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Stage 1-4

「天野って……佳織か!?」

天野は佳織の名字だ。他にポケモン部で天野って名字のやつはいないし、聞き間違えるような似た名字のやつもいない。千穂が言ってるのは、間違いなく佳織のことだ。

じゃあ一体、佳織がどうしたっていうんだ。

「千穂、佳織がどうしたんだ!?」

「あの……! 友達が見たって言ってたんです! 天野先輩が学校に来て、屋上へ行ったって……!」

今、佳織が学校に来ている。俺が動き出すには十分な理由だった。椅子を蹴って立ち上がると、屋上を目指して走り始めた。

「天野部長が……!?」

「が、学校に来てるって!?」

俺に続けて啓太と千穂、それと部室に残っていた何人かの部員が続けて飛び出していく。屋上だ、屋上へ行くんだ。その場にいた全員が同じことを考えていた。変な話、ここまで皆の息が合っていたのは初めてのことじゃないかと思うほどだ。

廊下を駆け抜けて、階段を登って、踊り場で折り返して。息を切らしながらそれを繰り返していると、前方に同じく屋上へ走っていく人影が見えた。

誰だ。そう思って目を凝らしてみると、そいつは教室で見慣れた姿のやつで。

(あいつ、西野じゃないか)

クラスメートの女子の一人、西野だった。あいつも誰かから佳織が学校に来てるって聞いたんだろうか。今屋上目指して走ってるやつの目的なんて、どう考えても一つしかない。けど、妙な気持ちだ。西野と佳織は絡みがほとんど無かったはず。なのにあいつは、なんであんなに必死になって走ってんだ。

まあ、それはどうだっていい。細かいことは後だ、後回しだ。今は佳織に会うことが先だ。

西野に続けてドアを開けて、俺を含むポケモン部員たちが一気に屋上へなだれ込んだ。

「佳織ぃ! どこにいるのよ、出てきて! 佳織ったら!」

「はぁ、はぁ……か、佳織は……!?」

肩で息をしながら辺りを見回す。佳織はどこだ、どこにいるんだ。

呼吸を落ち着かせながら屋上をしらみつぶしに見て回るが、いるはずの佳織の姿はどこにも見当たらなかった。文字通り影も形も見当たらない。ここにいるという気配すら感じることができない。

俺たちが屋上へ到着してから、三十秒もしないうちに。

「佳織っ! 佳織ったら! そこにいるんでしょ!? 返事しなよ!」

「はっ、はっ……だ、ダメっぽいよ裕香、ここにいないよ、佳織……」

さらに二人――マネージャーの小松と、その友達の赤塚が屋上へ駆け込んできた。俺を含めたポケモン部の連中が何人も寄ってたかって、学校の屋上に集合している。目的はただ一つ、佳織から話を聞くため、佳織と話をするため。

そして何より、佳織にポケモン部へ戻ってきてもらうため。

だが屋上に佳織の姿は見当たらない。その代わり、というわけではなさそうだったが。

「杉本……お前、どうしてここに」

屋上にいたのは、佳織の幼なじみの杉本ただ一人だった。

「なあ、杉本……ここに、佳織来なかったか? 俺も康一も、あいつのこと探してんだ」

「佳織は? 佳織はどこ? それに、なんであんたがここにいるの? 佳織はどこ!? どこにいるのよ!」

「ねえ、佳織どこ? あたし佳織に言いたいこと山ほどあんだけど、どこ行ったの? ねえホントどこ行っちゃったの?」

啓太、西野、小松。集まったやつらから口々に問われても、杉本は押し黙ったままだ。

俺がふと、杉本の足元に目を向けてみる。そこに転がっているものを見て、俺は背筋に冷たいものが走った。同じものを、すぐ隣にいた千穂も目にしていたようだ。表情が凍り付いている。

「お前の足元にあるやつ……モンスターボール、だよな」

「こ、壊れてる……みたい、ですけど」

赤い部分と白い部分が分離して、赤い部分が粉々に粉砕されたモンスターボールが、あたかも死体のように杉本の側で横たわっていた。一体誰のモンスターボールで、中に何が入っていたのか。分からないことがあまりに多すぎた。

恐る恐る、俺は杉本に声をかける。

「なあ杉本、それは……」

杉本は体を小さく震わせながら、掠れた声で俺たちに返事をして。

「……佳織ちゃん、の」

「佳織ちゃんの、オオスバメの……ツイスターが入ってた、ボールだよ」

確かに――確かに、そう口にした。

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。