Subject #83280
Basic Informations:
- Subject ID:
- #83280
- Subject Name:
- 落とし物の多い地下通路
- Registration Date:
- 1996-05-23
- Precaution Level:
- Level 3
Handling Instructions:
通路#83280は、本稿執筆時点で「建築時にアスベストが使用されていたことが判明した」というカバーストーリーに基づき、両方の入り口を三重に施錠した頑丈な鉄扉で封鎖しています。鉄扉は定期的にメンテナンスし、不正に解錠されていないことを確認してください。通路#83280の入り口を封鎖している状態が常に保たれていれば、それ以上の保全は必要ありません。鉄扉が破られていることが確認された場合、直ちに再封鎖を行ってください。その際、鉄扉に装着されたすべての鍵を交換しなければなりません。
1996-05-17に発生したインシデントを鑑み、通路#83280でのあらゆる実験は一切禁止されています。過去に行われた実験セッションでの結果については、実験記録-83280を参照してください。実験記録-83280は、本案件に携わる局員のみが参照することができます。適切なセキュリティクリアランスを保持しない局員に情報を開示した場合、当局の定める罰則規定に基づき懲罰を受ける可能性があります。
Subject Details:
案件#83280は、カントー地方シオンタウンとタマムシシティの間を結ぶ旧地下通路(通路#83280)で発生する特異な事象と、それに掛かる一連の案件です。
1995年8月頃から年末に掛けて、通路#83280を通過した多数の市民及びポケモントレーナーから、内容は様々ですが概ね「ここに落ちているはずのない私物を拾得した」という申出が寄せられました。当局が調査に向かったところ、申出にあった通りの異常な事象が発生することが確認できました。この結果を受け、当局は地下通路を封鎖。代替として隣接する新たな地下通路を建設し、交通には支障が出ないよう手配しました。新しく建設した地下通路では、通路#83280で発生する異常な事象は確認されていません。
通路#83280は、外見上特に異常が見受けられない一般的な地下通路です。内部には一定の間隔で蛍光灯が設置されており、歩行者と自転車がそれぞれ通るべき道が床に引かれたラインによって区別されています。それ以外には、特徴と呼ぶべきところは何もありません。後述する条件を満たさずに通路#83280を通過した場合、シオンタウン側から入った場合もタマムシシティ側から入った場合も、問題なく目的地まで到着することができます。その際、事象#83280と名付けられた異常な事象は発生しません。
事象#83280は、通路#83280である特定の条件を満たした場合に発生する特異な事象です。完全な条件は明らかになっていませんが、市民やトレーナーからの申出、及び局員による実地調査により、概ね正確であると推定される条件が分かっています。条件は下記の通りです。
- シオンタウン側から進入する
- タマムシシティ側入口付近で立ち止まっている人間がいない
- 通路半ばに達するまでに、4.の条件を満たす
- 過去に「何かを失った」と感じた出来事の記憶を振り返る
上記の条件を満たすと、通路#83280の出口付近に、拾得物#83280が出現します。
拾得物#83280は、事象#83280により出現する由来不明のオブジェクトです。拾得物#83280そのものは概ね異常の無い物品または製品ですが、物理的に通路#83280には存在し得ないものであることに異常性があります。これまでに確認された拾得物#83280は、いずれも条件4に深く関連するアイテムであることが分かっています。原理は不明ですが、通路#83280あるいは通路#83280内の未知の存在により拾得者の記憶が読み取られ、それに基づいて拾得物#83280が出現しているものと考えられています。
市民からの申出と局員による実験により、拾得物#83280はいずれも拾得者にとって不快なもの、あるいは精神的な苦痛をもたらすものであることが分かりました。これらは拾得者の過去の記憶に基づくもので、拾得物#83280そのものに情報災害を含む何らかの異常性があるわけではありません。
以下はこれまでに発見された拾得物#83280の一覧と、拾得者からヒアリングした拾得物#83280に関するエピソードの抜粋です:
- 拾得者:
- カントー地方シオンタウン在住の27歳の男性
- 拾得物#83280:
- 記入済みの履歴書
- 拾得物に関するエピソード:
- 男性は拾得物#83280を一読し、履歴書が求職活動中の面接で面接官に破り捨てられたものと完全に一致すると証言しました。
- 拾得者:
- カントー地方タマムシシティ在住の8歳の少女
- 拾得物#83280:
- 尻尾の千切れたピカチュウのぬいぐるみ
- 拾得物に関するエピソード:
- ぬいぐるみは少女が友人から借り受けたもので、一人で遊んでいた最中に尻尾が千切れてしまったために友人と諍いを起こして仲違いしてしまったこと、ぬいぐるみはゴミとして処分したことが明らかになりました。
- 拾得者:
- カントー地方ハナダシティ在住の16歳の少女
- 拾得物#83280:
- 微かに腐敗の始まった生卵
- 拾得物に関するエピソード:
- 志望していた高校の受験前日、消費期限の過ぎた卵を使用した料理を口にしたことで激しい食中毒の症状を呈し、最終的に試験に失敗したとのことです。
- 拾得者:
- カントー地方を旅行中の11歳の男子トレーナー
- 拾得物#83280:
- 改造されたエアガン
- 拾得物に関するエピソード:
- 拾得者は明らかに狼狽した様子を見せており正確なエピソードを話せない状態でしたが、後の調査でトレーナーは旅行に出る以前、エアガンの誤射で近所に住む当時五歳の少女を失明させたことが明らかになりました。
- 拾得者:
- ジョウト地方コガネシティ在住の67歳の男性
- 拾得物#83280:
- 古い口紅
- 拾得物に関するエピソード:
- 30年近く前、男性と不倫関係にあった女性が愛用していたものです。女性は堕胎手術の失敗で既に死亡しています。
- 拾得者:
- ホウエン地方ヒワマキシティ在住の32歳の男性
- 拾得物#83280:
- 丸められた縦長の紙。数式が多数書き込まれている
- 拾得物に関するエピソード:
- 中学生の頃、試験中にカンニングをするために持ち込んだものの、教師に発見され厳しい叱責を受けた記憶があると語っています。男性はこの違反行為で内申点を大きく下げられ、志望していた高校へ進学することができなかったとのことです。
- 拾得者:
- ジョウト地方ヒワダタウン在住の23歳の男性
- 拾得物#83280:
- 空になった殺虫スプレーの缶
- 拾得物に関するエピソード:
- かつて同級生が大切にしていたレディバを、嫉妬心から殺虫スプレーを用いて殺傷したと語りました。同級生とはその後疎遠になり、優秀なポケモントレーナーである別の男性と結婚したとのことです。
- 拾得者:
- カントー地方セキチクシティ在住の14歳の少年
- 拾得物#83280:
- 水に濡れた漫画の単行本
- 拾得物に関するエピソード:
- 少年は数年前にこの書籍を万引きし、両親や教師からひどく叱責されたと語りました。以後、両親とはほとんど交流が持てず、両親は弟にばかり目を掛けているとも語っています。
- 拾得者:
- カントー地方シオンタウン在住の17歳の少女
- 拾得物#83280:
- 使用済の女性用避妊具
- 拾得物に関するエピソード:
- 二年前に同級生と初めて性行為に及んだ際に使用したもので、その後同級生とは破局したとのことです。破局の理由は、少女が妊娠したことによる堕胎の是非を巡る意見の相違であると口にしました。
- 拾得者:
- ホウエン地方カイナシティ在住の65歳の女性
- 拾得物#83280:
- 酷く破損した懐中時計
- 拾得物に関するエピソード:
- 女性は詳細を語ることを拒絶しましたが、断片的に得られた情報から、女性が過去何らかの理由で見捨てざるを得なかった親友の所持品であると推測されています。
- 拾得者:
- ホウエン地方キンセツシティ在住の55歳の男性
- 拾得物#83280:
- 箱詰めされた保存の効く食料品各種と、子供の筆跡で書かれた手紙
- 拾得物に関するエピソード:
- 不正な会計処理を行ったことで懲戒解雇処分となった男性の元部下の家族から送られてきたもので、処分できずに会社に放置したままになっていたとのことです。
- 拾得者:
- カントー地方シオンタウン在住の13歳の少年
- 拾得物#83280:
- 泥にまみれたサッカーボール
- 拾得物に関するエピソード:
- 少年は8歳のころ公園でこのサッカーボールを用いて遊んでいた際、誤って車道に飛び出したことで交通事故に遭遇しました。以後、少年は車椅子を使用して生活しています。
- 拾得者:
- カントー地方を旅行中の12歳の女子トレーナー
- 拾得物#83280:
- ガラガラが所持している太い骨棍棒
- 拾得物に関するエピソード:
- 金銭目的でカラカラ及びガラガラを狩猟し、その過程で入手した特に質の良い骨棍棒です。しかしながら、取得直後にガラガラが育てていたと思しき幼いカラカラが現れ、良心の呵責を覚えたトレーナーは骨棍棒を放棄してその場を立ち去ったとのことです。
- 拾得者:
- カントー地方シオンタウン在住の35歳の男性
- 拾得物#83280:
- 大量の血液が付着した大型レンチ
- 拾得物に関するエピソード:
- 男性は拾得物について語ることを一切拒否しました。血液はヒトのものであることが明らかになっています。
- 拾得者:
- ホウエン地方トウカシティ第三支局に在籍する女性局員
- 拾得物#83280:
- 便箋に入れられた手紙
- 拾得物に関するエピソード:
- 局員がかつて恋愛感情を抱いていた相手に渡そうとしたものであることが分かりました。相手は手紙の受け取りを拒否し、以後局員との接触を避けるようになったとのことです。
- 拾得者:
- カントー地方グレンタウン第二支局に在籍する男性局員
- 拾得物#83280:
- 破損したモンスターボール
- 拾得物に関するエピソード:
- 局員がポケモントレーナーとしてシンオウ地方を旅行していた際、いわゆる「やぶれたせかい」に掛かる特異な事案に巻き込まれて消失したヒコザルが入っていたボールです。局員は、ボールは亡骸の代わりとして間違いなく墓地へ埋葬したと語っています。
- 拾得者:
- カントー地方トキワシティ第五支局に在籍する男性局員
- 拾得物#83280:
- 使い込まれた小学生用の竹刀
- 拾得物に関するエピソード:
- 小学生の頃、地元の剣道教室に通っていた際に使用していたものです。局員は当時一つ年上の少女に想いを寄せており、彼女と親しくしたいという思いから剣道教室へ通い始めました。二年が経過する頃には少女とも親しく交流するようになったとのことですが、後に少女を含む一家が惨殺されるという事件が発生しました。その際の第一発見者となったのが局員で、その際ある猟奇的な光景を目撃してしまったことにより、以後竹刀を手に取ることができなくなったとのことです。
- 拾得者:
- ジョウト地方アサギシティ第七支局に在籍する女性局員
- 拾得物#83280:
- 明治製菓製の板チョコレート
- 拾得物に関するエピソード:
- かつて生活していた児童養護施設にて、後に複数の児童に対する強制わいせつ罪により逮捕された男性の元職員の一人から渡されたものです。渡される前後のエピソードについては語りたがらず、ヒアリングを担当した局員もこれを了承しました。
- 拾得者:
- カントー地方タマムシシティ第三支局に在籍する女性局員
- 拾得物#83280:
- 古い編み針
- 拾得物に関するエピソード:
- 幼い頃慕っており、また可愛がって貰っていた局員の母方の祖母が愛用していたものであることが確かめられました。局員はタマムシシティへ移住してから数回祖母から連絡を受けていましたが、多忙のためいずれも回答せずに先送りし、結果として祖母が亡くなるまで再び会うことはありませんでした。
- 拾得者:
- シンオウ地方ミオシティ第四支局に在籍する男性局員
- 拾得物#83280:
- プラスチックのキーホルダーが付いた家屋の鍵
- 拾得物に関するエピソード:
- 局員がかつて家族と共に住んでいたマンションの鍵です。彼はある時この鍵を持っていくのを忘れたためそのまま遊びに出かけ、結果として家の中に侵入していた窃盗犯と対面せずに済みましたが、代わりに後から帰宅した彼の妹が犠牲になりました。
拾得物#83280の傾向から、事象#83280に関与している存在(恐らくは通路#83280そのもの)は非常に高い知性を持ち、かつ少なからぬ悪意を持っていると推測されています。この状況を鑑み、拾得物#83280を出現させる実験は慎重に行われるべきです。
[1996-05-18 Update]
1996-05-17未明、地元の若者グループが鉄扉を破り、カントー地方シオンタウン側から通路#83280に侵入するというセキュリティインシデントが発生しました。明朝5時の定期巡回でインシデントに気付いた警備員が最寄りの拠点へ緊急通報を行い、非致死性の武装した局員5名が現場へ急行しました。
局員が通路#83280内部へ進入したところ、不法に侵入したと思しき3人の若者が死亡しているのが発見されました。2名は両腕を切断され、残る1名はさらに胴体を切断されています。いずれも出血多量が直接の死因になったものと推定されます。辺りに凶器となり得るようなものは見当たりませんでしたが、局員の一人が携帯獣の「ストライク」由来の足跡が残されているのを発見しました。
その後の身元調査の過程で、胴体を切断された若者はかつてストライクを使役していたことが分かりました。ある時ふとしたことが切っ掛けでストライクと仲違いし、彼はストライクをデータ化した状態で物理的に抹消したとのことです。この一件で彼はトレーナー免許を剥奪されています。
この事から、局員の一人が「通路#83280が事象#83280を起こし、拾得物#83280としてストライクを発現させたのではないか」という仮説を提起しました。若者たちが殺害された状況を鑑みても有力な仮説であり、またこの仮説を覆すような証跡はこれまでのところ発見されていません。
以上より当局では、通路#83280は事象#83280を通し、拾得物#83280として生体をも出現させ得る能力を持っているという結論に達しました。これは今まで考えられていた案件#83280の性質から大きく逸脱するものです。通路#83280におけるすべての実験は無期限に禁止され、通路#83280の警備を強化することが決定しました。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
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