「妹会議」

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「こんにちは。水瀬秋子です」
「神尾晴子や。今日はよろしゅう頼むで」
「美坂栞です。よろしくお願いします」
「かのりんはかのりんっていうんだよぉ。覚えててねぇ」
「みちるは、みちるっていうんだぞー」
「えっと……藤林椋です。その、よろしくお願いします」
「春原芽衣です。皆さんよろしくお願いします」
「私の番ですね。宮沢有紀寧です。よろしくお願いします」
「いよし。これで全員やな」
「あらためて見てみると、結構たくさんいますねー」
「そうですねっ。えっと、一、二、三……」
「……よんごーろく……」
「七、八、九…………あ、あれ……?」
「どうしたんですか? 藤林さん」
「えっと、さっき名前が挙がったのは、八人だけでしたよ……ね?」
「水瀬さん、神尾さん、美坂さん、霧島さん、遠野さん、藤林さん、春原さん、それから私に……」
「……………………」
「にょわ! こんなところにもう一人!」
「……今一番欲しいものは存在感です。こんにちは。伊吹風子です」
「……………………」
「……ま、まぁあれや! 原作でもそんなキャラやったし、ええんとちゃうか?!」
「そ、そうですね……えっと、その、その『誰にも気付かれない』っていう設定は、伊吹さんのシナリオにおける、さ、最大の泣き要素だと思いますし……」
「そ、そうです。それに、そういう生きてるのか死んでるのか分からないっていう設定、その、すごく儚げでいいと思いますよ」
「でもそれだと、みちるちゃんや美坂さんも同じようなものだと思うよぉ?」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「そう言えば、みちるちゃんと伊吹さんのシナリオはちょっと似てたよねぇ」
「……………………」
「あと、あゆちゃんのシナリオの要素も入ってたよぉ」
「……え、えっと、水瀬さん、皆さん揃ったみたいなので、そろそろ代表として開会の挨拶をお願いします」
「了承」

 

「それでは改めまして、会議を始めたいと思います」
「今日は鍵における『妹』キャラの存在意義と立場について話すで」
「皆さん鍵界の妹キャラとして、さらにその方向性を発展できるよう、建設的な意見を出し合いましょうね」
「はいはーい! かのりん、一つ言いたいことがあるよぉ」
「では佳乃ちゃん、どうぞ」
「えっとねぇ、思ったんだけどねぇ、みんな『姉妹』としての妹キャラばっかりだよねぇ」
「そうですね。私にはお姉ちゃんがいますし……」
「みちるには美凪がいるぞー」
「でも普通、『妹』っていったら、『お兄ちゃん』との組み合わせが最強だよねぇ」
「……………………」
「い……いきなり痛いとこを突いて来よるな……」
「しかし、佳乃ちゃんの意見には一理ありますね。少し『お姉ちゃん』が多すぎるというのは事実です」
「そうなるとやっぱり、妹でなおかつお兄ちゃん持ちの芽衣ちゃんが最強の妹キャラだよねぇ」
「わ、私ですかっ?!」
「せやなぁ。芽衣ちゃんのシナリオはまさに妹キャラのええとこを凝縮したような感じや」
「頼りない春原さんを必死に立ち直らせようとする芽衣ちゃんの姿は、きっと皆の心を打ったと思います」
「サッカー部の人に酷い目に遭わされても、諦めずに頑張る芽衣ちゃんはすごかったよぉ。かのりんだったら首を締め上げてたところだったよぉ」
「さりげなく怖いことを言いよるな、こいつは」
「んに。みちると国崎住人は兄妹とはちょっと違うからなー。やっぱり最強はめいめいだと思うぞー」
「私と祐一さんも歳が一つしか離れていませんし、何より年下キャラなら私をはるかに突き抜けてるあゆちゃんがいます。これにはちょっと勝てないです」
「せやなぁ。兄妹っちゅう組み合わせ自体が芽衣ちゃんしかない……」
「神尾さん、神尾さん」
「なんや、どないしたんや?」
(ぴっ)
「……………………」
「……げ……」
「……立ち絵の無い兄に、意味はあるんでしょうか……」
「にょわ! どさくさに紛れて美凪のセリフを!」
「はわわぁ! 大変だよぉ! 宮沢さんもお兄ちゃんがいたことをすっかり忘れてたよぉ!」
「ご、ごめんなさい! その、全然気付かなくて……」
「いいですよー。有紀寧はちょっと頭の弱い普通の女の子ですからー」
「あかん! 存在が忘れられとったことにめっちゃ腹立てとる! 他のキャラのセリフ言いまくりや!」
「風子のこと、忘れてください」
「あんたさっき『存在感が欲しい』言うとったやないかーっ!」
「うぐぅ」
「そんなことより、宮沢さんからなんか怪しいオーラが出てるよぉ!」
「……私は、魔物を討つ者ですからー」
「こらあかん! 誰か止めたらな会議どころやなくなるで!」
「宮沢さん、落ち着いてよぉ! この中には立ち絵どころか『妹』っていう言葉で形容されたことが無い人だっているんだよぉ!」
「そうですっ! いくら設定が妹だからといって、それが活かされて無いんじゃダメだと思いますっ!」
「ちょっと待てお前らーっ! それはうちのことかーっ!!!!」
「……はっ! えっと、私今何してましたか?」
「あ、元に戻ったんですね。良かったですー」
「一時はどうなることかと思いましたけど……これで、一安心ですね」
「無視するなーっ!」
「にゃはは。一件落着一件落着」
「うちは何なんやーっ!」

 

「さて、落ち着いたところで、話し合いに戻りましょう」
「ええんや……うちはどうせ関西弁とバイクしかアイデンティティを保つ術の無い名目だけの妹キャラなんや……」
「そんなにがっかりしないでください。私が元気になるおまじないをかけてあげますから」
「すっかり元通りだよぉ。よかったねぇ」
「なんや、どないすればええんや?」
「まず、両手を合わせて前に持ってきてください」
「こうか?」
「はい。それから目を閉じて、『ゴクサイトチルチルゴクサイトチルチルゴクサイトチルチル』と唱えてみてください」
「んに。妙に引っかかる呪文だぞー」
「チルチル……うおおっ! なんやよう分からんけど元気が出てきたでぇ! なんやこのまま誰かの首の上で逆立ちしてぼきっと気持ちよく折りたい気分やわ!」
「神尾さん、さりげなく怖いこと言ってるよぉ」
「さぁーて元気になったところで、話し合い再開といこか! 皆、なんか言いたいこととかあるか?」
「えっと……私ですけど、いいでしょうか……?」
「あんたか! ええでええで! 言いたいことあるんやったらはよ言い!」
「えっと、今日ここに集まってくださった皆さんの顔を見てて思ったんですが……」
「……………………」
「……………………」
「その……本当に偶然だと思うんですけど……霊体の方が多いような気が……します」
「!」
「!」
「こ、これはまた痛い所を突きますね……」
「しかし、藤林さんの意見は正しいですね。その通りです」
「うちはちゃんとした人間や! とりあえずその辺りははっきりさせとくで!」
「ま、紛らわしいですけど、私もちゃんと生きてますっ。奇跡が起きたんですっ」
「えっとねぇ、美坂さん、ちょっといいかなぁ?」
「え? 私ですか?」
「この前ねぇ、往人君から聞いたんだけどねぇ、あのエンディング、解釈の仕方によっては死んじゃってるって言う話だよぉ」
「ちょ! それ、ど、どういうことですかっ!」
「ちょっと待っててねぇ」
「……………………」
「あったあった。これだよぉ」
「なんですか? これは……」
「美坂さんのエンディングの台本だよぉ。問題になってる部分を読むねぇ」
「……………………」
「『私、もっと生きていたかったです』」
「!」
「確かに、そう書いてありますね……」
「こ、コレだけ見ると、明らかに死にかけの人やな……」
「ぐあは!」
「にょわ! しおしおが吐血したぞーっ!」
「謝れ! 美坂さんに謝れ!」
「うちかいな?! せやかて、いくら設定上『重い病気』や言うても実際どんな病気かさっぱり分からんからイマイチ実感湧かんけど、栞ちゃんは一応重病人なんや! 死にかけいうのは間違うてないやん!」
「おぷばっ!」
「ち、血の量が増えてますっ!」
「謝れ! しおしおに謝れ!」
「ついでに風子にも謝るです」
「み、美坂さんっ! しっかりしてくださいっ! ここで死んだらあゆさんの犠牲が無駄になりますっ!」
「栞ちゃん復活の裏にはあゆちゃんの犠牲があったという考察は多くありますね。なかなかにリアルです」
「とりあえず、ここにいる美坂さんは生の美坂さんだよねぇ?」
「ごほごほ……当たり前ですっ。そんな事いう人、嫌いですっ」
「ああ……私のせいで、何かとんでもないことに……ご、ごめんなさいです……」
「さっきからひどいですっ。まるで私があゆちゃんを踏み台にして生き残ったみたいじゃないですかっ」
「でも、そういう風に読み取れなくもないよぉ」
「違いますっ! そんな事言い出したら、霧島さんだってお母さんを……」
「……あ」
「……あっ……」
「……言うてもうた」
「……………………」
「き、霧島さんの目が川名さん→()みたいにっ!」
「例えば、星の数……」
「え、えうぅぅぅぅっ! こ、これはどういうことですかっ!」
「霧島さんとこの妹さんは、お母さんの話題を振られたらなんやよう分からんのがインストールされるんや!」
「この状態は非常に危険です。皆さん、冷静に対処しましょう」
「皆、距離取りや距離! 近くにおる人を見境無く締め上げに来るで!」
「にょわーっ! みちるに近づいてくるなーっ!」
「あ、秋子さんっ! 例のアレは持ってきてないんですかっ」
「すみません。今日は会議ということで、家に置いてきてしまったんですよ」
「あっ! 遠野さんが!」
「ならばいっそ、わたくしの手で……」
「にょわー!」
「あかん! 誰か止めやな本気でヤバいで! 誰か止めれる人おらんのか!」
「あの……」
「ダメです! 今は近づくこと自体が自殺行為です!」
「あ、あの……」
「お、お兄ちゃーんっ!」
「その……」
「えい! えい!」(ヒトデで殴っている)
「……………………」
「え、えうぅぅぅっ!」
「あの……」
「なんや! 危ないから離れと……」
「えっと、少々手荒になりますけど、止めましょうか?」
「ふ、藤林さんがですか?!」
「お姉ちゃん直伝なんですけど……」
「……………………」
「えいっ!」
(ばこっ)
「にょはっ」
「しらほっ」
「すごい……一撃で止めてもうた……」
「さ、さすがはタウンページ(全国版)……」
「威力が地方版とは段違いですね」
「お姉ちゃんから、『どうせ投げるんだったら威力の高いものを投げろ』って言われたので、その……」
「確かに、破壊力はすごそうですね……」
「んに〜……こらーっ! しおしおーっ! みちるはえいえんのせかいに逝きかけたんだぞーっ! 言っていいことと悪いことがあるぞーっ!」
「えぅーっ……ご、ごめんなさいですっ」
「……とりあえず、佳乃ちゃんが再起不能になっちゃいましたから、この辺でお開きにしましょうか……」
「……せやな。これ以上の続行は無理やわ」
「えっと……次からは地方版にします……」
「なんでしたら、私の資料室にある古い地方版をお貸ししますよ」
「宮沢さんの資料室って、いろんなものがありそうですね。今度、行ってみてもよろしいでしょうか」
「はいっ。喜んで」
「では美坂さん。同じ霊体コンビとして、一緒に『霊体+妹』キャラを広めて行きましょう」
「私はちゃんとした人間ですっ」
「んにー。それだったら、みちるの方が向いてると思うぞー」
「……ふと思ったけどや」
「どうしたんですか?」
「これ結局、何にも話できてへんのと違うか……?」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……次回の予定を決めましょう」
「……せやな」

 

「もう……ゴールしても……いいよね……?」

 

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。

Thanks for reading.

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