「それって、どういうこと……?」
夕暮れの公園。赤く染まった涼ちゃんの顔を、あたしはまじまじと見つめる。
「京ちゃんが戸惑うのだって分かるよ。でも……それでも、伝えたかったんだ」
あたしの頬が紅潮しているのは、夕暮れのせい――そう思い込もうとしても、目と鼻の先にいる涼ちゃんの瞳はまっすぐで、ただ純粋で。
そんなつまらない言い訳を持ち込むなんて、できっこなかった。
「あ……あのね、涼ちゃん! あたし、涼ちゃんのことが嫌いだとか、そんなんじゃ、そんなんじゃないの! ただ……!」
「心配しないで。ちゃんと分かってるよ。自分が京ちゃんの立場だったら、きっと、もっとどぎまぎしちゃってたと思う。だけど、言わなきゃ、伝えなきゃ、そう思って……」
あたしがキョドってるのは、涼ちゃんが気に入らないとか、一緒にいたくないとか、そんな理由じゃない。間違っても、そんなんじゃない。全然違う、正反対もいいとこだ。
涼ちゃんとずっと一緒にいたい。それはあたしの素直な、一番真ん中、センターピンの気持ち。絶対に間違いない。間違いなんてありっこない。
間違いない、はずなのに。
「違う、違うのよ……! あたしだって一緒にいたいけど、でも、でもっ……!」
「そんな、すぐに答えを出せなくたっていいよ。よく考えてから、返事を聞かせてほしいな」
「涼ちゃん……」
涼ちゃんは、あたしのことを?好き?だって言ってくれてる。涼ちゃんからそう言われるなら、あたしだってうれしいに決まってる。
けど……?今?の涼ちゃんからそう言われるってことは、?今?の涼ちゃんから?好き?って言われるってことは、それは――。
(?今まで?とは、違う……)
あたしと涼ちゃんが、二人で一緒に、ボーダーラインを越える。
そういう、意味になる。
「京ちゃん、待ってるからね」
「この気持ちを、京ちゃんがどう受け止めてくれるか。その答えを、聞かせてほしいんだ」
涼ちゃんはあたしに答えを預けると、公園からさっと走り去っていく。
出口へ駆けていく涼ちゃんの背中に目が釘付けになって、でも、その姿ははっきりと見えていた訳じゃなくて。
(?今まで?のままじゃ……いられないの?)
涼ちゃんが、そのまま世界の果てまで走っていっちゃう。あたしの手の届かないところへいっちゃう。小さくなっていく涼ちゃんを見ていると、そんな気持ちがぼうっと浮かんでくる。
はっとして呼び止めようと手を伸ばした先には、もう、涼ちゃんの姿はなかった。
虚空を切る手が……ただ、侘しくて、虚しくて、寂しかった。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。
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