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Level 8: Prelude

目を覚ますと、わたしは泣いていた。体を起こしてもまだ涙が止まらなくて、ただ頬を伝うに任せるしかなくて。

悲しい夢を見た。大切な人を失う、とても悲しい夢。夢は夢として消えてしまったけれど、でも、夢を見るきっかけになった記憶は、紛れもない事実のまま。昨日知ったことは、昨日聞かされたことは、動かざる現実のまま。

(お姉ちゃんが、死んだ)

もう一度振り返る。トレーナーになって榁を出たお姉ちゃんが、旅先で事件に巻き込まれて亡くなった。事故じゃなくて、事件に巻き込まれた。同じトレーナーと諍いを起こして、怒った相手が連れていたグラエナをけしかけた。それで喉笛を食いちぎられて、血まみれになって死んでしまった。これは全部現実で、昨日までに本当に起きたこと。

事件を起こしたのは、お姉ちゃんの知り合いだった佐織さんだとも聞かされた。お姉ちゃんが殺されてしまって、あまつさえ手をかけたのがわたしもよく知っている人ってことが信じられなくて、頭がパニックになってしまった。何も考えられなくなって、目の前が真っ暗になった。嘘であってほしい、間違いであってほしい、心の中でそう願うほかなかった。

けれど、それを聞かせてきたのは、わたしが一番信じている人で、わたしが誰よりも信頼している人で。

「――私の姉が、真帆さんを殺した」

佐織さんをお姉さんに持つ、佳織ちゃん……その人で。

「ごめんなさい、愛佳」

「本当に……ごめんなさい」

電話越しに聴こえた佳織ちゃんの「ごめんなさい」が、いつまでもいつまでも頭の中で繰り返されて。

今に至るまで、止まないままだった。

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。