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Stories Untold レビュー

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目次

ゲームの概要

いわゆる「テキスト入力式アドベンチャーゲーム」(*1)の要素を含んだアドベンチャーゲーム。全四チャプター構成。

タイトル画面

最初のリリースはPC版(Steam)。Nintendo Switch版はこれにインターフェイスの改変と邦訳を加えたものとなり、一部ゲームの進行に違いがある。ただし、移植に伴う表現やシナリオの変更はない。表現規制や内容の差し替えなどは無く、コンテンツの内容としてはPC版と同等である。

基本情報

発売・配信元
Devolver Digital
開発元
No Code
発売・配信開始日
2020/01/23(Nintendo Switch版)
定価
980円(税込)

操作方法

チャプターや場面によって微妙に異なるが、操作方法は左下へ常に表示されているので迷う心配は無い。基本的には左スティックで項目の選択、Lボタンで入力ウィンドウを開く、Aで決定、Bでキャンセル。半分ほどのパートでXボタンによる操作対象の切り替えが可能。

アイテムの収集やそれを管理・使用するといった要素は無い。時間内に何らかのタスクをこなす、というようなアクション性を要求される場面も皆無。また勘違いしがちだが、「誤った選択」でゲームオーバーになるといったこともない(*2)。

左下に操作方法が表示されている。

システム

メニューからチャプターを選択して始める形式。初期状態では第一章のみが選べるようになっている。全四章構成で、第一章をクリアすることで第二章が、第二章をクリアすることで第三章が……という風に順番に開放される。開放済みのチャプターはメニューからリプレイ可能。ただし、チャプター内ではセーブができず(オートセーブおよびマニュアルセーブ両方が無い)、中断すると最初からやり直しになってしまう。ゲームを一時中断したい場合、Switchの標準機能でスリープすることを推奨。

ゲームの特徴

まず前提として、未プレイでのネタバレを防ぐため、ややぼかした表現が多くなることに留意いただきたい。

第一章のスクリーンショット

画面のスクリーンショットを見てもらいたい。テキスト入力式アドベンチャーゲームが展開される画面は存在しているが、プレイヤーが直接ゲームをプレイするわけでは無く、画面の向こう側にいる主人公を操作して「テキスト入力式アドベンチャーゲームをプレイさせる」スタイルになっている。まずこの点を抑えておいてもらいたい。

冒頭に記した通り、少なくとも第一章についてはテキスト入力式(プレイヤーからするとコマンド選択式)のアドベンチャーゲームとして展開される。Lボタンでウィンドウを開き、「動詞」→「対象」の順でコマンドを選ぶスタイルでゲームが進んでいく。場合によっては特定の行動を取らないと次へ進むためのコマンドが表示されないこともある(*3)。コマンドの総数は多くなく、また何をすべきか明白な場面がほとんどなので、正解が分からず長時間詰まってしまうことはまず無い。

ただしコマンド選択以外の操作を求められるシーンも少なくなく、全編にわたって同じスタイルで進むゲームでは無い。むしろ場面によって操作方法が変わる、と言う方が正しいだろう。先述した通り操作方法は常に左下へ表示されるため、そこを参照すれば戸惑う心配は無い。また、状況によっては急いで行動するように告げられるシーンはあるものの、ゲームとして何らかの制限時間が設けられるシーンは無く、どれほど時間をかけても問題ない。

主にプレイすることになるのはアドベンチャーゲームだが、ごく一部3D空間を移動することになる場面がある。これらのシーンはアドベンチャーゲームの一シーンとして盛り込まれているので、敵に追われる・敵を撃退するといった要素は無い。所定の位置までたどり着くこと、或いは決められたポイントをインタラクトすることで先に進むことができる。

クリアしたシナリオはタイトル画面からリプレイが可能。リプレイによって変化する要素は、少なくとも日本語→英語と周回した限りでは見当たらない。シナリオをより深く理解することを目的としたリプレイという意味はあるものの、一周目で大まかな構造は十分理解できるレベルにとどまっている。

プレイした感想

もともとPC版でその存在は知っていたものの、英語でしかプレイできないという点で手が出なかったソフトという位置づけ。なので、Nintendo Switchへ移植されるに当たって日本語への翻訳が行われたことについては率直に評価できる。プレイスタイルがキーボード入力を必須にしているのでコンソールへの移植は難しいと思っていたが、その点についてもゲームシステムに改変を加えることで無理なく対応している。

PC版からの変更点としては、やはりテキスト入力式からコマンド選択式になったところが最も大きい。キーボードからフレーズを入力させるのではなくコマンドを選ぶことでゲームを進めていくスタイルを取ることで、入力インターフェースの限られるコンソールでのプレイを可能にしている。テキスト入力式アドベンチャーゲームは「コマンドを探す」ことに重点が置かれるため、最初からコマンドが明らかになっている(*4)のは本来マイナスになるところだが、本作に限っては正解コマンドを探すことは本筋では無いため、結果としてゲーム性を損なうこと無く移植に成功している。そればかりかコマンド探しに多く時間を取られてしまうことが無くなったおかげで、全体的なゲームテンポの向上にも繋がっている

テープレコーダーの画像

本作は「アドベンチャーゲームをゲーム内の主人公にプレイさせる」という他に類を見ないスタイルを取っている。ゲーム性は異なるが例えばチュンソフトのサウンドノベルである「かまいたちの夜」などは、プレイヤーは主人公となって「サウンドノベルという媒体を通して物語に参加する」形になる。大半のアドベンチャーゲームが恐らくこれと同じ立ち位置になっていて、本作のように「アドベンチャーゲームの外に物語がある」というのは他に見た記憶が無い。この点がまず斬新と言える。

上でも述べた通り移植に当たってキーボードからのテキスト入力では無くコマンドを選ぶスタイルになっているが、ゲームの中にいる主人公はちゃんとキーボードをタイプしてゲームを進める。これによって「自分はプレイヤーに指示を出している」という感覚でプレイすることができ、没入感を高める効果をもたらしている。過去にプレイしたどのゲームとも違っていて、この独特なプレイ感覚については高く評価したい。

第一章のスクリーンショットその2

本作の本質はホラーゲームであり、プレイヤーを様々な方法で驚かせてくる。それに当たってSwitchの持っている機能をうまく使っているのはポイントが高い。これはPC版では全員が体験することは不可能であり、すべてのユーザがほぼ同一のハード環境でそろえられるコンソールならではの特徴と言えるだろう。具体的な言及は避けるが、序盤で必ず一度は驚かされること間違いなしである。単なる移植に止まらず、ハードの特性を活かしているという点で大きくプラスをつけられる。

チャプターによって「やるべきこと」が大きく変わり、「自分が一体何をさせられているのか」が分からないことが、先へ進みたいという欲求を強く刺激する構造になっている。中でも第二章はとりわけ独自色が強く特筆すべきパート。プレイヤーは主人公を操作してある実験を行うことになるが、その際は「自分は実験をしている」という非常に高い没入感を得られる。マニュアルを見ながら機器を一つ一つ操作していく感覚は是非味わってもらいたいと思う。

第二章のスクリーンショット
第三章のスクリーンショット

ゲームを支えるサウンドの質が非常に高いことも記しておかねばなるまい。BGMは雰囲気に合わせたサウンドが中心だが、各種エフェクトは非常に臨場感のあるものが使われており、これもまたゲームへの没入感に大きく貢献している。可能であればTVモードで、できるだけ静かな空間でプレイしてもらいたいタイトルである。

日本語訳の品質は、後述するごく一部のフォント周りを除いて完璧と言って良いレベルで高い。元々多くのテキストを読むことになるゲームだけに、精度の高い翻訳が成されていることは大変ありがたいと言える。英語で二周目をプレイした際も、邦訳に当たって元のニュアンスを壊さないよう細部まで気を配られているのが感じられた。昨今はコンソール向けタイトルでも質が高いとは言えない翻訳がしばしば目立つだけに、本作の丁寧さはそのまま評価点として挙げられる。

第三章のスクリーンショットその2

一方で見逃せない難点もいくつかある。一つはあるチャプターにおける「移動」のシーンで、移動速度が非常に遅い上に大変に酔いやすい。一人称視点のゲームで3D酔いは経験した記憶が無いのだが、本作に限っては途中で小休止を挟む必要が出るほど酔ってしまった。これについては体質にも拠ると思われるが、3D酔いしやすいという人にはつらい虞がある。

もう一つはあるチャプターにおいて高速で点滅する答えの画像を見ながら正しい画像を選ぶというシーンがあり、大変に目がチカチカする。人によっては気分が悪くなりかねないほどで、なぜこのような要素を入れたのか疑問に感じるレベル(*5)。これについてはPC版も同様であり、何らかの形で変更されるかと考えていたが、特段の変更なしに移植された形になっている。

第一章のスクリーンショットその2

最後に、これはゲーム性と言うよりも表現の限界と言うべきなのだが、日本語訳されるに当たって一部のシーンにおけるフォントが残念な感じになっている。極力元のテイストを再現しようとしているのは分かるし、雰囲気をぶち壊しにしているというほどのものでは決して無いのだが、例えばもう少し違うフォントを使うこともできたのではないか? と感じられるシーンが二カ所ほどある。

総評

Pros/Cons

Pros

Cons

健康に影響を及ぼしかねない問題点がいくらかあるのは痛いが、それに文字通り目を瞑ってもあまりある独創性にあふれた傑作。変わったゲーム、面白いアドベンチャーゲームを探しているのなら迷わず購入して良いだろう。移植元であるPC版の評価が高いのも頷ける出来である。

関連リンク

*1:有名なタイトルとしては「ポートピア連続殺人事件」「サラダの国のトマト姫」などが挙げられる。キーボードから直接コマンドを入力し(例:「use key」で「カギを使う」ことをプレイヤーキャラクターに指示するなど。)てゲームを進めていくスタイルが特徴。
*2:かつてこの手のゲームで頻発したので念のため明記。
*3:大抵は「見る」→「周囲」で新しい展開につながる。
*4:どのコマンドが「正解」かを考える余地があるとは言え
*5:ゲーム的には意味があり、また「本当にこのようなシチュエーションになれば恐らくこんな風に見えるだろう」と思えるだけの説得力はある。