自業自得というか、自分からしたことなので仕方ない部分もあるのですが、ちょっと気味の悪い出来事について。
2018年に行った神保町の古本まつりでかなり古い『マガジン』がまとめて売られていて、完全に捨て値だったのでその場で買ったのがきっかけです。
確か10冊で500円とかだったかな、利益を出すのではなくて保管スペースを空けたいので売るという印象がありました。
勢いで買ったはいいもののさすがに雑誌10冊は結構重くて、持ち帰るのになかなか苦労したのを覚えています。
買った本やゲームを積んでしまうことが多々あるのですが、その時は珍しくすぐに読み始めました。
漫画そのものも面白いのですが、当時の広告とかを見るのがそれ以上に面白かったです。
そういえばあの頃こんな商品あったなとか、この広告に出てる女優今どうしてるんだろ、とか。
それで、確か三冊目だったと思います。1995年4月26日、第19号だったのを覚えています。
それまでと同じように頭からだらだら読んでいたところ、『はじめの一歩』の3ページ目辺りでふと目が留まりました。
隅にかすれた黒いボールペンで書き込みがされていて、それをたまたま見つけた形です。
書かれていたのは『03の何某の何某』、東京の市外局番付きの電話番号でした。
雑誌は中古だったので落書き自体はあってもおかしくないですが、なんでこんなところに電話番号が書かれているのかは分かりませんでした。
この不気味さにちょっと興味を持ってしまったのが良くなかったのだと思います。
古雑誌を読んで暇を潰していたくらいなので時間は余るほどあり、軽い気持ちでスマホを手に取りました。
古雑誌に落書きされた番号が今はどこへ繋がるのだろうか、それを知りたかった記憶があります。
とりあえず掛けてみて、もし繋がったら「間違えました」と言って切ろう、とか考えてました。完全に迷惑電話です。
知らない番号を押すときに感じる若干の緊張感を覚えつつ、落書きされていた番号を入れて発信しました。
すぐに呼び出し音が聞こえてきました。ということは、今もこの電話番号は使われているみたいです。
三回ほどコールした後唐突に音が途切れて、それから……。
「あなたの助けが必要です」
という、明らかに合成音声というか機械音声というか、抑揚のない声が聞こえてきました。
どういうこと? と戸惑っていると、さらに続けて「あなたの助けが必要です」という声が。
最初と少し声色が異なり、やや高く、かつゆっくりになっていたように思います。
その後も五秒くらいの間を開けて「あなたの助けが必要です」という合成音声が聞こえてきます。
成人男性のもの、子供のもの、おばあさんのようなもの。どれもことごとく抑揚がなく、ただただ不気味です。
電話を切っていいのか分からずただ聞き続けていると、また五秒ほど間を開けて。
「あなたの助けが必要です」
それまでとは大きく違う、人間のものに近い抑揚のはっきりした声が聞こえてきました。
私はそこで怖くなって反射的に電話を切ってしまい、しばらく怖くてスマホを遠ざけるほどでした。
間を置いて様子を見てみましたが、特に変わったところはありません。声が聞こえただけなので当然ではあるのですが……。
ネットで電話番号を調べてみましたが、どうも知らない不動産会社が使っていた番号のようでした。
その会社はかなり前に倒産しており、電話も繋がらないはずです。
あの時なぜ電話がつながり、「あなたの助けが必要です」と言っていたのか、何から何までさっぱり分かりません。
もう一度電話をかけてみようかとも考えましたが、あの時の声を思い出すとどうにも指が動きません。
今は、もうこのまま忘れてしまうのが一番いい。そう思っています。