アムリタ・ファウンデーションの関連会社が関わったとされる「恒久的食糧供給計画」に関する資料は電子化した上で案件別サーバに保管し、原本はセキュリティロックが施された金庫室にバインダーへ綴じて保管してください。電子化したファイルについては、案件担当者及び適切なセキュリティクリアランスを保持する局員であればすべての内容を自由に参照する権限が与えられます。これまでの調査によりほぼすべてのファイルの入手に成功しており、未入手とされるファイルはいずれも計画本文とは関連の薄い付帯資料であると推定されています。
現在の警戒レベルは、「恒久的食糧供給計画」の顛末とアムリタ・ファウンデーションの採る利益重視の活動方針により「0(無力化済)」が設定されています。仮にアムリタ・ファウンデーションやその他要注意団体に指定すべき組織が同種の計画を推進していることが明らかとなった場合、別途新規の案件を立ち上げて対応に当たってください。本案件では、既に中止/終了が明らかになっている「恒久的食糧供給計画」のみを取り扱います。
案件#103338は、かつてアムリタ・ファウンデーションが推進していた「恒久的食糧供給計画」なる失敗した計画と、それに掛かる一連の案件です。
当局が「恒久的食糧供給計画」について関知したのは、2002年7月上旬にオーレ地方北東地域で実施された、アムリタ・ファウンデーションの関連企業である「ベストミール株式会社」に対する強襲作戦においてです。企業の拠点は既に無人となっており、ほとんどの設備や資料がそのまま残されている状態でした。突入した機動部隊ゼータ-アメシストは残された設備及び資料をすべて押収し、当局の拠点へ持ち帰りました。その初期調査が行われた矢先に、先に述べた「恒久的食糧供給計画」の存在が明らかとなりました。
ベストミール株式会社が推進していた「恒久的食糧供給計画」は、ほぼすべてのカテゴリの廃棄物を食糧源とするベトベター及びベトベトンを人為的に培養し、それらを人類や携帯獣の食糧として加工することにより、廃棄物処理と食糧供給を同時に実施することが主な目的となっています。計画書ではベトベター及びベトベトンの食料品への加工は有望なビジネスになりうるとしており、アムリタ・ファウンデーションによる積極的な資金や人材の投入が行われていたことが詳述されています。
計画では、廃棄物処理についてはベトベター及びベトベトンがそれらを主食としているためにほぼ解決しているとし、残るベトベター/ベトベトンの食品化に焦点が当てられていました。元来ほぼすべての生体組織が人体にとって致命的なレベルで有毒である両携帯獣の食品化は難航が予想され、実際の計画においても幾度と無く試行錯誤がなされた形跡が見られますが、1998年6月頃、ベストミール株式会社の研究チームが食品化のプロトタイプ試験をクリアしたとのことです。
食品化に至るまでの詳細は明らかになっていませんが、資料上の断片的な記載から、何らかの特異な手法ないしは技術が用いられたものと考えられています。ベトベター/ベトベトンを屠殺し、死滅した生体組織を人体の摂取に適した形に再構築する手法が用いられたことが示唆されています。これにより食品化の目処が立ち、さらに1年半程度の改良期間を経て、2000年初頭より恒常的に食糧が不足しているオーレ地方の北東地域にて実地テストが行われることとなりました。このタイミングで、ベストミール株式会社の本社機能も同地へ移転しています。
以下は廃棄されたサーバーコンピュータから入手した、アムリタ・ファウンデーションからベストミール株式会社へ視察に訪れたと見られる社員が、アムリタ・ファウンデーションの商品開発部門へ宛てて送付したメールレポートの転記です:
Subject: 【報告】BM社主導の食糧供給計画視察結果について(2000/07/12) 宛先各位 いつもお世話になっております。 商品統括部 今村です。 昨日から本日午後にかけて、BM社の推進する食糧供給計画、弊社内コードネーム「ガベージゼリー計画」について視察して参りました。 BM社の営業部長である戸塚さまからご説明を受け、現状に付いて報告いただいた次第です。 率直に申し上げまして、ガベージゼリー計画については明確に失敗と言わざるを得ません。 ガベージゼリーの廃棄物処理能力に付いては申し分なく、当初の期待を上回る性能を見せていますが、弊社がターゲットとして定めるエリアに食糧として展開するには看過しがたい問題が残されたままです。 重点課題No.6として管理されている件ですが、この問題が解決されていない時点で商品化は難しいという認識では一致しているかと思います。展開の都度大規模な媒体工作が必要となれば、掛かるコストは計り知れません。 またそれとは別に戸塚さまから提起された課題として、ガベージゼリーがガベージゼリーを廃棄物として認識するというものがございます。 ある程度の規模を持つガベージゼリー同士で共食いと分裂を起こしてしまうというものであり、保管や貯蔵に際して重大な問題になるのは明白です。 既に現地の実験資材は枯渇しており、周辺地域では明らかに警戒している様子が見受けられます。 戸塚さまは商品開発の継続を要望していますが、現状では弊社に利益をもたらす可能性は低いと判断できます。 プロジェクトのノックアウトファクターを満たしていると言わざるを得ないことから、早期の中止と事後処理推進を提案させていただきます。 製造済みのガベージゼリー及びドキュメント類については、当社の研究開発部門へ移管する準備を始めております。 今後の研究により、少なくとも摂食直後に変異を起こすような重大な欠陥は取り除かれるべきと考えます。 以上、よろしくお願いいたします。
本案件に付帯するアイテムはありません。