- 内容
- 「部屋の外に出て風景を見ろ」
- [事象#150365-15-12]
-
- 形式
- インスタントメッセージ
- 内容
- 「近くの食料品店でチョコレートを購入しろ」
- [事象#150365-22-18]
-
- 形式
- 画像
- 内容
- 「***(教職員の個人名)に考えていることを打ち明けろ」
- [事象#150365-34-24]
-
- 形式
- 映像
- 内容
- 「かつて世話になった人間に直筆の手紙を送れ」
- [事象#150365-1-30]
-
- 形式
- メール
- 内容
- 「幸せに生きてから自殺以外の方法で死ね」
事象#150365が進行するに連れてタスクの内容はより困難になり、協調性や社会性を必要とする性質を帯びていく傾向にあります。対象#150365はあらゆる手段を講じてタスクを実行しようとし、それに際して周囲と社交性の獲得に際して必然的に起こりうる衝突や軋轢が発生することがありますが、これは通常の情動に基づいたものであり、事象#150365やオブジェクト#150365が攻撃性を引き出しているという性質のものではありません。タスクを29回達成すると、オブジェクト#150365は天寿を全うすることを最後の指示として与え、以後対象#150365とは接触を持たなくなります。この時点で事象#150365は終了するものとみなされています。
対象#150365がタスクを達成するたびに、オブジェクト#150365は「褒美」として物品#150365を対象#150365に与えます。過去に確認された物品#150365としては、食料品/玩具/筆記用具/現金/プリペイドカードなどがあります。これらはいずれも非異常性の物品であり、基本的に容易に入手が可能なものです。一部に非売品が含まれていたケースが存在しますが、それらは単に非売品という形で市場に流通しているに過ぎません。
オブジェクト#150365は自分の意思を持っているかのような振る舞いをすることが確認されています。対象#150365に対して「『青のホエルオー』は簡単に見つかるが、俺のような『紫のホエルオー』はそうそう見つからない。お前はよほど運が悪いらしい」とメッセージを送るほか、タスクの実行に失敗した対象#150365に対して「失敗したから終わりだと思うか? そんなことは無い。何度だってチャレンジできるんだ」と伝達し、同じタスクに再チャレンジすることを促します。結果として、事象#150365の完遂まで決してプログラムは終わらず、対象#150365は例外なく社会復帰に至ります。
事象#150365に巻き込まれた対象#150365が例外なく正常な社会復帰に至っていることから、本案件は継続的にオブジェクト#150365を監視する体制を取るが、具体的な収容は実行しない案件として管理されています。本案件に関係する情報を得た局員は速やかに案件担当者へコンタクトを取り、情報提供を行ってください。
これまでのところ、オブジェクト#150365が語る「青のホエルオー」の実在は確認されていません。
Supplementary Items:
以下は本案件の統括担当者が記載した、オブジェクト#150365に関する性質及び公開ドキュメントの記載に関する注釈です。
オブジェクト#150365の性質にはいくつもの顕著な異常性が認められ、本来的には当局が収容すべき存在と言えます。しかしながら、その異常性は一貫して市民の社会復帰をサポートし、人生を平穏なものにする手助けをすることにのみ使われています。オブジェクト#150365は異常ではありますが危険ではなく、彼または彼女が起因となって何らかの事件・事故に発展したケースは確認されていません。オブジェクト#150365の存在は多くの市民を救いこそすれ害するものではなく、また当局に対する敵対的な姿勢も見られません。このことから、当局では長い議論を経て、オブジェクト#150365は監視対象とはしますが収容対象とはしないという判断を下しました。
一般局員に向けて公開されている文書の記述が本質と大きく異なっていることに疑問を持たれた局員もいるかと思います。これは、局員からオブジェクト#150365への必要以上に干渉することを予防するための措置です。オブジェクト#150365を危険な存在、案件担当者以外は接触すべきでない存在とすることにより、オブジェクト#150365による対象#150365の社会復帰支援を妨げさせないことを目的としています。また前段の取扱手順の記載については、オブジェクト#150365が局員に接触したということは当該局員が強い希死念慮を抱いていることを示すものであり、それは当局が直ちに当該局員を支援しなければならないことを意味することによるものです。
最後に、担当者より一言申し添えておきます。オブジェクト#150365は異常ではありますが、危険ではありません。このような取り扱い方針もまた、当局のポリシーとして矛盾しないものであることをご認識いただければと思います。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。