Subject #92678

Basic Informations:

Subject ID:
#92678
Subject Name:
ポケモン屋敷の怪文書
Registration Date:
1999-05-16
Precaution Level:
Level 1(潜在的 Level 3 または Level 4)

Handling Instructions:

これまでに発見された文書はすべて電子化され、案件別サーバに暗号化した上で保管しています。案件を担当することになった局員は、電子化された文書を自由に閲覧することができます。文書の原本及び電子版に異常な点は見られません。必要であれば電子版の紙媒体への複写を請求することもできますが、媒体の持ち出しに際しては通常の情報持ち出し管理規定が適用されます。

文書で示された研究が実際に行われていたかは意見が分かれています。裁定委員会では、本件は脆弱な根拠に基づいた単なる粗悪な怪文書の一種であり、記載されたような研究は行われていなかった可能性が高いと推定しています。よって、現在の警戒レベルは「1」(異常性はあるが危険性は認められない)としています。

しかしながら、仮に文書に記載されていたような研究が実際に行われており、かつその成果が第三者の手に渡っていると判断せざるを得ない場合、警戒レベルは最低でも「3」と評価され、状況によっては「4」への再分類が行われる可能性も否定できません。警戒レベルの再分類が決定された場合、研究成果を奪取するための体制を速やかに構築しなければなりません。研究成果と思しきものが流出していないかの監視が継続しています。

本件に関連して、1998年初頭に発生したグレン島の噴火についての調査が進められています。噴火はこれまで偶発的に起きた自然災害と考えられていましたが、本件で取り扱う各種文書が流出したことにより、人為的に起こされた可能性が惹起されました。噴火を発生させた可能性のある個人または組織についてこれまでに集められた情報は、案件別サーバのサブディレクトリに保管しています。これらは案件担当者のみが必要に応じて参照することが可能です。

Subject Details:

案件#92678は、1998年10月頃にパソコン通信の一部フォーラムとスレッドフロート型の匿名掲示板に大量拡散された合わせて14本の怪文書と、そこに記載された真偽不明の「研究成果」に関する一連の案件です。

怪文書の概要は、かつてグレンタウンに存在した「ポケモン屋敷」と呼ばれる研究施設で行われていた非合法の研究を告発するものとなっています。文体から、14の怪文書はすべて同一人物によって記述されたものと断定されています。文書そのものは異常性の無い文字の羅列で、安全に閲覧することができます。閲覧したことによる身体的/精神的な影響も見受けられません。

この施設は一般に携帯獣「ミュウツー」の研究が行われていたことで知られています。この「ミュウツー」は、既に絶滅したと考えられている携帯獣の「ミュウ」の遺伝子をベースとして、人為的に改良を加えた携帯獣を産み出すという名目でプロジェクトが進められ、最終的にミュウとは別個の携帯獣を生み出すという成果を得ました。しかしながら、ミュウツーは開発者のコントロールを離れて暴走、最終的にポケモン屋敷から脱走して行方を眩ましたとされています。このエピソードは報道機関などでも紹介され、広範に知られているものです。

文書執筆者の主張によると、ポケモン屋敷では「ミュウツー」プロジェクトとは別のプロジェクトが極秘裏に遂行されていたとのことです。文書では一般の認識と異なり「ミュウツー」プロジェクトは完全な成功を収め、ミュウツーについても人の手を離れて暴走するようなことはあり得なかったと記載されています。

上記に加えてこの「ミュウツー」プロジェクトについては、公にこそされていませんでしたがあくまで合法的な研究であり、出資者として「ホウエン地方に籍を置く大企業」(名称は伏せられていますが、これはホウエン地方カナズミシティに本拠地を持つ「デボンコーポレーション」と推定されます)やポケモンリーグ関係者が名を連ねていたとの記載もあります。同時期に行われたシルフカンパニーによる「ポリゴン」プロジェクトとの関連性も示唆されており、いずれにせよ最終的に得られた成果を世間に向けて公表することが予定されていたことが窺えます。

この文書では、後述するもう一つのプロジェクトでの「致命的な失敗」を隠蔽すべく、研究者と出資者、及びミュウツーが共謀して「ミュウツーの暴走」というカバーストーリーを偽装したというのが真相だとしています。

ポケモン屋敷で行われていたというもう一つのプロジェクトについて、文書では「M2計画」と呼称されています。由来について、文書では情報管理や運用の観点から、知識の無い関係者に「ミュウツー」プロジェクトと意図的に混同させる目的があったとしています。「ミュウツー」プロジェクト自体は「M計画」と呼ばれ、名称こそ類似していますが指揮系統は明確に区別されていました。

執筆者によれば、「M2計画」は「M計画」で得られた成果を基に、以下のような目論見をもってプロジェクトが進められていたとしています:

当初「M2計画」は順調に推移していましたが、最終段階である人体を用いた臨床試験で想定していたような成果が得られず、被験者が次々に死亡するという事態を引き起こしました。さらに文書では、被験者は医学的に見て完全に死亡している状態でしたが、意識を喪失したまま研究所内を徘徊していたとの記載も見られます。杜撰な管理体制により、死亡したとされる被験者の一部が行方不明になったケースも確認されているとのことです。

これ以上のプロジェクト続行が不可能と判断した出資者(文書では「当時暗躍していた国際的な犯罪シンジケート」と記載されています)の判断で、上記の「ミュウツーの暴走」というカバーストーリーが適用され研究所は破棄されたとしています。その後、「M計画」及び「M2計画」の実情を知ったある著名人(文書ではグレンジムリーダーのカツラ氏を示唆する文言が見られますが、確定はされていません)がすべてを公にしようと考えたために、関係者が証拠隠滅を行うべくグレン島の火山を噴火させてポケモン屋敷を完全に破壊したと主張しています。

文書の記載がどの程度正確なのかは明らかになっていません。「ミュウツー」プロジェクトが本当に成功していたのか、また合法的なものであったのか、そして文書に記載されている「M2計画」と呼ばれる別のプロジェクトが実際に進められていたのかは未だ判断が分かれています。管理局の見解として、この怪文書そのものが何らかの情報霍乱の意図を持って拡散された可能性も示されています。

[1999-08-13 Update]

以下は案件担当者の判断により、カントー地方トキワシティ第三支局に在籍する局員が作成した個人日報から転記したものです。

1997年12月に重大な欠陥があるとして市場から回収されたポケモンリーグ監修の電子端末「スタンダードポケモン図鑑'97 カントー地方版」について、初期生産分の一部に注目すべきデータが含まれていることが判明しました。データは「ミュウツー」に関する詳細な特徴(複数のカラー写真/平均的な身長・体重/足跡/鳴き声のサンプル等)そのものであり、現時点までにこのようなデータが公表された記録はありません。データは通常はアクセスできないようロックされていますが、端末に改造を加えればロックを解除するためのソフトウェアをインストールすることが可能です。

この端末は非ポケモントレーナーを含む一般利用者向けに開発された携帯獣図鑑で、認定者に配布される正式なバージョンの携帯獣図鑑の機能制限版となっています。スタンダード版は各地方に生息する携帯獣を概ね収録し、それらの情報を任意に参照することが可能ですが、希少な携帯獣(カントー地方及びカロス地方に生息している「サンダー」「ファイヤー」「フリーザー」等)や公式に実在することが認められていない携帯獣(シンオウ地方及びジョウト地方にて民間伝承レベルで存在が示唆される「アルセウス」等)については収録されておらず、一般的な知識を読み物として紹介するに留まっています。

同端末にミュウツーの完全なデータが含まれていた理由は不明です。読み物としてではなく、実用向けのデータが用意されている点に注意すべきです。96年版以前にはこのようなデータは含まれていませんでしたが、97年版にミュウツーのデータが存在する領域は不自然な空き領域となっています。なお、この空き領域は92年版から一貫して存在しています。

不具合が改善されたという97年版の後期生産分、及び98年版以降については、ミュウツーの詳細なデータは存在しません。92年版から96年版と同様に、空き領域としてすべてのデータが「0」で埋められています。ミュウツーについては、読み物のページに一般的に知られているエピソードが簡潔に紹介されているのみです。

Supplementary Items:

本案件に付帯するアイテムはありません。