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父が行ったコンビニ

先日亡くなった父の遺品を整理していたところ、このようなことが書かれた日記が出てきました。

 

天気は曇り、朝から空気がいつもより湿気ているように感じた。

午前中は事務作業をして午後からは外回りといういつも通りの流れで、仕事についてはこれと言って書くことは思い浮かばない。

最近日記にほとんど何も書いていない日が続いたが、今日は少し気になることがあったので書いておきたい。

 

外回りの途中で小腹が空いたので、通りがかりにあったローソンに車を停めて入った。

あれはローソンだった、と思う。水色の背景に「LAWSON」と書いていたので間違いないと思うが、ロゴが他と少し違った。

家の近くにある店は青地に白、その店は白地に青だった。ただそれだけなのだが、なんとなく気になった。

 

中も奇妙なものが幾つもあった。並んでいる商品は見覚えがあるようで無く、知っているスナック菓子のパッケージも外見が違う。

ハイチュウは英語で「ハイチュウ」と書かれていたし、ポッキーのそれもずいぶん澄ましたものになっていた。

いつもなら必ず置いてあるカールはそもそも置き場所がなく、よく食べていたぬーぼーも置いていなかった。

 

何に使うのか分からない、カードのようなものが棚にいくつも引っかかっていたのもそうだ。

リンゴマークのアップルと言えばマッキントッシュの会社のはずなのに、それがカードを出しているというのもよく分からない。

ほかのコンビニではこんなカードを見た記憶はまったく無かったので、あの店だけが店主の判断で売ったりしていたのだろうか?

 

コンビニなのに野菜、生の野菜を売っていたのも奇妙だった。

コーナーは小さかったが、キャベツや人参などを売っていた。コンビニで野菜を売るようなことがあるだろうか?

仕事を終えてから家から最寄りのローソンに入ってみたが、やはり野菜が並んでいるようなことは無かった。

 

他の客がレジで支払いをするのを見た。なんというか、これも他では見たことのないものを使っていた。

定期券のケースのようなものを取り出したかと思うと、レジにつけられた機械にかざすと音が聞こえ、それで支払いが終わったという。

クレジットカードを使うにしても、カードを通さずに使えるようなことがあるとは思えない。

 

見れば見るほど何もかもが違っていて、だんだんあの場所にいることが不気味に思えてきたのを覚えている。

朝飲んだばかりの缶コーヒーのデザインがまるで違っていたし、いつも食べている「からあげクン」の入れ物も絵が違っている。

見覚えのないニワトリの絵が描かれていて、からあげクンを名乗る別の惣菜ではないかと思ったほどだ。

 

結局雰囲気に圧されて何も買わずじまいで、そのまま店から出てしまった。

先に見た菓子やカードにしてもそうなのだが、ずいぶんと変なコンビニに入ってしまったなと今なら思う。

もう一度行く気にはならないが、それにしてもあのコンビニはいったいなんだったのだろうか。

 

……日記に書かれた内容は以上です。

このページに書かれた日付は、1991年3月18日。でした。前後のページを見ても、当時書かれたとしか思えません。

父が行ったというコンビニの特徴は、近年のそれによく似ています。日付が正しければありえないことなのですが、いったいどういうことなのでしょうか……?