はじめに
少し前にTwitterでポケモン第一世代の頃の仕様や流行について呟いたところそこそこ反応があったため、当時の資料などを基に第一世代の対戦風景について振り返ってみたいと思う。今回はかつて開催されていた公式大会である『ニンテンドウカップ』(*1)のレギュレーションに基づいているため、なんでもありだった野試合のそれとは少々趣が異なっている旨について予めご了承いただきたい(*2)。
ゲームの仕様
現代とは様々な点が異なっているが、ひとまず重要と思われる点に絞って記載する。
- タマゴの概念がない。野生個体を捕獲する、またはイベントで入手する以外にポケモンを増やす方法は無い。ここから容易に想像が付く通り厳選環境は最悪の一言である(*3)。
- わざマシンは使い捨て。第五世代で繰り返し使えるようになるまでは使い捨てだったのでさほど違和感はないと思うが、有用な技の大半がわざマシンでしか習得できなかったため、誰に使うか、どのように使うかはかなりの悩みどころだった。真面目に対戦をしようと思うならサブROMは必須であった。
- とてつもない資金難。トレーナーとの再戦はできず、換金アイテムも数が限られていてそうそう入手できない。唯一の資金源が四天王+ライバル戦であるため、必然的に何度も何度も何度もポケモンリーグを周回することになる。金の使い道は努力値を上げる能力アップアイテムくらいしかない(*4)が、肝心のそれに莫大な金が掛かってしまう。
- すべてのUIが原始的。世代を重ねるごとにどれだけ改良されていったかが骨身に染みて分かる。選択操作をすべて十字キーの上下で行う必要があるというだけで大方想像はつくだろう。ボックスの整理はこれに輪を掛けて大変で、ボックスを切り替える度に強制的にセーブされるだけに留まらず、例えばボックス1からボックス2へポケモンを移動させる場合「手持ちの枠を1つ空ける→ボックス1からポケモンを引き出す→ボックス2に切り替える→セーブされるのを待つ→ボックス2へ手持ちのポケモンを移す」という操作が必要になる。ボックスに名前が付けられない、アイコンの概念が無いので名前でポケモンを判断する必要がある、そもそもボックスの数自体が8つしかない等山のような制約があり、第六世代辺りから入った人がVCで遊んだら10分で絶望しそうなレベルに達している。
バトルの仕様
こちらも相当に異なる部分があるが、特に環境へ重大な影響をもたらした点について記載。
- 現行世代における「とくこう」(以下C)「とくぼう」(以下D)が「とくしゅ」に一本化されていた。物理技については攻撃側の「こうげき」(以下A)と防御側の「ぼうぎょ」(以下B)で計算されるが、特殊技については攻防共に「とくしゅ」が参照される。この仕様がいくつかの深刻な"歪み"を生じさせている。
- 性格の概念が存在しない。能力に対する下降補正も上昇補正もないため、純粋な種族値勝負の色が今よりもずっと強かった。加えてAとCどちらに補正を掛けるかという戦略が存在しないため、物理技/特殊技の両刀使いがごく普通に起用されていた。その筆頭が他でもないケンタロスである。
- 持ち物の概念が存在しない。たべのこしもタスキもスカーフもきのみもZクリスタルもメガストーンもない。純粋にポケモンの持つ地力だけで戦う必要があり、ただでさえ狭い環境への門戸がさらに狭められている。この過酷すぎる仕様により進化前のポケモンが活躍できる余地はほぼなかった(*5)。
- 状態異常「こおり」が永続。ふぶきやれいとうビームの追加効果で凍ったが最後、そのポケモンは落ちたも同然である。一応ほのお技が当たるとこおり状態が解除されるという仕様はあったが、後述の通りほのお技・ほのおタイプが後期環境までことごとく死んでいたので誰も持っていないケースが大半で、実質的に即死の扱いを受けていた。
- わざのタイプによって物理/特殊が決められている。「ノーマル・かくとう・いわ・じめん・どく・むし・ひこう・ゴースト」は例外なく物理技、「ほのお・でんき・みず・くさ・こおり・エスパー」は例外なく特殊技(*6)になる。なお、当時ドラゴンはダメージ固定技である「りゅうのいかり」しか技が無く、第一世代の時点では物理/特殊のどちらに分類されているのか不明だった。(*7)
- 急所率の計算式として「すばやさ」(以下S)の種族値が使われる。計算式は「(S種族値/2)/256」となっており、端的に言えばS種族値が高いほど急所率が上がる(*8)。ただでさえ先制攻撃のチャンスが増えるというのにそこに急所率アップのボーナスが付いてくるのだから、必然的に環境上位はS種族値が高いポケモンで占められることになる(*9)。またこれと関連して「急所に当たりやすい技」の仕様も異なっており、適用された場合「((S種族値/2)*8)/256」となる。S種族値が65以上のポケモンが急所に当たりやすい技を使うだけで急所率がカンストしてしまうため、現行世代における「やまあらし」や「こおりのいぶき」のような確定急所技とほぼ等価になるケースもしばしばあった。
- 急所倍率が2倍。これは威力60の技が急所に当たった場合威力120になるということである。全体的に技の火力が高く、アイテムによる耐久補強も無いので、相手のタイプ一致等倍技を急所に受けただけで即死に至るケースも少なくなかった。
- 少なくとも98年公式大会までは、相手を倒すまたは技が外れることで「はかいこうせん」の反動を踏み倒すことができた。命中安定技で削って相手を即死圏内に入れ、最高火力の「はかいこうせん」で素早くトドメを刺しつつ次ターンも普通に行動するという目を疑うような光景が横行していた。あまりにヤバいと判断したのかは定かではないが、99年の公式大会で使われた「ポケモンスタジアム2」ではいかなる状況においても反動を受ける現在の仕様に変更されている。
流行した技
初期(ニンテンドウカップ開催前)
さいみんじゅつ
初期にスリーパーやゲンガーがこれを使いまくっていた風景に見覚えがある方もいるだろう。相手を行動不能にするのはやはり強いのである。ただしさいみんじゅつ自体は命中60(*10)で普通に外れることも多く、博打の域を出ない技だった。状態異常技全般で言うと、中期辺りからはより命中率の高いねむりごなやあくまのキッスが使用され、後期はより安定度が高く試合を有利に運びやすいでんじはやどくどくの使用率が上がっていった。
ゆめくい
さいみんじゅつとセットで使われた技、というよりセットでないと使えない技。命中100威力120かつ与えたダメージの半分自分が回復のエスパー技と性能は凶悪そのものだったが、肝心のさいみんじゅつが割と信用ならない技だったので公式大会が開催される頃にはすっかり廃れてしまっていた。現代と同様眠らせた相手を交換されると完全な死に技になってしまうのも痛かった。
10まんボルト・れいとうビーム・サイコキネシス・なみのり・じしん
現代に至るまで一線で使われ続けている性能安定技たち。ただし、この中ではれいとうビームだけちょっと序列が落ちる感じだった。それはれいとうビームの性能に起因するものではなく(れいとうビーム自体はむしろ当時から優秀な技だった)、もっと壊れた技があったからである。
ふぶき
第一世代を象徴する最恐にして最狂の技。威力120・命中90・PP5・30%の確率で相手をこおり状態にするという控えめに言って頭がおかしい性能をしており、性能安定技のはずだったれいとうビームの序列を下げた張本人。仮に現行世代で例えるならぜったいれいどに威力120命中90の技が追加で付いてくるのとほぼ等価(*11)である。こんな技が流行しないわけがなく、それはそれはありとあらゆる試合でふぶきが吹き荒れた。初期に流行した技扱いだが別に初期で流行が終わったわけではなく、第一世代の終わりに至るまでずっと使われ続けた(*12)。
こんな無茶な環境破壊技がいつまでもそのままの性能で存在できるはずもなく、続編の金銀クリスタルでは命中を70にされるという大幅な弱体調整を食らってあっさり一線から退いた。以後は命中不安な高火力技として(*13)まあまあ使われる程度に落ち着いたのは皆さんご存知の通りである。
中期(ニンテンドウカップ97~98)
はかいこうせん
上で書いた通り反動を踏み倒せる仕様があり、脅威度は現代の比ではなかった。中でもタイプ一致で撃てるケンタロスとの相性は抜群で、サブウェポンで削ってからのはかいこうせんは脅威の一言に尽きる。98年大会では土壇場でケンタロスが使ったこの技が急所に当たってラプラスが落ちるという衝撃的なシーンもあった。
かげぶんしん
98年大会以降に急速に流行した技で、有利対面を作ってからかげぶんしんを6積みして相手の攻撃を全部回避するという身も蓋もない戦法が流行った。両者がこの戦法を取ることも当然あり、ここにじこさいせいやねむるが加わったりしたため、一回の対戦あたりの時間がとてつもなく長期化、泥仕合が後を絶たなかった。このような気まずい展開があちこちで横行したためか、「ポケモンスタジアム2」では回避率が下げられてしまっている。
どくどく
かげぶんしんによる回避戦法へのメタとして使われるようになった補助技だが、致命的な欠陥として一度交代されると普通の毒扱いになってしまう仕様があった。ただ、それも含めて交代を誘発する効果は高かったため、後期は多くのポケモンがそっと忍ばせている技になった。
後期(~ニンテンドウカップ99)
きりさく
上に書いた通りの異常な急所周りの仕様により、主にペルシアンがメインウェポンとして採用していた。その他リザードンや、時期は少し遡るがダグトリオもサブウェポンとして採用、軒並みS種族値が65を余裕で超えている連中ばかりだったので事実上の確定急所技として猛威を振るっていた。
みがわり
フルアタ構成、そうでなくても複数の枠を攻撃技で埋めたポケモンが大半で変化技全般が不遇だった中、状態異常技の流行に伴って採用率を上げた技。どくどくやでんじはへの対策として使われたほか、実質的に使える攻撃技がメガドレインしかなかったモンジャラを詰ませるためにも使われた。当時はどういうわけかみがわりに吸収系の技がヒットしない謎の仕様があったからである。
タイプの強弱
強いとされたタイプ
こおり
今でこそ耐性が少なく弱点が多いというコンセプト通りのタイプとして認知されているが、第一世代当時はあらゆる要因が追い風になってかなりの強タイプ扱いを受けていた。
いくらスペック上の弱点タイプが多かろうとポケモンも技も実戦投入が厳しかったので事実上弱点を付けないという残酷な現実の前では無力で、ほのおタイプが再評価された後期に入るまでその地位はまったく揺らがなかった。
エスパー
人によってはこおりよりこちらの方が性質が悪いと感じるかも知れない。こおりは曲がりなりにも高威力或いは中威力でも実戦的な技で弱点を突くことはできた(だいもんじ・かえんほうしゃ・いわなだれ辺り)のだが、第一世代のエスパーは複合タイプでない限り弱点を突くのは事実上不可能だった。弱点はむしとゴーストでこれは今も変わらないのだが、いくつかの事情が重なり合って弱点を突くことが極めて困難だったのである。以下でその理由を述べる。
まずむし技だがこれが実に酷い有様で、ダメージ不定の技はきゅうけつ(威力20)とダブルニードル(威力25*2)、そしてミサイルばり(威力14*2~5)の3つしかなかった。ミサイルばりが全段ヒットしてやっと70という哀しさだ。そしてダブルニードルにしてもミサイルばりにしてもタイプ一致で使えるのはスピアーしかおらず、そのスピアーはよりにもよってエスパー弱点の毒複合。エスパーと対峙してもサイコキネシス一発で昇天するのが関の山である。能力値の高いむしタイプが軒並みむし技をわざマシン含めて一切習得しないという冷静に考えると異常な設定で、結果として誰もエスパーの弱点を突けなかったのだ。
一方のゴースト技はこれに輪を掛けて酷く、実際のゲームにおけるエスパータイプはなんとゴースト技を無効化する。弱点どころか無効なのだ! 最高に意味が分からない。どうやらタイプ相性の設定が誤っていたらしい。初代はパラメータ周りの設定ミスが大量にあったが、その中でも一番やってはいけないタイプのミスはこれだろう。ただ、仮に設定通りゴースト技がエスパーに抜群だったとしても第一世代におけるダメージ不定のゴースト技はしたでなめる(これも威力20)しか存在せず、どちらにせよ使われることは無かった気はする。
ノーマル
かくとうが不遇だった影響でこのタイプも弱点を突かれることがなく、多くのポケモンが幅を利かせていた。初期・中期環境におけるケンタロスと後期環境におけるペルシアンはいずれも対策必須のトップメタであり、どちらも単ノーマルタイプだったことは特筆に値する。またその裏で現行世代に近い耐久型運用がなされていたラッキーが少なからずいたことも付記しておきたい。
弱いとされたタイプ
ほのお
性能安定のかえんほうしゃ、命中不安ながら高火力のだいもんじと最低限の技は揃え、飛行複合で総合能力の高いリザードンやファイヤー、単色ながら高種族値のウインディやブースターとポケモンの層もまあまあ厚かったために後述するとかくとう・いわに比べると実戦的ではあったのだが、以下の要因が災いして対戦環境では強烈な逆風に晒された。
- こおり技を等倍で受けてしまう。タイプ相性の設定が現代と異なり、こおり技を半減できずそのまま受けてしまう仕様だった。ふぶきが吹き荒れる第一世代のバトルに於いてこれは非常に痛く、こおりの弱点を突く前にふぶきで落とされるシーンが少なからずあった。
- ひでんマシンで手軽に習得できるなみのりの性能が極めて安定していたこと、第一世代の頃からスターミー・ラプラス・ギャラドス(後期環境ではヤドランも加わる)とみずタイプは質量ともに充実していたことから、みずタイプから容易に一致弱点を突かれてしまう環境だった。
- ケンタロスのサブウェポンとしてじしんが採用されるケースが非常に多く、さらにケンタロスの上を取れるほのおタイプが皆無(*16)だったことから副次的に対策されるシーンも多かった。
他、全体的にサブウェポンが不足気味だったこと(*17)、こおり以外に弱点を付けるのがくさ・むしと対戦環境ではマイナーなタイプしかなかったことも重なり、今とは比べ物にならないほど不遇だった。
いわ
弱点が4つ(みず・くさ・じめん・かくとう)あるという点ではこおりと同じなのだが、みず・じめんには性能安定のメジャー技があったことから不遇の仲間入りを果たしてしまったタイプ。技を見るともっと悲惨で、実質的に使える技がいわなだれ(威力75・命中90)しかないという地獄以外の何物でもない状況だった。
また、単岩タイプはおらずどのポケモンも他タイプとの複合であり大抵は複合タイプ側の弱点もプラスされるので、実戦での耐性面は輪を掛けて厳しいものがあった。トドメとばかりに、希少ないわ複合だったカブトプス・オムスター(いわ/みず)とプテラ(いわ/ひこう)は全員わざマシン含めいわ技を一切習得しない(=タイプ一致技が使えない)という冗談のような仕様で、岩タイプは弱点を増やすだけの存在に成り下がっていたのである。このように攻防共に魅力に乏しく、採用価値を見いだせないという評価が支配的だった。
かくとう
弱点はエスパーとひこうのみでスペック上の耐性面では他のタイプと大差はない。だがこちらもいわ同様深刻な技不足に悩まされた。もっとも汎用的な技がじごくぐるま(威力80・命中80・反動1/4)というのが悲しい以外の言葉が出てこない(*18)。そして第一世代は絶対的なエスパー環境であり、そのエスパーに弱点を突かれるという一点で厳しいものがあった。
ほのお・いわ・かくとうがどれだけ使われていなかったかは97年及び98年の全国大会出場者のパーティにどのタイプも複合含め一体もエントリーされていなかったと言うだけでイメージできるだろう。格差社会の闇を感じずにはいられない。
環境にいたポケモン
初期・中期
ケンタロス
第一世代を語る上で決して外せないポケモン。A100にS110という高水準の種族値、じめん・でんき・こおりという非常に広い攻撃範囲、そして一致はかいこうせんによる驚異的な突破力。これらを一体ですべて揃えたケンタロスは瞬く間に環境を席巻し、99年の公式大会で使用禁止になるまで一貫して支配し続けていた。当時はC/Dが一本化されていたことから特殊攻撃力は70と最低限の水準はあり、10まんボルトやふぶきは弱点を突けば十分なダメージを出すことができたことも大きい。必要十分な耐久も相まってあらゆる局面に対応できる万能選手で、97年及び98年の公式大会では大半のパーティ(*19)にエントリーされている流行ぶりだった。
サンダース
第一世代におけるでんきタイプの顔。初期はサンダーも起用されたが、シーズンを追うごとに数を減らしていったサンダーとは異なり一貫して高い採用率を保ち続けた。S130から繰り出される10まんボルトは高い対面性能を誇り、でんじはなどの小技も充実。補助もできる速攻アタッカーとして大変な人気を博した。環境におけるじめんタイプはダグトリオしかおらず、そのダグトリオもケンタロスやスターミーで容易に縛ることができたため選出は難しいという環境で、でんき技の一貫性が極めて高い環境だったことも追い風になったと言える。
スターミー
ケンタロス・サンダースと共に第一世代の覇権を握った水タイプの高速アタッカー。サンダースに縛られケンタロスを安定して突破できないことから序列としては第三位に付けたが、みず・でんき・エスパー・こおりと技範囲の広さはトップクラス。ちいさくなるやじこせいさいといった強力な変化技も揃え、どくどくやでんじはを絡めて長期戦を制する型も一定数存在。攻守ともに器用なオールマイティポケモンであり、多くのパーティでみず/エスパーの両枠を担う形で起用された。
ラプラス
高耐久・ふぶきを軸とした平均以上の火力・みず/こおりの複合など多くの強みを備えた重量級アタッカー。みず枠としてはスターミーにお株を奪われがちだったが、単体スペックの高さは揺るぎなくスターミーと同時採用されるケースも決して少なくなかった。一致ふぶきの圧力は凄まじく、片やこちらはふぶきを耐性で1/4ダメージに抑えて余裕をもって受けられるのはスターミーにはない強み。また、対ケンタロス性能が高かった点も見逃せない。向こうの10まんボルトを受けてふぶきで落とすことができた。
フリーザー
ラプラスと同様に一致ふぶきが使え、ラプラスより高火力で撃てたため準エースの中速アタッカーとして起用されるケースがしばしばあった。上位陣と比較すると耐久とS双方が中途半端で活躍しづらい面はあったものの、ふぶきの火力と運ゲーにモノを言わせて無理矢理突破するケースも少なくなかった。耐久型運用がメインの昨今とはまったく違う姿を拝めた時代とも言える。
フーディン
スターミーを上回るCDSを持つ超高速アタッカーとして初期に人気を博す。が、物理技メインのケンタロスとの相性が致命的に悪く、はかいこうせんはおろかじしん一発で安定して落とされてしまう悲しさを背負うことに。また技範囲の狭さは深刻で、スペック上食えるはずのスターミーとかち合うと退くか死ぬか以外の選択肢が無かったのも痛い。中期はすっかり鳴りを潜めていたものの、環境上位陣以外に対する強さは凶悪以外の何者でもなかったことは本人の名誉の為付記しておきたい。
後期
ペルシアン
前中期のケンタロスと双璧を成す後期環境の顔。S115から繰り出されるきりさくはタイプ一致補正込みで威力210(70*1.5*2)に達し、下手なポケモンのはかいこうせん並の火力を毎ターン何のペナルティもなく出すことができた。本人のAは65と高くないのだが、基礎威力の高さが火力を支えていた構図である(*20)。サブウェポンとして10まんボルトとバブルこうせんを備え、技範囲もそこそこ広い。
ただ、高い対面性能を持つ強豪ではあったものの、立ち回りと運次第であらゆる局面を打破できたケンタロスとは異なりどうやっても止まってしまう相手もそこそこいた。環境に一定数存在したサイドンにはきりさくが通用せずサブウェポンのバブルこうせんでも確1が取れないため相手側の突破を許し、ゴーストには有効打が無いため退くしかなく、ヤドランに至っては対面から積みの起点にされてしまう密かな天敵だった(*21)。ニドキングやリザードン、ウツボットなど倒せるものの最終的に甚大な被害を被る相手も少なくなく、ケンタロスに比べて運用の難しい面が少なからずあった。
ヤドラン
後期環境で台頭した隠れた実力者。今のヤドランにヤドキングのDがプラスされた形で、Sが30であること以外何一つ穴が無い。非常に広い攻撃範囲(みず・エスパー・こおり・じめん・ほのお)と豊富な変化技に素の状態でも平均以上の火力及び防御力を備え、ごく普通に戦っても強かったのだが、真に恐るべきは当時はレア技だったドわすれで、これを使うと1ターンでとくしゅが2ランク上がる。今基準で言い直すならCDが同時に2ランク上がるというあり得ないレベルの凶悪さで、一度積まれただけでチームが崩壊する悲惨なシチュエーションが現実的に起こり得た。
弱点自体はくさ・でんき・むしと数だけはそこそこあったが、むし技は上記の通り死んでおり、実際に使える有効打はくさ技とでんき技のみ。さすがにヤドランであっても一致のこれらの技を受けると厳しく実際それが突破口だったのだが、くさ技とでんき技はどちらも例外なく特殊技扱いだったことを思い出していただきたい。つまりどちらもドわすれの影響をモロに受ける。対処を誤って一度でもドわすれを積まれてしまうと弱点技ですら仕留めるに至らず、返しの等倍サイコキネシスで即死してしまう惨事が起こる。こうなると最早ヤドランを止める術はなく、サイコキネシスを二~三発適当に撃たれて試合が終わる展開が待っている。
またでんきタイプが有効と言えど漫然と後出しできるわけではなく、習得技の中にじしんやでんじはがあることを留意しておかねばならない。最悪のケースでは交代読みのじしんがでんきに直撃して即落ちしてしまうし、でんじはを撃たれてもキツい。でんき枠は速攻アタッカーや麻痺撒き役も兼ねていることが多いが、これらの役割を潰されてしまう(*22)。当時のでんじははすばやさを1/4にするという信じがたい性能をしており、ひとたび受けてしまうと本来鈍足のヤドランにすら余裕で先手を取られてしまう。
環境トップであるペルシアンに対して非常に強く、死に出しや先発対面から堂々と積みの起点にできた。ドわすれを一度でも積んだヤドランの無法ぶりは上に書いた通りであり、パーティにはヤドランに睨みを利かせられるポケモンが必須の状況。そこで多く採用されたのが、使用禁止になったサンダースに代わるでんきポケモンたちであった。
ライチュウ/エレブー
ヤドラン対策としてほぼすべてのチームで起用されたでんきポケモン。当初の採用率は五分五分だったが、「ポケモンスタジアム」でなみのりを習得できる(*23)点が評価され、後期はライチュウの採用率がエレブーを上回っていた。エレブーも通りのいいサイコキネシスを習得できる、ライチュウと比較して耐久でわずかながら上回るなどの強みがあり、それなりの採用率を維持していた。
リザードン
特段大きな強みがあったわけではないが、水準以上の能力を持つ準高速アタッカーとして多くのパーティに組み込まれた。何より不遇の極みだったほのおタイプがようやく日の目を見たという点が大きい。逆に言えばここまでほのおタイプのポケモンもわざも対戦ではほとんど活躍できていなかったのである。
結びに
当時の記憶を振り返りながらあれこれ書いてみた。一部認識が違っている個所もあるかもしれないが、ご容赦いただきたい。