スーパーマリオ64とは
1996年4月21日に任天堂から発売されたNINTENDO64向けの3Dアクションゲーム。スーパーマリオシリーズ初の3Dアクションゲームであると同時に、NINTENDO64のローンチタイトル(本体との同時発売)のひとつでもある。斬新な操作体系から繰り出される爽快なアクションと、従来の面クリア型とは一線を画す箱庭探索型のゲームデザインが高く評価され、全世界で1,190万本を超える売り上げを記録する大ヒットタイトルとなった。
"Super Mario 64 Iceberg" とは
上で突然何を言い出したのかと思われる方が大半だろうが、今回取り上げるのはこの『スーパーマリオ64』にまつわる都市伝説及びネットミームである。皆さんはどこかでこんな画像を見た記憶はないだろうか?
source: https://sm64-conspiracies.fandom.com/wiki/Iceberg?file=Iceberg.png
我々の知っている『スーパーマリオ64』は文字通り「氷山の一角」でしかなく、実はこのゲームの裏には恐るべき陰謀と得体の知れないアノマリーが潜んでいるのだ――
……という、主に英語圏のファンコミュニティによる二次創作の過程で作られた画像である。
大まかな経緯
もともと英語圏では『スーパーマリオ』シリーズの二次創作が大量に作られており、その中には原作ゲームを改変した俗に言う「改造マリオ」系列のゲームも山のように存在していた。その中には当然のように『スーパーマリオ64』をいじくり回したものもあり、ある程度知名度のあるものとしては2011年頃に公開された『Super Mario Star Road』などがある。
また別の系譜として、マリオシリーズのキャラクターを使ったジャンプスケア中心のホラーゲーム、いわゆる「.exe系ゲーム」と呼ばれる単独で動作するゲームが数多く存在したことも挙げておきたい。マリオやルイージは必要以上に血みどろにされたり「見ると呪われる」などの根も葉もない設定を生やされたりしつつ、主に英語圏ユーザーの手で恐怖感を煽るコンテンツとしても使われていたということである。氷山の画像ができる前からいろいろな意味で創作の題材になっていたわけだ。
こうしたファンコミュニティによる創作がずっと続いていたのだが、2018年に大きな転機が生じる。Nintendo Gigaleakと呼ばれる任天堂からの大規模なデータ流出事件である。流出したデータは2TB以上とも言われ内容も多岐に渡る(*1)が、中には『スーパーマリオ64』の製品版、及びその前身となった開発版の完全なデータが含まれていたのである。
流出により全貌が暴露された開発版は製品版とは内容が大きく異なり、それまで『スーパーマリオ64』を原型がなくなるまで擦り倒していた英語圏ユーザーに大きな衝撃をもたらす。この辺りから都市伝説・現代怪奇・陰謀論的な二次創作が盛り上がりを見せ、様々なネタや妄想が作り出されたことでほどなくネットミーム化、そして2021年10月12日に例の氷山画像の元になった表が作成される。(*2)
以上が「Super Mario 64 Iceberg」の簡単な誕生経緯だが、その後もさすがに往時ほどの勢いはないものの未だに一部で創作活動が続けられている。
……そう、"氷山"は一度作られた後も妄想やネタを取り込み続け、その結果下方向や横方向に伸びたりまた別の個体が誕生したりしていたのである。
なんかもうサムネイルの時点で「増えすぎだろ……」と言いたくなってくる。
今回は『スーパーマリオ64』の怪奇・恐怖系二次創作コミュニティの中でも特に多くの情報が集積しているMIPS Hole Wikiにて「The most circulated version(意訳:もっとも流布された版)」とされる表に記載されたものに絞り、簡単な解説を行いたい。あくまで上記の画像に掲載されていたものについての記述であるため、この文書が『スーパーマリオ64』にまつわる都市伝説や怪奇創作、またはネットミームのすべてを網羅するものではない点を留意いただきたい。
Super Mario 64 Iceberg
The Surface (第1階層 - 表に出ている部分)
製品版のゲーム中で再現できる奇妙な現象や、創作ではない事実に基づくネタが含まれている。この辺りはRTAやスーパープレイの動画で知っているという人も多いかも知れない。
L Is Real 2401
ピーチ上の裏庭にある噴水には星型のモニュメントが飾られているが、その台座には何らかのテキストが書かれている。これが「L Is Real 2401」と読め、「L」――つまりルイージはゲーム中に実在(is Real)するという隠しメッセージだ……というネタ。非常に有名、というか『スーパーマリオ64』について調べていると必ずと言っていいほど出くわす定番ネタであり、日本語で書かれた記事が存在するくらいには流布している。
実際の製品版にはルイージの登場場面は一切存在しないが、元は登場させるつもりだったことを宮本茂氏が小学館の公式ガイドブックで語っているほか、例の流出データの中にはルイージに関するアセット(*3)が多数含まれていたそうな。
Whomp's Fortress Tower 1-Up
「バッタンキングのとりで」の頂上にある塔にはパンチで叩くことで壊せる壁が一枚だけあり、その中には1UPキノコが隠されている、というもの。これは製品版にも存在するギミック。攻略本に載っているくらい有名であり別に恐怖要素はないと思うのだが、「パンチで壊せる壁」という仕掛けはここ以外では存在せず、まあ特異ではある。
Spaceworld '95 Beta
任天堂がかつて開催していたゲームの展示会である「任天堂スペースワールド」、その95年度版である「ファミコンスペースワールド95」に展示された『スーパーマリオ64』のベータ版ビルドのこと。製品版とはUIや見た目が大きく異なっている。
Bob-omb Battlefield Bridge Hanging
「ボムへいのせんじょう」に掛かっている一つ目の橋は下からジャンプすることでぶら下がることができる、という製品版にも存在する小ネタ。ゲーム的にまったく意味がないのになぜか捕まることができるのが不気味、とのこと。
Parallel Universes
いわゆる「スーパープレイ」の研究過程で発見された「並行世界」という概念。実際にはゲーム内処理のバグによる怪現象。スーパーマリオ64学入門である程度分かりやすく解説されている。
Impossible Coin/Goomba
ゲーム中に存在するが、壁や床、地形に埋まっていることで取得できないコイン、及び倒せないクリボーのこと。バグというか設定ミスの類と思われる。より詳細な情報はAUTOMATONの記事を参照のこと。
Half-A Press
『スーパーマリオ64』のスーパープレイを研究しているpannenkoek2012氏が提唱した概念。大雑把に言うと「Aボタンを押しっぱなしで離さないまま所定の目標を達成する」というもの。字面からイメージされる「ボタンの半押し」とは異なる。
Under The Surface (第2階層 - 水没している部分)
製品版におけるさらにマイナーなネタや無意味な仕掛け・メッセージ、また製品版にも存在しているが通常では見ることのできない没データが含まれる。この辺りはまだ実在しているものの方が多い。
Big Boo Unused Text
「テレサのホラーハウス」で使われる予定があったと思しき没テキスト。恐らくテレサ、もしくはボス格であるおやかたテレサが発するメッセージだったのだろう。ゲーム中の操作で見ることはできない。
クックック・・ とりついてやる。 ヒッヒッヒ! カベも とおりぬけてやる。 こんなこと できるか? ケッケッケ!
ちなみに英語版ではこのようになっている。
Eh he he... You're mine, now, hee hee! I'll pass right through this wall. Can you do that? Heh, heh, heh!
よりによって没になったのが幽霊であるテレサのテキストということでここに置かれているらしい。
"Don't Become His Lunch"
「やみにとけるどうくつ」の最奥部にある地底湖、そこにいる首長竜・ドッシーの近くに置かれた看板にはなぜか最後に「かれのエサにならないでください」というなんとも物騒な一文が書かれており、これが恐怖感を煽るとして取り上げられたもの。なお実際のドッシーはほぼ完全にプレイヤーの味方キャラと言ってよく、食べられるようなこともない。
Blargg
恐らく「ファイアバブルランド」で登場する予定があったと思われる敵キャラ「ウンババ」の没モデルを指す。制作途中で放棄されたのかテクスチャが貼られておらずのっぺりした印象を与える。詳細はThe Cutting Room Floorの個別記事を参照。姿も見ることができる。
The Mirror Room
ピーチ上の2階にある鏡の部屋のこと。ゲーム的には「スノーマンズランド」への入口になっている。鏡の間という心理的恐怖をもたらしやすい場所のためか様々な意見(妄想)が出ており、「鏡の向こうに別の世界がある」「鏡の向こうにある絵からは違うところへ行ける」「鏡に映る『スノーマンズランド』の絵が奇妙にねじ曲がっていた」など枚挙に暇がない。
The Big Dud
「ボムへいのせんじょう」における最初のスターである「やまのうえのボムキング」をクリアすると必然的にボムキングを撃破することになるのだが、その後ステージに入りなおすと砦の下層で転がっている鉄球が2つから3つに増えている。これが手足と顔のパーツと王冠が吹き飛んで変わり果てた姿になったボムキング(The Big Dud)なのでは? という思い付きから生まれたネタ。
鉄球が増えたことと関係するのかと言うとどう考えても関係しないと思うが、ボムキングがいなくなった後の赤ボムへいは英語版で"Big Bob-omb is nothing more than a dud now"と発言しており、「dud」はここから結びつけられたと思われる。
Yoshi's Saddle
スターをすべて集めた後ピーチ城の屋根にヨッシーが出現するのは有名な話だが、そのヨッシーに付けられた鞍の色について、本来白になっているべき箇所が赤く塗られているというもの。この手の恐怖コンテンツで一番人気の「赤」が使われているということでネタにされてしまった。
JRB Vanishing Fog
「かいぞくのいりえ」では海賊船が浮上するまで霧がかかっている。一つ目のスターを取得することで沈没していた海賊船が浮上するが、これに伴い霧が消失する。海賊船の浮上と霧の消失というあまり関係のなさそうな二つの事象が連動していることから何かあるのでは、というネタ。「JRB」は「かいぞくのいりえ」の英語版名称「Jolly Roger Bay」の頭文字を取ったもの。
"Please Walk Quietly In The Hallway!"
ピーチ城二階にある看板「ろうかはしずかにあるきましょう」のこと。ゲーム的に何の意味もないことから不気味だとして取り上げられた。
Unagi's Tunnel
「かいぞくのいりえ」の奥部にあるウナギ……もといウツボの住処のこと。プレイヤーが進入できないその奥に未知のステージがある、といった形でネタにされる。
Yellow Cap Switch
黄色い「!」スイッチのこと。ゲーム中に登場するのは赤(はねぼうし)・緑(メタルぼうし)・青(スケスケぼうし)だが、未使用の黄色いスイッチが没データとして存在している。対応するアイテムボックスも存在。推測だがノコノコの甲羅を使用可能にするために用意された可能性があるとのこと。詳細はThe Cutting Room Floorを参照。
MIPS Throwing
地下にいる黄色いウサギ「ミップ(Mip)」は製品版だと捕まえても置くことしかできないが、開発版だと箱やボム兵のように投げられたことを指す。これについては小学館の公式ガイドブックでも宮本茂氏が語っている。内部的には投げる処理も残っており、パッチを当てることで見ることができる。
Ghoul Medal
英語版における「テレサのホラーハウス」の外周にある看板のテキストで言及される謎のアイテムらしきものを指す。
You don't stand a ghost of a chance in this house. If you walk out of here, you deserve... ...a Ghoul Medal...
これについては「Gold」と「Ghoul」を掛けた言葉遊びであり、単にパワースターを入手するためのヒントとの見方が有力だが、例によって架空のアイテム取得方法などでネタが伸ばされている。
Broken Paintings
ピーチ城2階に複数存在する「入ることのできない絵」のこと。ゲーム序盤で入ることのできるオブジェクトとして登場したのに再登場すると入れない……という点に引っ掛かりを覚えたらしい。
Whomp King Turns Into The Castle
「バッタンキングのとりで」に登場するボス・バッタンキングは「壁や床は自分たちでできている」的なことを言って襲い掛かってくるが、撃破してから再訪すると彼がいた場所に塔が建っている。この塔は死んだバッタンキングを素材にして作られたに違いない、という話。自分も当時ナチュラルに同じことを考えていたのでちょっと懐かしくなった。
Secret Aquarium
ピーチ城1階、「かいぞくのいりえ」の入口フロアにある「おさかなといっしょ」のこと。城の1階から行けるステージなのに背景には空が広がり、水で満たされ四つの窓があるだけの不可解な部屋ということでこれもネタに。確かに他と比べてちょっと不思議なエリアではあるが。
Dancing Flowers
没データの中にヨッシーアイランドにでも出てきそうな「踊る花」のグラフィックがあり、それがなぜか「ファイアバブルランド」関係のリソースの近くに置かれていたことで不気味がられたことを指す。グラフィックは例によってThe Cutting Room Floorで見ることが可能。
Volcano Blocks
「ファイアバブルランド」の火口内エリア、その最上部に置かれたパワースター近くで見つかる二本の謎めいた柱のこと。片方は立ったまま、もう片方は倒れて崩れている。ゲーム的な意味はまったくないフレーバーとしてのオブジェクトである。
ET In Pyramid
「あっちっちさばく」のピラミッドにはヒエログリフが見られるが、これが「E.T.(Extra-Terrestrial:地球外生命体)」を意味している、というもの。オカルトの定番ネタであるピラミッドにこれまた鉄板ネタである地球外生命体がくっついたことで、なんだか80年代の『ムー』みたいな話になってしまっている。
Bugged Fire Texture
マリオが炎を浴びると尻に火がついて走り回ったり飛び上がったりするが、この時に上がる黒煙の表示がパラメータ設定のミスでおかしなことになっている、というバグを指す。
HMC Alcove
「やみにとけるどうくつ」のゴロゴロ岩地帯を抜けた先にあるエレベータのあるフロア、そこにある小さなくぼみを指す。ご多聞に漏れず用途不明ゆえに不気味とされた。「HMC」は「やみにとけるどうくつ」の英語版名称「Hazy Maze Cave」の頭文字を取ったものであり、「Alcove」は「部屋や廊下にある壁面の一部を後退させてくぼみを作った部分」を意味する。対応する日本語は特になく、住宅業界などではそのまま「アルコーブ」と呼称されている。
JRB Box
「かいぞくのいりえ」で海賊船が浮上した後、船の上を船の動きに合わせて滑っているドクロマーク付きの箱を指す。触れるとダメージを受けるだけのお邪魔ギミックだが、見た目が不気味ということでこれも氷山の一角に数えられる。
The Deep Waters (第3階層 - 氷山の終端)
この辺からだんだん創作色が濃くなっていく……のだが、どちらかというと「それって気にすることか?」というモノが増えていく気がする。
WDW Skybox
「みずびたシティー」の背景には紫色の町並みが広がっているが、これはスペインのカサレスを高所から撮影した写真を加工したものが使われているとされる。このことを指す。
「WDW」は「みずびたシティー」の英語版名称「Wet-Dry World」の頭文字をとったもの。
True Locations Of Painting Worlds
ピーチ城の「絵」などから行ける世界は直接城と繋がっていないはずだが、一部の世界は特定の行き先がピーチ城のどこかになっている。「やみにとけるどうくつ」から行ける「メタルスイッチのたき」は川を下るとお堀の滝に出る、「にじかけるはねマリオ」はステージから落ちるとピーチ上の上空から降ってくる、「ウォーターランド」は潜水艦のハッチに吸い込まれると(なぜか)ピーチ城の池に出る。これらの構造的な矛盾を指摘したもの。
Haunted Dirt Texture
ゲーム中で使われている一部の「土」のテクスチャが人の顔のように見えて怖い、というものを指す。MIPS Hole Wikiで画像を見られるが、ガイドが付いているためにそっちに引っ張られて顔に見えなくもない、という印象。
Removed Courses
上述した大規模なデータ流出事件に関連し、2020年に暴露されたデータに含まれていた「2TEST.bin」「3KINOP.bin」「32NIGHT.bin」「35POISON.bin」という4つのステージファイルを指す。これらは製品版に対応するステージがないことから「削除された(Removed)」のだと話題になった。
Skyboxes Are Photographs
「みずびたシティー」ステージ背景の写真は実在するどこかの風景を写真に収めたものだ、という噂。これについては上で述べた通り、スペインのカサレスが元ネタであるという説が有力。
Secret Slide Dimensional Rift
「さむいさむいマウンテン」と「たかいたかいマウンテン」にはそれぞれステージ内にスライダーのエリアが存在するが、それらのコースから外れて落下すると真っ暗な闇に飲まれてミスになってしまう。これも構造的におかしいとツッコミを入れている系のネタ。
THE END Screen
エンディング後に表示される「THE END」の画面に注目すると、パワースターを象った飾りの向こうに何やら奇妙な顔のようなものが見えなくもない。これは「正面を向いたヨッシー」ではないか? という推測。
How Bowser Got Into The Castle With His Sub
上で述べた「ウォーターランド」の潜水艦はクッパの所有物であり、クッパは池から潜水艦で城内に入り込んだのではないか、というファンによる推測を指す。ゲーム中の描写だけ見ると一貫はしているが。
Cold, Cold Crevasse
「さむいさむいマウンテン」の英語版看板に"Warning! Cold, Cold Crevasse below!"と注意喚起してくるものがあり、ステージ名が「Cool, Cool Mountain」であることから「Cold, Cold Crevasse(意訳:さむいさむいクレバス)」というサブエリアがあるのではないか、ということを指す。これを口実に「"Personalization A.I."(後述)(*4)がゲームを操作することで本来存在しない『クレバス』が姿を現す」みたいな感じでネタとして使われる、らしい。
Original Resolution Textures
『スーパーマリオ64』で使われているテクスチャは容量削減のため解像度が落とされているが、どこかにオリジナルである高解像度版が存在するのではないか、という噂のこと。別にあってもおかしくないとは思うが、「高解像度テクスチャがある」という点の一体どこに陰謀論的性質を見出したのかは気になる。
Rainbow Ride's Village
「レインボークルーズ」からは特殊な方法、または完全なランダムでごく稀に行ける山と小さな村からなるサブエリアがある……という(根も葉もない)噂のこと。「Village(村)」という点からなんとなくアジア村を連想する。それにしてもなんで村なのか。
Bob-omb Village
上の「レインボークルーズ村」とほぼ同じだが、こちらは「ベータ版には存在した」という話が付く。これはGreenio氏がファミコンスペースワールド95で隠し撮りしたとされる映像が証拠で、故に製品版にもどこかに残っているのでは……という話。
言うまでもなく一から十まで全部ガセネタであり、上記の動画は後から創作されたものである。動画のキャプションにも「This is fiction. None of the events depicted in this video actually happened, and are merely for entertainment purposes.(意訳:これはフィクションです。このビデオに映っているのは実際に起きたことではなく、あくまで娯楽目的のものです)」とわざわざ書かれている。他の動画についても同様で、本物だと信じた視聴者が騒ぎまくって話が必要以上にデカくなってしまった様子が目に浮かぶ。
ただそれ以前の話として動画を実際に見てもらえれば分かると思うのだが、日本語話者からすると本題である画面の中……ではなく画面の外におかしな点が散見されることに気付くはず(*5)。これについては一連のネットミーム全体の話になるため後述することにする。
Debug Menu Names
改造コードで出現させられるデバッグメニューからは各ステージに飛ぶことができるが、そのステージ名が本来の名称と大きく異なっていることを指す。
# | デバッグモード名称 | 意訳 | ステージ名(英語) | ステージ名(日本語) |
---|---|---|---|---|
1 | STAGE 1 | - | - | - |
2 | STAGE 2 | - | - | - |
3 | STAGE 3 | - | - | - |
4 | TERESA OBAKE | Boo Apparition | Big Boo's Haunt | テレサのホラーハウス |
5 | YYAMA1 % YSLD1 | Snow Mountain 1 & Snow Slide 1 | Cool, Cool Mountain | さむいさむいマウンテン |
6 | SELECT ROOM | Select Room | Inside Peach's Castle | (ピーチ城城内) |
7 | HORROR DUNGEON | Horror Dungeon | Hazy Maze Cave | やみにとけるどうくつ |
8 | SABAKU % PYRMD | Desert & Pyramid | Shifting Sand Land | あっちっちさばく |
9 | BATTLE FIELD | Battlefield | Bob-omb Battlefield | ボムへいのせんじょう |
10 | YUKIYAMA2 | Snow Mountain 2 | Snowman's Land | スノーマンズランド |
11 | POOL KAI | Pool Stage | Wet-Dry World | みずびたシティー |
12 | WTDG % TINBOUTU | Water Dungeon & Sunken Ship | Jolly Roger Bay | かいぞくのいりえ |
13 | BIG WORLD | Big World | Tiny-Huge Island | ちびでかアイランド |
14 | CLOCK TOWER | Clock Tower | Tick Tock Clock | チックタックロック |
15 | RAINBOW CRUISE | Rainbow Cruise | Rainbow Ride | レインボークルーズ |
16 | MAIN MAP | Main Map | Outside the Castle | (ピーチ城城外) |
17 | EXT1 YOKO SCRL | Extra 1 - Side-Scroller | Bowser in the Dark World | やみのせかいのクッパ |
18 | EXT7 HORI MINI | Extra 7 - Moat (Mini) | Vanish Cap Under the Moat | おほりのとうめいスイッチ |
19 | EXT2 TIKA LAVA | Extra 2 - Basement Lava | Bowser in the Fire Sea | ほのおのうみのクッパ |
20 | EXT9 SUISOU | Extra 9 - Fish Tank | The Secret Aquarium | おさかなといっしょ |
21 | EXT3 HEAVEN | Extra 3 - Heaven | Bowser in the Sky | てんくうのたたかい! |
22 | FIREB1 % INVLC | Fire Bubble & In the Volcano | Lethal Lava Land | ファイアバブルランド |
23 | WATER LAND | Water Land | Dire, Dire Docks | ウォーターランド |
24 | MOUNTAIN | Mountain | Whomp's Fortress | バッタンキングのとりで |
25 | ENDING | Ending | "The End" Image | (THE ENDの絵) |
26 | URANIWA | Back Garden | Castle Courtyard | (ピーチ城裏庭) |
27 | EXT4 MINI SLID | Extra 4 - Mini Slider | The Princess's Secret Slide | ピーチのかくれスライダー |
28 | IN THE FALL | In the Fall | Cavern of the Metal Cap | メタルスイッチのたき |
29 | EXT6 MARIO FLY | Extra 6 - Mario Fly | Tower of the Wing Cap | はばたけ!はねスイッチへ |
30 | KUPPA1 | Bowser 1 | Bowser in the Dark World (Boss) | やみのせかいのクッパ(クッパ戦) |
31 | EXT8 BLUE SKY | Extra 8 - Blue Sky | Wing Mario Over the Rainbow | にじかけるはねマリオ |
32 | STAGE 32 | - | - | - |
33 | KUPPA2 | Bowser 2 | Bowser in the Fire Sea (Boss) | ほのおのうみのクッパ(クッパ戦) |
34 | KUPPA3 | Bowser 3 | Bowser in the Sky (Boss) | てんくうのたたかい!(クッパ戦) |
35 | STAGE 35 | - | - | - |
36 | DONKEY % SLID2 | Monkey & Slide 2 | Tall Tall Mountain | たかいたかいマウンテン |
37 | STAGE 37 | - | - | - |
38 | STAGE 38 | - | - | - |
Zelda 64 Beta Assets In WDW
「みずびたシティー」には『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のアセットが使われている……という噂のこと。これは2020年のデータ暴露時に、「みずびたシティー」に対応するステージとして「11ZLDCITY.bin」なる名称が使われていたことに起因する。「ZLD」は「ZeLDa」の頭文字を取ったものだという説である。
またこれとは別に、当時スクリーンショットのみが公開されていた開発中タイトル『ゼルダの伝説64(仮称)』でもメタルマリオのようなカラーリングをしたリンクを模した敵が登場しており、この時のテクスチャがメタルマリオに流用されたのでは? とも言われている。
Mario Enters WDW Early In Got Milk Commercial
米国における牛乳の消費を喚起するためのコマーシャルである「Got Milk?」のタイアップ企画として『スーパーマリオ64』のマリオが登場したのだが、その際本来よりも少ないパワースターしか持たないにもかかわらず「みずびたシティー」へ突入しているのは不可思議だ、というもの。当時のCMはYouTubeで視聴可能。
これについては、ゲームがベースにはなっているが演出としてはCMのためにあくまで新規に作られたものであることから、必ずしもゲームの仕様に準拠している必要はない。そもそもの話をすると、CM内でマリオはパワースターを37枚所持しているが、みずびたシティーにはすべてのバージョン(*6)でパワースターが31枚あれば各種グリッチを一切使わなくとも普通に入場できるので、この手の描写としてはむしろかなり現実的かつ正確である。これについては各種Wikiでも「なぜ氷山画像にこれが書かれているのか謎」と言われている。
或いは矛盾や陰謀を指摘する資料の中に、どこから入り込んだのか経緯が不明な明らかな誤謬が混じっている、それ自体が矛盾している――というちょっとメタなネタなのかも知れないが、まあたぶん考え過ぎだろう……。
Big Boo's Haunt Forest
「Big Boo's Haunt(日本語目に:テレサのホラーハウス)」は、ステージへの入場時にごくまれに「Big Boo's Haunt Forest(意訳:テレサのホラーハウスの森)」という隠しステージへ分岐する……というネタ。上で書いた「Ghoul Medal」を持っていると入れる、などの尾ひれが付くこともしばしば。
Mario 64 Is Freemason Initiation
『スーパーマリオ64』はフリーメイソンに人々を入門させるために作られたものだ、という話。陰謀論もここまで直球だと一周回って感心する。これについてはTwitter / Xの@owenbroadcastによる連続ツイート/ポストで全文を読めるので物好きな方はどうぞ。MMRとかが好きなら楽しめるかも知れない。楽しめないかも知れない。
Whomp's Fortress Interior
「バッタンキングのとりで」は外周を回れるだけで内部には入れないが、一部のパーソナライズ(例によって後述)されたゲームの個体は隠されていた入口が出現して中に入ることができる、という話。ひょっとするとだいぶ上の方で「一つだけ壁が壊せるのが怖い」とか言われていたのはこれと絡めての話なのかも。
Yoshi Commits Suicide
パワースターを120枚集めてピーチ城の屋根に上るとヨッシーに出会えるが、マリオとの会話を終えると屋根から飛び降りて自殺(commit suicide)してしまうのでは、という話。ただし実際にはヨッシーのアニメーションを定義する名称で自殺説が否定されており、内部的には"Yoshi_GoHome"(意訳:ヨッシー、家に帰る)と名づけられているとのこと。
Big Boo's Secret Laugh
「テレサのホラーハウス」では超低確率で普段より幾分低い笑い声が聞こえる、というウワサ。もちろん事実ではない。
120 Has Spiritual Significance
ゲーム中で入手できるパワースターの総数は「120」、これにはスピリチュアル的な意味を持つ「エンジェルナンバー」だとする説。ちなみに「エンジェルナンバー」という概念は「120」を指すものではなく、それどころある特定の数字、例えば「42」とかを指すわけでもない点に留意。言ってしまえばどんな数字でもこじつけようと思えばできてしまう類のモノである。
Tower Of The Wing Cap True Location
「はばたけ!はねスイッチへ」の正確な所在はゲーム中の描写では分からないが、ゲーム中に隠されていると噂される隠しステージ「Eternal Fort」にはこれとよく似た四つの塔が登場する。ここが同じ場所ではないか、或いは「はばたけ!はねスイッチへ!」が変貌したのが「Eternal Fort」ではないかという推論。先に「Eternal Fort」という場所について認知してないとちょっと意味が掴みづらいと思われる。
Islands In The Distance
「ボムへいのせんじょう」と「ちびでかアイランド」は遠景に小さな島をいくつか見ることができる。もう何度言ったか分からないが、例によって例のごとくここが隠しステージではないかという与太話。
LLL Painting Fireball
「ファイアバブルランド」へ入場するための絵は燃え上がる炎に凶悪な顔が付いているという構図で描かれているが、この印象的な顔付き炎はゲーム中に登場しない、どうして? という問い掛け。確かにあれは印象に残るけれども。「LLL」は「ファイアバブルランド」の英語名「Lethal Lava Land」の略称。
The Bottom Of The Iceberg (第4階層 - 氷山の下)
ここまで来るといよいよ胡散臭い話ばかりになってくる。ある意味面白くなってくるともいえるだろうか。
"Ally With Info"
『スーパーマリオ64DS』の英語版では、2階にいるキノピオが "ally with info" もしくは単に "ally" なる謎の人物(?)に言及していると主張するもの。メッセージの例は以下の通り。
"Thanks to the power of the Stars, life is returning to the castle. Please, you have to give Bowser the boot! Here, let me give you a hint about the castle. In the room with the mirrors, look carefully for anything that's not reflected in the mirror, and an ally with info. And when you go to the water town, you can flood it with a high jump into the painting."
Source: https://www.mariowiki.com/List_of_Super_Mario_64_and_Super_Mario_64_DS_quotes
このダイアログははっきり言って「スノーマンズランド」の行き方と「みずびたシティー」のステージ開始時の状態に関するヒントを出しているだけなのだが、"Ally With Info"を正確に訳そうとするとどう書くべきか迷う。ひょっとするとこの辺りのもどかしさから生まれたネタなのかもしれない。
ちなみに上のメッセージについては『64DS』由来であり『64』には存在しない。普通に考えるとただの追加要素というかバランス調整の一環なのだが、マリオ64陰謀論者的には「『64』に存在していた"Personalization A.I."(しつこいようだが後述)を除去したことによる余波」とかそういう方向でネタにされている。こんなんもう無敵じゃん……。
The Wario Apparition
地下にある「ウォーターランド」の入口を見ているとそこから突然ワリオの亡霊(Apparition)が出現し、同じく無限ループ化した通路を延々と追いかけてくるというホラー演出のこと。言うまでもなく作り話なのだがこの演出、ゲームでこそ使われていないもののなんと実在はしており、1996年のE3で任天堂が流していたという "Focused on Fun" という映像でかなり近いものを見ることができる。ただし追いかけてくるようなことはなく、動画を見れば分かる通り演出としてはむしろコミカルなものになっている。ともあれ、この映像が元ネタになったのは間違いないだろう。
これ単発でかなりのネタ画像・動画が作られており、部分的ではあるがTogetterにまとめがある。『スーパーマリオ64』にワリオの亡霊が出てくる~系のネタはほぼ全部これ由来と見ていい。
Brain Diagram
「みずびたシティー」のファイル内には脳の略図(Brain Diagram)が存在しており、これが陰謀論の中核を担う"Personalization A.I."の思考を担っているのでは……という話。なんかこう"Personalization A.I."の話を立てるために後付けされた感が凄いのだが、なんで「みずびたシティー」なのかはよく分からない。どこか不気味な雰囲気があるのは分かるし、「テレサのホラーハウス」と並んで与太話によく出てくるステージではあるが。
The Forbidden Door
「The Mirror Room」におけるウワサのひとつで、「鏡に見えるドアは別の場所に繋がる禁じられた扉(Forbidden Door)」というもの。それ以外に特筆すべき点は無いのだが、どういうわけかこの話だけがこんなに深い階層にある。
Toad Projection
ピーチ城の城内にいるキノピオは透明になっていることがあるが、これは彼らが実際にはここにおらず「別の場所」にいることを示唆しているのでは、という仮説。言われてみるとなぜ透明になるのかの説明を聞いた記憶がない。
1995/07/29 Build (DO NOT RESEARCH)
1995年7月29日に作られたベータ版ビルドには"Personalization A.I."の原型となるものが存在していた。しかし未完成故に改変したステージのテクスチャが点滅するなど視覚・聴覚、場合によっては精神にまでダメージを与えてくる酷い有様で、当時のテスターからは問題の報告が相次いだという。その危険性故に現在に至っても調査してはならない(DO NOT RESEARCH)とされ詳細は不明、「ワリオの亡霊」もここに含まれている――という創作。
The Course In The Bowser Painting
ピーチ城に存在するクッパの絵にはいずれも入ることができず、クッパのいる場所には穴に落ちたりすることで進入することになる。しかし実のところ「やみのせかいのクッパ」と「てんくうのたたかい!」の入り口近くに置かれている絵の向こうには隠しステージがあり、それらは「Bowser's Domain」、或いは「15 CRSE」、もしくは「Eternal Fort」のいずれかに繋がっているんじゃないか、といういつも通りのアレ。
Wet-Dry World Negative Emotional Aura
「みずびたシティー」をプレイして空を見ていると何となく憂鬱な気分になると多くの人が報告している、という都市伝説。なおこれとは逆に「明るい気持ちになる」という報告がされる亜種もある模様。
Metal Mario Texture
メタルマリオの表面に使われているテクスチャには元ネタがあり、 Silicon Graphics Incorporated (SGI)が1993年に発売したマルチメディア機「SGI Indy」に収録されている花の画像ではないか、という指摘のこと。ここで急に出てきた「SGI」という会社だが、実は任天堂と共にNINTENDO64の設計を行ったとして知られている。画像の詳細はTwitter / Xの@ecumber05によるツイート/ポストから見られる。
余談だが、ここで紹介しているものを含む一連のネットミームを大量に取り込んで『スーパーマリオ64』を徹底的にいじくり倒した改造版である『B3313』には、上で述べた「SGI Indy」を元ネタにしたステージが存在する。元ネタというかなんと言うか、そのものズバリのSGI Indyというステージになっている。
The Bowser Room
『スーパーマリオ64』に存在すると言われているクッパの絵が飾られている、またはクッパ自身がいる小部屋。ある者はピーチ城の屋上でケツワープすることで突入に成功し、ある者は「おさかなといっしょ」の部屋に入ろうとしたらこちらへ飛ばされ、ある者は"Personalization A.I."によって改変された地下の果てから迷い込んだとされる。
わざわざ言うまでもないだろうが、これらは全部改造マリオと動画編集を組み合わせたネタである。いくつもバージョンがある辺りネタとして使いやすいのかも知れない。
HMC Entrance Room Is A Sewer
「やみにとけるどうくつ」の入口のあるフロアには下水管を思わせるパイプがあり、この部屋は城内の排水システムを担っているのでは、という推測のこと。これに関連して「やみにとけるどうくつ」自体がピーチ城の腐敗槽を担っているのではという割とどうでもいい考察もある。
Silicon Graphics' Curse
ちょっと上で書いた通り、Silicon Graphics Incorporated (SGI)は任天堂と共にNINTENDO64の設計・開発を行った会社である。SGIは1988年に自社製品へMIPSアーキテクチャを採用した縁で、1992年に同アーキテクチャの開発元であるミップス・テクノロジーズという半導体企業を買収している。マリオ64との繋がりとしては、この「MIPS」という名前がピーチ城の地下にいるウサギの名前になっている。両者の間に何らかの関係があるのかは不明。
マリオ64陰謀論者視点では「この後すぐにSGIは倒産、これはSGIに掛けられた呪いである」とされるのだが、当時の法人としてのSGIが連邦倒産法第11章の適用を申請して倒産したのは2009年4月であり、これについてはハッキリ言って「すぐ」と主張するには無理がある。
その一方、SGIの倒産に先立ってSGIが買収していたミップス・テクノロジーズは1998年に早くもSGIの子会社ではなくなっており、こちらはかなり複雑な経緯を辿って現在は中国企業となっているので、どちらかというと「MIPS Curse」とかの方が名称としては実情に即している気がする。
Peach Is Behind The Stained Glass Window
エンディングでピーチ姫は城の正面にあるステンドグラスの前から姿を現すが、これを根拠にして「ピーチのいる空間がある→ステンドグラスの向こうに何かあるのでは?」という主張する人がいるらしい。この手の話があまりにも多すぎて、なんかもう全部の裏に隠しエリアがありそうな気がしてくる。
Bowser Broke The Door
ピーチ城の裏庭入口は他と違い赤レンガで覆われており、その大きさはちょうどクッパが通れるくらいの大きさである。このことからクッパは裏庭からドアを破壊して内部に侵入したのでは? という仮説。目の付け所が細かすぎると思う。
The Decompilation Is Censored
リークによって大量の情報が流出した『スーパーマリオ64』だが、実は一部の資料が抜き取られるなどして完全な逆コンパイルは規制されている、という陰謀論。こんなんもう言ったもん勝ちやろ……。
Full Oman Archives
2018年の大規模リークとは別に、1999年にOman Archiveと呼ばれるアーカイブが流出する事件が起きている。これは元SGI社員がNINTENDO64の開発時に集めた資料をアップロードしたもので、その社員の名前が「Oman」だったことに由来している。
で、これは上と似たような……というかほとんど同じ話であり、流出しているアーカイブからは「本当に大事な部分」が欠落しており、それらを含む完全なアーカイブが存在するのではないか、という推論である。
Wiggler's Body Parts Are Used In Bowser Fights
「ちびでかアイランド」のボスであるハナチャンの体の一部が「やみにとけるどうくつ」のクッパ戦で使われている(*7)のではないか、という話。正直これだけでも「だからどうやねん」なのだが、その後内部を解析した人によって「使われているテクスチャが違うよ」と結論付けられるというオチまでついている。なんともまあ。
Toads Literally Trapped Inside The Walls
キノピオたちが透明になっているのはなぜ? という件に関連し、キノピオたちは「いしのなかにいる」状態になっているのではないか、という話。
比較的よく知られた話だが初代スーパーマリオブラザーズではこれに近い公式設定があり、キノコ王国の住人たちはクッパの魔法でブロックに変えられたor閉じ込められているという。これを持ってきたものと見て良さそうだ。ちなみに現在の公式設定では、彼らを助け出すことによりスーパーキノコなどのパワーアップアイテムを手に入れていることになっているらしい。
HMC Is The Castle's Septic System
上の「HMC Entrance Room Is A Sewer」を参照のこと。「Septic System」は「腐敗漕」を意味する。これについてはホラーというよりジョークの色が濃い。
The Abyss (第5階層 - 深淵)
深淵というだけあって錚々たる陰謀論が揃う。ぶっちゃけ今はこの辺りがあちこちで擦られているので、逆にこれまでよりも知っているものが多く混ざっていたりするかも知れない。よそで見たような話がちらほら見受けられるのはご愛敬。
Enchanted SC88 Samples Used In Soundtracks
サウンドトラックの作成に使われているRoland SC-88には呪術的魔力が込められており、それのサンプリング音源を用いたことで音楽に霊的な力が宿っている、という話。こういう検証のしようがない話は無敵すぎてどうしようもない気がする。
Sequel Was Cancelled Due To Temporal Leakage
『スーパーマリオ64』は64DD向けに『スーパーマリオ64 2』という続編を発売する予定だったが、64DDの販売不振に伴ってこれをキャンセルしたというのが定説だが、実は「予期せぬアノマリーの発生」によってキャンセルに追い込まれたのだ、という説。同上。
ちなみに「*** Was Cancelled Due To Temporal Leakage」という構文は「***」に何でも適用できるせいか、「3」が出ないことをネタにされているあのシリーズを茶化したジョークがある。
Miyamoto Stole Mario 64 From Argonaut
任天堂の宮本茂氏が、1990年代前半に『スターフォックス』『ワイルドトラックス』などで協働していた「Argonaut Games」社から3Dアクションゲームのアイディアを盗用したのではないか、という陰謀論。とうとうミヤホンにまで陰謀論を吹っ掛け始めた。
元になったのは「Was Super Mario 64 a STOLEN Idea From Argonaut Games?」というインタビュー記事で、かつてのArgonaut Games社員が「こういう話があった」的なノリで話している。
確かに90年代半ばには任天堂とArgonaut Gamesの関係が悪化していたと推測することは可能。時期不明ながら両社が共同で『Yoshi 3D』というヨッシーを主人公にした3Dアクションゲームを開発していた、あるいはArgonaut Gamesが企画を持ちかけたらしいが、いずれにせよ任天堂の手でキャンセルされたという。
1996年に完成していたにもかかわらずキャンセルされた『スターフォックス2』ともどもお蔵入りになったことが原因であろう、Argonaut Gamesは意趣返しとしてかNINTENDO64以外のプラットフォーム(PS及びSS、90年代としては珍しくWindowsにも同内容でリリース)で『Yoshi 3D』だったとされるゲームのキャラクターをヨッシーからオリジナルの「クロック」に差し替えたCroc: Legend of the Gobbos(日本語名:クロック!パウパウアイランド)をリリースしている。
このソフトの英語圏における広告は強烈であり、Wikipediaの記述通り「主人公であるクロックがマリオ、クラッシュ・バンディクー、『トゥームレイダー』のララ・クロフトを食べたと思わせるようなCGイラスト」がデカデカと掲載されていた。挑発的にもほどがある。見てもらえれば分かる通りクロックはヨッシーと見た目がよく似ており、後からキャラクターを差し替えたという話も頷けるところ。だが肝心のゲームの出来はマリオ64に比肩するものではなく、1999年に続編『Croc 2』を出して以降、シリーズは途絶えている。
話が脱線してしまったが、そもそも『Yoshi 3D』自体がマリオ64よりも後から企画されたものであるとも捉えられ、さらに別のスタッフが『Yoshi 3D』というのは『Yoshi Racing』というレースゲームだったと語っているなど情報が錯綜しており、正直なところ何が事実で何が記憶違いで何が嘘なのか定かではない。だからこそこういう陰謀論が出てくるのだろう。できる限り情報を多く当たるようにしているが、この記述も必ずしも正しいとは限らない点にくれぐれも留意いただきたい。
Delicious Cake
ゲーム内の没テキストに「Delicious Cake」というものがあり、これはそのまま「Delicious Cake」という名前の隠しステージである……というネタ。こういうのになるとどういうわけか必ずと言っていいほど引っ張り出されてくる『Portal』の有名なネタであるCakeが元ネタだろう。
Lavender Town & Polybius Were Coverups For Mario 64
ゲームにまつわる都市伝説・ネットミームとして非常に有名なシオンタウン症候群とPolybiusは、『スーパーマリオ64』にまつわる種々のアノマリー(またの名を妄想)や解析によって得られた真実(という名のネタ)を隠ぺいするために任天堂が作って広めているカバーストーリーだという話。調べてないものの『ポケットモンスター』『Polybius』にまつわるネットミームを扱うWikiが専門にあるならお互いのポジションを仲良く交換し合ってそうな話である。
Shared Nightmares
『スーパーマリオ64』をプレイした人たちは「共通する悪夢」を見ると言われている。そこには「テレサのホラーハウス」に登場するキラーピアノや、製品版とは異なるベータ版のペンギン、そしておなじみワリオの亡霊などが出てきたりするそう。
悪夢を共有する、という怖い話のコンセプトは日本でも見られ、有名どころとしては猿夢などがある。これの『マリオ64』版と考えればまあそんなもんだろう、という感じである。
NFR Cartridge Differences
デモ版・評価版のカートリッジには"Not for Resale(再販禁止)"という一文が加えられ一般流通しないようにされているが、この「NFR」版マリオ64は製品版とは異なる仕様やコンテンツが存在する、というウワサ。再販禁止版のカートリッジ自体は存在しているが、明確な内容の違いは確認されていない。たぶん無いと思う。
The Internal Plexus Of The Castle
ピーチ城は"Personalization A.I."によって全域が管理・支配されており、それはさながら神経叢(Internal Plexus)のように回路が張り巡らされる形になっている。体を走る末梢神経が何本も途中で合流したり分岐したりするのように、無数の部屋が繋がったり繋がっていなかったりと論理的に一貫していない。すべては"Personalization A.I."の手で組み替えられる――という、今まで述べてきた陰謀論の核に「一番近い」ネタ。
論理的に一貫していない広大な建造物というアイディアはThe Backrooms、引いては同時期に勃興したリミナルスペース(Liminal Space)の影響が色濃く見て取れる。これらが流行してからほぼ一年後くらいに『マリオ64』関係のコンテンツが盛り上がりを見せており、2021年時点ですでに両者の共通性に言及する記事がある。
たとえば近年、1996年に発売されたNINTENDO64用ソフト『スーパーマリオ64』が、ノスタルジック・ホラーとしてにわかに注目を集めている。試みにYouTubeで検索してみると、『スーパーマリオ64』にまつわる都市伝説(Iceberg)や考察系の動画が数多くヒットする。なかには『スーパーマリオ64』をリミナル・スペースと紐付けた上で、その「不安になる感じ」(Unsettling)を解説する動画も存在する。
それらの多くがとりわけ言及するのが、みずびたシティーというステージである。この水没した都市のステージは、いかなる背景説明もプレイヤーに対してなされない。なぜこの街は水没してしまったのか。住人たちはどこへ消えたのか、等々。遠い背景(スカイボックス)に陽炎のように映る、海に沈んだ謎の都市がプレイヤーをますます寂寞とした感情にさせる(ちなみに、この背景の水没都市はスペインに存在する実在の街並みである)。これらポスト・アポカリプス的状況に対する説明の不在とスペインに実在する都市といった情報のアンバランスが、いやが上にも「不安になる感じ」と解釈誘発性を高める。『スーパーマリオ64』のアイスバーグや考察系の動画の氾濫はこうした事情にも依る。他にも、当時のゲーム容量が現在よりも制限されていたことによる、ワールド内における敵などのオブジェクトの少なさ、ピーチ城の不自然な無人感、そしてNINTENDO64特有の、どこか夢やマグリットの絵画を彷彿とさせる、のっぺりとした、オブスキュアでアブストラクトな3Dテクスチャなども、このゲームの「不安になる感じ」に多く貢献している。
『マリオ64』の製品版には数々の謎が残されているだけでなくどこか不安を想起させる描写が随所に存在し、さらにこれまで大量に作られてきた改造マリオのマップは「見たことがあるような気がするが見覚えのない場所」という一般的にリミナルスペースとされる場所と合致する、そして極めつけがデータ流出事件によって暴露されたベータ版という製品版とは似て非なる世界が広がるバージョン。これらが個人の中に眠る漠然とした恐怖と有機的に融合したことで、ここまで長々と書いてきたホラーコンテンツが作られるようになったのではないか。本当のところはもう少しややこしい経緯があるのだろうが、大筋ではこのような流れで今に至ったのではないかと考えている。
Every Copy Of Super Mario 64 Is Personalized
「すべての『スーパーマリオ64』は個人向けに最適化されている」という、『スーパーマリオ64』の都市伝説系ネットミームの文字通り中核を成す概念。このフレーズ自体がいたるところで使われている。
『マリオ64』には"Personalization A.I."という人工知能が密かに組み込まれており、プレイヤーの進行状況や嗜好・性格を読み取ってゲームの内容を「個人向けに最適化(Personalized)」しているという。エリアの構造変化や数々のバグや怪奇現象、アノマリーの出現はこの"Personalization A.I."の手によるもので、これ自体に意思がある可能性も示唆されている。
一体どこからこんな説が湧いてきたのか気になるが、上で述べた『スーパーマリオ64』で描写される世界に対する言葉にしがたい不気味さ、ゲーム的に何の意味も持たない数々の要素、個々の『マリオ64』というゲームに対する俗に言うトラウマ。こうした『スーパーマリオ64』に対する漠然とした不安感をある意味ですべて取りまとめ、しっかりと受け止めるための存在がこの"Personalization A.I."である――そんな風に言うこともできそうである。
付記
日本語圏に於いては
日本語で読める情報源としてはニコニコ大百科のこの項目があるのだが、これはどちらかというと個々の解説というより、英語話者と日本語話者のギャップについて認識させられる記事になっている。
83 ななしのよっしん 2023/08/07(月) 19:42:13 ID: 1Msg8auOXW
発端と思われる>>50のまぢんソニックとか、アクンけセウみコトド?みたいな、英語圏だと適当な日本語の羅列は(読めない故)怖いと思う風潮というか風土は興味深い
まぁ日本人だってアラビア語みたいなマイナー言語に対しては似たような扱いだけどさ
個人的にはこのコメントに全面的に同意する。多分そういうことなのだろう。
上で述べたGreenio氏がファミコンスペースワールド95で隠し撮りしたという設定で作られた映像にしても、この手のフェイク動画で頻出する「任天堂の楽しみは無限大です」「任天堂の楽しみはまだ始まったばかり」という合成音声にしてもそうなのだが、『スーパーマリオ64』は日本の会社が開発したゲームであり、創作としての解像度を上げるためには少なからず日本語を組み込む必要がある。しかし英語話者にとって日本語を自然に使いこなすことは至難の業(*8)、故に機械翻訳などで埋め合わせているのだろう。だから不自然な文体になりがちだと考えられる。
英語話者である英語圏のファンは日本語の細部まで見ない・分からないのでこれでも十分「異国の言葉が使われていることで醸し出される不気味さ」を味わえるのだろうが、日本語話者は常日頃から触れているのでどうしても文体のぎこちなさとらしくなさに目と耳が行ってしまう。そちらに気を取られて製作者の伝えたい恐怖感が伝わっていないというのはありそうである。
いろいろ書いてきたのだが、今のところ日本語圏では確認した限りまとまった情報が参照できるサイトが見当たらなかったので今回こちらを書かせていただいた。拙い部分が多々あるかと思うが、それでもこの記事が『スーパーマリオ64』にまつわる都市伝説を理解するための一助となれば幸いである。
外部リンク
- Super Mario 64 Iceberg
- 上部に掲載した「氷山」の画像の元となったサイト。
- Super Mario 64 (Nintendo 64) - The Cutting Room Floor
- ゲーム内に実在する没要素についてまとめているサイト。
- MIPS Hole Wiki
- 『スーパーマリオ64』に関する陰謀論創作のポータルサイト。
- The Secret Slide
- 上記のMIPS Hole Wikiから派生/分離した創作のためのポータルサイト。
- Greenio - YouTube
- VHS風エフェクトを駆使したファウンド・フッテージ風の動画を多数投稿。