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マルフクの看板

昔「マルフク」ってあったじゃないですか。「電話の金融」とか書いてある、あの赤いホーロー看板の会社です。

私は趣味で写真を撮っているんですが、たまにあのマルフクの看板を見つけると「まだあった」みたいな感じで撮影してるんですよね。

同じくよくある「世界人類が平和でありますように」とか「死後さばきにあう」とかも見つけたら撮っています。アレが何なのかはよく知りませんが……

 

マルフクというのは、電話を使うための権利でお金を借りるサービスを提供してたらしいです。電話加入権、でしたっけ。

電話が必需品だった頃は良かったんですが、今ってもう固定電話を引かない人も大勢いるじゃないですか。私もそうなんですが。

そうなると電話加入権の価値がなくなっていて、やがて会社の首が回らなくなって倒産、と。それが確か2002年とかだったはずです。

 

で、そのマルフクの看板なんですが、普通に考えれば今はもう会社がないので、今あるものから減っていく一方だと思うんです。

昔設置されていたものが経年劣化で壊れて処分されたり、上から別のいかがわしい業者が広告を貼り付けたりして、最後は完全になくなる。

新しく増えることは考えられませんから、無くなる前に写真に収めておく。そういった気持ちで撮影していたんですよ。

 

なんというか……その、最近「増えている」気がするんです。あの赤いマルフクのホーロー看板が。

以前なかったはずの場所に取り付けられていたり、別の看板だったはずがいつの間にかマルフクの看板に置き換わっていたり。

或いは以前は存在して、撤去されたことを確認したはずの場所にまた設置されている、ということもありました。

 

看板が新しいわけではないんですよ。軽く二十年は経っていると分かるくらい劣化して、赤かった部分が白ぼけて色褪せてます。

角が折れ曲がっていたり凹んでいたり、悪戯で上から貼られたシールも日に焼けていたりで、絶対に新品じゃないんです。

まるで最初からそこにあったように風景に馴染んで、また今にも消えそうな姿でそこに存在しているんです。

 

この間は自宅から少し歩いたところにずっと放置されている廃屋に、同じくらい時間が経っているように見せかけた看板が増えていました。

普段あまり通らない場所ではあるんですが、そんなところにマルフクの看板があった記憶はまったく無いんですよね。

でも確かに取り付けられていたんです。まるで昔からそこにあったと主張するみたいに、赤がピンクに色褪せたようなあのホーロー看板が。

 

一応人の手で作れなくもないものですから、誰かがイタズラで取り付けたりしてる、という線もあるかなとは思っています。

ただ、何のためにそんなことをしてるのかなんて分かりませんし、そもそも誰かが取り付けている現場を見かけたとかそういうわけでもありません。

物理的にはそういうこともできるよね、というレベルのお話でしかないんですよね。

 

こういう言い方はしたくないですし、突飛すぎると自分でもわかっているんですけれども。

 

まるで何もないところから「増えている」みたいで……不気味に感じるんですよね。