症例#90954は、最後に確認された時点から20年以上が経過しており、現代では根絶されたとの見方が強まっています。これまでに得られた知見から、症例#90954は精神的な病理の一種であり、いかなる形で発症するのかという疑問は残されているものの、病状そのものに特段の異常性は見られないとの見解が示されています。このことから、本案件については警戒レベルを「0」(無力化済)とします。
案件#90954は、ある一定の特異な症状を齎す未知の症例(症例#90954)と、それに係る一連の案件です。
症例#90954の存在が確認されたのは、かつてジョウト地方南部に存在したウツフシタウンにおいてです。ウツフシタウンは1976年5月、ジョウト地方ヒワダタウンに吸収される形で市町村合併が行われ、行政区としては現存していません。合併が行われる10年ほど前には全住民が退去し、5年前には郵便番号が抹消されています。ほとんどの建築物は退去時のまま放置されて老朽化が進み、地区全体が廃墟化した状態でした。
1997年10月頃、土地計画の策定のため、ヒワダタウンの行政担当者が旧ウツフシタウン近隣を訪れ、その際廃墟化していた診療所へ踏み込みました。診療所内には当時の医療記録が大量に残されており、担当者は許可を得てそれらを回収しました。回収された資料を確認したところ、未知の症例と思しき症状の記録が多数発見され、当局へ通報がなされました。当局と行政が協議し、各種の資料については当局が収容・管理することで合意しました。
症例#90954は、旧ウツフシタウンでのみ確認されている未知の症候群です。診療所跡で得られた医療記録から、症状はいずれも精神的なもので、身体的・肉体的なものではないと推測されています。発症者は十一歳から六十九歳までで広範に渡っていますが、その多くは十代前半の若年層になっています。症例#90954の具体的な症状は下記の通りです:
症状が(4)の段階まで進んだ場合、一般的な抑鬱の症状に対応する投薬治療が必要となります。治療せず放置した場合、鬱状態が継続することによる自傷行為や、最悪の場合自殺に至るケースが確認されています。ただし、適切な治療を行えば回復させることはさほど難しくなく、患者は正常に社会復帰することが可能です。
症例#90954が旧ウツフシタウン近隣でのみ見られる理由については、有力な仮説が立てられていません。他の地域で同種の症例が見られないことは、旧ウツフシタウン近隣に症例#90954を引き起こす何らかの要因が存在する可能性を示唆しています。
一連の症状の特徴は、患者が「自分に似た顔が見える」と訴えることにあります。このことからか、旧ウツフシタウンの診療所では一連の症状に「チェリンボ症候群」という名称を付けて管理していました。当局においても、本案件の特徴は携帯獣の「チェリンボ」と何らかの因果関係を持っている可能性があるとの見解が主流です。しかしながら、症例#90954とチェリンボを結びつける直接的なファクターは存在せず、また旧ウツフシタウンにてチェリンボの生息は確認されなかったため、一部の局員からは「チェリンボ症候群」と名付けた診療所の見方に疑問を投げかける声も上がっています。症例#90954とチェリンボとの因果関係については、その有無も含めて現在も調査中です。
本案件に付帯するアイテムはありません。