ボクはトロピウスのエスメラルド。トレーナーのネフトさんと一緒にアローラ旅行にやってきた。
「南国のアローラにはお前の仲間もたくさんいると思うぞ」
とネフトさんに言われて、ライドポケモンの仮登録を済ませて、島々をぐるぐると飛び回ったけど、トロピウスはどこにもいなかった。むしろ、街の人からボクのことを珍しげな顔で見られていた。
「おかしいな」
とネフトさんは、観光案内所のお姉さんに尋ねた。
「すみませーん、アローラ地方でのトロピウスの棲息地って分かりますか?」
「ああ、アローラのトロピウスは絶滅しました」
な、なんだってー。
「昔の絵にはたくさん描かれているので、かつては棲息していたようですが」
そうなのか。
「なんで絶滅したんだ?」
「このアローラにはたくさんの開拓民がやって来たので、彼らが持ち込んだ外来種ポケモンにみんな食べられたのかと」
ううー、分かる気がする。トロいし、バトルは苦手だし、なによりおいしそうだし。
「例えば、マケンカニという木の実が大好きで独り占めしている、外来種ポケモンがいるのですが」
あっ、あのカニさん。
「進化すると氷タイプになります」
うぎゃー。
「昔の話なので詳しくは分かりませんけど」
「なるほど……」
ネフトさんがガッカリしている。大丈夫、ボクは気にしてないから。
「ナッシーみたいな姿になっていれば、生き残れたのかな。 ……あれ?
そういえば観光ガイドに、アローラには首長のナッシーがいるって書いてあったんだが。どこに棲息しているんだ?」
そういえば、目立つはずなのに、空から見渡してどこの草むらにもいなかったな。
「野生のナッシーはポニ島の外れの無人島を除き、4つの本島では野生絶滅しました」
うわぁ。
「なお、その無人島はキングかクイーンの許可がないと入れないので。現在は野生種を近くで見れませんね」
「ガイドにはあんなデカデカと載っていたのに」
「アローラの誇りとは言っても、大食漢で、やっぱり地元の人にとっては害獣だからねぇ」
案内所のお姉さんは笑っていた。
ナッシーは外敵から身を護るためにあんな姿になったのかな、だからちょっとだけ生き残ることができた。
うーん、でも、ボクはあんな姿になりたくないなぁ。
ネフトさんはボクの首の肉をプニプニとつまんで言う。
「お前も、もうちょっと運動しないと、アローラで生き残れないぞ」
えー ボクはアローラに住む気はないから関係ないよ。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。