この案件のために開発されたクローラーのプログラムが、書庫#117472がインターネット上に新たに出現していないかを常に監視しています。書庫#117472の出現が確認された場合、それが確認済のものであるか否かに関わらずダウンロードを行い、案件担当者に宛てて自動的に所在を通知します。通知を受けた案件担当者は様式F-117472-1に沿ってサイト管理者に書庫#117472の削除を依頼し、速やかな対応が為されない場合は手順M-117472-1によりサイトへのアクセス遮断措置を講じます。
サイト管理者に書庫#117472の投稿者情報を提出するよう通達してください。得られた情報は案件別サーバ#1に保管します。アクセス元については投稿の都度変化していることが分かっていますが、まれに過去と同様の接続情報が得られる場合があります。アクセス元に関する統計情報については、資料D-117472-3を参照してください。資料D-117472-3は月末毎に最新のデータに基づいて更新されることになっています。
収集された書庫#117472は複数の案件別サーバに分散して保存し、三重の暗号化を施します。本案件の案件別サーバは、複数のサーバが同一のネットワークに参加することが無いよう注意を払う必要があります。書庫#117472の一部をサンプルとしてデコード/展開することは認められていますが、特別な理由が無い限り、保管されている書庫#117472を結合することは許可されません。過去に結合実験を行って得られた情報については、資料D-117472-5を参照してください。
案件#117472は、インターネット上に存在する不特定多数の掲示板やWikiに投稿されるテキスト(書庫#117472)と、それに掛かる一連の案件です。
出現が確認されたのは2006年11月頃のことで、局員の一人が事案の疑義ありとして日報に記録したことにより当局の知るところとなりました。管理局が確認している最古の出現事例は既に使用されなくなって数年が経過したレンタル式の電子掲示板においてで、合計146の書庫#117472が2日から47日のランダムな期間を挟んで投稿されていました。日報を記録した局員が書庫#117472と投稿者情報を保全し、書庫#117472について初期調査を行った段階で異常性が発覚、案件として起票されることが決定しました。
書庫#117472は、「ish」によってエンコードされた分割ファイルの断片です。ishは一定のルールに基づいてバイナリデータとテキストデータを相互変換するためのファイルフォーマット及びソフトウェアの名称であり、どのようなファイルであっても変換することが可能です。簡易的なエラー訂正機能を含んでいるため、かつて通信環境が整っていなかった時代に頻繁に使用されていました。性質上データが制御コードを含まないテキストデータに変換されるため、バイナリファイルに相当するデータをテキストのみやり取りが可能な電子掲示板やその他CMSに書き込むことができるという利点があります。
ish及び互換ソフトウェアを使用して書庫#117472を復元すると、「********.zip」という名称のZIPアーカイブが生成されます(例:000001A3.zip)。「********」には0から9までの数字とAからFまでのアルファベットが入る可能性があります。ネーミングルールから、16進数によりナンバリングされたアーカイブファイルと推測されています。ZIPアーカイブは一般的な形式のもので、展開するとアーカイブファイル名と同様の名前を持つ拡張子の無いファイルが生成されます(例:000001A3)。ファイルサイズが常に4096バイトとなっていることから、巨大なファイルを単純に一定のサイズで分割したものと考えられます。
一つのファイルにおける情報量の少なさ故に、分割元となったファイルが如何なる存在であったかについては当初複数の仮説が提示されていましたが、調査の過程で263の抜けの無い連番ファイルの確保に成功しました。ネットワークから遮断した環境下ですべてのファイルのデコードと展開を行い、ファイル名が若い順に結合して作成された出力ファイルの検証が行われました。
検証の結果、データは何らかの携帯獣、それもこれまでに確認されていない未知の種族のデータを分割したものである可能性が非常に高いことが判明しました(携帯獣#117472)。得られたデータからは携帯獣#117472が何らかの特異な能力を持ち、かつ獰猛な攻撃性を持つ種族であることが示唆されています。断片的な情報であり不正確な点が多々あると考えられますが、僅かながら得られた確証はいずれも人類にとって脅威たりえるものでした。
いくつかの結合結果の分析から、携帯獣#117472はイッシュ地方由来の携帯獣である可能性が示されました。イッシュ地方の支局に在籍する局員に検証結果を送付し、当局と協力関係にある複数の携帯獣学の専門家に解析を依頼しましたが、これまでのところ既知の種族で携帯獣#117472と完全に一致する種族は発見されていません。しかしながら解析の結果はいずれも当局が下した判断と一致するものであり、危険な種族であるということで見解の一致を見ています。
現段階に於いて、書庫#117472がどのような存在によっていかなる目的で作成されたのかはいずれも分かっていません。不特定多数の電子掲示板にishエンコードした書庫#117472を書き込む理由についても同様です。携帯獣#117472が最終的にどのような能力や形態を取るのかについても不明な点が多く、現状では書庫#117472及び携帯獣#117472の存在を隠蔽することに案件対応の主軸となっています。
一般的な携帯獣のデータ量とファイルフォーマットの特性からおよそ390,000個の書庫#117472が存在すると推定されますが、本校執筆時点で当局が収集できているのはそのうちの1%にも満たない2,978個に過ぎません。
本案件に付帯するアイテムはありません。