2013年10月時点で、事象#136823-1の中心になった製品と製品の由来となった個人そのものには異常性が無いと判明したため、現在は事象#136823がどのようにして発生するかを突き止めることが案件対応の主軸となっています。これまでに回収された製品のサンプルは、ホウエン地方サイユウシティ第一支局の第二低異常性取得物保管庫のブロック2-Fに保管しています。案件担当者はレベル3以上のセキュリティクリアランスを持つ拠点監督者に承認を得ることで、製品を持ち出すことが可能です。
現段階においては、匿名掲示板やソーシャルネットワークサービスへの投稿を逐次監視し、事象#136823が発生しているかを情況証拠から判断することが可能です。しかしながらこれまでのところ、事象#136823を事前に観測するための方法は見つかっていません。事象#136823は人為的に起こされている可能性もありますが、明確に断定できるだけの証跡は未だ得られていない状態です。案件担当者は事象#136823が激化することによる人的・物的被害を未然に防止する活動を展開すると共に、事象#136823の起源となった疑いのある存在の捜索を継続してください。
事象#136823の収束後の動きに注意を払ってください。事象#136823が終了するまでに製品を処分しきれなかった個人または団体の中に、事象#136823と何らかの関わりを持つ者が含まれている可能性があります。必要に応じて捜査機関と連携し、事象#136823との関連を追及してください。
案件#136823は、未知の原理によって前触れ無く引き起こされる極端な購買活動を喚起する事象(事象#136823)と、それに掛かる一連の案件です。
当局が初めて事象#136823を観測したのは、2012年の末頃から2013年初頭に掛けてです。ホウエン地方各地で定期的に催されている競技会「ポケモンコンテストライブ!」にて高い人気を誇るコーディネーターの一人「ルチア」氏が当時着用していた、競技会向け衣装を構成するコンポーネントの一つである「ブルーリボン」のレプリカを、ルチア氏と契約を結んでいる企業の一つがファン向けのグッズ「ルチアのブルーリボン」として販売したことが事象の発端となりました。
当初はルチア氏の熱烈なファンが購入する程度で、一般的なファンアイテムの域を出ませんでした。しかしながら日を追うに連れて徐々にリボンに関する話が広まり、4日後にはミニブログサービス「Twitter」で関連するツイートが20万件を突破、発売から一週間後には販売元から累計販売数が100万本を突破したことが報じられました。最終累計販売数は約341万本で、この種のファンアイテムとしては異例の売上を達成したことで話題となっています。
リボンは「手首に結びつける」というありふれた着用方法でしたが、長さを多く取ることで余裕を作り、その上で「同じリボンを結べば端同士で結び合うことができる。つまり、ルチア氏と結びつきが得られる」と宣伝されていました。一般的にはこのことが人気を喚起したと分析されていますが、過去にも類似した方向性を持つファンアイテムは多数販売されており、「ルチアのブルーリボン」のみが爆発的な需要を得たことの根拠としては脆弱なものです。当局は何らかの異常な事象によってリボンの需要が引き起こされたものと判断し、案件の立ち上げを決定しました。購買活動の活発化を齎した事象は、事象#136823という名称が付与されました。
案件立ち上げ直後は、製品である「ルチアのブルーリボン」そのものに異常性があるとの見方が示されていました。しかしながら、回収した300本以上のサンプルすべてについて一切の異常が見出されなかったため、製品自体に特異な性質は無いとの結論に達しました。さらに、製品の販売元やルチア氏本人に対してもヒアリングを実施しましたが、いずれも異常性はありませんでした。「ルチアのブルーリボン」の驚異的な売上は関係者にとっても完全に想定の範囲外で、対象の一人からは「どれだけ多くとも10万本前後の売上と予想していた」との証言が得られました。その後の調査によっても、製造元の事象への関与は認められませんでした。
その後2014年初頭にルチア氏が競技用衣装をリニューアルし、該当するリボンは衣装から取り除かれました。それまでには「ルチアのブルーリボン」の人気も完全に収束しており、大きな混乱は見られませんでした。さらにほとんどのファンはこの件についてまったく話題にもせず、ごく一部でリボンがかつて爆発的に売れたことが懐古的に言及された程度に留まりました。
この「ルチアのブルーリボン」については、後に別の業界関係者がいわゆるステルスマーケティングを仕掛けたことが明らかになりました。これにより、事象#136823は単に人為的に作られた需要である可能性が一時的に浮上しましたが、追加の調査で実際の宣伝効果はほぼ無視できるレベルに過ぎなかったことが判明しました。一般的な広告活動のみで、1,000円の値が付いたごくありふれたリボンが300万本を超える売り上げを達成するとは到底考えられず、原因は不明ですが何らかの異常現象が発生していた、あるいは関与していた可能性が濃厚です。
局員からの報告により、事象#136823とほぼ同様の事象が発生している可能性が提起されました。案件担当者の確認により、報告通り類似の事象が発生しているとの結論に至りました。
これに伴い、かつて「事象#136823」と呼ばれていた事象は「事象#136823-1」と改名され、2015-04-05に発生が確認された事象は「事象#136823-2」と命名されました。旧名である「事象#136823」は、案件#136823で扱う異常な事象全般を指す名称に位置付けが変更されます。事象#136823-2の起源についての調査が行われています。
案件担当者から、過去に事象#136823と思われる現象が発生していないかについて、追加の調査を行う提案が出されました。提案は現在裁定委員会による承認を待っている状態です。
本案件に付帯するアイテムはありません。