携帯獣#122654-1から-15は一つの大部屋へ収容し、判別を可能にするために腕にタグ付きのブレスレットを着用させてください。それ以外の取扱いについては、一般的なパッチールと変わるところはありません。携帯獣#122654-1から-15の養育担当に割り当てられた局員は、必要に応じて基礎資料リポジトリに存在する携帯獣標準養育手順書の番号327「パッチール」を参照することができます。携帯獣#122654-1から-15についてはいずれも局員と友好的であるため、収容に際して特段注意すべき所はありません。
収容中に携帯獣#122654-1から-15について何らかの特異な挙動や動きが観察された場合は、直ちに上長に報告の上対策を協議することになっています。ただしこれまでのところ、実際に携帯獣#122654-1から-15が通常個体群と異なる挙動を見せた記録はありません。この手順は緊急事態に備えて制定されたもので、通常手順の中に含まれるものではありません。
案件#122654は、集団で生活を営む15体のパッチール(携帯獣#122654-1から-15)と、それに掛かる一連の案件です。
2008年10月24日、ホウエン地方フエンタウン近辺でフィールドワーク中の局員が、集団で行動するパッチールの群れを発見しました。当初は特段の異常性の無い通常個体群だと考えられていましたが、群れを観察した局員が後述するある特徴に気付き、異常事案の虞有りとして上長へ報告を行いました。報告を受けた上長は数名の局員を派遣、第一発見者となった局員と共にパッチールの群れを保護しました。パッチールの群れは局員たちに友好的な態度で接し、また彼ら自身が安全な住処を求めていたこともあって速やかに保護に応じました。その後の収容においても問題は無く、現在の状況に満足しているようです。
携帯獣#122654-1から-15は、それぞれの個体は何ら異常性の見られない一般的なパッチールです。しかしながら15体全員について、体の模様が完全に一致しているという他では見られない特徴を持ちます。体表面の精密スキャンを全個体に対して実施し、厳密な相互比較検証を複数回に渡って実施しましたが、検証の結果はいずれもすべての個体が他個体と体の模様が完全一致するというものになりました。
パッチールの体表面にできる模様は、人体の指紋のように個体ごとに完全に異なっているという認識が一般的に広まっていますが、厳密には約 1 / 4,294,967,296 の確率で完全に一致する可能性があるというのが専門家の見解です。しかしながらこれは相当に低い確率であることは言うまでもありません。携帯獣#122654-1から-15については15体すべてが一致しているために、単純な計算では 1/ 4,294,967,296 ^ 15 となり、これは 1 / 3.121749e+144 に相当します。いずれにせよ、通常ではまず起こり得ないことです。
当初考えられたのは、携帯獣#122654-1から-15が何らかの方法、特にデジタル的な方法を用いて複製されたというものです。しかしながら精密検査の結果、個体ごとに多数の相違点があることが判明し、一部の個体については血液型や歯形といった複製した場合に一致すべき箇所が一致していないことも分かりました。データ化した状態のスキャンでも複製された形跡を見つけることができず、得られたデータはいずれも携帯獣#122654-1から-15が自然界で生まれ育った個体群であることを示しています。
携帯獣#122654-1から-15の体表面にできる模様が完全に一致した理由は不明です。また、携帯獣#122654-1から-15がどのようにして現在の群れを形成したのかについても分かっていません。これまでのところこの個体群特有の性質や行動については観察されていませんが、継続的な観察が必要なものと考えられます。
本案件に付帯するアイテムはありません。