本件については、各地域の心療内科医から月次でレポートを受領することになっています。受領したレポートは案件別サーバに保管され、本案件に関するセキュリティクリアランスを保有する局員のみが内容を参照することができます。レポートには個人情報、または機微情報に該当する内容が含まれるため、特別な理由が無い限り複写は許可されません。紙媒体への複写が必要な場合、様式F-142790に所定の内容を記入し、ワークフローを回付してください。
現時点では本件について言及した受診者について特別な対応は必要ないと考えられていますが、提示された仮説のうち一部のものが立証された場合において、監視を含む個別対応が必要になる可能性があります。これまでのところいずれの仮説についても正しいことは証明されていませんが、同時に覆すだけの根拠も存在しません。現状を踏まえ、新たな仮説を提示することは広く歓迎されています。
警戒レベルについては現在も審議が続けられており、具体的な設定値については意見が分かれています。しかしながら、警戒レベルを設定しないまま案件に対応することは困難なため、現状は暫定的にレベル「1」(異常性はあるが危険性は低い)を設定しています。この警戒レベル設定は事前の予告なしに変更される可能性があります。
案件#142790は、ここ数年(遅くとも2010年頃から)各地で見られるようになったある種の記憶改変現象と、それに掛かる一連の案件です。本案件の実態については不明な点が非常に多く、この概要は不正確である虞があります。
これまでのところ、この事象は概ね8歳から14歳頃にかけての少年または少女にのみ発生しています。対象がかつて訪れたことのある場所について再訪したり別の形で目にしたりした際、一様に「ここは自分の知っている場所ではない」と発言することで事象が明らかとなります(事象#142790-1)。記憶の中にある風景と現実の風景が著しく乖離し、記憶に混乱を来します。対象はその時の出来事、例えば食事をしたことや、何かを購入したことなどは鮮明に思い出すことができ、この点については対象と行動を共にしていた者の証言とも一致します。
対象が語る当時の記憶の最大の特徴として、記憶にある風景の中には携帯獣が一切登場しません。そればかりか、携帯獣の写真や携帯獣をモチーフとしたキャラクターなども例外なく出現しません。これまでに得られた情報を総合する限りでは、対象の記憶においては携帯獣の概念そのものが存在しないと考えられます。対象が訪れた場所にいかに大勢の携帯獣が存在していようと、決してその姿を表すことはありません。
おそらくこれに関連する事象が対象に発生します(事象#142790-2)。対象がしばしば携帯獣の存在を認識できず、姿を見ることも声を聞くこともできなくなります。精密検査で視覚や聴覚に異常が無いことが確認されていても、この事象は無関係に発生します。現在のところすべての対象でこれは一時的なもので、長くとも十時間ほどで再び携帯獣を認識できるようになります。対象は携帯獣を認識できなかった際の出来事を正確に記憶できず、往々にして「眠っていた」「夢を見ていた」と答えます。
事象#142790-1及び事象#142790-2について説明するために、局員からいくつかの仮説が提示されました:
管理局では、本案件に関するさらなる仮説の提起を歓迎しています。
本案件に付帯するアイテムはありません。