ぽいぽい ぽっぽっぽい
ナマコブシぽいっ
ぽちゃぽちゃ ぽちゃちゃん
ナマコブシぽちゃん
トレーナーとアルバイト
背中に弟乗せて
トレーナーの手を引いて浜を歩く
オレの触角で元気なナマコブシも
おとなしくさせて海へぽいっ
弱ってた奴は
穏やかにさせて海へぽいっ
回りを見るとナマコブシ以外も視界に入る
目と目が合ったらバトルしようぜ!
目があった相手の中で勝ち気な顔した奴が前に出た
そいつは同じ種族の分岐進化
相手にとって不足無し
トレーナー同士が気付き挨拶
よろしくお願いします
背にいた弟、横にならんだ
相手も2匹で向かい合う
ダブルバトルだ
スタートはどっちも同じにてだすけを
俺は弟から力を借りて
相手は妹から力を借りて
ムーンフォース
マジカルリーフ
選手交代オレがてだすけ奴がてだすけ
でんこうせっか
こごえるかぜ
引き分けて挨拶してバイトの続き
サイコソーダ飲みながらナマコブシぽいっ
バイトを終えてさっきの場所へ
おやつに誘われ遊びに来たよ
海の方から声が聞こえる
先程居なかった相手の連れが戻ってきたようだ
振り返ってみると
こっちに向かってきていたのは
なんと別れた兄さんだった
お互い驚いて動きが止まる
行きなり止まった兄さんに先程戦った2匹が
お父さんどうしたの?と声をかけた
兄さんの子供だったのか
ハッとなって慌ててオレは
トレーナーの腰にあるモンスターボールのスイッチ押した
父さん母さん現れて
兄さん急に泣き出した
あの日、あの場所、黄昏時
野生だったオレは、トレーナーと出会った
バトルの途中に誰かと呼んだら
昼と夜の堺の時間
母さんも父さんもオレの声聞いて跳んできた
3匹一緒に捕まって兄さん残して旅に出た
あれから大分たったけど
進化して兄さん変わったね
涙腺緩くなったみたいだ
そんな兄さんの涙を隠すように
駆け寄って、もっふもふの胸に兄さん抱き寄せて
お義姉さんが落ち着かせてた
兄さん水タイプになってから水分に困らないからか
一度泣き出すと止まらないらしい
そんな様子を見て先程戦った2匹がおろおろしている
父さんと母さんが2匹をこっちにおいでと声掛けた
息子の子なら孫だこっちにこいこい
夜でもないのにうっすら輪を光らせほほ笑む父さんと
額の玉のように目を輝かせワクワクした母さんに
初対面でちょっと恥ずかしがりながらも2匹はきてくれた
弟は自分の将来選ぶ姿が、全て揃ったこの状態に目を輝かせてた
甥と姪を可愛がっていると、
その様子を見て相手が笑みを浮かべる
私は攻撃ができるほど、体毛がするどく尖るから
撫でるのは平気だけど、抱きつくのは怖いわ
自衛万歳。お前を抱き締めるのは俺の特権だ
愛してるぜーーー!
お義姉さんの父親は情熱的だった
みんなでわいわい話していると
泣きやんだ兄さんが、お義姉さんと一緒にやってきた
感無量ってこういう時に言うんだな
一匹になったあの時から、こんなことが起こるなんて
夢にも思ってなかったんだ
諦めなかった僕だけど、神様が采配したんじゃないかって思ったよ
兄さんの涙を瞬く間に蒸発させて、ふわっふわの姿に戻ったお義姉さんが
胸を張って高らかに、力強く、
「幸せに生きる為に生まれてきたのよ。だからこれは必然よ。」
ウインク決めながら、自信満々に言い放った
貴方もそう思うでしょ?って当たり前のように。
言葉が出なくって、もう何だかバカみたいに笑ってしまった。
日が暮れだした頃、
ちょっと大きな波が来て、またナマコブシが打ち上げられた
バイトはもう終わってるけど、楽しい気持ちのまま
勢いよくブン投げた。遠くでぽちゃんと音がした。
凄いな、幸せだ。何気ない何時も通りの今が最高だ。
出会いと別れに再会もある。何が起こるかわからない。でも、
この後、トレーナー同士が仲良くなって、
一緒に暮らすようになるなんて
今のオレには、やっぱり想像もつかない未来がまちうけていた
生きている限り、旅は終わらないけど、オレの話はこれでおしまい。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。