本資料を含む事象#82644に関するすべての情報は、レベル5セキュリティクリアランスを持つ局員のみが閲覧することが可能です。
事象#82644および#82644の影響を受けた一般市民、あるいはかかるミームへの対応は完了し、事態は収束していると判断されています。
事象#82644が再発生することは、#82644の発生原因を鑑みるに極めて低い確率であると判断され、2006-09-28にLevel5からLevel1へと引き下げられました。
Level5対象となっていた2006-09-28より前の本案件への資料に関しては、2006-09-28にアクセスが禁止され、2010-09-18にアーカイブされていた関連資料も含め、その一切の資料が完全に破棄されました。
現在はプロジェクト-エディアカラにおいて本案件の取り扱いが定められており、当該資料の破棄およびLevel引き下げは、一般市民における#82644への過剰な反応を抑制する目的で発せられた、プロジェクト-エディアカラの指示となります。
当局ではプロジェクト-エディアカラに#82644を一任しているため、#82644に関わるその一切の対応を禁じるとともに、2006-09-28以降に追加・差し替えされた#82644の新規資料に関しても、レベル5未満のセキュリティクリアランスを持つ局員に関してはその閲覧を禁じ、2016-12-04にプロトコルUXに基づき、その一切の資料を完全に破棄することが決まっています。
なお、本案件において多大な貢献をしたプロジェクト-エディアカラに関する詳細は、付帯資料を確認してください。
案件#82644は口腔のふさがった市民(#82644-1)および携帯獣(#82644-2)の同時多発的発生(事象#82644)、及びそれらにかかる一連の案件です。
#82644-1および#82644-2の初回発生は1996-02-27と記録されています。
#82644-1は若い初心者トレーナーから30歳前後の男女、最高齢は45歳の女性までさまざまな市民が対象となっています。
#82644-1は唇がなく、鼻孔の下はすべて皮膚に覆われています。鼻孔は開いており、うめくような音をのどから発すること、および後述する「開口」の後に声を発することから、声帯には異常をきたしておらず、口腔のみが密着し、唇が消失したものと考えられます。また、密着した口腔は、皮に覆われているだけでなく、前面に肉が付き、腹部や胸部などと同様の厚さを持っているものと考えられます。
#82644-2も携帯獣の性別にかかわらず発生しています。
一方、種族に関しては、グラエナやニンフィア、アーボックなど、肉食性の携帯獣のみが対象となっているという特徴が挙げられます。
#82644-1および#82644-2は、口腔がふさがっているため、声を出すことができません。また食物を摂取することもできず、衰弱して死に至ることがほとんどです。
しかし、#82644-1および#82644-2は死の直前に「開口」と呼ばれる行動(行動#82644)をとることがあります。
開口(行動#82644)では、皮膚が破け、肉が切断されることにより、口腔が開きます。
そして、市民が対象となった場合(#82644-1)では以下のように叫びます。
「携帯獣を食すことなかれ」
携帯獣が対象となった場合(#82644-2)でも、#82644-2が何かを叫ぶ様子が確認されており、録音された音声に対するフーディンを用いた携帯獣言語の文書化作業の結果、#82644-1と同様の意味を持つことが明らかになっています。
ただし、舌も密着していることが多く、声を出すために再度分離させていると考えられるものの、その発音は聞き取り難く、上記文言には不正確性を含みます。
なお、開口(行動#82644)には多くの出血を伴います。苦痛によるショック死あるいは出血多量による死亡も確認されています。
最初期の現象発生時、口のない人がいるという通報を受け、現場に向かった職員18人のうち15人の口腔がふさがり、うち9人が食物を摂取できないことによる衰弱死、6人が開口による出血・ショックにより殉職しました。
そのため、#82644は周囲の人間あるいは携帯獣を巻き込むと想定されます。
一般市民を含む死者は#82644が蔓延した3か月ほどで計183人に上り、携帯獣に関しては把握することさえできていません。
事態の重大さを鑑み、当局ではLevel5案件として案件立ち上げを行いました。
案件立ち上げの直後、#82644の発生原因は、生体を殺し食べるということに対する極度の嫌悪感であるという主張がプロジェクト-エディアカラから提出され、当局はその仮説に基づいた対処を進めるよう指示が出ました。
具体的には精神汚染の修復のためのプロトコルUX-II(改)による強度の記憶操作および五感の一時的消失のもたらす強制的な心理的安定状態の創出などが行われました。
これらの施策は十分に効果を発揮し、プロトコルUX-II(改)の使用後における職員の殉職は発生していません。
なお、プロトコルUX-II(改)はプロジェクト-エディアカラより支給された携帯獣によって行われました。
プロトコルUX-II(改)による対処療法と並行して、案件#82644の発生原因そのものをなくす取り組みがなされました。
案件#82644は「生体を殺して食べる」ということへの極度の嫌悪感が引き金となって発生します。
このため、嫌悪感をなくすため、以下の措置が取られました。
1.携帯獣を食べるという記述のなされた文献をすべて排除する。あるいは記載がわからないようにマスクする。
2.携帯獣を争わせた際、血肉などが見えないよう、全人類・全携帯獣の視覚野をマスクする
上記2点の処理は、適用対象が膨大であるため実施が不可能かと考えられましたが、プロジェクト-エディアカラが提案した、自己増殖性を持つ記憶の強制上書き処理により実現可能となりました。
当該処理により、一度でもボックスに預けられた携帯獣は速やかに記憶が上書きされます。上書きされた記憶には「携帯獣の捕食」という概念が消えています。
記憶の上書きが為された携帯獣を所有したトレーナーにも記憶が複製されます。トレーナーに対しては「携帯獣を食べる」という概念とその記載、そして携帯獣を争わせた際に見られる血肉への知覚的遮断が為されます。
この記憶は、記憶が上書きされたトレーナーがほかの市民と接触した際にも複製され、伝播します。
そのため、記憶の上書き処理は、速やかに全地域の全住民へといきわたりました。
仮に記憶の上書きが為されていないトレーナー/携帯獣がいたとしても、そのトレーナー/携帯獣が記憶の上書きが為されたトレーナー/携帯獣と接した瞬間に、記憶が上書きされます。
当該処理はほぼ完了しましたが、携帯獣を研究対象としている一部の研究者からの猛烈な批判を受けました。
現状はその問題も顕在化していませんが、「ポケモン図鑑」と呼ばれる特殊な装置において、まれに「携帯獣を摂餌する」という記載が為され、その記載を直接読み取ることができる若いトレーナーの存在も確認されています。
ただし、対象者は極めて少ないと考えられるため、プロジェクト-エディアカラは事態を収束したとみなし、本案件はプロジェクト-エディアカラの提案を受け入れて、2006年9月28日にLevel1へと引き下げられ、事実上、収束したと判断されました。
ただし、ポケモン図鑑所有者に対しては、プロジェクト-エディアカラが、現在も、常に監視を続けています。
本案件には、1件の付帯資料があります。適切なセキュリティクリアランスを持つ局員のみが、付帯資料を参照できます。