『――よお、もしもし。
んん、ああ。久しぶり。
ははは、調子どうよ、元気か? おう、こっちも元気全開のバリバリだよ、そっちも無理すんなよ。
そうか乗れたか! じゃあ今度こそ寝過ごすなよ! アラームも設定してるか? なあ、おい!
<< / / / vv ―― w w ? ― ― >>
え、なに? あ、なんだ、そっちのロトムか、あー、聞こえたよ、おまえももう大丈夫か? セルフ走査したか? そうか? ならいいんだけどよ。こっちのロトムも俺の手元で震えてるぜ、嬉しいんだろな。じゃあよかった。アラームは? 設定したんだな? いやこっちじゃない、そっちのロトムに訊いたんだよ。おまえは大人しくしてろって、ったく。いや悪い、こっちの話だ。で、本当だな?
ったく。ま、無理すんなよなんて言って悪かった。「元気か」って訊かれたら、無理でも「元気だよ」って答えちまうのが人の性(さが)だもんな。そういうところ、人間ってどこかおかしくて面白いよな、俺もおまえも。なんでって。俺もそうだからな。だから俺にはわかるよ。なんとなく、おまえの背景がどんなだったか、声色からな。
溜息つくなって。まあそうだな、大変だったろうな。いやほんと、大変だったろうよ。吐きたきゃ吐けよ。お兄さん聴いてやるぜ。
うん。
ついに、かあ。
いや、いよいよ、かあ。ずっと行きたい行きたいって言ってたよなあ!
なんというか、ほんとおまえ、マジで呪われてねえか? どっかで妙な悪さでもしてきたのか? 違う? ならいいけど。
そんなにまでミアレシティに拒否されてきたヤツ、俺はまず知らねえよ。
まあ、アレだ。あっこからだったよな、とにかく……
親父さんのことは、残念だった。
いよいよの日にって時にだもんな。急なことでそっちもドタバタしただろうに。ん、俺もそう思う。おまえと顔をあわせたのも、それが久しぶりだったもんな。それがきっかけで、まずはその四十九日を過ごすことからだったもんな。周囲から聴いていただろうが、俺も色々世話になっていた。昔はバカだったよ、俺も。まあバカだったから、あれやこれやとやっててな、あちこちに迷惑をかけていたことも数知れずよ。突っ張ってたよいやほんとに。
でも――、ああ、親父さんの遺影の前ではな。
どうしても、な……。
誤魔化すつもりはねえよ。おまえにもみっともないところを色々見せちまった。ああいうときって、むしろ子供のほうが泣かなくてじっとしてるから、大人よりもずっと強いよな。ただそんなおまえを見て、また目頭が邪魔してきて。いやほんとみっともなかった。気にしてない? ばか、俺自身が一生引きずるほどに気にしてるんだよ。
俺にとっちゃ、おまえの親父さんは恩人の一人であったことは間違いねえよ。ああ。俺のおふくろの名誉に誓って言える。あ、あの通夜振る舞いでもらった飯は美味かった。まさか俺まで誘ってくれる事自体、びっくりだったし、特にアレだよアレ。コメに具材を乗っけて並べるやつ。なんってんだアレ? ――? し? ――しぃ? おい電車の音が混ざってよく聞こえねえよ。え、なに? ――スシ? スシ、だな? ああわかった、ありがとな。そういや俺も聞いたことあったな。アレはほんとに美味かったよ。俺もその時に訊いときゃよかったけど、親父さんの前で訊ねるのも忍びなかったし、しりぞいちまったんだよ。酒も入ってたしな。ありゃ一体どこの料理なんだ?
――。
いや――。
はー。
いやすまん。
嘘ついた。本当は知ってるんだ。
パルデア地方に出張に行ってた頃よ、適当なところ見つけて昼食とったんだよ。そしたらなんだよコレ、親指程度のサイズに握ったコメの上に、薄っぺれー何かの切り身を乗せているだけでやがんの! 俺思わず立ち上がって店員に怒鳴りつけようかと思ったけど、なんとかとどまったよ。親父さんのこととおまえが脳裏に浮かんでな。忘れるわけねえだろ。ん? うん……。
改めて、思い直したよ、これがスシなんだってな。
―――
うん――。
美味かったな、親父さんのあの席でのスシ――。ほんと美味かったよ――。塩気が効いていたからかもな。
ん? ああ、そうだな、そっからあの流行病か
そう言うなって、みんな言ってるんだ。みんながみんな、そういう想いをして今まで過ごしてきたんだ。わかってくれ。あれには俺もまいったんだ。本当にまいった。全国に緊急事態宣言が出されてよ、みーんな自粛、自粛、もうどこもかしこも全部自粛三昧。下手に街を歩くだけで、ピリっピリと張り詰めた気配を出し合っていたような雰囲気。マスクこそ通行証って的な、な。そんな緊張感のある中で、みんな二重の意味で呼吸し続けて。俺も外食の時には一応気をつけて食いにいっていたけどよ。どっかの店のさ、店頭に設置していた消毒アルコールのスプレーボトルごと盗っていったババアがいたって話を昔の同僚から聴いた時には思わず呆れた。俺が思わず「後先そんな長くねえのに何を気にしてるんだか」とか言った時、その同僚から「おいこらっ」て言われたよ。まあ確かに失言だったな。俺的には、正鵠を射る気持ちだったんだがな。
あ、聴いたぞあれ。ババアで思い出した。おまえんちのばあちゃんの話だよ。その流行り病よりも前に、普通に風邪かなにかひいて倒れたってやつ。看病しようとおまえも地元へ帰って、うつされて共倒れになったって。ん? ああ――。やっぱそうか! 俺もそれ聴いて当時大爆笑した。
まっさかそのあと、みんなで揃って体力つけようと、海鮮類の鍋を食ったら――その鍋にまんまブチあたって――共々揃って腹壊してまた共倒れってな――ひっ――ひひっ、――悪い、んくっ、悪かったって、そんな怒んな。けふっ。
んで? しばらくして、ようやっと落ち着いてきたかと思ったら、そっからのキテルグマ出没だっけか。おまえの近所にもいよいよ出たって? そりゃまた自粛っつうか、多少なりの注意を払うわな。ありゃあ穏やかじゃねえぞ。ポケモンレンジャーのメンバーが議会とのあれこれでトラブったせいで出動を拒否したっつーし。まっっったくめんどくさそうな問題だよあれ。さっさとどっちかが先に折れて――つか、現実を認めてごめんなさいして、喧嘩相手も焚き付けて総動員して解決すりゃみんなハッピーになれるいい話だろうに。そもそも眼の前の問題を無視したら本末転倒だろ。おまえんとこは大丈夫か――ルカリオ? どこんにでもルカリオが周囲を警戒してんのな、ヒーローめ。どっから湧き出してやがんだ。
その後は、あれだな、いざこざが片付いて、やっと乗車できたかと思いきや、今までの疲れで寝過ごして。一番救えねえのは、帰りの賃金まで計算しそこねていて、所持金ゼロでっていうおまえだよ。
普通な! いざというときのために! アラームを! つけとくもんなんだよ! なんならアラームを付けていてもなぜか寝過ごすこともあるんだよ! 俺もたまにやらかす! 金はなんとかなる!
いいか! 絶対だ! アラームは絶対だ! 復唱しろ! おいそっちのロトム! 聞こえてるだろ! そこのスカポンタンに言い聞かせろ!
アラームは、絶対だ!
<<Aラームは、Z対だ!>>
わかったな!? おじさんとの一生の約束だ! なんなら時間差で二重にも三重にもかけとけ! スヌーズなんて信用するな!
ふー。
そっからは俺知らんが、何があった?
はァッ? 無くした? さ、財布をか!?
何やってんだよおまえ――届け出は出したか? 盗まれたとかじゃあないだろうな? 中に大切なカードとか入れてたか!? その情報憶えているか!? それ含めて――なんだよ全部戻ってきたのか。そりゃ良かった。感謝しとけよ。俺もビクッとしちまったよ。というのも俺も前に隣町のバーで――
まあいいかその話は。んで? その後なんで行かなかった?
お祓いか、まあ気持ちはわかる。散々邪魔されてきたからか。自覚してたか。って、はあ!? シオンタウン!? そこの『きとうし』さんたちにか!? おま……そこのきとうしさんって……俺が当時会ったころって確か――。
いや、まあいいかl きっと色々と変わってるはず――。
え? いや、気にすんな。こっちの話だ。
ってか、そもそもシオンタウンってミアレシティとほぼ真逆の方角じゃねえか? 電車賃……バイトで働いて稼いだ? はあ……またそりゃご苦労なこって……。それで財布用のGPSも買ったのか。重ね重ね、まあ。
え?
スマホロトムが?
そうか、その時だったのか。スマホロトムが調子狂ったのって。もう一回訊くけど、アンチウイルスワクチンの更新はマニュアルで確認してたのか? 規約事項は読んでいたか? そこはおまえ、きちんとやっておけよ。まじだぞ。隅々まで熟読しとけよ。じゃないといつかまじで足元すくわれるぞ。たまにはスマホロトムのコードの整理も、スマホロトムと相談しながらきちんとやっておけよ。FGUU[1XXX]のほうじゃないぞ、[XX99]のHHRGのほうをロトム設定画面からいじるんだ。ロトム自体がその周りは敏感だもんな。GPSの精度も完璧なスマホも手に入れたとして、まあロトムが病気になるだなんて考えられねえよ。いざ入院させる時となったら遠慮なく行け。俺もロトムをきちんと管理するようになった。前に適当なところで降りて着地しようとしたらこいつが
いでぇ!!
<< ZZZ!! !! aaa!! >>
あだぁ!
ああもう、わかったわかった!
<< ααα!! !! ΩΩΩ!! >>
ズケゴブアベシュウ!
ぎゃああああああ!!
悪かった悪かった、あのときは! 本当に俺が悪かった! ほらあいつのほうにも迷惑かかるからそんなに喚くなって!
後で各地方のポケセンのパソコンで電気食い巡りしおうな! な!?
げふ、ああ。
すまん。こっちのスマホロトムが怒っちまって。高いところから、飛び降りるたびに、スマホロトムが助けてくれるか、ら、調子に乗っちまって、遊んでいたから、鬱憤が溜まっていたのかもしれん。
<< 村雨の 露もまだひぬ 槇の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ >>
うわあやべえ、よくわからん言葉まで吐いてきおる。それ、どこの地方の言葉だ?
あー痛ってえ。これ結構きいた――。これ、俺もジョーイさんとラッキーに診てもらえるか?
まあ、こうして、通話できているから、ロトムは問題ないのか――?』
<当列車はまもなくミアレ駅に到着します>
『おッ!
おお、聞こえたぞ! いよいよだな、本当にいよいよなんだな! よかったじゃねえか。
いやまて、線路の途中にヤドンが群がっていたりしてないだろうな!? そんときゃ途中下車してまでも降りて向かう気概なんだろうな!?
よし、じゃあ――
目一杯、楽しんでこいよ!
それこそ、もう二度と帰りたくないってくらい楽しんでこい!』
†
――撮影準備OK!
――あとはミアレに来る観光客。
――ミアレを守るにはメンバーが必要!
――今回のミッションはメンバー集めだからね
――だからまたホテルZを宣伝する!
――ホテルZを宣伝して集まった客の中から
――よさそうな人をスカウトするし
†
「いたッ! そこの人!」
†
<< もう二度と帰りたくないってくらい楽しんでこい! >>