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「思い出話」(作者:ミーナさん)

あれ、君ここでは見かけない人だよね。どこから来たの?


…へえ、アローラ地方…!懐かしい!

私アローラ地方出身なんだ。物心ついてちょっと経った後くらいにこっちに引っ越して来たんだけどね…ってそんなことはどうでもいいか。君、名前はなんて言うの?


…リーリエちゃんか。よろしくね。私はテテフ。テテフでいいよ。

ん?…ああ。母がアーカラ島の出身でね。若いときにいろいろ助けられたから、って感謝を込めてこの名前にしたみたい。


こっちじゃ信じられないよね。トキワの森でピカチュウがオレンのみをくれたから子供はピカチュウって名前にする!なんて言ったらバッシングものでしょ。助けられたって言ってもそんなレベルなのに。

…ありがとね。リーリエちゃんって名前も可愛いと思うよ!可憐よね。


ああ、でも私アーカラ出身じゃないんだ。父のところに母が嫁いだから、ウラウラ島出身なの。

マリエシティじゃないよ~。もうちょっと栄えてた街。あの頃はアローラで一番都会って言われてたな。今だとハウオリシティが一番なのかな?…そうなのね。


こっちでもよく旅番組とかで見かけるよ。ショッピングモール行ってみたいかも。私が住んでた街も、あれよりかは小さかったけどショッピングモールみたいなものがあってさ。週末はよく連れて行ってもらったよ。マラサダもよく食べたな。


そう!そうなのよ。ハウオリシティよりは小さかったけど、結構栄えててさー。

防犯対策なのかは分からないけど、壁で周りが囲まれてて。こっちで言うとセキチク以上タマムシ未満ってところかな。郊外には起伏が激しい地形を生かしたサファリみたいなのもあって。

ちなみに私のパートナーは、父親がそこで捕まえたペリッパー…の子供のキャモメ。未だにバトルで出すとびっくりされるよ。こっちにはいないものね。リーリエちゃんのパートナーは?


あ、…そうなんだ…じゃあその子は今アローラのお友達のところにいるのね。

じゃあリーリエちゃんはこれから他のポケモンを捕まえていくってことか。リーリエちゃんならきっと大丈夫だよ、そんな大変なこと乗り越えてきたんだしさ。なんなら初めて捕まえるときに私のキャモメ貸すし。ほら、キャモメもボールの中からやる気満々!


え、そもそもどうしてアローラからカントーに来たかって?なんてことない、父の転勤よ。本社に戻れるーってすっごく喜んでたの、今でも憶えてる。

…そうなの。父は元々こっちが出身で。

アローラの生活は長かったけど、合わなかったみたいね。…母も泣いて喜んでたっけな…

今だからこそわかるけど、余所者だった父は相当嫌がらせされてたみたいで。特に街の中央にある大きなお屋敷の主人に目付けられちゃっててさあ。村八分みたいな感じかな。母はアローラの人だったからそれほどでもなかったみたいだけど、それでもしょっちゅう体調崩してたんだよね。私も煙たがられてて、人間の友達はいなかったよ。キャモメと、あるポケモンだけ。…その子と離れるのが辛くてあの頃は毎日泣いてた。


…ん?そうそう。元々ショッピングモールの近くに住み着いてたポケモンみたいで、よく遊んでた。赤くて細長い帽子みたいなものを被ってて、いきなり雨が降ってきたときにその下に入り込ませてもらって、止むのを待っていたことがあったっけ。…そういえば未だに名前も分からないや。結構珍しいポケモンだったのかも、こっちで見かけたこともないし。


…うん、かなり大きいポケモンだったよ。ショッピングモールにはライドポケモン専用の待合場みたいなところもあったんだけど、そこにいたリザードンよりも大きかったんだ。そんな大きなポケモン、目立つに決まってるのに誰も話題にしたことがなかったような…?まあ、ただ単に私が忘れてるだけかな。


そうそう、それでね、私がそのポケモンに最後に会ったとき、もうここには来れない、って言ったらそのポケモンがすごく悲しんでくれて。私に不思議な模様が描かれている綺麗な石をくれたの。

進化の石かと思ってこっちに来てからいろんなポケモンに試したけど、結局珍しいだけのかわらずのいしだったみたい。このままいてほしい、って伝えたかったのかな?割とロマンチックよね。まだ家にあるから今度見せてあげるね。


いや~アローラの話したら久しぶりに行きたくなっちゃった。今度の長期休みに生まれ故郷にでも遊びに行こうかな。

って、え、街が占領された?!誰に?

スカル団…?解散したロケット団みたいなものかなあ。どんな状態なの?

…そっか。街の周りが壁で囲われてるから…ってちょっと待ってリーリエちゃん、どこの街の話してる?

実は私がいた街の壁は私がいた頃に撤去されたんだ…多分リーリエちゃんが思ってる場所じゃないかも。

…ポータウン?端っこの街だよね。ああ、そういえばあそこも壁で囲まれてた!今そんな感じになっているのね…

私がいた街の名前?今はどうか分からないけど…カプシティって名前だったかな。古くからいる人達はみんなカプの村って呼んでたけど。村って規模じゃないほど大きかったのに。

ビル街だったから、よく上を向いて首が痛くなったりしてたなー。壁が撤去される前はなんだか玩具箱にいる気分だったよ。

…そーそー!ショッピングモールの名前スーパーメガやすだった!懐かしい~!海の上にあって三階建てで立体駐車場が大きくてさ、子供ながらにすごいなーって思ってたよ。

あとラナキラマウンテンの頂上から眺める街の夜景が本当に綺麗だったな。頂上に行くためにはエレベーターを使うんだけど一つしかなかったから、週末になると人でごった返してて。


今あの街どうなってるのかな…なんだか知らないけど調べようにも出てこないんだよね、あそこだけ。なんとなく不自然じゃない?ネットにもないのよ。情報規制とか敷かれてるのかな、あのお屋敷の主人の力強そうだもの。だから今度行って自分の目で確かめてみようかと思ってね…リーリエちゃん何か知ってる?

って、あれ、リーリエちゃん顔色悪いよ?どうしたの…?


 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。