自分の中でずっとモヤモヤしている話になります。怖いと感じる箇所が複数あって、それぞれがつながっているのかも分かっていない状態です。
ただの記憶違いと勘違いであればいいのですが、心のどこかでそれで片付けるわけには行かないという思いもあるのが悩ましいです。
ずっと抱えていても仕方ありませんので、皆さんにお話を聞いていただければと思います。
あれは小学三年生の頃のことだったと思います。当時私は両親と共に夏休みに田舎へ行くことになり、大きな一軒家で十日ほど過ごしました。
一軒家の近くには大きな向日葵畑がありました。泊まりに行った時にはちょうど満開の時期を迎えていて壮観だった覚えがあります。
よく育っていて背も高く、向日葵畑に私が入り込むと完全に隠れてしまうほどでした。
私は大抵朝の八時半頃から外へ遊びに出かけていたのですが、その時は決まって向日葵が私の方を向いていました。
延々と外で遊んだ後いつも夕方五時頃になると帰って来ていましたが、朝と同じく必ず私の方を向いていたように思います。
向日葵は「常に太陽の方を向く」と学校の先生から聞いたことがあったので、そういう特徴のある花なんだと納得していました。
ある時外で遊んでいる最中に一度家へ帰ろうと思い、普段よりかなり早く戻ったことがあります。
帰る時に使った道は普段と反対側で、その時は確かに向日葵がすべて背を向けていたと記憶しています。
家で麦茶を一気飲みし、必要な物を持って再び外へ飛び出します。通ってきた道へ戻り、ふと向日葵畑に目を向けた時でした。
背を向けていたはずの向日葵が、すべてこちらを向いていました。
一瞬で向日葵という向日葵がひとつ残らずこちらを向いて、まるで私を監視しているかのようでした。
この光景を目の当たりにしてさすがに気味が悪くなり、私は出かけるのを止めて家へ帰って奥の座敷へ引きこもりました。
その後どう過ごしていたのかは、正直に言ってあまり覚えていません。当時はほとんど一日中外で遊んでいて、家の中にいる方が珍しかったので。
こんな不気味な出来事があったにも関わらず夏休みの終わりには忘れてしまって、そのまま月日が流れました。
成人してしばらくした後実家に帰省する機会があり、その際に点けていたテレビで向日葵畑の映像が流れていました。
それを見て唐突にかつての出来事を思い出し、気味の悪さもあって誰かに話したいと思い、ちょうどくつろいでいた両親に話をしました。
小学生の頃に田舎へ行ったこと、そこで大きな向日葵畑を見たことなどを話したのですが、イマイチ会話がかみ合いません。
両親は夏休みのことを忘れてしまったというより「そもそもそんな場所に行った覚えはない」と困惑しっぱなしだったのです。
実は私自身も両親に向けて話している間に、だんだんと違和感が大きくなっていったのを感じていました。
両親の実家はどちらも住宅街の中にあって、向日葵畑などなかったのを思い出したんです。
こうなると話が変わってきます。あの時私はどこに行って、なぜ十日間も過ごしていたのかが分からないんです。
父も母も何か隠している様子などはなく、しかし何も思い出せずかろうじて「記憶があやふやな時期がある」としか記憶していませんでした。
念のため祖父母に確認を取ってみましたが、私が子供の頃にそんなに長く家にいたら絶対に覚えている、と断言されてしまいました。
三年生の頃の私はどこにいて、何をしていたのでしょうか。
あの時畑に延々と並んで私を見ていたのは、本当に向日葵だったのでしょうか……?