オブジェクト#87749-1から-12は所定の拠点へ分散して保管し、いずれも110cm×71cm×175cmの高セキュリティ金庫へ個別に保管しなければなりません。複数のオブジェクト#87749を同一の拠点に保有することは固く禁じられています。オブジェクト#87749についてこれ以上の実験を行うことは、生態系へ少なからぬ悪影響を及ぼす可能性があるため、裁定委員会による承認がない限り許可されません。
新たなオブジェクト#87749が発見された場合に備え、担当者には強制的にオブジェクト#87749を接収するための公的な権限が与えられています。所有者がオブジェクト#87749の接収指示に従わない場合、担当者の判断により拘束することが認められています。拘束した所有者については、標準手続に基づき別途ヒアリングを実施してください。
案件#87749は、特定の条件を満たすことである種の携帯獣を無制限に生成できると考えられている由来不明の望遠鏡(オブジェクト#87749)と、それにかかる一連の案件です。
オブジェクト#87749が初めて発見されたのは、1997年6月上旬のことです。カントー地方セキチクシティ東部に位置するゲートの2階に設置されていた望遠鏡のうちの一台について、セキチクシティ在住の市民から当局へ問い合わせが行われました。局員が現場へ出向き、オブジェクトの性質について初期調査が行われました。問い合わせ内容とオブジェクトの性質の一致が見られたため、局員は望遠鏡を回収しました。
オブジェクト#87749は、外見上ニコン社製の観光望遠鏡「20×120」と一致する大型の望遠鏡です。道路間に設けられたゲートなどに数多く設置され、ほとんどの場合百円硬貨を一枚投入することで一定時間利用することが可能になっています。オブジェクト#87749を視認すること、通常の手順に沿ってオブジェクト#87749を望遠鏡として利用することによる対象者への影響は見られません。これは対象者が人間の場合も、携帯獣の場合も同様です。
オブジェクト#87749が異常性を示すのは、利用者によってオブジェクト#87749を通して「西の空」が観察された場合です。条件を満たした場合、利用者はオブジェクト#87749を通して、携帯獣の一種である「フリーザー」が空を飛んでいく場面を目撃します。望遠鏡を覗き込んだ季節や時間帯によらず、オブジェクト#87749を通して西の空が観察された場合、必ずフリーザーが出現します。
このフリーザーはすべて別個体であり、オブジェクト#87749が条件を満たす度に新たな個体が出現します。個体間につながりは見られず、また相互に連携する様子なども見られません。フリーザーがいかなる場所から出現しているのかは不明です。ヘリコプターを用いた出現地点の観察実験では、いずれもヘリコプターが出現を確認できない地点からフリーザーが現れる結果をもたらしました。野生のフリーザーが何らかの理由によって呼び寄せられているのか、オブジェクト#87749が新たに生成しているのかは、未だ結論が出ていません。
出現したフリーザーは非異常性の存在であり、当局により捕獲されたすべての個体について何ら不審な点を示しませんでした。情報化した後に行われた完全スキャンは、フリーザーが一般的な個体と比較して異常でないレベルの差異しか検出できていません。このことから、オブジェクト#87749に関連して出現するフリーザーそのものについては、案件管理の対象外とする判断がなされました。
フリーザーは出現と同時に周囲の気温を低下させる性質を持ち、活発な活動は近隣の寒冷化を招くとの研究結果があります。オブジェクト#87749の使用を繰り返してフリーザーが大量に出現され続けた場合、最終的に寒冷化が地球全土に及ぶ可能性が示唆されています。生態系へ重大な影響をもたらす虞があることから、当局ではオブジェクト#87749の危険度を「Level 4」と設定し、オブジェクト#87749の同型機の回収を進めています。当局の活動により、その後11台のオブジェクト#87749が回収されました。これらはナンバリングされ、個別の拠点にて保管されます。
オブジェクト#87749によって出現し、捕獲されることなく野生化したフリーザーについては、その出自を特定する方法が見つからないことから、取扱いについて保留されています。将来的な対応方針についても未定のままです。
本案件に付帯するアイテムはありません。