これまでの管理局の積極的な工作活動により、インターネットを経由して対象のROMイメージファイルをダウンロードすることは極めて困難、あるいは一般的に見て不可能な状態を作ることに達成しています。現在の本案件は、既にダウンロードされたイメージファイルを可能な限り回収すること、新たなクローンが作成されていないかを監視することの二点が主な活動になっています。
回収されたファイルは管理局が保持するオリジナルのROMセットと比較し、バージョンに相違が無いかを確認します。相違が見られない場合、対象のイメージは管理局の標準情報破棄手順に則って削除してください。何らかの相違が見られた場合は、対象を新規のROMセットとして登録してください。
管理局の倫理委員会の裁定に基づき、本案件で回収されたROMイメージはいかなる理由があろうと起動を許可されません。詳細は付帯資料を参照してください。
案件#115444は、株式会社ナムコ(現・バンダイナムコゲームス)が開発した対戦格闘アクションゲーム「鉄拳2」の異常なROMイメージと、それに付随する一連の案件です。厳密には、正常な「鉄拳2」に大部分のモジュールを依存しつつ、異なるバージョンとして動作させるための「クローン」のROMセットが、本案件にて扱うべき主要なオブジェクトとなります。本来の「鉄拳2」のROMセットは、本案件の取り扱い対象外です。
出現した正確な時期は不明ですが、著名なアーケードゲームエミュレータである「MAME」が2006年中旬に行ったバージョンアップで、当案件のROMセットが「鉄拳2」のクローンとして新規に追加されていることが確認されました。そのため、当案件で扱うROMセットは概ねこの時期に出現したものと推定されています。ほぼ同時期に、多数存在するROMイメージの配布サイトに対して一斉に「pokken2ud.zip」の名称でファイルがアップロードされた記録が残っていることも、この仮説を補強している一因です。
このROMセットは「鉄拳2」の一般的なクローンの一つとして、「MAME」及び「MAME」から派生したアーケードゲームエミュレータで読み込むことが可能です。読み込んだ場合、画面には通常表示されるタイトルスクリーンではなく、黒い背景にごく簡素なフォントで「POKKEN ver.D」と書かれたタイトルが表示されます。エミュレータでコイン投入に相当する動作を行った後にスタートボタンを押下することで、通常通りゲームが開始されます。
起動後に一見して気付くのは、本来の「鉄拳2」に登場するキャラクターが選択画面に一人も存在せず、代わりにポリゴンで描かれた携帯獣のアイコンによってスロットがすべて埋められていることです。ここで操作するキャラクターを選択すると、シングルプレイヤーモードがスタートします。
ゲームの操作体系は正常な「鉄拳2」に準じ、レバー(あるいはレバーに割り当てたキー)でキャラクターを移動させ、ボタンの押下で攻撃や特殊動作を行います。プレイヤーはコンピュータが操作するキャラクターと戦い、最後に登場するボスキャラクターを倒せばゲームクリアとなります。プレイ開始から終了まで、プレイヤー自体には特段の異常は見受けられません。長期に渡る調査により、プレイそのものがプレイヤーに何らかの影響を及ぼすことは無いと結論付けられています。
ただしこのゲームの構成は、通常想定されるものと著しく乖離しています:
このROMイメージはエミュレータで動作させることを前提として開発されていると推測されます。正規の手順に基づいた実機での稼働検証は、システム起動中に本案件に対応する4つのROMがすべてチェックサムエラーを起こして停止するために完遂できていません。
以下は本案件にて最初期に確認された、管理局が「オリジナル」と推定するROMセットの情報です:
pks1verd.2f 1,048,576byte 0768f36d pks1verd.2j 1,048,576byte d29a0546 pks1verd.2l 1,048,576byte 846ace0b pks1verd.2k 1,048,576byte 7a0663b5
ファイル名は、このROMセットが「バージョンD」であることを示唆しています(これはzipアーカイブのネーミングとも一致するものです)。そのため、前身として「バージョンA」から「バージョンC」までが存在した可能性があります。これらのROMセットについては、継続して調査と捜索が続けられています。
後に管理局が「MAME」開発チームにコンタクトを取り、当案件についてヒアリングを行う機会を設けました。ヒアリングの結果、開発チームはこのクローンセットが「MAME」の対応ROMセットとして追加されていることを一切認識していなかったことが明らかになりました。現在、更新履歴からはこのROMセットについての記述はすべて削除されていますが、ソースコード上に対応するルーチンが存在しないにもかかわらず、依然として「MAME」及び「MAME」派生のエミュレータは該当するROMセットを読み込み、正常にゲームを動作させることができています。
管理局内部の協議に基づき、研究目的を含むこれ以上のゲームプレイは一切許可しないとの方針が打ち出されました。異議がある局員は、管理局の倫理委員会に対して異議申し立てを行うことができます。
本案件には、1件の付帯資料があります。適切なセキュリティクリアランスを持つ局員のみが、付帯資料を参照できます。