かつて地元で一度だけ見たことのある光景です。他所ではまだ見ていませんが、この先目撃することがないとは限りません。
動物の生態には詳しくないので、もしかすると何か意味のある行動なのかもしれませんが、話として聞いた記憶はないです。
とりあえず聞いていただいて、このような例があるかを教えていただければ幸いです。
夏場に外を歩いていた時でした。うだるような暑さの中、本を買うために外へ出かけた記憶があります。
今はもっと暑くなっているはずなのですが、あの日の暑さはそれに勝るとも劣らない異様なものだったと記憶しています。
目的の本を買ってからも書店の冷房が名残惜しくて、店員の目が届かないところでしばらくぶらついていました。
書店を出て再び猛暑の外をだらだら歩いていると、すぐ隣を一羽のカラスが飛んでいくのが見えました。
当時の地元ではカラスが結構な数生息していたようで、ゴミ捨て場などに集っているのをしばしば目撃していました。
その時は暑さもあってか特に気にしませんでしたが、今思うとあれが予兆だったように思います。
さらに先へ進んでいくと、またカラスが飛んでいくのを見ました。それも今度は三羽ほどがまとまってです。
この辺りで「ちょっとおかしいな」と感じたのを覚えています。近隣にゴミ捨て場があるわけでもなく、カラスが集まる理由がないからです。
かすかな疑問を抱きつつ進んでいった先で、私はいまだに忘れられない光景を目にしました。
何十羽ものカラスが、何もない地面を狂ったように突きまわしていました。
異様な有様でした。熱されたアスファルトを無数のカラスが音を立ててクチバシで突いていたのですから。
近くに死骸や食物が落ちているようなこともなく、本当に何もない場所だったのでなおさら不気味でした。
カラスたちは大きな鳴き声を上げながら、あたかもそこに何かがあるかのようにひたすら啄みを続けていました。
理解が及ばない光景を見て、私はすぐさまわき道を選んでその場を立ち去りました。
そこを通り抜ける勇気はありませんでしたし、思い返してみてもそれで正解だったと感じています。
もしそのままあそこを真っ直ぐ通り抜けていたら、確実に「ろくでもないことに巻き込まれていたと思いますので。
ほとぼりが冷めた後に見に行ってみましたが、やはりというかカラスが群がって突きそうなものの痕跡は見つかりませんでした。
文字通りの虚空に集っていたことになるのですが、カラスにそんな習性があるのでしょうか?
猛暑ゆえの異常行動だったと解釈していますが、本当にそれだけだったのかは自信が持てません。
あの時、道端にカラスにしか見えない「何か」が転がっていた。そんな風に考えてしまう自分がいます。