トップページ 本棚 メモ帳 告知板 道具箱 サイトの表示設定 リンク集 Twitter

「瑠璃の色」



もしかするとただのイタズラか何かだったのかもしれないのですが、未だに思い出しては怖がっている出来事があります。

五年ほど前、レトロゲームにハマっていた時期がありました。中古のソフトをある程度まとめて買ってきては、休日に遊ぶという流れでした。

これはいろいろなゲームを起動できる「レトロフリーク」という機器を買ったのがきっかけだったと思います。

 

その日も前の週に買ったソフトで遊んでいて、その中にスクウェアの「聖剣伝説2」がありました。

いわゆる見下ろし型の2Dアクションゲームで、父の実家に置いてあるのを見て自分でも遊びたいと思い買ってきた記憶があります。

説明書は付いていませんでしたが、今ならネットで調べれば攻略法や動画はいくらでも出てくるので問題ありません。

 

早速レトロフリークに挿し込んで起動しようとしたのですが、どうもうまく起動できません。画面が真っ黒なままフリーズしているようでした。

レトロフリークはいわゆる「互換機」であり、大半のゲームは何事もなく動作しますが、動きがおかしくなったり起動できないソフトも稀にあります。

私はいったんカートリッジを取り出すと、念のために用意しておいたスーパーファミコンの実機へ挿入しました。

 

配線を済ませて電源を入れてみると、今度は立ち上がったようでした。ただ、明らかに様子が変です。

タイトル画面は無音で、音楽も効果音も聞こえてきません。こういう始まり方ではなかった記憶があります。

やはりカートリッジに問題があるのだろうか、そう思って首を傾げていると、画面が急に切り替わりました。

 

『瑠璃の色』

 

確かにそう書かれていました。明朝体の味気ない書体が使われていて、黒い背景に白い文字で書かれています。

元のゲームにこんな演出があるという話は聞いていません。以前見たプレイ動画でも、このような始まり方ではありませんでした。

スピーカーからは重く低いノイズの音が途切れることなく流れています。意図的なものなのかバグなのか判別が付きません。

 

ふと、私はここで「ジーコサッカー」というゲームを思い出しました。

サッカー選手のジーコ氏を起用したゲームなのですが、出来が悪く面白くないのにやたらと多く作られてしまい、市場に在庫が溢れかえっていました。

それに目を付けた業者がこのソフトを買い占め、中身を書き換えて海賊版ゲームの素材にした……というのは結構知られた話だと思います。

 

もしや、これも中身を勝手に改造したものではないか? その可能性を疑いました。

実はこのカートリッジは「動作確認未済」と注釈されたうえで買ったもので、ほとんど捨て値で手に入れることができた経緯があります。

なので実は中身が違っていた、というのはあり得ない話ではありません。

 

一体どんなゲームなのか気になり、私は迷いましたが少し様子を見てみることにしました。

とりあえずスタートボタンを押すと画面が急に切り替わり、タイトルが消えて真っ暗な画面になります。

そのまましばらく待っていると、前触れなしに画面いっぱいにモザイクが表示されました。

 

モザイク、と言うと何のことだと思われそうですが、本当にモザイクとしか形容できない見た目をしていたのです。

別の言葉で言い表すなら、単色の正方形がいくつも敷き詰められた画面と言えば伝わるでしょうか。

それがランダムに色を変化させて、思わず目がチカチカしたのを覚えています。

 

この時点でかなり不気味だったので電源を切ろうかと思ったのですが、ランダムに表示されるモザイクの様子が変わっていくことに気付きました。

最初はぐちゃぐちゃで形も成していなかったのが、徐々に何かを形作っていくように見えたのです。

しばらく見ていたのですが、輪郭が浮き彫りになるにつれて、それが何か分かった気がしました。

 

それは……誰かの「顔」、でした。

 

モザイク状の画面にだんだんと顔が描かれていく様子が見えました。見た限り、それは女性を模しているようでした。

だんだんと顔の形がハッキリ見えるようになってきて、こちらを見ているような印象が強くなってきました。

滅茶苦茶になった画面の中で、私を見ている顔が微かに口元を歪ませるのが見えました。

 

そこから先の動きは自分でもびっくりするほど早かったです。すぐに電源を切ってカートリッジを取り出しました。

しばらく放心状態でしたが、ソフトが本体に影響を与えていないか気になり別のソフトを立ち上げたりしたのを覚えています。

今思うと、何かしていないとあの顔が脳裏をよぎって落ち着かなかったからだと断言できます。

 

間を開けてから少し調べましたが、「瑠璃の色」なる海賊版ゲームが存在した形跡はありません。そもそも情報が少ない分野ではありますが……。

そうなると、個人や小規模なサークルがゲームを勝手に改造して制作し、ごく少数だけ存在しているというくらいしかなさそうです。

わざわざそんなソフトを中古屋に売り払ったのは手違いか、あるいはイタズラだったのか。

 

……それとも何か、別の理由があったのでしょうか?