帰還者#142397には専任の監督官が付き、日々健康状態を記録してください。帰還者#142397は覚醒中ほとんど常に錯乱状態にあるため、覚醒を検知した場合は医療チームが収容室へ向かい、プロトコルCCに基づく鎮静措置が執られることになっています。プロトコルCCによる鎮静措置は帰還者#142397に対して高い効果を発揮することが明らかとなっているため、別種のプロトコルを用いた追加措置は必要ありません。
所持品や身体的特徴の調査から、帰還者#142397の身元はすでに確定しています。そのため、身元に関する調査はこれ以上必要ありません。帰還者#142397の個人情報にアクセスする場合は、本案件の特別なセキュリティクリアランスが必要になります。このセキュリティクリアランスは通常案件担当者のみに付与されますが、案件担当者が許可した場合、レベル3以上の標準的なセキュリティクリアランス保持者に追加で付与することができます。
2015-03-24以降、帰還者#142397はある程度平静な状態を保っているため、以前の取扱手順に存在したプロトコルCCによる鎮静措置は必要ありません。監督官は帰還者#142397に定期的にヒアリングを実施し、帰還者#142397がどのような経緯を経て現在に至っているかの情報を収集することに努めてください。
ただし本稿執筆時点においても、特にヒアリング中に少なくない頻度で軽度の錯乱状態に陥ることがあるため、監督官は必要に応じてプロトコルCCによる鎮静措置を執ることが許可されています。プロトコルCCによる鎮静措置を緊急実施した場合は、その旨を上長まで必ず報告して下さい。鎮静措置後は最低でも12時間は経過観察期間とし、帰還者#142397をしげきすることのないよう注意を払ってください。
帰還者#142397は、少なくとも生理機能については一般的な人間と同等のものを備えていることが分かっています。日に三度標準的な食事を配給すると共に、申し出があれば別途飲食物を与えることが許可されています。
案件#142397は、少なくとも20年以上行方不明となっていたにも関わらず、失踪当時の姿で発見された14歳の女性(帰還者#142397)と、それに掛かる一連の案件です。
帰還者#142397が保護されたのは、2015-01-12のことです。ジョウト地方アサギシティ第二支局に「支離滅裂な言葉を喚いている少女がいる」との市民からの通報が寄せられ、異常事案発生の虞有りと判断した受付担当者が複数の局員を現場へ向かわせました。現場付近で錯乱状態に陥っている14歳前後の女性を発見し、局員が標準手順による鎮静を試みましたが、対象は鎮静剤を投与されても意識を喪失せず影響を受けていない素振りを見せていました。別の局員が帯同させていたチリーンに鎮静効果のある音色を展開させたことにより対象は鎮静し、その場で確保されました。プロトコルCCは、この確保時の記録に基づいて策定されました。
保護された当初、帰還者#142397は重度の錯乱状態にあり、会話を含む意思疎通が一切できない状態となっていました。そのため、所持品などから身元を割り出すことが優先されました。
事前の予想に反し、調査から三日後には完全な身元が明らかとなりました。帰還者#142397はホウエン地方ムロタウン出身であり、1990年、12歳の頃にポケモントレーナーとして旅立った記録が残されています。14歳の誕生日を迎えるまで毎週レポートが提出されていましたが、1992年8月頃、ジョウト地方アサギシティ近隣を訪れた際に行方不明となり、捜索願が出されていました。その後、何らかの事件・事故に巻き込まれたと判断され、1年後の1993年9月に消息不明のまま死亡届が出されました。このため、既に帰還者#142397の戸籍は抹消されています。
帰還者#142397の特筆すべき点として、物理的なダメージやウイルス感染などに対し、極端なまでに高い耐性を見せることが挙げられます。帰還者#142397は収容後に計23回自殺を試みていますが、そのすべてで帰還者#142397の高い生命力・治癒力により完全に失敗しています。帰還者#142397が試みた自殺の手法は、手首を切り付ける/首を括る/高所から飛び降りるなど多岐に渡りますが、いずれも一般的な人間であれば死亡しているような状態になったとしても、無傷のまま生命を保持しています。
この異常な生命力の高さは帰還者#142397の生まれつきの性質に由来するものでは無く、失踪中に何らかの異常な影響を受けて、身体の性質が変化したことによって生じたものと推測されています。
どのような経緯で帰還者#142397が行方不明となり、およそ22年が経過した2015年に再度出現したのかは明らかになっていません。現在の所帰還者#142397は錯乱状態にこそありますが、会話を行える兆しは見せつつあるため、継続的な治療と調査が必要であると考えられます。
時間の経過と共に帰還者#142397が落ち着きを取り戻し始め、通常の対話が可能になりました。案件担当者は監督官と共に、ヒアリングによる情報収集を行ってください。その際、帰還者#142397の容態を注意深く確認することを怠らないようにしてください。
これまでに複数回行われたヒアリングと当局の調査により、帰還者#142397が辿った経緯が少しずつ明らかになってきています。以下は、ヒアリングの過程で得られた証言を要約したものです。
帰還者#142397はジョウト地方アサギシティ近海にて、一般に「やぶれたせかい」と呼ばれる異常次元に飲み込まれて脱出できなくなり、その中で時間を過ごしていたと証言しています。同種の事案は当局でも複数管理しており、帰還者#142397の証言は信憑性が高いと考えられます。また帰還者#142397からは、当局がこれまで収集した「やぶれたせかい」に関する断片的な情報と合致する証言が複数得られています。
いかなる理由で帰還者#142397が「やぶれたせかい」を脱出し、通常の世界へ帰還したのかは定かではありません。しかしながら一部の局員は、2015-01-10に発生し当日中に無力化された、ホウエン地方でのレベル5事案(事案#142086)と何らかの関係性があるとの見方を示しています。事案#142086と帰還者#142397の関連性については、事案#142086の担当チームと共に調査を続行中です。
帰還者#142397に類似した失踪者が各地で相次いで発見される事案が発生し、各支局の関係者間で会議が行われました。会議の結果、これらの事案はすべて案件#142397と同一のものとの結論が出されました。これにより、帰還者#142397を帰還者#142397-1と再分類し、併せて発見された失踪者を帰還者#142397-2から-18として分類しました。帰還者#142397は、帰還者#142397-1から-18を総称するものとして、位置付けが変更されます。
帰還者#142397の中には男性も複数含まれているため、案件名称が適切で無いとの意見が出されました。案件名称は一ヶ月以内に見直され、再命名が実施される予定です。
シオンタウン第二支局局長より、帰還者#142397-1の特異体質を用いた低レベル異常物品の交差試験を行いたいとの申し出が寄せられました。帰還者#142397-1が同意し、本部からの承認が行われたため、本日付で帰還者#142397-1をシオンタウン第二支局へ移送しました。以後、帰還者#142397-1はシオンタウン第二支局にて収容されます。
帰還者#142397-1からの申し出により、GPS装置の埋め込まれた機器を身体に装着するという条件の下、帰還者#142397-1が親族(帰還者#142397-1の姪)と共に生活することが承認されました。
本案件に付帯するアイテムはありません。