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夢が巻き戻る

これはそもそもが夜眠っているときに見る夢の話なので、命の危険があるとかそういう感じの話ではありません。

ただ、夢だとしてもなんとも奇妙な内容で、他の人と話しても似た夢を見た経験があるという人は今まで見つかっていないんです。

これに限らず、夢そのものに何か意味があるとも思えませんが、ひとつ聞いてもらえればと思います。

 

七年ほど前から、私は就寝中に「寝る直前から逆再生していく夢」をたまに見るようになりました。毎日ではなく、数ヶ月に一度くらいの割合です。

夜中に目が覚める……というより、眠っていたところから逆戻りしていって、一日の生活がビデオの巻き戻しのように逆再生されていきます。

気付いたのですが、眠った日をそのまま再現しているわけではありません。ある特定の日が巻き戻しの対象になっているわけでもないみたいです。

 

逆再生される以外は、普通の夢と同じくあちこちに矛盾があります。まったく記憶にないことをしたり、見覚えのない場所へ行ったり。

知っている人がまったく違う姿で登場したり、もうしなくてもいいことをしなければと気が急き立てられることもしばしばです。

他の人と同じように、巻き戻しのようになっていない、普通に流れる夢の方が多く見ています。逆再生の夢は、あくまでたまにしか見ません。

 

普通の夢を見ているときは、それが夢だと実感できずに現実だと錯覚することがほとんどだと思います。少なくとも私はそうです。

明晰夢という「自分が夢を見ているのだと自覚したまま見る夢」があることは知っていますが、私はこれができた記憶はありません。

学校でテストを受けたら酷い点数を取ってしまい、どうしようと途方に暮れていたら目が覚めて安堵する、そういったことがしばしばあります。

 

しかし、時々見る逆再生される夢はこれとは大きく異なります。

普通の夢が夢の中で物事を自分で体験するのに対して、逆再生の夢は「巻き戻される映像を距離を置いて見ている」感覚にとても近いです。

出来事が巻き戻されるに合わせて自分の感情が逆再生されるようなことはなく、私の思考や感情はあくまで順送りのままです。

 

この夢を見ているとき、私は「逆再生の夢が始まったな」と自覚できます。最初は起床時に「あの夢だったな」と思っていたのが、最近は夢の中で気付くようになりました。

そうするとある程度客観的に夢を見ることができ、内容によっては夢の中での時間経過も把握できることがあります。時計があったり空が見えたりする場合がそうです。

ほとんどの場合は午後三時から午後二時くらい、だいたいお昼過ぎくらいには夢が終わって目が覚めていました。少なくとも半年ほど前までは。

 

ところが最近、お昼過ぎどころか正午を超えて、午前中に至るまで夢を見るケースが出てきました。

ここまで延長されると夢の内容はだいぶ支離滅裂になっていて、明らかに人の形をしていないモノを友人だと認識したり、空の色が真っ黄色だったりしています。

逆再生される夢を見た場合は内容も覚えていますから、夢が加速度的に現実離れしていくのを起きてから実感するのです。

 

これまででもっとも長いものとしては、就寝前から恐らく午前八時ごろまで遡った夢を見たことがあります。

私が起床するのはだいたい朝の六時ごろなので、それが夢の中でも変わっていなければ、あと二時間ほどで起床時刻に到達することになります。

これまでの流れに従うのなら、私はベッドで体を起こしているところから身を横たえて、目を閉じて眠りに就くことでしょう。

 

……もし、起床時間を超えて夢の中で眠ったとしたら、私はいったい何を見ることになるのでしょうか?