皆さんは子供の頃習い事をしていたでしょうか。私も学習塾とスイミングスクールに通っていて、当時使っていたカバンなどがまだ家に残っています。
それらに通い始めたのは小学生になってからですが、私にはそれ以前にもどこか塾のような場所に通っていた記憶があります。
ただ、最近になって思い出してみるといろいろと奇妙なことに気が付いたので、自分の中での整理もかねて話させてください。
幼稚園がない日、土曜日か日曜日に通っていたのを覚えています。お昼から出かけて夕方頃まで、昼食を家でとってから母に車で送ってもらっていました。
結構遠くにある場所で、家から三十分くらいは車に乗っていたはずです。経路は忘れましたが、通る道はいつも空いていたのを覚えています。
受付までは母に付き添ってもらい、待機している先生に引き渡される形で教室へと向かっていました。
移動中はなぜか目隠しのためアイマスクをされて、先生に手を引かれる形で歩いていきました。途中でエレベーターにも乗ったような気がします。
アイマスクを外されて教室へ入ると机が規則正しく並んでいて、先に来ていた同い年くらいの子供たちが椅子に座っていました。
私はたいてい三番目か四番目くらいに教室へ入るのですが、何度か十人ほど子供がいたこともあります。顔ぶれは毎回違っていました。
そうして子供が十五、六人集まると教室のドアが閉められ、先生たちがプロジェクターとスクリーンを用意します。
準備が済むと先生から「ラムネの時間です」と言われ、一人ひとつずつ大きなラムネ菓子の入った袋を手渡され、その場で食べるよう言われます。
当時はあまり甘くないラムネだなと思っていたのですが、思い出してみるとあれはラムネというより、口の中でかみ砕ける錠剤の方が近かったと思います。
電気が消えると、まず最初に必ず道端に転がっているセミの映像が流されました。まだかろうじて動いていますが、いずれ死ぬのは明らかでした。
音もなくかなり気味の悪い映像なのですが、私を含め誰も声を挙げたり泣いたりする子はいませんでした。
私もどこか感情がなくなった気持ちで「セミだなあ」としか感じていませんでした。振り返ってみれば不気味な光景だと理解できるのですが……
その後は日によって異なる映像を用いたプログラムが行われました。いずれも映像を見ながら、あるいは見た後に簡単な問いに答えるものです。
ある時はランダムなたくさんの数字の羅列から7の数字を探すというものでした。7の位置は毎回ランダムで、覚えている限り規則性はありません。
しばらく見ているとだんだん7の数字だけが見えるようになってきて、見つけるまでが早くなっていきました。
映像には他の数字も映っていて、7だけが目立つようなことはなかったのですが、当時は7しか見えない錯覚を覚えていました。
別の回では「トムとジェリー」のようなアニメーションを見せられました。大きなネコがネズミを追いかけ、ネズミは最後に高所から飛び降ります。
飛び降りたネズミの末路は分からないまま、また冒頭からアニメを見せられます。しかし内容は少し違い、追いかけられるネズミが道を変えたりします。
ネズミが追いかけられて最後に死ぬことを思わせる映像が形を変えて何度も流され、私たちはそれを黙ってみていました。
さらに覚えているのは、漢字の成り立ち? についての映像です。「木」は立っている木を基にしている、「林」は木が複数立っている、などです。
しかし、そこで出て来た漢字は、大人になった今もまるで見覚えがありません。恐らく実在しない漢字ばかりでした。
苛むという字の下が不になっている、死という字の左に人偏が付いている、闇という字の「音」が「光」になっている……などです。
当時はみんなこういうものに通っているのだろうと思っていたのですが、高校生くらいになって自分の見聞きしたものの不気味さを自覚しました。
母に訊ねてみたのですがどうも話がかみ合わず、土日は家にいるか友だちの家へ遊びに行っていたというのです。
どう見ても母が噓をついていたような雰囲気ではなく、当時の友達に話を聞いてもいっしょに遊んでいた、などと言われてしまいました。
その塾は遠方にあったことから所在も分からず、現在も存続しているのか、そもそも最初から存在したのかなどは一切分かりません。
あの時受けたプログラムが私に何か影響を及ぼしているのかは分かりませんが、とりあえず普通に生活することはできています。
ただの勘違いにしては妙なくらいはっきりと記憶に残っており、実際に何か基となる出来事を経験したのではないかと思うのですが……。