ゲームの概要
明確な特徴のない少女(通称「窓付き」)を操作し、不気味な夢の世界を冒険するという筋書きの3Dアドベンチャーゲーム。一人用かつオフライン専用ゲームで、マルチプレイの要素は存在しない。
原作に当たるのは2004年にききやま氏が「RPGツクール2003」を用いて開発したフリーゲーム「ゆめにっき」。著名なタイトルなのでプレイした人も多いと思うが、後述する通りフリーゲーム版とは大きく異なる内容になっている。
基本情報
- 発売・配信元
- AGM PLAYISM
- 開発元
- KADOKAWA CORPORATION, Active Gaming Media Inc.
- 発売・配信開始日
- 2019/02/21
- 定価
- 1,980円(税込) / $19.99
操作方法(Nintendo Switch版)
左スティックで移動、Xボタンで対象にインタラクト、Bボタンでジャンプ、+ボタンでポーズ、-ボタンで収集物の確認。原作にもあった操作として、左十字ボタンの↓を押し続けることで行える「ほほをつねる」がある。これは夢の世界から離脱しスタート地点へ帰還するためのコマンド。この他、ゲーム中で「エフェクト」を入手することでアクションが増えていく。
アイテムは自動的にインベントリーへ格納され、持ち運べる数に制限はない。特定の個所にて自分で指定してアイテムを使う方式であり、ゲームをコンプリートするには最終的にすべてのアイテムを入手した上で適切な箇所で使う必要がある。
システム
ゲーム中に見られる「ゲームのながれ」が分かりやすいので引用。
このサイクルを繰り返して「ゆめのなか」を攻略していくのが目的になる。その他、特徴は以下の通り。
- ゲームの外見は3Dだが、ゲームとしては2D的な部分と3D的な部分が半々程度となっており、しばしば前後にしか移動できなくなるシーンがある。
- 敵に攻撃されると画面が暗転し、直近のチェックポイントまで戻される。底のない穴へ落ちた場合も同じ。基本的には即アウトだが、一部の攻撃については数回まで耐えられる。
- 歩きとダッシュの区別がある。
- 「ゆめのなか」のエリアは相互または一方通行で接続されていることがあるが、それに当てはまらない、ある特定のルートでしかアクセスできないエリアも存在する。最初のロビーからしか入れないエリアなど。
ゲームの特徴
謎解きが中心で、敵と直接戦う機会は少ない。ただし一部の場面においてそこそこ素早いアクションを要求されるシーンもあり、探索に終始するゲームとは少々趣が異なっている。アイテムがある場所は光って知らされ、インタラクト可能なポイントは近くまで来ると「X」ボタンの表示が出るため分かりやすい。
主人公「窓付き」の運動性能は低めで、走るスピードは遅くジャンプはそれほど高く飛ぶことができない。ただし特定のエフェクトを入手することで二段ジャンプ及びパラセール移動が可能になり、移動が幾分か楽になる。ゲームについては「窓付き」の運動性能を考慮した調整がなされているため、アクションパートが極端に難しくなっているということは無い。難関となりそうな箇所でも、ある程度のリトライを要求される程度の難易度に収まっている。
一方で謎解きについては直感的でないものがいくつか含まれており、こちらはやや難度が高くなっている。入手したすべてのエフェクト及びアイテムを適切に使わなければ先へ進めない箇所が多く、その点では無駄のない作りとも取れる。いわゆる「死にアイテム」と呼ばれるようなものは存在しない。
最大の特徴と言えるのはその独特な風景の数々である。「ゆめのなか」は不気味なロケーションや不思議な雰囲気の場所がいくつも組み合わせられている。
「窓付き」の部屋にあるファミコンにインタラクトすることで「Super NASU」というミニゲームで遊ぶことができる。これに加えて、ゲーム中に2つ存在する「カセット」を入手することで、「ゆめのなか」の「窓付き」の部屋で2つの異なるミニゲームが遊べるようになる。なお、これらミニゲームについては本編クリアには関わってこない。
ゲームクリアに必要なアイテムとは別に、ゲームの設定資料が手に入ることがある。集めた資料は「ギャラリー」から閲覧可能。
プレイした感想
最初に言及しておかねばならない点として、このゲームは一貫してリニアな進行であり、夢の中を目的もなく彷徨うというゲーム性ではない。原作はエンディングこそありつつも夢の中をただ歩き回るという印象が強かったのだが、本作は明確な目的とエンディングが存在しそれに向かって進行していく構成になっている。一度訪れた場所へ引き返すことは可能でそれが必要になる場面も多々あるが、あくまでそれはエンディングに向かうための道筋という扱い。この点については購入前に押さえておいてほしい。
プレイ前はてっきり原作を3D化したものと思っていたが、実際には似た世界観が一部含まれるまったく別のゲームと言う方が適切だろう。原作にあって本作に無い場面はいくつもあるし、その逆もまた然りである。
アクション要素がほぼ無かった原作とは違い、ジャンプやダッシュなどを正確に行わなければならないシーンがそれなりに含まれている。原作との差別化という点では評価できる反面、「窓付き」の運動性能の低さとアクションシーンの多さが噛み合っていないと感じることもしばしばあった。これはアクションの色を濃くするなら、それに応じて「窓付き」を動かすこと自体の楽しさについても考慮してほしかったという意味。
運動性能の低さとは別に操作性そのものも良いとは言えず、思うように「窓付き」を動かせないことがたびたびある。場面によって2Dと3Dが切り替わる点がこれに悪い意味で拍車をかけており、フラストレーションが溜まる一因となってしまっている。
謎解きの難易度は簡単な箇所もあれば結構時間が掛かってしまったものもあり、バラエティに富んでいるのは評価点。しかしいくつかについては若干の理不尽さを感じさせるものもあり、先に進めず行き詰まってしまう虞がある。先の目標が特に示されないため、次にどこへ行くべきか迷うことも多い。「インタラクトできる箇所があるが、手持ちのアイテムやエフェクトでは突破できない」箇所を覚えておくことが重要になる。
夢の世界の描写については期待通りで、この点に関しては高い評価を与えられる。言い知れぬ恐怖を感じさせる場所、幻想的で美しい場所など豊富に揃っている。商店街や学校など、日本を強く想起させるポイントもいくつかあるのが特徴。本作の開発を担当したのは国外のデベロッパーだが、これらについては日本の関係者が監修したものと思われ、かなり自然な描写に仕上がっている。
ただ、一方で各エリアのつながりについては常識的あるいは論理的なものがしばしばあり、突拍子もない展開の連発、という風にはなっていない。これは構造が分かりやすいとも取れるし、捻りがなく物足りないとも感じられる。
ボリュームについては個人差もあると思うが、概ね5~6時間程度と思われる。収集物のコンプリートを含めればもう少し長く遊べると思うが、値段相応と言うべきレベル。音楽は環境音的な目立たないものが中心。特に印象に残るものはなかったが、雰囲気作りには一役買っている。
一部のシーンではJump scare的な恐怖演出が盛り込まれているが、ホラーゲームと呼ぶほどのものではない。あくまで演出の一環として使われている程度。
ゲーム中で手に入る設定資料集は一見の価値あり。原作にも登場したキャラクターの絵が多数収録されており、カラーイラストも結構な数が含まれている。コンプリートには少々手間が掛かるが、「ゆめにっき」が好きならそれに見合うだけのものがある。
総評
Pros/Cons
Pros
- 不気味/不思議で独特な風景の数々
- 手応えのある謎解き
- ある程度まとまった時間があれば数回のプレイでクリア可能
- 設定資料が充実している
- 本編をクリアしてもミニゲーム単独で遊べる
Cons
- 操作性が良いとは言えない
- 運動性能が低いにもかかわらずアクションパートが多いバランスの悪さ
- 一部の謎解きに理不尽さがある
- 「夢の中をあてもなく彷徨う」というゲームではない
原作とは似て非なるゲーム。忠実な3D化や移植を望むなら合わない可能性が高いが、単独のゲームとしてはちゃんと成立している。ただ、アクション性を中心に見逃しがたい問題点もいくつかあり、万人に勧められる出来とは言い難い。スクリーンショットを見て気に入った・気になったのなら購入を検討しても良いか、というレベルだろう。
関連リンク
- 公式サイト
- http://yume-nikki.com/