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未来のミライ ネタバレ感想

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まず面白かったか面白くなかったかで言うと、残念ながらあまり面白くなかったです。少なくともうちには刺さりませんでした。何もかも完全にダメというわけではないんですが、後述する「描きたいもの」と「映画という媒体」のかみ合わせの悪さを98分かけても解消することができなかったというのが正直な感想。

とりあえず難解な映画ではありません。むしろ描こうとしているものはかなり分かりやすいと言えます。分かりやすい、と言うか序盤で示されたそれが最後まで変わらなかったと言うべきか。いずれにせよ理解が難しい、難解な映画というわけではありません。描き方はともかくとして、殆どの人が置いてけぼりにならずに観ることができると思います。恐らくは。

キャラクターについても同様。意味不明なふるまいをする登場人物は一人もいません。主人公のくんちゃん・お父さん・お母さん・生まれたばかりの妹の未来ちゃん・犬のユッコ・母方の祖母・母方の曽祖父・そしてタイトルにもなっている未来のミライちゃん。いずれもキャラクター的に違和感のある部分はありません。違和感が無いというか、それぞれのポジションに求められる動きを忠実にこなしているというか、端的に言うと割と紋切り型寄りのキャラクター造形をしています。

映像については良かったのではないでしょうか。うちはアニメ映画を観るとき映像表現についてはあんまり重きを置いておらずキャラクター造形やストーリー展開に偏重した見方をするのですが、この映画は映像的に観ていて美しいと感じるシーンがそれなりにありました。なので、映像表現を重視する人は観に行っても損したとは感じないのではないでしょうか。映像については以後特にコメントすることはありません。

音楽についても同様。目立た過ぎず目立たなさすぎず。オープニングとエンディングはいずれも山下達郎さんが歌っていますが、イメージとしてもそれなりに合っていて無難なラインだと思います。ただインスト曲にしてもボーカル曲にしても押しの強さという点ではそれなりといったレベルに留まっているとも。ここについてもここから先特にコメントすることはありません。

テーマ性は明快、キャラクターもまあ悪いものではない、映像や音楽も十分な水準。じゃあなぜ刺さらなかったのか。全部無難だったからでは? とも思うんですが、うちとして引っ掛かったのがその作品構造です。全体で98分あるこの「未来のミライ」を分解すると、大体こんな構造になっています。以下、タイトルはすべて独断と偏見で付けたもの。

実はこの「Part *」と「Part *」の間がかなりはっきりと切られていて、一本の映画として見た場合ぶつ切り感が非常に強い構成になっています。もちろんそれぞれの時間軸は一貫していて前のパートで触れられたことが後続のパートで言及されるとかは普通にあるんですが、各パート間のつながりは薄目で弱いです。イメージ的には30分構成のアニメを各々ほどほどに縮めて6本収録したというのが一番近い。

ストーリーの前提を整える起点作り役と言える「赤ちゃん編」はさておき、残る「ユッコ編」から「家出編」までの流れはほとんど全部一緒です。綺麗な三幕構成がずっと続く感じです。

これが律儀に五回繰り返されます。冗談でも誇張でもなくこの通りの構成です。これを繰り返して、くんちゃんが少しずつ成長してお兄ちゃんになっていく、というストーリーが本作の全容です。予告編の大部分はこのうち「破」のブロックの映像が使われていますが、その映像について相互の関係性はほぼありません。予告編については後でも述べるのでこれ以上言いませんが、この三幕構成についてはやばいくらいガチガチで恐ろしいほどわかりやすいです。

各パートについては割と短めで駆け足感のある部分も少なくない、しかしほぼ同じ構造の話を五回も観ることになるので全体としては冗長さを感じやすいという、尺の短い映画と尺の長い映画の悪い部分が両方現れてる感じでなんともよろしくない。また「序破急」のうち「序」は未来ちゃんにばかり目をかける両親にくんちゃんが怒って癇癪を起こし、「急」は穏やかーな雰囲気で「家族っていいよねえ」的な空気を醸し出す感じで終わるという作りでこれまた一貫しており、敢えて言うと非常に平板です。繰り返しになりますがこれが五回です。五回繰り返されます。

見どころと言える「破」の部分については、幻想的だったり現実的だったり、現実に寄せている場合も時代背景が違ったりできっちり差別化が図られており楽しめるブロックと言えます。実際この部分についてはうちの中で総じて評価が高いです。広報的にもたぶんここを推したかったのではという印象を持っているのですが、見ての通り前後に「序」と「急」が挟まっているので熱が持続しづらいという泣き所を抱えています。確かにこのパートだけ終始繋げられるとそれはそれで頭がおかしくなりそうなので完全な失敗とは言えないのですが、じゃあ成功しているかと言われると成功はしていないです。なお、ここで登場する不思議な世界は「くんちゃんの家の真ん中にある樫の木が家族の記憶とかをすべて記憶してインデックス化している、くんちゃんがそれを見ている」ということで最終盤に説明されるのですが、納得どうこうというより「ああ、うん、まあ、そんなことだろうとは思ってたけど」という感じでした。あれ必要だったのか? と問われるとあってもなくても変わらなかったと思います。

もしこれが映画ではなく例えば1クールの一回当たり30分のアニメだったら、構造的にかなりうまくハマったのではないかと思います。くんちゃんがトラブルを起こして、不思議な世界へ飛んで冒険して成長し、なんだかんだで丸く収まる、これが何回も繰り返される――というフォーマットは30分アニメのそれの方が適切ではないでしょうか。逆に言うと映画という長時間観客を拘束する代わりに長大な物語を展開することが基本となる媒体とはかみ合わせが良くなく、ぶつ切り感・駆け足感・冗長さの本来並立し得ないようなネガティブな印象すべてを同時に感じさせてしまった。うちの中ではそういう結論に達しています。

予告編について。予告編を「あさがおと加瀬さん。」の鑑賞前に目にした時は「未来から未来のミライちゃんがやってきて、まだ幼いくんちゃんと時空を股にかけた大冒険を繰り広げる」的なイメージがあったんですが、中身は上で書きまくった通りで全然違いました。予告編でしか観られない映像とかがあるわけではないので詐欺とは言いませんけど、予告編は面白い部分をより抜いているのは事実です。いやまあ予告編に面白くない部分を混ぜる必要はないので正しいっちゃ正しいんですけど。うちは事前にいくらか評判を聞いていて「どうも思っているのと違うぞ」と思いながら鑑賞したのでまぁこんなもんか……って感じだったんですが、予告編の映像から高い一貫性を期待して本作を鑑賞するとほぼ確実に足払いを食らうと思います。

あと本作、何回も書いてる通りタイトルは「未来のミライ」なんですが、ぶっちゃけて言うと肝心の未来のミライちゃんはそんなに活躍しませんし出番も多くありません。一番長く登場するのは「おひなさま編」で、後は「散らかし編」の冒頭で少しだけと「家出編」の終盤で重役出勤してくる程度。なのでタイトルについては「未来のミライ」である必要があまりなくて、インパクトは皆無ですが「くんちゃんと樫の木」とかの方が本質に近いです。くんちゃんと樫の木。絵本とかにありそう、絵本とかに。

今日は「さんざん無理やり予定を詰め込んだ末にオフ会にまで出席し、最後の最後にレイトショーで映画まで観る」という破天荒な立ち回り自体をやりたかったのでそれを達成できて満足しているのですが、映画自体については上に書いた通りです。光る部分は確かにあるんだけども……というのがうちの感想です。長文失礼しました。