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アンリアルライフ レビュー

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目次

ゲームの概要

横視点の2Dアドベンチャーゲーム。プレイヤーは道端で記憶を失って倒れていた少女「ハル」として、高性能AI信号機「195」と共に「先生」という人物を捜す旅に出る。旅の過程でハルと195は数々の不思議な体験をするが、徐々に失われていたハルの記憶が蘇ってきて……という流れで物語が展開される。

タイトル画面。

初リリースは2020年5月14日、プラットフォームはNintendo Switch。PC(Steam)とiOS/Androidにもリリースが予定されている。PC版についてはSteam実績が実装される予定ありと開発者からアナウンスされているが、執筆時点でNintendo Switch版に実績あるいはそれに相当する機能は存在しない。

本作はインディーズゲームのレーベル「ヨカゼ」に属しており、初期タイトルとして発表された4作品のうちのひとつとなる。同レーベルではこの「アンリアルライフ」の他、「From_.」(iOS/Android、2017年11月11日リリース)「ghostpia」(iOS/PC版は配信中、Nintendo Switch版はリリース日未定)「果てのマキナ」(iOS/Android/PC、リリース日未定)が発表されている(*1)。この「ヨカゼ」設立の経緯・コンセプト等についてはIndieGamesJp.devの記事が詳しい。

基本情報

発売・配信元
room6
開発元
hako 生活
発売・配信開始日
2020/05/14(Nintendo Switch版)
定価
2400円(税込)

操作方法

左スティックで左右に移動、Aボタンで対象にインタラクト、Rボタンでインベントリを開いてアイテムを選択、ZRボタンで選択したアイテムを使用、Lボタンでジャーナル閲覧・会話のバックログ再生・後述する「モノの記憶」のリプレイが可能。Lボタンで利用できる機能はシナリオが進むごとに段階的に解放される。

インタラクトの方式は少々変わっており、インタラクト可能なオブジェクトの範囲内に入るとAボタンマークの付いたサークルが表示される。このサークルが指しているものがその時点におけるインタラクト対象になる。範囲に入っていれば対象に密着する必要はなく、Aボタンを押すと自動的にその地点まで移動して実行可能なコマンドを表示してくれる。

インタラクト対象。

オプションでは音量や色覚サポート(*2)が設定可能。また、テキスト表示に使われるフォントについてスムージングを効かせた一般的な表示スタイルとドット絵調のスタイルから選ぶことができる。このレビュー記事では一貫して後者のスタイルで撮影したスクリーンショットを貼付している。

高性能AI信号機「195」と出会うシーンのスクリーンショット。
誰も居ないのに音が鳴るピアノを見るシーンのスクリーンショット。

コントローラでの操作の他、携帯モード時はタッチでの操作にも対応している。

システム

セーブデータの扱いが少々特殊なので最初に記載。

マニュアルセーブとオートセーブに対応し、それぞれ別々にセーブデータが保持される。それに加え、既定のタイミングに達した時点でチャプターごとのセーブデータ(*3)が作成され、そこからゲームを再開する機能も持っている。これはゲームの進行に応じて入れなくなるエリアが複数存在することを踏まえたものと思われる。なお、これらとはまた別の条件で専用スロットに自動的にセーブデータが作成されるケースも存在する。

チャプターごとのセーブデータから再開した場合、マニュアルセーブとオートセーブのスロットはそれぞれのセーブ時に上書きの対象となる。過去のチャプターから再開して最新のチャプターに到達する前にセーブした場合、例えばチャプター4まで進んだ状態でチャプター1から再開しチャプター2まででゲームを終了したようなケースでも、チャプター4の最初から再開するためのデータは失われない。

マルチエンディングのシステムを採用。ただし一般的な「複数の異なる結末がある」というものではなく、ゲームが途中で終わってしまうバッドエンディングが複数と真のエンディングがひとつという形でのマルチエンディング。バッドエンディングに到達した場合すぐにタイトル画面へ戻されるため、正規のエンディングとの違いを見分けるのは容易。バッドエンディング到達時は直近のセーブデータからやり直すことが可能。

ゲームの特徴

本作は一貫してアドベンチャーゲームであり、基本的にアクションの要素は含まれない(*4)。主人公「ハル」を左右に動かし、対象をインタラクトすることでゲームを進めていく。アイテムはインベントリに格納され、持ち運べる数に制限は無い。一部のアイテムは取り出してZRボタンで使用し、中には専用のアクションを実行できるようにするものもある。

リンゴを記憶するハル。

シナリオの進行に合わせてジャーナルが記録され、プレイ中は基本的にいつでも読み返すことができる。先へ進むためのヒントが記載されている場合もあるため、こまめにチェックしておいた方がよい。

記録されたジャーナルの閲覧画面。

謎解きの難易度は適度なレベルに調整されており、攻略情報を参照せずともゲームクリアまで到達できた。詰まりやすいと思われるのは数ヶ所に留まっており、それらも少し試行錯誤すれば解法が導き出せる程度。基本的にはインタラクト可能なオブジェクトへ触れていけば進展が見られるが、注意すべき点として初期状態ではインタラクト可能と判定されないオブジェクトがある。これらはオブジェクトに近づいてAボタンを押すことで調べられるようになる。そのような対象は接近するとコントローラが微弱に振動するため、そちらで判別が可能になっている。

本作の謎解きの鍵となるのが、主人公ハルに備わった「モノの記憶」を見る能力である。対象に「さわる」ことで「モノの記憶」、即ち対象の過去の状態を見ることができ、そこから先へ進むためのヒントを得る……という仕掛けが多数登場する。一例を挙げると、捜し物をして欲しいという依頼に対し、それが置かれていた棚の記憶を見ることで、捜し物が何処へ行ったのかの手がかりが掴める、といった具合。これ以外にも、入手したアイテムを適切な場所で使う、先へ進むための順路を探す、キャラクターを所定の場所まで案内するなど、ゲーム全般を通して多彩な謎解きが用意されている。

「ソファのキオク」のスクリーンショット。

ゲーム本編とは全く関係しないミニゲームとして「VOLTA」という対戦型シューティングゲームが用意されており、ゲームを進めることでプレイ可能になる。この「VOLTA」には複数の隠し要素が用意されていて、特定の条件を満たすことであるキャラクターから「VOLTA」に関わる情報を教えてもらうことができる。「VOLTA」のプレイについては完全に任意であり、一度もプレイせずともゲームクリアは可能。

プレイした感想

操作性

まず特筆すべきはジャーナル閲覧やアイテム選択などの各種ユーザーインターフェースで、この部分は快適に操作できるよう丁寧に調整されている。この点は過去の記憶や会話ログを確認することが多くなる本作に於いて地味ながら見逃せないポイントであり、プレイのしやすさに大きく貢献している。

主人公であるハルの移動速度は標準的で、特にストレスを感じる場面はない。階段や梯子の昇降はインタラクトすることで自動的に行われる形式であり、プレイヤーが直接実行できるのはあくまで左右の移動のみ。この点は少々独特な操作感になっている。インタラクト可能な個所はサークルが表示されるため分かりやすく、ターゲットを探して右往左往するようなゲームになっていないのは評価点。一方で、多少距離があってもサークルが表示されることの多い仕様から、無意味にAボタンを押していると意図しない対象を調べてしまうことがまれにある。Aボタンは必要な場面でのみ押すようにした方がよい。

タンクを背負ったカメと対面するハル。

Nintendo Switchならではの機能としてHD振動が多く使われており、特定の床を歩いた際などに振動が伝わってくる他、隠されたインタラクト対象に近づくことでそれと分かる形で振動する仕掛けが盛り込まれている。珍しいことにタッチ操作にも対応しており、すべての操作をタッチパネルから行える。これは本作がスマートデバイスへの展開が予定されているためと思われる。物理キーを組み合わせた複合操作も可能で、好きなスタイルでプレイできると評価できる。

グラフィック

なんと言っても目を惹くのが、青を基調としたピクセルベースのアートワークである。大半のシーンでこのスタイルで統一されており、静かな夜を思わせる落ち着いた雰囲気をゲーム全体に与えている。この点は公式サイトなどのスクリーンショットなどでも伝えられており、印象に残っていた人も多いのではなかろうか。

駅を泳ぐ魚の群れのスクリーンショット。
マンションのスクリーンショット。

全体のトーンが統一されているだけに、時折挿入されるイレギュラーな描写がより強く印象に残るようになっているのもポイント。詳しくは伏せるものの、作中では度々プレイヤーを動揺させるような不穏な描写・演出が入るようになっている。通常と異なるシーンがアクセントのように使われることで、結果として平時の雰囲気が整えられたものに見えるという意味。

作中で訪れることになるロケーションも多彩。ホテル・美術館・商店街など豊富に用意されており、それぞれの繋がりも「アンリアルライフ」の名に違わず非現実的である。この点はスクリーンショットなどから伝わるイメージそのものであり、事前の期待に沿ったものとなっている点で高く評価できる。

ホテル「くじら」のスクリーンショット。

特徴的な点として、本作はピクセルアートに様々なエフェクトを適用した絵作りがなされている。具体的にはゲームをプレイして確かめていただきたいが、その使われ方はいずれも効果的で、シンプルなドット絵とは一線を画す作りになっている。

窓の外から海が見えるシーン。

グラフィックは本作における一番のセールスポイントであり、スクリーンショットの絵柄に惹かれたのであれば、その期待には間違いなく応えてくれるだろう。

音楽・サウンド

大半のシーンでは穏やかなピアノ曲が流れており、これもスクリーンショットやムービーなどから伝わってくるイメージと合致するものである。クオリティは高く、ゲームへの没入感を高める重要な一要素となっている。一方ピンポイントで焦燥感を煽るハイテンポな曲やどこか間の抜けたコミカルなサウンドが用いられる場面もあり、平板な印象はなくメリハリが効いている。

効果音では、ハルが歩いた際に地面に応じたサウンドが鳴るのが特徴的。材質に合わせて音が変わり、HD振動と合わせて「そこを歩いている」という感触を強く与える。加えてメニュー操作時のシステム効果音が非常によくできており、体感的なゲームの快適さに大きく貢献している。

ストーリー

本作は明確な一本のストーリーを追って進めていくゲームになっており、そのストーリーは秀逸の一言に尽きる。ハルは開始時にすべての記憶を失っており、ゲームについて前提を何も知らないプレイヤーと目線を共有している。そこから「先生」を探して旅をすることになるわけだが、旅路も一筋縄では行かず、驚くような展開が次々に降りかかってくる。この「次に何が起きるのか?」という感覚は「先に進めたい」という欲求を強く喚起するもので、最後までゲームを引っ張る強い力になっている。

エレベータに乗るシーン。

主人公のハルが失った記憶を断片的に見るという形でフラッシュバックが挿入されることがあり、そのシーンは往々にして非常にショッキングである。ストーリーを先に進めていくことで徐々にその真相が明らかになっていく仕組みであり、これもまた先へ進めたいというモチベーションを高める要因として機能している。進行が一本道でリニアな分、先が気になるストーリーでプレイヤーを引っ張っていくのが本作のスタイル。

美術館の案内を見るハル。

ゲーム内ではSF風の用語が多く使われ、幻想的な絵柄と対照的にしばしばサイバーな空気を作中にもたらす。正確な意味までは掴めないものの「おおよそこんなことを言っているのだろう」程度は理解できる範疇に留まっており、ゲームを盛り上げるフレーバーとして効果的に作用している。

そして登場人物も皆非常に個性的で、単に「個性的」という言葉では括り切れない強烈なインパクトを持つキャラクターが次々に登場する。ゲーム開始直後に出会う高性能AI信号機の195、くるくる回るキューブが頭になっているホテルの支配人、ペンギンの駅員、水道施設を管理する謎の生命体など、特徴的なキャラクターが最初から最後まで次々に登場する。彼らと交流することで徐々に人となりが明らかになり、最初に抱いていたイメージとは異なる人物像が見えてくるのも魅力のひとつ。

ハルと195がマリモを見ている。

開発者であるhako 生活氏は公式サイト内で「影響を受けた作品の一覧」を公表しており、「アンリアルライフ」の制作にあたって他作品がどのような影響をもたらしたのかを推測することができる。登場人物の内何名かは「あのキャラクターがモチーフか」とピンとくる者もおり、クリア後に考察してみるのも面白いだろう。

作中の謎や疑問はトゥルーエンドまで到達することでほぼすべて回収され、物語の完結をしっかり見届けることができるのも大きい。ゲーム中は常に謎が付きまとう構成になっているだけに、それらが残ったままにならずきちんと答えが提示されるのは心地よさ・爽快感に繋がると言える。

特色

グラフィック・サウンド・ストーリー・キャラクターいずれも個性的な本作だが、それらを踏まえても本作で最も特徴的なのが、他でもない本作が「ビデオゲーム」であることを活かした演出の数々である。

ビデオゲームであることを活かした演出というのは説明が難しいが、具体例を出すとプレイ時の驚きを削いでしまうため、できるだけ抽象的に説明してみる。例えばゲーム中でいつも行っているアクションに特別な意味が与えられ、通常時と同じ操作をすることで思いもよらぬ展開を目にすることになるといったもの。別のゲームで例を挙げると、任天堂の「星のカービィ ロボボプラネット」における最終ボスとの闘いのシーン。このゲームではカービィが大型ロボットに乗り込んでステージにある大きなネジを回すというシーンが何度も出てくるが、最終ボスにトドメを刺すのはこの「大きなネジを回す」というアクションになっている。これは何度も行っていた動作にで別の意味を持たせて「プレイヤー自身に」行わせるというもので、一方通行のメディアでは表現しきれない描写の分かりやすい例である。

高い場所で佇むハル。

本作でもビデオゲームであることを活かした演出が随所に登場する。中には本来プレイヤーが「安全」だと思っている箇所にさえも演出の影響が及ぶ場面もあり、これはゲームに慣れている人ほど驚かされるかもしれない。ゲームであることを活かした演出といえばtoby fox氏の「UNDERTALE」を想起する人も多いと思うが、察しの通りこの「UNDERTALE」もまたhako 生活氏の「影響を受けた作品リスト」に名前が刻まれている。

欠点・気になる点

大きなストレスを感じるシーンは少ないが、ゲームの進行上同じ個所を複数回行き来する必要がある場面が存在し、その際の移動に若干の煩わしさを覚える。これはハルの歩行速度が遅くもないが早くもないと言った点、階段や梯子の昇降にもインタラクトが必要な点、アクセス方法が複雑なエリアが存在する点などが複合して起きている。ストーリーを先にへ進めたい時に限ってこうした箇所で時間を取られてしまいがちで、没入感の阻害に繋がってしまっている。

ミニゲームである「VOLTA」は凝った作りでありよくできているが、これが少々面倒な仕様になっている。ゲームが設置されているエリアに進入できなくなるタイミングがあり、その間はプレイすることができない。ゲームクリアを迎えても単独で遊べるようにはならず、そのエリアへ進入できるチャプターごとのセーブデータをロードしなければならない。これについてはクリア特典としてタイトル画面から直接アクセスできるような形で解放するといったものでも良かったように思う。

作中で挿入されるホラー的な演出は凝っておりよくできているが、全体としてその描写は独特なもので、一部の演出はゲーム自体の不具合のようにも見えてしまう可能性あり。その演出も少々長めで、特にバッドエンディングからやり直す際は大抵の場合再度見る必要があるため手持ち無沙汰になりがち。

総評

Pros/Cons

Pros

Cons

公式サイトなどで紹介されているスクリーンショットから伝わるイメージ通りのゲーム。インターフェースや操作体系など細かな点についても配慮が行き届いており、価格に見合った価値があると言える。雰囲気に惹かれたなら買って損は無いと断言できるゲームである。

関連リンク

*1:これらはあくまで「レーベルに属する」という扱いであり、世界観や設定などを共有する作品群というようなものではなく独立している。それぞれのデベロッパーも異なる。ただし「アンリアルライフ」開発者であるhako 生活氏は「From_.」「ghostpia」に影響を受けたことを公式サイト内のあるページで明記している他、「ghostpia」Nintendo Switch版の移植にも関わっているなど、個々の開発者間の連携は強いようだ。
*2:赤色を点滅表示させることで視認性を高めるというもの。本作では「赤色」が象徴的に使われる場面が複数存在する故に用意されていると思料。
*3:便宜上「チャプター」と表記したが、ゲーム中ではっきりとチャプターが区切られているわけではない。
*4:ごく一部、タイミングを計って移動しなければならないシーンがある程度。