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#21 気まぐれな空の下で笑う

校門の裏手、割と広めに空いたスペース。まだ学校に残ってるやつを待つにはうってつけの場所で、おれもここで人を待ってるってわけ。相手は秋人、図書館で本読んでくるって言ってた。天文部の活動のひとつだってさ、本読んで勉強するのも大事ってこったな。おれの方はまだプール使えないから、他の連中と一緒にストレッチとか筋トレとかして時間を潰した。泳ぎたいしジム行こっかなとか思ったけど、今日は秋人と約束があるからな。一海は今日出海さんが帰ってくるって言ってて、夕飯の支度するから先に帰ったっけ。出海さんって名前出した時ちょっと嬉しそうだったな、おれもその気持ち分かる。嬉しそうな一海を見るのは嬉しい。

おれはこういうわけで秋人が図書室から出てくるのを待ってるんだけどさ、別にここはおれ専用の待ち合わせ場所とかじゃない。だから隣にも別のやつがいて、かつそいつはおれと顔見知りだったりする。

(春原も誰か待ってるっぽいな)

春原。隣のクラスの女子。何をするでもなく同じ場所に立ってて、たまにテニスコートのある奥の方を見たりしてる。誰か待ってるな、見ればすぐ分かる。おれが春原の方見てたら向こうも気が付いたみたいで、おっ、って感じの目をするのが見えた。槇村じゃん、向こうから声掛けてきた。おっす春原、軽いノリで返事。

「誰か待ってんの?」

「羽山。この後ゲーセン行こうぜって言われてさ」

「あの商店街の奥にあるやつ?」

「そうそれ」

「てか、ここじゃあそこしかねーか」

「都会行けばどっさりあんのかな、ゲーセン」

「どーだろな。どっさりってほどでもねーけど、ひとつしかないってこともねーかな」

カバン持ってちょっと側に寄る。話すんなら近めの方がいいし、わざわざ間を空けて声張り上げながらお喋りってのもなんかヘンだから。

「フェスのチーム、青と緑どっちにした?」

「おれ青。春原は?」

「うちも青だな、なんとなく」

「じゃあ始まったら組めるかもな」

「分かんねえぞ。青に寄り過ぎて同士討ちになるかも」

「あぁ、それあるかもなぁ。この間もそれちょくちょくあったし」

「ま、槇村が敵でも味方でもいいや。うちはローラーでぶっ潰すだけだし」

「ダイナモ?」

「ダイナモ。やっぱあれじゃないと調子出ねえんだよな」

去年だったな、春原と同じクラスになったの。最初は絡みなかったんだけど、社会見学で海凪の博物館行くことになった時に同じ班になって、そこで会話が弾んで結構仲良くなった。仲良くなったっつっても二言三言話すくらいだけど。こういう言い方アレだけど喋くりが女子っぽくなくて、性格もさっぱりしてる。ユカリをちょっと静かにさせた感じかも知れない。第一印象はガサツに見えて、実は割とそうでもないってところも似てる。

一年の時は同じだったんだけど、今は隣の教室にいるから話す機会は減った、けど関係はその時からほとんど変わってない。榁ってそんな広くないじゃん、人が行き交う場所なんて尚更、だから外で出くわすことも少なくない。あとあれだ、ペリドット。ペリドットでお茶してるとこを見るのも多いな、相手もだいたい決まってる。部活は確かポケモン部だったかな、自分のポケモン戦わせてバトルする部活。ダブルが好きだって前に聞いた記憶がある。

「なんだっけ、そのポケモン」

「エレザードだって。前にも言ったろ?」

「悪ぃ、おれポケモンの種類あんま憶えられなくて」

「ったくよお。けど、うちもアイドルの顔と名前さっぱり一致しねえし、似たようなもんか」

「名前はミナだっけ」

「なんだそっちは憶えてるのかよ。そう、ミナで合ってるぞ」

エレザードのミナ。スカーフ巻いて春原の隣ですっくと立ってる。ガタイもよくて目つきもキリッとしてるけど、春原に甘える時だけ顔がゆるゆるになる。おれが見たときは最初からエレザードだったけど、春原はエレザードになる前……名前出て来ねえ、あれだ、ライチュウで言うところのピカチュウの時から育ててたみたいだ。晴れになるとパワーが増して技が強力になる珍しい力があるとも。エレザードには戦ってても進化できなくて、なんかこう不思議な石を使う必要があるんだってさ。その石を貰った相手は男子で、なんか途中から惚気話っぽくなってたっけ。

その男子は春原と同い年、おれとも同級生。そう、同級生で、今おれがいるクラスにしれっと居たりする。

志太陽介。春原と同じくらい珍しい名字だよな。おれは陽介って呼んでる。陽介とはそこそこ話したりするくらいの関係はあるんだけど、おれと陽介どうこうより春原と陽介の関係について言わせてほしい。これはマジ話なんだけど、今春原は陽介と一緒に暮らしてる。もっと正確に言うと、陽介が春原と一緒に暮らしてる、かな。陽介は春原の家に居候してる、これは本人から聞いたから絶対間違いない。

元々ここからずーっと遠く、船を乗り継いだ先にある都会で暮らしてたって話だ。それから事情があってこのド級の田舎で離島の榁まで移り住んできた。別に榁に住んでる親戚がいるとかでもないらしい。両親はかなり前にどっか行っていなくなって、他に親類もいないとか、それしれっと言う事じゃなくね? ってことを昨日観たテレビ番組の感想でも言うみたいにしれっと言ってきた。割と謎なんだけど、今春原の家で住んでるのは間違いない。だって本人が言ってたんだから。繰り返し強調しとく。

生い立ちっていうか榁に来るまでの経緯は分からないし絶対複雑なやつだと思う。ただ、それはそれとして陽介はいいやつだ。話してて楽しいしノリだっていい。都会で暮らしてたって聞いたけど、なんていうかそういう「色」が全然ない。元から榁にいたんじゃないか? そう思うことも少なくない。ただ、ちょっと前に船に乗って海凪まで遊びに行った時にさ、喉渇いたからスタバで休憩しようぜって流れになったわけ。普段行かねえからどう頼んだらいいかなとかうだうだやってたら、すげー慣れた調子でオーダーしてたんだ、陽介が。この時は「あ、都会っぽい」って思ったな。

「春原さ」

「なんだよ」

「陽介のこと『都会っぽい』って思う瞬間ある?」

「は? なんだそれ」

「こないだスタバ行った時さ、あいつやたら慣れた感じで注文してて『都会っぽいな』って思ったから」

「あぁ、そういうこと。それはある。うちも似た場面何回も見てるし」

「やっぱそうだよな」

「あと電車の乗り換えがやたら上手い」

「それも都会っぽい」

「榁電車自体少ないからな」

「乗り換えって概念ほとんどねえし」

「家にいると分かんないんだけど、外に出かけると陽介が都会育ちなんだって分かるっていうか」

陽介が春原と暮らしてることを隠さないなら春原の方もあけすけで、おれもだいぶ前に一緒に住んでるって話を聞いた。ていうか、まともに話すようになった社会見学の時にはもう聞いた気がする。中一の夏休み終わりから一つ屋根の下で暮らすようになったみたいで、ちょうど二学期に陽介が編入してきたらしい。おれは春原と話すようになってから陽介のこと紹介されて、あっこいつが春原の言ってた、って納得したっけ。

(ただ、誰にでも言ってるわけでもないみたいだ)

春原と陽介が一緒に暮らしてるってのを知ってるやつは案外少なくて、例えばユカリなんかは話だけ聞いてると知らないみたいだった。ユカリと春原話してるとことか見たことないし、ユカリのやつお喋りだから口が軽いとか思われてるのかも。実際そういうわけでもないんだけど、雰囲気でさ。だとするとおれは口が堅いと思われたのかな、そうだったらおれは自分がイメージしてる「こうありたい」に上手くハマってるってことだから、いいことだ。

「もう四年だっけ?」

「陽介が家に来てから?」

「それ。中一の夏って聞いたから」

「だな。あと少しで丸四年」

「雑な訊き方だけどさ」

「うん」

「いつもどんな風なの? なんだろ、飯作る時とか」

「別に変わったことしてるとかはねーけど」

「まあそうか」

「いつも陽介と二人で作ってる」

「二人いたら捗りそうだな、野菜切りながら肉炒めたりできるし」

「そんな感じ。槇村はどうしてんの?」

「朝飯と弁当作るのは親父がやってて、晩飯はおれが作ってる」

「へぇ」

「休みの日は朝昼晩だいたいおれ」

「朝はお祖母ちゃんに手伝ってもらうことも多いかな、うちは」

「陽介って料理上手い?」

「うん上手。目分量でテキトーに見えるんだけど、毎回いい感じに仕上げてくるし」

「いいなそれ。おれ計らないと不安なタイプなんだよな」

「っぽい。槇村は一グラム単位で計って作ってそう」

さすがにそこまでシビアじゃないけど、細かい数字まで見てるってのは実際間違ってない。春原はなんで分かるんだろ、おれそういうキャラには見えないはずなのに。

「もう今更も今更だけど」

「うん」

「陽介と一緒にいるのが完全に当たり前ってわけだ」

「いるのが当然って感じ」

「ケンカしたりすることってない?」

「うちも不思議なんだけどさ、ねえんだよこれが」

「目玉焼きに塩振るか醤油かけるとかでも?」

「それ別の皿に盛って後で味付けすればいいだけじゃね?」

「まあそりゃそうだ」

「槇村って何かけるの? うち醤油派」

「おれは塩コショウ」

「そっかぁ。あれだよあれ、うち別に陽介に言いたいこと我慢してるとかでもないし」

「マジか、それ」

「ホントだって。けど、だからって退屈って感じでもない」

「刺激があるってやつ?」

「それ。ただ陽介といるだけで楽しいし、いいなって思うから」

「惚気るなぁ」

「だって事実だし。うちが陽介のこと好きなのはさ」

「そうスパッと言うところが春原っぽい」

「ああでもないこうでもないってぐだぐだするよりさ、言い切った方がいいだろ。自分の気持ちなんてもんはさ」

春原は陽介のことが好き。面白いよな、陽介も春原のことが好きだってことあるごとに言ってたから。相思相愛ってこういうことなんだって思う。春原には陽介っていう誰よりも一番めちゃくちゃに大好きな相手がいるから、おれみたいなヨソの男子とも気軽に喋れるのかも、とかさ。

まあ、だ。仲が良いのは分かるけど、同じ家で男子と女子が暮らしてるってことじゃん、春原と陽介って。それでお互い好き同士ってことは、おれと一海みたいに段々関係が深くなってくもんだと思うし。いったい二人でいる時どんな感じなのか、気にならない訳じゃなくて。どうしよっかなぁ、ヘンに回りくどい訊き方するのもアレだし。思い切って訊いてみるのもアリか、春原のマネして。

「春原と陽介ってさ」

「ん?」

「どんくらい進んでるの?」

「槇村お前それ訊く?」

「訊かない方が良かったかな」

「まあ訊かれたら言うつもりだったけど」

すっげー声出して笑ってる、春原が。訊かれて引いたって感じじゃなくて、おれが食い付いてきたのに笑ってる感じ。しょうがねえじゃん、気になるんだから。ユカリも言ってたけどおれは知りたがりなんだ。自覚してるから何訊いてもいいってわけじゃないけど、自覚してる分マシじゃねって思うし。

「んー、なんつーか」

「うん」

「陽介とはさ、同じ部屋で寝てんだ」

「同じ部屋か」

「まあ言ってもでかい和室だけどな」

「春原ん家でかいもんな」

「うちの家っていうかお祖母ちゃんの家な」

「まあいいや。で、陽介と同じ部屋で寝てるってことはさ」

「あれだよ、中三上がってすぐぐらい」

「えっ」

「一緒に『寝た』のいつ? ってそういう話だろ」

順番を追って訊こうと思って何言うか考えてたら、春原がすっげー先回りしておれの訊くつもりだったことを自分から言ってきた。おれは面食らうよ、春原の口から「一緒に寝た」とか言われたら。おれが固まってるのを見て春原が笑う、春原はいつもこういうやつだ。自分からグイグイ来てガンガン突っ込んでくる。やっぱりユカリにちょっと通じるところがあると思う。

「結構早い方じゃね」

「他には聞いたことねーな」

「おれも」

「別に早いからいいってもんじゃないし。陸上とか水泳じゃあるまいし」

「まあな。どういう流れで始まったの?」

「土曜だったかな。ヒマでごろごろしてたら横に陽介がいてさ」

「うん」

「パタッと目が合って、なんかお互いその気になって」

「うんうん」

「でさ、たまたまお祖母ちゃん出掛けてたんだ。夕方までジム行くっつって」

「ジム?」

「うんジム」

「ごめん」

「何が?」

「話の腰折るけどさ、春原の婆ちゃんジムでトレーニングでもしてんの?」

「違う違う、合気道の先生やってんだ」

「あっ、そういうことか」

「昔は山から下りてきたリングマを一撃で伸したりしてたんだって聞いたぞ」

「うへぇ、怪物かよお前の婆ちゃん」

「うちも基礎は教えてもらったな。ここで受けてみっか?」

「いいよ別に、おれろくに受け身も取れねえんだから」

「冗談だよ冗談。あれ、何の話だっけ」

「ええっと、春原の婆ちゃんが出かけてて、春原と陽介が二人きりって話」

「ごめんごめんそうだそうだ。っつってもな、そこからは想像通りだけど」

「あのさ」

「なんだよ」

「どっちが上になった?」

「それ気になる?」

「ごめん、ちょっと気になる」

「陽介だったかな。別の時にうちが上になったこともあるけど」

春原と陽介が同じ場所で横になっている光景を想像してみる。どっちも顔見知りでそれなりに知ってるはずなんだけど、ああいう時どういう顔してんのか想像も付かない。春原がケロッとしてるの、マジで慣れてるって感じがする。センパイの風格があるな、今の春原には。何がどうセンパイなのかおれにもよく分かんないんだけど。今なら何訊いても答えそうな気がする。

「こーいうこと訊くのあれだけど」

「おう」

「女子の方ってどんな感じなの? してる時って」

「槇村、お前食い付いてくるなぁ」

「おれ男子だから分かんねえんだよ」

テレビでよくできたお笑い番組でも観たときみたいに春原がけらけら笑う。笑ってるけど嫌そうな感じはまるでしない。どんと来いって顔つきしてる。

「思ってたよりも痛くなかった」

「そうなんだ」

「すっげえ痛いんだろうなって覚悟してたから、ちょっとピリッと来たくらいで拍子抜けで」

「へぇー」

「実際気持ちいいっていうか、むずむずして少し痒い感じかな」

「痒いのか」

「ホントはたぶん違うんだろうけど、うちからすると一番近いのはそれ」

「なるほどなぁ」

「でさ、これにオチが付いてて」

「オチ?」

「済んだあと後片付けして、シャワーも浴びて、お祖母ちゃんには何も言わなかったんだけど」

「言えねえよなぁ」

「言えない、絶対言えない。うちの口からは」

「けどまあ片付けて身体も洗っちゃえば分かんないよな、したかどうかなんて」

「普通に考えたらな。けどさ、次の日朝起きたらさ」

「うん」

「ちゃぶ台に赤飯盛った茶碗が並んでて」

「ええっ、お前それバレてるじゃん、分かりやすすぎるだろそれ」

「モロバレルだよ、モロバレルもいいとこだよマジで」

「あれだよな、夜中に光るキノコポケモン」

「それ別じゃね? 確かマッシュルームみたいな名前のやつ」

「あ、ごめん混ざってた。そっちじゃなくてモンスターボールみたいな模様のやつだ」

「そうそいつ、モロバレルはそっち」

「で、何の話だっけ?」

「お祖母ちゃんが赤飯炊いてた話」

「それだ。マジか、筒抜けじゃん」

「ホントさ、うちも陽介も目が点になったし。けどお祖母ちゃんニコニコしててさ」

「言って赤飯炊いてるくらいだもんなぁ。前の日から仕込んどかないとダメだし」

「えっホントなのそれ」

「正月におれ赤飯炊いてるんだけど、豆ともち米水に浸けとけって本に書いてあってさ、ずっとそれやってる」

「マジかよ、お祖母ちゃんわざわざ土曜から仕込んでたのか」

「だとしたらあれだ、割と時間の問題って思ってたのかも」

「うん、訊いてみたらそれっぽいこと言われた。また大人になったのねぇ、って」

「うわあこっぱずかしい」

「本気で頭上がらなかったもん、陽介もうちもさ」

「上がらねえよなあ」

「ま、それからは割とあけっぴろげになったっていうか、お祖母ちゃん公認になったというか」

「バレたら隠してても意味ないしなー」

「たださ」

「うん」

「避妊だけはちゃんとしておきなさいって」

「正論過ぎる」

「ほんと正論」

「おれもそこは譲れない」

まだろくに食い扶持も稼げねえのに子供こさえたなんて無責任もいいとこだからな、おれはそういうのは嫌いだ。そういうことだけはしないって心に決めてる。カッコ悪いじゃん、責任取れねえのって。独り立ちして、子供もちゃんと食わせていけるってのがカッコいいと思ってる。おれは、自分がカッコいいと思うことをしたい。他の人がどう思うかは置いといて、おれはおれがカッコいいって思うことをしたい。

だからまあその、この間はおれもちゃんと付けてたわけだけど。ゴム。張り切って付けといてなんだけどさ、出たの抜いてからだったんだよな。ホント締まらねえ。

「なんかさ、聴いてて面白いっていうか参考になるんだけど」

「参考って言い方面白いな」

「おれにそこまで話していいのかって」

「槇村はそういうこと言えるやつだから大丈夫だって」

「そういうもんか?」

「真面目じゃんお前、うちが知ってる中で抜けて真面目だし」

「なんで皆そう言うんだろ」

「いや言うだろ、自覚無さすぎ」

「おれ自分のこと不真面目だって思ってるんだけど」

「どこがだよ」

「水泳やってんだけどさ」

「うん」

「大会出るのもいいけど自主練してる方が楽しいな、とか」

「は? それで不真面目判定付くの? 槇村ん中では?」

「あと泳ぐのは好きだけど選手になる気はないとか」

「いやいやいや、それはないそれはない。清姉んとこの甥っ子じゃねえんだから」

「誰それ、知り合い?」

「清姉? うちの心の姉貴。すっげえぞ清姉は、プログラミングとかめちゃくちゃ上手いんだ」

「心の姉貴って面白いな」

「実際その言い方が一番合ってるんだよ。マジで尊敬してるし」

「なるほどなあ。その甥が水泳やってるんだって?」

「そう。なんて名前だっけ? そうだ、優真って言ったかな。清姉や妹と一緒にうちに来たこともあるし」

なんでここに川村が出てくるんだ? てか、春原がなんで川村のこと知ってんだ。

「えっ、優真? ひょっとして川村優真か?」

「なんで知ってんだ? そいつだよ、川村優真」

「おれさ、そいつと関わりあるんだ」

「ホントかよ」

「マジだよマジ。よく一緒に泳いでくれとかタイム測ってくれって言われて」

「ほぉー」

「相談乗ったりとかもしてる。あいつ真面目だよな、おれとは大違いだ」

「どういう相談?」

「選手になるための心構えとか、最近の会社は女子を取りたがるんじゃないかとかさ」

「ガチすぎる」

「ガチすぎるよなぁ」

「でもそういうガチの相談をされてるわけだよ」

「うーん、一応は」

「じゃあやっぱ真面目じゃん」

「そっかなぁ」

「教室でバカみたいに騒いだりもしてなかったし」

「おれ教室で騒ぐの好きじゃねえから」

「そういうとこだぞ」

「どうだろなぁ」

「なんで不真面目にこだわるんだよ」

「ほら、真面目って言ったらなんか頭固そうな感じするし、不真面目な方が柔軟じゃねって」

「そんな理由で不真面目なやつがいるかよ、お前ホント面白いな」

おれとしては結構真面目に考えたことなんだけどな。真面目に不真面目、どっかで聞いたようなフレーズ。てかこれじゃ真面目なのか不真面目なのか分かんねえや、春原が腹抱えて笑ってるのも無理ないかも。

「ま、あれだ。槇村は口が堅いって知ってるし、突っ込んだ話してもいいかなって」

「突っ込んだ話っていうか突っ込まれた話っていうか?」

「お前さぁ、そーいうところは不真面目でいいな」

「よし不真面目ポイント稼いだ」

「何がポイントだよ」

「ポイントはいいや。おれ、口が堅い風に見えてるのかな」

「だったら訊くけどさ」

「うん」

「槇村って羽山とよく一緒にいるじゃん」

「今日もあいつのこと待ってるしな」

「じゃあ、羽山の好きなやつって誰か知ってる? うちの友達が知りたがってるんだ。うちも知りたいし」

羽山、つまりは秋人か。秋人の好きなやつ、おれはそれが誰か知ってる。知ってるけど、秋人とはこのことは誰にも言わないって約束した。それは相手がこうやってあけっぴろげに話をする春原でも同じ。春原は春原、秋人は秋人。きっちり分けて考えねえと。

「いや、おれは知らないな」

「なるほどな。やっぱ口堅ぇよ、槇村は」

最初からこう言われるって分かってたみたいに頷いて、春原はあっさり退いてった。ホントに知りたがったのかは怪しいな、単に試してみたってだけかも知れない。おれが本当に他人の秘密をペラペラ喋るようなやつじゃないかどうか、って。

「うちが今日話したこと、誰かに言ったりする?」

「しないな、絶対」

「じゃあさ、もし他のやつにさ、春原とここで何話してたんだ、って訊かれたらどうする?」

「共通の知り合いがいたとか、目玉焼きに何掛けるかとか、モロバレルってモンスターボールだよなって話したって言う」

「すっげえ、全部事実なのに本筋にちっとも触れてない」

「こういうこと話してたのは間違いないし、ただの雑談だって伝わるだろ」

「ああ、分かるわ。だからだな、一海が槇村と付き合ってるの」

えっ。

「ちょっとタイム、春原さ、お前今なんて言った?」

「ん? 一海が槇村と付き合ってる、って」

おいおい、どういうことだよ。なんで春原の口から一海って名前が出てくるんだ。しかもおれと付き合ってる、なんて。

「知ってたのか」

「へぇー。知ってたのか、ってことは、やっぱそういうことなんだな」

「うん、まあ」

「お前ホント素直だな、陽介とタメ張れるぞ」

「褒められてるのかどうなのか分かんねえや」

「一海と一緒にいるとこしょっちゅう見てるし、そうじゃないかなって思ってた」

「そういうことか」

「星宮神社に入ってくとことか」

「その時からか、だいぶ前から知られてたんだな」

「家も近くじゃねーし、付き合ってなきゃ一緒にいたりしないよなって」

「この調子じゃ他のやつにも見られてるかもな、春原だけじゃなくて」

「ま、隠すつもりもあんま無いんだろ」

「それはある。言われたらそうだよって認めてるし」

「だろ? うちも似たようなもんだ」

だな、そこは確かに似てる。春原も言われればあっさり認めて隠そうともしない、おれとまるっきり同じだ。

「で、いつから付き合ってんの」

「去年の夏から」

「もうすぐ一年か。なんで付き合うようになったのかも聞きたい」

「最初教室で目が合って、綺麗だなって思って」

「一年のときは同じ教室だったからな、うちも槇村も一海も」

「そうそう。で、六月にやたら雨降った日があってさ」

「雨、か。嫌だな、今年ももうすぐ梅雨だし」

「おれその時傘忘れちゃってさ、一海が貸してくれたんだ」

「一海の方から?」

「そう。まともに話したのはそれが最初だと思う。覚えてないだけで前にも会ったかも知れないけど」

「あるよな、そういうの」

「で、次はプールで会って」

「学校の?」

「うん。終業式の日にさ、おれ水泳部だから練習しようとしてたら一海が来て」

「一海も水泳部?」

「そうだったらよかったんだけどな、違う」

「じゃあこういうこと? 水泳部でもないのに水着持ってきてプール行ったっていう」

「よく考えたらそういうことになるな」

「面白くなってきた。それから?」

「一海がおれと競争しようって誘ってきて、五十メートル一本勝負」

「それも一海から、だよな」

「一海から。それでおれが負けて、一海が『一緒に海で遊ぼう』って」

「なんだそれ、大胆すぎだろ」

「海へ遊びに行って、めいっぱい遊んで、それからおれ一海のこと好きだって気付いて」

「うん、うん」

「おれの方から告白した。好きだ、付き合ってほしいって」

「見事に落とされたってわけだ、一海に」

「まあな。それで付き合うようになった」

「けどなぁ。プール来るだろ、勝負仕掛けるだろ、海に誘うだろ。積極的すぎ、うちの知ってる一海じゃない」

「おれもビックリ。もう何が何だかって感じだった」

「しかもそれで槇村に勝つってのがね。槇村より速いやつなんてそうそういないじゃん」

「同級生には負ける気がしない。一海以外には」

「よく海で泳いでるって聞くし、泳ぐの得意そうだけど、そんなだったんだ」

「ホント、マジですっげえ速いんだ一海。フォームに全然無駄がないし、水と一体化してるっていうかさ」

「シュッとしてるしな、体つき」

「大会出たら優勝間違いなしだし、なんなら世界でも通用するぞ、おれは絶対そう思うね」

「なんかさ、付き合ってる彼女の話ってより、憧れてる選手の話してるみたいだぞ、今の槇村」

「割とそういうトコある。眠らせとくの勿体ねえよなって」

一海はおれの彼女で、おれは一海の彼氏だけど、それとは別におれより凄い水泳の能力を持ってる存在でもある。一海が選手になったら絶対活躍できるって今も思ってるし、もしそうするって一海が言い出したら全力で応援したいくらいだし。

「どういう流れで付き合ったのかってのは分かった」

「うん」

「じゃあさ、そっちはどうなの? どれくらい進んでるわけ?」

そりゃ訊かれるよな、おれが春原に訊いたわけだし。春原と同じくらい隠し立てせずに喋っていくか。

「四月の頭に一海がうちに来てさ」

「うん」

「夜泊まってった」

「布団は一つ?」

「ひとつ」

「あっさり言うなぁ」

「いや春原が言うし」

「どうだった?」

「がっかりすると思うんだけどさ」

「いいよ、言えって」

「実はこう、よく分かんないまま終わっちまって」

「だよな。最初ってそんなもんだって」

「一海が嬉しそうにしてたからよかったけど」

「槇村と一海だと一海がリードしてそう」

「やっぱそう見える?」

「よっしゃ合ってた」

「別に見たことあるわけじゃないけど、こう、姉貴と弟みたいな感じになって」

姉貴がいるわけじゃないけど、あの時の一海は完全に姉貴だった。偉ぶってるとかじゃない、そういうのじゃ全然なくて、右も左も分からない弟に手取り足取り教えてるって風で。言って一海も初めてだったんだけど、おれと同じで。

「完全にイメージ通りじゃん」

「おれ、一海と同い年なんだけど」

「そういうのじゃねえって。ほら、一海って大人っぽいし」

「それはある。確かに」

「で、槇村の初めてはよく分かんないまま終わったわけかぁ」

「そう。たださ」

「ただ?」

「あったかいんだな、って」

「陽介とまるっきり同じこと言っててちょっとウケるんだけど」

「マジで? あいつも同じこと言ってたの」

「男子ってみんな思うこと同じなんだな」

「あれなんだけどさ。ゴム付けててもあったかくてビックリした」

「断熱材じゃないからな、別に」

「ここだけの話なんだけどさ」

「うんうん」

「最初付け方分かんなくて焦った」

「お前かわいいかよ」

また可愛いって言われた。なーんか引っかかるんだよな、ユカリの時もそうなんだけど。おれカッコいい方が好きなんだけど、そう上手くはいかないみたいだ。

話し込んでたら日も傾いてきた。秋人はまだもうちょい来そうにない。下校しろって放送が入ったら出てくると思う。架かってる時計見ると五時二十五分、ここに来てから結構経ってる。あと大体五分くらいかな。春原が喋ってくれてるおかげで退屈せずに済んでる。

「春原って一海となんか絡みあったっけ」

「あるぞ。中学んときから」

「結構前からか」

「しょっちゅう遊ぶって程じゃなかったけど仲は悪くないっていうか」

「うん」

「静かで控えめな感じ」

「そこは今も変わらないな」

「まあそれだけじゃねえんだなってことも分かったけどさ」

「そうだ。中学ん時も泳ぐの速かったんだよな」

「そこ気にする?」

「気にする」

「筋金入りだなぁ」

「気になるし」

「二年の時同じクラスになって、泳ぐとこ見る機会あったんだ」

「うん」

「なんていうか、住んでる世界違うぞこれってレベルで」

「やっぱそうか」

「男子と競争しても負ける要素無いくらいだったし」

「だよな、だよな」

「けどさ」

「けど?」

「あとで『すげえな、水泳選手なれるんじゃね?』とか言ったら、ちょっと複雑な顔してさ」

「えっ」

「『自分には無理だよ』って、作り笑いっぽい顔で返されたっけな」

複雑な顔。その春原の言葉でおれも複雑な顔になる。同じ顔かは分からないけど、一言で言い表せない気持ちになったのは多分共通してる。一海は選手になれるくらいの実力を持ってるのに、そう言われて素直に喜べなかった。なんでだろ、おれだったら軽く得意になるような状況なのに。水泳選手って存在に何か思う処でもあるみたいな返しじゃん。

自分には無理だよ、なんて。

「そんな感じの付き合いだったんだけど」

「うん」

「同じ年の9月だったかな。夕方からすっげえ雨降って、傘差して帰ろうとしたら一海がいて」

「うんうん」

「傘持ってなかったみたいでそのまま濡れて帰ろうとしてたから、風邪引くぞって言って呼び止めて」

「濡れても平気なの、昔からなんだな」

「一海は平気でもうちが気が気じゃねえし。でかい傘だったから入っていいよっつって入れてさ」

「相合傘じゃん」

「相合傘だな。家の方向も同じだったから一緒に帰ったわけ」

「ふんふん」

「そん時にお互いのこと話したんだよ。どこ小出身とか、雨で家族亡くしたこととか」

「雨って……もしかしてあの年末の」

「それ。うちも親と友達亡くして、一海もお祖父ちゃん亡くしたって聞いたんだ」

小6の年末に榁で降った大雨。おれは幸い大した被害もなかったけど、あちこちですごい被害が出たってのはたくさん聞いた。鈴木館長が言ってた一海の爺ちゃんが死んだこともそう、それに春原も酷い目に遭ってたってことか。

「家も流されちゃってさ、それでお祖母ちゃん家に居させてもらってる」

「だからか、そういうことなんだ」

「そういうこと。けどさぁ」

「うん」

「大事な人亡くした繋がりって、別に悪くないけど、もっとマシな繋がり無いのかよって思うな」

「そうだな。おれと一海もなんだけどさ」

「槇村と一海?」

「おれも母親小さい頃に蒸発したし、一海も生まれてすぐ母親死んだって聞いたから」

「なんだろうな、こういうの多いな」

まぁなぁ。おれが頷く、春原も続いた。おれもそう、一海もそう、春原もそう、陽介もそう。ここにはいないけどユカリも同じで、伯母の明日さんと二人暮らし。親はどっちもいない。探せば他にもいると思う。春原の言う通りだな、ホントこういうのが多い。だからどうってわけでもない。けどさ、もっとこうポジティブなことで似てる方がいいのにってのはいつも思う。おれはまだ親父がいるだけマシなのかも、とも、マシって言い方も違う気がするけど。

「だけどさ」

「うん」

「槇村と一緒にいる一海、楽しそうだし」

「春原から見てもそう見える?」

「見える。自信持っていい」

「マジかそれ」

「槇村は一海といてどんな感じ?」

「楽しい」

「早っ。即答じゃん。本気で好きなわけだ」

「だって事実だし。さっき言ってただろ、自分の気持ちはサッサと言った方がいいってさ」

「ってことは、一海も楽しいだろうな」

「そう思いたい。けどさ、もっと楽しいなって思ってもらえるようになりたい」

「やっぱさー、槇村お前真面目キャラだって。んなこと素面で言えるやつそうそういねえぞ」

「真面目真面目って言われると反抗したくなるんだよ」

「ガキっぽいなぁ。ま、うちが『センパイ』だって分かったから、なんかあったらまた相談しろよ。ペリドットのミルフィーユくらいで手を打ってやるから」

「ちゃっかりしてるよ」

おれが言い終えるか言い終えないかってくらいで、前から二人並んで歩いてくる影が見えた。こっちに真っ直ぐ向かって来てるってことでピンと来た、片っぽは秋人だ。じゃあもう片方は、って言うと。

「おーい、頼子ーっ」

「瑠璃ちゃん! お待たせっ」

頼子、南雲頼子。春原が名前を呼んだ通りだ。ジャージ着たままカバンとテニスラケット提げてるのが見える。てか、あいつテニス部だったのか。今初めて知った。誰だっけ、うちのクラスに個人で地区大会まで行ったやつがいたんだ。ええっと確か高橋だっけ? いかにも運動やってますって感じの女子。あいつと南雲が同じ部活だっての、なんだかギャップあって面白いな。

「おう、遅かったな」

「悪い悪い。目当ての本見つけて読んでたら遅くなってさ」

でもって、おれの方には秋人が向かってくる。図書室で本を借りたっぽい、それも一冊じゃなくて何冊か。カバンが膨らんで重そう感出てる。勉強熱心なとこあるからな、おれもまたなんか本読みたい。

秋人と南雲、この並びでピンと来た。校門までだけど一緒に行こっか、きっとそういう話になったんだろって。だって秋人が南雲をどう思ってるか、おれは目の前の本人から聞かされて知ってるわけだし。

「へぇ。今日も羽山も一緒、ってわけか」

「うん。その、後片付けして出てきたらたまたま会っちゃって」

「あれだよ、俺も図書室にいて遅くなったから」

「ふーん。ま、そういうことにしとくかな」

春原が笑みを浮かべてる。秋人と南雲が見合ってもじもじしてる。それぞれの意味をおれは全部理解してるし、春原がさっき俺におれに訊いてきたことは、それ自体は別に訊きたいわけじゃなかった、ってことも。あとはあれだな、ホントに二人とも時間いっぱいまで部活やってたのかどうか。たぶん春原も同じようなこと考えてる、だっておれも笑いそうになってるし。

それじゃあ。春原と南雲とはここでお別れ。おれは秋人と一緒に商店街の方へ歩いてく。こないだの休みにちょっと練習して新しいコンボ見つけて来たからな、最近負け気味だったし、今日こそ秋人に一泡吹かせてやるぜ。

「透さぁ。春原と何話してたの?」

「一海のこととか」

「あぁなるほど、あいつ志太と付き合ってるし」

「なんだお前も知ってたのかよ」

「そりゃ知ってるって。志太から聞いたし」

「陽介の方からか」

「同じ家に住んでるんだろ? 前に志太ん家遊びに行ったら春原いたし」

「えっ、鉢合わせたんだ」

「普通に。よお、って挨拶されて、そのまま普通に三人でマリカやったりしたっけな」

「羽山も南雲連れていきゃよかったのに。ちょうど四人だし」

「頼子なぁ、あいつゲーム苦手なんだ。どうぶつの森は好きでやってるけど」

「へぇー。あれ面白えのかな」

「姉貴もやってたけどさぁ、どうなんだか。小物とか多いし女子ウケはしそうだなって思う」

「そっか。春原とも遊んだことあるんだ」

「それからも何回か。あいつ普通に強いぞ」

「格ゲーもやらねえかなあ。無理かなあ」

遊ぶ相手多い方がいいもんな、ゲームは。対戦相手がいないと成り立たないやつだったらなおさら。

「話変わるけどさ、志太って何部か知ってる?」

「知らない。何?」

「園芸部」

「園芸部? 花育てたりするやつ?」

「それ。珍しくね?」

「おれの周りで園芸部だってやつ初めて聞いた」

「相方がキマワリでさ、そいつが花や土の具合を見てるらしい」

「あ、それっぽい。適材適所じゃん」

「楽しんでるってさ。けどやっぱ珍しいよな」

「珍しいのはそうだな」

「天文部の俺といい勝負だな」

「かも」

「でもさ、珍しいってか、普通ねえよな。親戚でもないのに同級生二人で暮らしてるとか」

「一応婆ちゃん居るって言ってたけど、同棲みたいなもんだしな」

「同棲、同棲だな。間違ってない」

「進んでるっていうかなんつーか」

「だよなぁ」

「おれもいつか親父以外の誰かと一緒に暮らすようになるのかな」

「相手は水瀬さんだろ?」

「いやまだそこまで行ってねーし」

「いいだろ別に、将来の話なんだから」

秋人のやつが茶化してくる。まだ、今はまだそういう関係じゃない。そこまでは行ってない。

けど、いつかそうなる。そうなりたいっておれは思ってる。

(一海と一緒に暮らす、か)

今の関係――恋愛って関係の向こう側にある世界を、おれは一海と一緒に見てみたいから。

一海と二人で、もっと遠くまで行ってみたいから。

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。