新たな被験者#136245が発見された場合、最寄りの拠点で簡単なヒアリングと健康状態のチェック、必要であれば治療や栄養補給を実施した上で、ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局まで移送してください。ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局以外に在籍する局員については、これ以上の対応は必要ありません。必要であれば、ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局から被験者#136245の取扱いに関する詳細な情報を送付してもらうことが可能です。
ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局に在籍する局員は、支局へ移送された被験者#136245を個別の収容室へ移動させ、以後は人型異常体向けの標準収容手順に沿った取扱いと、定期的なヒアリングを実施してください。被験者#136245から何らかの要求を受けた場合は、上席と協議の上承認/却下を判断してください。要求は、それが極度に高額なものであったり、収容違反の危険性をもたらすものであったり、局内の風紀を乱すようなものであったりしなければ、被験者#136245のストレス軽減という観点からも基本的に承認することが望ましいです。
被験者#136245が家族と面会したい旨を伝えてきた場合は、ホウエン地方ハジツゲタウン第三支局へ一時的に移送した上で面会を行います。ホウエン地方ハジツゲタウン第三支局は公共施設として位置付けられており、局内限の情報は一切保持されないことが保証されています。ホウエン地方ハジツゲタウン第三支局に在籍する局員は被験体#136245からヒアリングした家族の情報を元に連絡を取り、面会をセッティングしてください。面会に際しては面会希望者全員に機密条項の遵守を求め、違反した場合は当局によって拘束されることへの同意書の記入を求めてください。ただし、案件#136245及び被験者#136245そのものについては既に広範に対しその存在が知れ渡っているため、例えば家族が被験者#136245として案件管理局に収容されているといった情報は、準公開情報として被験者#136245と家族にその扱いを委ねています。
面会の機会を設ける性質上、あらゆる案件について被験者#136245に情報がもたらされることはあってはならず、また案件対応の過程で収容/入手したオブジェクトとの交差試験は禁止されています。被験者#136245の治療に明らかに有効であるとの判断が下されない限り、あらゆる種類の交差試験は却下されることになっています。
現状では、被験者#136245を完全に治療するための技術は確立されていません。過去に報告された事例から、一般的な外科手術での治療は困難だと見られています。仮に何らかの方法で治療に成功し、社会復帰が見込めると判断された場合は、被験体#136245にプロトコルUXに基づく高度記憶処理を行い、家族の元へ送還する手順が定められています。
案件#136245は、携帯獣の身体の一部を未知の方法で移植された人間(被験者#136245)と、それに掛かる一連の案件です。
被験者#136245が初めて確認されたのは、2012年11月上旬頃のことです。ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局の敷地内に「イーブイの耳と尻尾を生やした」と形容できる容姿をした12〜13歳の少年が助けを求めて駆け込んできたことで、当局の知るところとなりました。警備員が少年を制止するとともに保護し、局内にある医務室へ移動させました。応対に当たった局員は少年がひどく衰弱していることに気づき、応急処置と点滴による栄養補給を実施、2日後にはいくらかの回復が見られたため、容体を見ながらのヒアリングが行われました。
少年によると、彼はポケモントレーナーとしてシンオウ地方を旅行中、詳細不明の集団の手によって誘拐されました。再び意識を取り戻した際には、既にイーブイの耳と尻尾が体に付いていたとのことです。その時の様子から、少年は外科的な手術によりイーブイの身体パーツが移植されたものと推定されています。その後少年は目隠しされた状態で別の場所へ移され、他の同境遇の少年少女らと共に、後述する「クラブ」で働かされることになりました。
数日前まで少年が働いていた「クラブ」では、少年と同じように携帯獣の身体の一部が移植された人々が多数所属していました。少年と同い年かその±5歳程度までの少年少女が多数を占めていましたが、成人の男性/女性も少なからず働いていたとのことです。「クラブ」には連日多くの人が訪れ、気に入ったメンバーを指名して遊興に耽るといった光景が繰り広げられていました。少年を指名する者も何名かおり、彼らに種々のサービスを供していたようです。
この段階で局員は本件を重大事案と認識、概要を取りまとめて中央統括部へ送付しました。中央統括部もこれを承認、局員を案件担当者として割り当てました。事案は案件#136245と指定、少年は被験者#136245-1と指定されました。初期収容手順が整備され、立地上の利点からホウエン地方ハジツゲタウン第二支局を案件対応の中核拠点とすることを決定しました。
その後3週間以内に、被験体#136245-2から-5と指定される少年及び少女4名が保護を求めてホウエン地方ハジツゲタウン第二支局を次々に訪れ、全員が適切な手順により保護されました。保護された被験体#136245-2から-5の特徴については下記の通りです。
被験体#136245の特徴として、移植されているのは耳と尻尾の二部位であることがほとんどですが、時折被験体#136245-5のように他の部位が移植されるケースがあるようです。全員に共通しているのは、携帯獣が持つ固有の能力はまったく移植されていないということです。あくまで外見的な整形を目的として部位が移植されているように見受けられます。ただし移植された部位にも痛覚などの感覚はあることから、単に外科手術で接合しただけではないということは分かっています。
当局が被験体#136245を保護し始めた時期とほぼ同時期に、別の地域でも被験体#136245が「クラブ」から脱走する事案が発生しました。多くは当局や警察機関の手で保護されましたが、一部が脱走後にメディアへ本件を告発、結果として週刊誌やタブロイド紙で「クラブ」及び被験体#136245が写真付きで取り上げられる事態となりました。これに伴い案件#136245及び被験体#136245は公のものとなり、当局も情報規制を一部解除する対応を実施しました。
保護した被験体#136245からヒアリングを実施し、彼らが働かされていた「クラブ」についての情報が集められました。担当者の指示で専門のチームが編成され、さらなる調査が行われる予定です。
2013年2月9日、武装した10名ほどの男が、ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局を襲撃するセキュリティインシデントが発生しました。被験体#136245-1から-5を除いて同拠点には異常なオブジェクトは収容されておらず、被験体#136245-1から-5の奪還あるいは口封じが目的と推察されました。事前にこのような事態を想定していた案件担当者は、速やかに最寄りの拠点に駐留していた機動部隊イプシロン-トパーズに出動を要請、わずかな損害で全員を鎮圧しました。武装解除の後徹底した尋問が行われ、襲撃が「クラブ」の運営団体の指示によるものであることが明らかになりました。
クラブの運営団体は「マルシアス・エンターテインメント」と名乗る未知の組織で、世界各地で同種の「クラブ」を運営しているとのことです。正確な規模は明らかではありませんが、その活動範囲の広さから相応の大きさを持つ組織であると推定されています。当局では各国の警察機関と連携し、「マルシアス・エンターテインメント」への捜査を進めていく方針を固めました。
本案件に付帯するアイテムはありません。